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November 23, 2005

少年は王者を目指す 田中芳樹 『アルスラーン戦記』

中高生のころはどっぷりと田中芳樹にはまっていました。当時3,40冊はあった著書を、少ない小遣いで全部買い集めていたくらい。『銀河英雄伝説』『創竜伝』『アップフェルラント物語』『夏の魔術』etc
いつのまにやらあんまり読まなくなっちゃったけど、それでも続きを心待ちにしている作品がひとつあります。それがこの『アルスラーン戦記』

中原の大国パルスの安寧は、異民族ルシタニアと一人の男の裏切りにより、もろくも崩れ去る。王は捕らえられ首都は陥落。パルスの民は侵略者たちの横暴に、ただじっと耐えるほかなかった。
辛くも難を逃れた王子アルスラーンは、パルス再興のため、忠臣ダリューンとともに、同志を集めるべく中原を奔走する。最初はごくわずかだったが、次第に増え広がっていく仲間たち。アルスラーンと仲間たちは、果たして王都を奪還できるのか・・・・ というのが第1部のあらすじ。
パルスはササン朝ペルシャがモデルということなので、大体西暦6世紀前後の中東をイメージして読めばいいようです。
田中氏の「架空歴史小説」の特徴は、良くも悪くも「人多すぎ」なところ。普通のファンタジーなら「四天王」か「七人衆」でとどめておくところを、この小説では「十六翼将」もいたりします(ただ、現在まだ二名は未登場)。まあ実際の覇王さんたちも大抵はそのくらい有能な家臣を持っておられますから、「群雄なくして制覇無し」というところでしょうか。それぞれモデルがいるのでしょうけど、こんだけうじゃうじゃキャラクターを考え出すところに、まず感心します。
また、こういう架空世界の物語というと、魔法や怪物がバンバン出て来たりするものですが、この作品ではそれらは第1部ではあくまで「添え物」とされています。中心の柱となっているのは飽くまで「歴史」であり、「群像」なんですね。
田中作品のキャラは大抵登場時にすでに人格ができあがっていて、それ以上成長したり変化したりしないことがほとんどなのですが、本編の主人公アルスラーンくんはちょっと違っています。この少年、当初はたまに気の利いたことをいうこと以外、まことに頼りなく、「こんな坊ちゃんが王様になって大丈夫なんか」と思わせます。しかしストーリーが進むにつれ、怪物のようなお父さんにも胸を張って対峙するほどに成長し、「よくがんばったな。先生うれしいぞ」というような感動を呼びます。

第1巻が出たのが、かれこれ十五年以上前。始めは半年に一巻のペースででていたのに、その間隔が段々長くなり、そのうち版元も変わってしまい、「・・・・終るんだろうか」と気を揉んでいたところ、先日最新巻『魔軍襲来』がウン年ぶりに刊行されて、胸を撫で下ろしました。物語はこれからかつてパルスを恐怖のどん底に叩き落した魔王ザッハークとの本格決戦へとなだれ込んでいきます。予告を信じるなら残りはあと3巻。たのむからわたしが(作者も)生きている間に、なんとか完結にこぎつけていただきたいものです。

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Comments

 ファンタジーの走りというと怒られそうですが、外敵襲来とお家騒動を同時に進めていくストーリーはまさに大河です。
 映画版は、キャラデザの中村幸子氏(パタリロ)はどうやら合戦や
謀略にはSEEDの両澤先生並に全く興味がないようでして、かなり
適当でした。
 逆にアルくんやナルシス達の表情が、よく動いていました。
それは、もう耽美にw 
 
 実は弓のファランギースに萌えていたりw 
 アルスラ-ンくんみたいな少し頼りない性格も今では珍しくないです
ねw
 軍師だけど絵はヘタなナルサスや忠義一徹なダリュ-ン等、個性的
なキャラには愛着がわきます。
 個人的にはヒルメスの出生や彼がルシタニア軍と仲違いしたり、アルスラ-ン様ご一行が遠い異国で指輪物語みたいなゾウ軍団と対決
するあたりがツボでした。
 他の田中作品では、
 マイナーですが「マヴァ-ル年代記」「西風の戦記」や中国小説です
と「風よ万里を駆けよ」「紅塵」からくりサーカスの藤田先生が表紙を
書いた「纐纈(こうけつ)城奇憚」が好きでした。
 そういえば行家を復活させようとしたw加藤さんと一緒にいた
幸田露半の「運命」もリライトしましたね。

Posted by: 犬塚志乃 | November 24, 2005 at 09:32 PM

どうもです。
>映画版
失礼ですけどキャラデザは「中村」ではなく「神村幸子」さんじゃなかったでしょうか。ほとんど観ませんでしたが、『マシュランボー』というファンタジーアニメも手がけておられたような。
わたしも映画版第1作見ました。主題化がたしか遊佐未森(なつかし)。3,4あたりまでビデオで出していた記憶はありますが、そのあとははて、どうなってるおるのやら。

キャラではジャスワント(インド人)、クバード(ほらふき)、メルレイン(不機嫌面)といった「脇固め」みたいな連中が好きです。最新巻では遊牧民族出身のジムサが豪華な邸宅で暮らすのになれず、庭にテントを張って暮らし始めたというエピソードが笑えました。
好きなシーンは第7巻『王都奪還』におけるあれやこれやです。

>「マヴァ-ル年代記」「西風の戦記」や中国小説です
と「風よ万里を駆けよ」「紅塵」からくりサーカスの藤田先生が表紙を
書いた「纐纈(こうけつ)城奇憚」が好きでした。
全部読みました。『風よ~』はあとでディズニーが同じ題材の映画をつくったりしてましたね。
『マヴァール』『西風』の頃は確か年に10冊くらい本をだしてましたが、このころがやっぱりクリエイターとして、一番油が乗っていたと感じる次第であります。

Posted by: SGA屋伍一 | November 25, 2005 at 10:13 PM

>失礼ですけどキャラデザは「中村」ではなく「神村幸子」さんじゃなかったでしょうか
 すいませんでした(苦笑)気をつけてもミスは減りません。
>ジャスワント(インド人)、クバード(ほらふき)、メルレイン(不機嫌面)といった「脇固め」みたいな連中が好きです。最新巻では遊牧民族出身のジムサが豪華な邸宅で暮らすのになれず、庭にテントを張って暮らし始めたというエピソードが笑えました。
 ああ、何か懐かしいですね。ジャスワント、敵の間者でしたが、アル
スラ-ンの「孔明・孟獲を七度離す」な扱いで部下になった人でした。
 寒さが苦手でしたよね?
 メルレイン、不機嫌ヅラ、確かにwでも弱い者や市民の味方でもあり
ました。
 ジムサ、えーと誰でしたっけ?(おいおい)
 
 >全部読みました。『風よ~』はあとでディズニーが同じ題材の映画をつくったりしてましたね
 で田中先生ムーランのパンフに解説を書いていましたw

>『マヴァール』『西風』の頃は確か年に10冊くらい本をだしてましたが、このころがやっぱりクリエイターとして、一番油が乗っていたと感じる次第であります。
 田中先生の岳飛伝も読みましたが結構面白かったです。
水滸伝が好きなんですが、岳飛は、それの少し後の時代でして、ジーンときましたw
 あれからまた少し経つとジンギス・カンが出てくるのでまたジーンw
 
 随唐演義は、西遊記エピソード・ワンです。
随唐演義は、ぶっちゃけ李世民が三国志以来分裂していた中国を
統一するんですが、兄と弟をぶっ殺してしまうんです。
 で地獄(夢ですが)で兄と弟に「恨みはらさでおくべきか」と追いか
けられ命からがら逃げて、側近に相談して成仏させようとするんですが
、観音さまに「そのお経じゃだめよん。ありがたいお経じゃなくちゃ」
と言われて、三蔵法師が取りに行く、訳です。
 随唐演義を読むと西遊記で、なんで三蔵がお経を取りに行くか?や李世民の苦悩がわかったり、唐の武将が出てくると「待ってました」と
叫びたくなるかもしれません。
 あまり関係ないですが随唐や西遊記の死後の世界は、かなりお役所仕事というか味があり私の死生感にぴったりですw
 あんな地獄ならありそうだな、と納得します。
 
 油が乗っていたというか、またオリジナルな小説を読んでみたいで
すね。歴史小説を書くのも良いですが、よく雑誌で取材を受けていると
うーん自粛w

 


 
 

Posted by: 犬塚志乃 | November 26, 2005 at 06:52 PM

>ジャスワント
>寒さが苦手でしたよね?
そうです。インド人ですからw

>ジムサ、えーと誰でしたっけ?(おいおい)
ジャスワント同様もともと敵陣営の人間でしたが、色々あってアルスラーンの配下に。吹き矢が得意(セコ)。確かにあまり目立つタイプではありあせんが、最新巻ではけっこう活躍してます。

>岳飛
読んでませんけど、田中さんによると「中国では関羽よりも人気」とか。世界史では「秦檜=平和論 岳飛=主戦論」としか習わなかったので、「血の気の多いおっさんだったのかなあ」くらいの印象でした。

>随唐演義は、西遊記エピソード・ワンです。
そいつは知りませんでした。『風よ~』の後書きによりますと、この『隋唐演義』は四大奇書のいろんな要素をとりこもうとして、かなりまとまりのない作品ということでしたが、それを承知で田中氏は偏愛していたようですね。

>随唐や西遊記の死後の世界は、かなりお役所仕事というか味があり私の死生感にぴったりですw
ですか。閻魔大王というあれも、中国からの輸入品なんでしょうかね。古代エジプトの死後の世界もなかなかお役所的な厳しさを感じます。

Posted by: SGA屋伍一 | November 26, 2005 at 10:10 PM

 >岳飛、「血の気の多いおっさんだったのかなあ」
 そんな感じです。で秦檜が和平派、というと聞こえは良いのですが
ちょっと卑屈でした。
 戦力の岳飛を殺して、宋の国が取った領土も元に返して
捕虜のふたりの皇帝様も返してもらわない、これじゃナショナリズム云々は置いといて「え~?」と言いたくなるのもわかる気がします。
 小林よしのり先生が靖国神社本でちょっとだけ「秦檜は和平をした人
だが中国人は彼の石像にツバを吐いている。中国人は~」言っていました。
 歴史で悪評の人を再評価するのは良いのですが秦檜を肯定する人
は「中国人は中華思想で他所の国とつきあう気はない」と小林先生みたいな人が多く「なんだかなぁ」と思います。
 王昭君みたいに何とか異民族と仲良くやろう、としてる例もありまふ。
 でいろいろ調べましたが
 Q「中国の漢民族は異民族と付き合おうとしないのか?」
 A「いろいろ試したけど中々うまくいってないみたい」
でした。
 で秦檜さん偉い派は肯定する理由が和平一本なんです。
はい、それだけです。
 少し卑屈なトコロも秦檜さんが元に捕虜でいた事も、それで元の文化
に感化されたのかなぁ~、などなどを考える事なくただ「秦檜は和平を
したから偉い」だけなんです。う~ん。
 それ狭すぎるやんかー
 
 
 中国は万里の長城で北と南に分かれていますが、北が義経さまの(え?)元で南が岳飛さまの宋です。
 尊皇攘夷は「王様偉い、外人出てけ」な思想ですが、宋史がモトに
なっていると風雲児たち、にありました。
 元に侵略されていればそんな考えが生まれても不思議ではありませんが、日本はどうもこの非常事態を間違った形で当てはめてしまった
のが幕末に行く、のかなぁ~?
 別にペリーに侵略されてる訳じゃないですし。まぁ似たようなモンです
と言われれば困りますがw

 岳飛さんは背中に尽忠報国とイレズミを入れていたそうですが、
もしかして芹沢先生が岳飛を読んで「おっ、かっこいいじゃん」と
思ったかは知りませんが水戸じゃありえるかも。
 西郷先生も岳飛や秦檜さんの事を知っていたみたいです。
 
 
 >大魔王ザッハーク復活
 アル「大変だ、ザッハークが復活してしまう」
 ダリュ-ン「アルスラ-ン様こちらへ」
 ジャスワント「寒いよー。え?誰ですかそのザッハークって?」
              
            どろどろどろどろ
 
 行家「ふはははは我輩が大魔王ザッハークだ」
 アル「早く帰ろうよ」
 ジャスワント「アルスラ-ン様、とっておきのカレーがあるんですよ」
 行家「お前等、わしを無視するな!」
 ジムサ「ぷっ」ぷすっ
 行家「うっ?」どさっ
 
 田中先生はザッハークは出てくるまでが華と言ってましたが、こういう
展開はないでしょう。
 
 
 死生観はインドから輸入されて中国に、で日本へ来たらしいです。
さすがインド、よくわかんない哲学や曼荼羅を産んだことはあります。
 中国にあの世フィーバーが起きて地獄ブームが起きたハズです。
 「やべぇよ、良い事しなきゃ地獄行きだよ」が流行語大賞ですw
 でアイドル三蔵法師さま、とw
 一応日本書紀にも三蔵さまの名前は載っています。
一行ですけど。
 きっと萌えたんでしょうね。

Posted by: 犬塚志乃 | December 17, 2005 at 11:02 PM

返事が遅くなりすいません。
>秦檜VS岳飛
わたしもどちらかといえば「平和が一番」派ですが、この件に関してはよく知らないので何とも言えませんね。「民族の誇りと人命とどちらを優先すべきか」というのはよくある葛藤でよすね。ただ、はなしを聞くと秦さんはヒューマニストというか、単に怖がりだったと。そんな印象を受けます。ゴーマニズムのあの人はどちらかってえと秦さんの方が好きなタイプのような気がしますが。

>>大魔王ザッハーク復活
第2部に入ってとっとと復活するのかと思いきや、未だに姿を現しません。ハリーポッターの「あの人」みたいです。あ、『アル戦』の方が先か。

> 一応日本書紀にも三蔵さまの名前は載っています。
一行ですけど。
はあ、それは知りませんでした。もしかしてその「一行」の中にはサルやブタもいたのでしょうか。

Posted by: SGA屋伍一 | December 19, 2005 at 10:05 PM

>もしかしてその「一行」の中にはサルやブタもいたのでしょうか。
 はい、マチャアキや西田敏行さんにそっくりだったそうです。
でも最近の研究では、慎吾くんやウッちゃん、喜三太に
そっくりだった事が判明したそうです。
 ウソです。すいません。
 

Posted by: 犬塚志乃 | January 10, 2006 at 10:29 PM

もしかして三蔵法師は湾岸署の女刑事に似てたんじゃないでしょうか
ブタは電車男にも似てたんじゃないでしょうか

チラッと見ましたが、今回の悟空はだいぶ素直な性格のようですね

Posted by: SGA屋伍一 | January 11, 2006 at 09:34 PM

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