愛しちゃったら命がけ フランク・ミラー ロバート・ロドリゲス 『シン・シティ』
えーと、これはまだギリギリ間に合うみたいですね。あんまり気乗りしてない感じだったゼンザイ先生に付き合ってもらって観に行ってきました。微妙にネタバレよろしくOK?
力だけがものを言う背徳の都“シン・シティ”。その町では愛さえも戦いです。
マーヴはぬくもりを与えてくれた娼婦のため、ドワイトは昔愛した女のため、ハーディガンは鬼畜の手に落ちた少女のため、己の命など屁とも思わず、巨悪に敢然と立ち向かいます。
時系列の違う三つの短編が順々に語られる構成。その辺を把握してないと、死んだはずの人間が生きているように見えたりして混乱します。
愛する女を守るためなら全てを投げ出す。そこまではいいんです。でもそこから先が、なんとなくやり過ぎ。善良なる市民のみなさんは、「何もそんなとこ引きちぎらなくても!」「何もそんなものワンちゃんにたべさせなくっても!」と悲鳴を上げられるにちがいありません。
そんなわけで観終わった直後はその過剰な描写に辟易するのですが、冷静に振り返ってみると、彼らがくだす裁きはけっこう公平です。要するに、加害者に被害者の苦しみを忠実に再現しているだけのことですから。そういえば原作者兼監督のミラー先生は、「公平な裁き」というものを、作品を通じてずっと追求している方でした。
悪と同様の結末がヒーローたちに臨むことが、公平ではないように思えるかもしれません。しかし悪にとって罰であるそれは、命の焼却所を求めてさまよう主人公らにとってむしろ栄誉なのではと考えます。この辺にはミラー先生が敬愛してやまない『子連れ狼』の影響も見え隠れしております。
ここまで書いて気づいたんですが、これらの法則、第2パートにはあんまり当てはまってないかも。でもまた一から書きなおすのは非常に面倒なので、どうか勘弁してください。
「原作の雰囲気を忠実に再現したい」というロドリーの意向のため、本作品はいまどき珍しい全編モノクロとなっております。ただ原作と違って、時々ある物・・・・あどけない娼婦の瞳や、不気味な怪人など・・・・にだけ色が付いていて、鮮烈な印象を残します。ココアに入れるお塩のような手法ですね。
第1パートの原作『ハード・グッドバイ』も入手いたしま。した近日中にレビュー予定。
Comments
どうも、ゼンザイです。
いやー、行きましたねぇ、この映画。
うらやかな午後のひと時、爽やかな潮風を感じながら、幸せそうな家族連れの人並みをかき分けて、行きましたよねぇ、この映画。
本当にこんな素敵な休日を提供頂いたSGA君、僕はつくづく思いましたよ、君との付き合いを考えようかと。
ジョークですよ。
まあ、僕の感想はいずれまた。
Posted by: ゼンザイ | November 05, 2005 01:58 PM
そう。あれはまるで春のような、暖かい日のことだったね
ぼくは気づいてしまったんだ。劇場を出た君の瞳に、危険な光が宿っていることを
そんな君にぼくは言った
「どうしてもやるのかい?」
「ああ。男には、やらねばならぬ時があるのさ。たとえ自分の命を賭けても」
あれから一月・・・・ きみはいまどこで何をしているんだろう?
※このコメントは(やや)フィクションです。
Posted by: SGA屋伍一 | November 05, 2005 09:24 PM
『子連れ狼』的な背景があるのは魅力的だけど、時系列の違う3部作で男前がいないとなると、ちょっと私にはしんどいかもしれませんね。
といっても、とっくに公開が終わってしまっているので、悩む必要も無いのですが。
Posted by: ハル | November 06, 2005 07:02 PM
ようこそいらっしゃいました。
>男前がいない
強いていうなら某ホビット庄のイライジャ君が出ていますが、なにを血迷ったか!?というくらいとんでもない役なので、彼に思い入れがあるなら見ない方がいいかもです。
>子連れ狼
はあくまで雰囲気だけ(笑)。もっとはっきり翻案にしたものには、前にオススメした『ロード・トゥ・パーディション』がありますね。向こうにはファンがけっこういるようです。
Posted by: SGA屋伍一 | November 07, 2005 09:42 PM
イライジャ君とジョシュ・ハートネット君は、ロバート・ロドリゲス監督の『パラサイト』つながりなんですよね。
この作品、青春ホラーの王道いってって、結構好きだったりします。
(エイリアン好きだからかもしれませんが・笑)
しかしこの二人に関しては、どっちも好みじゃないので、どーでもいいですわ♪
ところで『ロード・トゥ・パーディション』、私、大好きなんですよ。
あのトム・ハンクスとポール・ニューマンの土砂降りのシーン。
トム・ハンクスとジュード・ロウ(帽子は脱がないで欲しかった…)の
窓越しに海が見えるシーン。
それにラストのシーン。
シビアな世界だけど美しくって、かっこよくって好きなんです。
って事は、この『シン・シティ』も見た方が良かったのかしら?
今度レンタルに並んだら、チャレンジしてみることにしますわ☆
Posted by: ハル | November 09, 2005 01:31 AM
>『パラサイト』つながりなんですよね。
おお、なるほど。ご教授ありがとうございます。ジョシュくんの方はかっこいい役でしたけど、出番がほとんどなし(笑)
>『ロード・トゥ・パーディション』
>シビアな世界だけど美しくって、かっこよくって好きなんです。
わたしもそうです。あと自分、長男なんで、親父と主人公の少年の関係がすごく良くわかりました。
ただ、こちらが押さえに押さえた作風であるとすれば、『シン・シティ』はドンチャン騒ぎみたいな感じなので、楽しんでいただけるか保証はいたしかねます(笑)
共通点は・・・・・ そうですね・・・・・ 白を基調とした画面作りとか、狂気とストイシズムの対比とか、その辺でしょうか。
Posted by: SGA屋伍一 | November 09, 2005 10:04 PM
あれから一ヶ月、俺は暗闇の中を彷徨い続けていた。
木々が装いを変え、彩りを添えても俺の心は浮き立たない。
そう、あの日、あの春のように穏かだった日から、全ては変わっちまったんだ…。
俺は劇場を出た後、危険な賭けに出ることを心に誓った。
やれるか、俺、 もし、しくじったら…。
いや、俺にはSGAがいるじゃないか、こいつなら俺の遺志を
継いでくれる、 そして俺の愛する家族を…託せられる…。
愛車に乗り込んだ後、横にいる男(SGA)にその事を確かめようとした。
その時だ!
横に座った男は知ら間に買ったきたジャンクフードを取り出し、一心不乱にむさぼり食っていた…。
えー、っていうか自分だけー。
この男の頭の中には、すでに俺の存在は無いらしい。なかば無理やり連れてきたくせに…。
俺は心の中でひどく長いため息をつき、そして悟った。
あー、そういやー、そういう奴だったなあ、と。 そして、
俺の人生の歯車があるとすれば、この日からだったのではなく、
こいつと知り合ってしまった15年前から、静かに、そして確実に
狂い始めていたのだなあと。
※このコメントも(やや)フィクション+冗談です。
(映画の感想を、まだ書いていないなあ)
Posted by: ゼンザイ | November 18, 2005 10:01 AM
そう、あれはまるで春のように暖かな午後の出来事だったね
君の期待に応えられなかったぼくを、許して欲しい
おどけてわかっていないフリをしたけれど、本当は怖くてたまらなかったんだ
君がこれから想像を絶する戦いに挑もうというのに、自分が情けない
でも、いまは違う ぼくもようやく覚悟を決めたよ
君の身にもし何かあったら・・・・
その時は責任をもって君の全財産を譲り受けよう
もう迷わない
だからもしこれを読んでくれたなら、一刻も早く通帳と印鑑をこちらまで送ってくれ
君の身に「なにか」が起きる前に
心よりの友情と共に SGA
※このコメントは(略)
Posted by: SGA屋伍一 | November 18, 2005 08:52 PM
ここは全てが手に入る、、、かな?なブログSGA屋物語紹介所。
ここは罪の街、じゃないよね?
今見終わりました。大変面白かったです。漫画というよりは
ハードボイルドな感じでした。
最近愛を知りましたので、知れば失うのに臆病になるもので、
Bウィリスに共感しました。
F・ミラーは公平がテーマな人ですか?犬に食わせるシーン、や
あれをひきちぎるシーンは当然の報いと思っていましたので
ショックは受けませんでした。
「300」が控えていますが、スパルタは恐ろしいところなんですね。
スパルタ教育の名は伊達じゃありませんね。
あんなふんどしでいたら、寒くないのでしょうか?
(そこかよ)
Posted by: 犬塚志乃 | May 08, 2007 11:33 PM
>ここは全てが手に入る、、、かな?
手に入るのは無駄知識だけでしょう・・・
罪の街、というよりか、ツッコミ待ちなところです
>最近愛を知りました
おめでとうございます。大切にしてあげてください
わたしもウィリスパートが一番燃えました(ひきちぎり除く)、次いでロークパート(ワンコの餌付け除く)。オーウェンさんのパートはいらなかったような気もします
> F・ミラーは公平がテーマな人ですか?
彼が担当した『デアデビル』や『バットマン』を読むとそんな気がします。「単に趣味の悪い人じゃ」という疑いもないではないのですが
>あんなふんどしでいたら、寒くないのでしょうか?
あそこは地中海性海岸気候ですから、けっこうあったかいのではないでしょうか。冬場は堪えると思いますが
Posted by: SGA屋伍一 | May 09, 2007 07:28 AM
さっそく読ませていただきました♪
映画シンシティほんっとに大好きで、なぜかなかなか発売されなかったDVDも予約して買ったくらい好きです。
ちょっと過激な暴力描写も、モノクロであることと激しくマンガチックであるせいかほとんど気になりませんでした。
というよりカッコ良すぎて興奮しました。
ハードグッドバイの翻訳本も興奮ついでに購入し、フランクミラーさんのことを掘り下げたくなりバッドマンイヤーワンも買ってみたのですが、
絵が違っててちょっとガッカリしてしまったアメコミ初心者の私です・・・
『300』は、絵もお話もフランクミラーなんですよね?
Posted by: kenko | May 17, 2007 12:02 PM
おはようございます
kenkoさまは『シン・シティ』が相当ツボだったようですね
確かにちょっと他に類を見ない映画ではありました。『2』も予定されているそうですが
>イヤーワン
実はミラー関連(バットマン関連でも)一番好きな作品だったりして(^^;)
詳しくはここに書いてありますが
http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2005/06/1_a96d.html
シャープで端正なタッチと、一章ラストの月明かりの場面、時系列を淡々と追うスタイルにしびれました
ただ、『シン・シティ』のギラギラした筆遣いに魅かれた方には、物足りなかったかもしれませんね
>『300』は、絵もお話もフランクミラーなんですよね?
たぶん・・・ 表紙に彼とカラリストの名前しかクレジットされていないので
今日発売日ですね。先に読まれた人によると「絵本みたい」な印象だそうです
アメコミ関連はここでよく情報を拾っています
http://www.planetcomics.jp/
Posted by: SGA屋伍一 | May 18, 2007 08:02 AM