青年探偵の起・承・転・結 ドン・ウィンズロウ 『ニール・ケアリー・シリーズ』
今日は先日第4作が刊行されたこのシリーズを。
本シリーズは創元推理文庫より
①ストリートキッズ
②仏陀の鏡への道
③高く孤独な道を行け
④ウォータースライドをのぼれ
が出されています。思い切り前後関係があるシリーズなので、「これから読もうかな」という方は、この順番を間違えないでください。
あらすじを。麻薬中毒の母親に育てられた少年ニール。いよいよ母がだめになってしまった時、彼を引き取ったのは米国の大手銀行の支援組織「朋友会」だった。その一員であるグレアムに探偵術、スパイ術を叩き込まれたニールは、長じて銀行の重要な顧客のトラブルを処理する仕事をおおせつかる。第1作ではパンク草創期のイギリスへ。第2作では文革まっさかりの中国へ。さらには大西部や、ベガス、ディズニーランドもどきへと、飛ばされるニール。仕事を重ねるほどに辞職の念を募らせる彼に、安住の時は訪れるのか。
このシリーズの特色は、主人公がナイーヴな青年であるという点。ハードボイルドの主人公というのは、大抵精神的プレッシャーにめっぽう強いものと相場が決まっています。対してこのニールは人をだますことに罪の意識を感じ、嘘がばれてなじられると、深く傷つく。それでも哀しみを減らず口でごまかして、誰かのために必死に励むニールに、何度も男泣きを誘発させられました。また、若いに似合わず文学をこよなく愛しているところなども、本好きには感情移入しやすかったです。ちなみに彼はディケンズを愛読しているのですが、彼の出自もディケンズ作品の登場人物と似通ったところがあります。
身もふたもないですけど、このシリーズ1作目が一番感動します。そして2作、3作と進むにつれ、だんだんバカの度合いが高くなり、こないだの4作目にかんしちゃユーモア小説といっていい内容になってました。だからといって2~4作目がつまんないかというとそんなことはなく、それはそれで十分に楽しめます。なぜこのような流れになってしまったのかは、4作目巻末で杉江松恋さんが面白い説明を述べておられました。
さて『ウォータースライド~』でニール君の「旅」はひとまずの区切りが着き、一応完結したとみることもできます。ただこの後に後日談的な第五作もあるそうで、そちらも気長に待ちたいと思います。なんせ今回の刊行、「6年ぶり」だったもんですから、次は果たしていつになるやら・・・・・
角川文庫で出ている同作者のノン・シリーズ、『ボビーZの優雅な人生』もお薦めです。愉快でハラハラさせられるお話。
第1作は映画化進行中とのことですが、わたし、もうだまされませんから(この手のはなしはよく流れるので・笑)
Comments
こんばんは。
まず。
>映画化
気長に待ちましょう(笑)しかも翻訳が遅いのはまだしも、映画の場合、実現したって内容は保証できないですしね(笑)
そうそう、第1作がもんのすごいよかったイメージがあって、最新作は「ん?こんなんだったっけ?まあいいや、ニールは変わってないし」でした。でも彼女の存在を忘れてた(笑)
だって間空きすぎです!!
確かに解説面白かったですね。
『ボビーZ』も、詳しい内容は忘れちゃいましたが面白かったという記憶が。
うーん。自分とこのブログでは、このシリーズ、書名だけ挙げて逆にこの記事からTBして頂こうかしら(笑)(オイオイ)
Posted by: 高野正宗 | October 19, 2005 11:17 PM
さっそくありがとうございました
>映画化
これ、たしか創元さんのHPに書いてあったのかな。でも「ボビーZ」も映画化と言ってたんですけどねえ。S・ハンターの「極大射程」もどこ行っちゃったんだろうなあ
>第1作がもんのすごいよかったイメージがあって
そのあともいいですけど、『ストリートキッズ』はやっぱり際立って印象深いすね。文芸作品といっていいほど。ただドンさんは書いてる内に「おれ、バカ話の方が好き」なことに気づいちゃったんでしょうね。それとも国がバカになっていったせいなのか?
そこはかとなくアメコミネタが出てくるところも好きです。
Posted by: SGA屋伍一 | October 20, 2005 07:39 AM
ここの所色々考えるところあってネットにかかわれずご無沙汰してました。今度YAHOO BBにしたのでメールが変わったのと、パスワード掲示板を作ったので僕のメルアドのほうへSGAさんのメルアド教えてください
そちらのほうへお知らせします。 今の掲示板では結局みんなが見るから何の話もできなかったんですが、今度のは気兼ねなく話ができます(・O・)
Posted by: 栄香 | October 24, 2005 07:53 PM
お忙しいようですね。こちらこそご無沙汰してすいません。掲示板はまめに覗いてたんですけど、これといったネタが思い浮かばず・・・・・
とりあえずアドレス送ります。自分、戦国はとおりいっぺんの知識しかないので物足りないかもしれませんが。
Posted by: SGA屋伍一 | October 24, 2005 10:57 PM