« 山田風太郎に関しては色々言わせてもらいたい③ 『甲賀忍法帖』 | Main | 福田己津央 『機動戦士ガンダムSEED』を軽くかばってみる 無印編 »

September 28, 2005

平成ライダーの六年間を振り返る クウガ編②

『クウガ編』第二回は「“仮面ライダー”としての『クウガ』」ということで。
実はこのクウガというヒーロー、作中で「仮面ライダー」と呼ばれたことは一回もありません。世間的には怪人と同じ扱いで「第4号」と呼ばれています。正体を知る人々は単に「クウガ」と呼びます。そんな「クウガ」のどこが「仮面ライダー」なのか、考えてみたいと思います。

オリジナルの仮面ライダーは、最初ドクロをモチーフとしたものだったそうです(「ズキン!とくるものが無ければダメなんだ」石ノ森先生・談)。しかしそのあまりのショッキングさから、製作サイドは却下(笑)。そこで先生がなんかガイコツに似た物を・・・・ということで思いついたのがバッタだったという話。ともあれこの話からわかるように、仮面ライダーのあのデカ丸の目というのは、もともとドクロの目なんですね。
そんなわけでライダーというのは生まれながらのヒーローではないことがわかります。もともとは悪の組織が作った人間兵器なわけですから。それがシリーズが人気を博すにつれ、ヒーローの代名詞となっていった。これはこれでいいんですが、石ノ森先生はことあるごとに「ライダーは基本的には怪人と同類」とおっしゃっておられました。ですから仮面ライダーが正義なのは、その出自・ルックスのゆえではなく、行為のゆえということ。この点が『クウガ』に忠実に受け継がれた点です。

まずオリジナルのデカ丸の目。そして復活した場所が埋葬所や教会の側であることも、死体→ドクロを連想させます。
そしてはやくも初期の段階で、クウガもまた正義の化身でもなんでもなく、単なる「戦うための兵器」であることが明らかになります。さらにはパワーアップするにつれその破壊力は甚大なものとなり、力が極限に達した時、世界に終末をもたらすほどの存在であることも明かされます。この究極体のクウガは全身真っ黒であちこちとんがっており、どうみても悪の怪人といったデザイン。むしろ宿敵である0号=ダグバの方がカラーといい、スタイリッシュなデザインといい、正義の味方然としています。なぜ製作者たちはこれほどまでにクウガに負のイメージをちりばめたのでしょうか。

その答えは先ほども述べたように、「肝心なのは外見や環境ではなく、精神」ということを訴えたかったからでは、とわたしは考えます。「クウガ」はしょせん道具・あるいは手段にしかすぎません。それを弱者を守るために用いるならば、悪しき存在も正義の味方となりうるわけです。そして「クウガ」を用いる人間、五代雄介は幸いなことに、青空と笑顔を愛する純朴な青年でした。彼の体を張った行為により、人々は次第に「第4号」をヒーローとして認知するようになっていきます。そして五代の人を思いやる心は、最終的にクウガの究極の負の力にも打ち勝ちます。こうした展開から、わたしたちは「ひとはどんな厳しい環境にあっても、気高い精神を保つことができる」という結論を見出す事が出来ます。これは石ノ森先生のオリジナルでも描かれたことです。「体はもろくて弱いものだからな。・・・・だが精神は永遠不滅だ!」(原作『仮面ライダー』より)。
もちろん、心とて弱いものである時があります。むしろ、弱い時の方が多いかもしれません。しかし誰でも心を鍛えることにより、どんな逆境にも絶えることができる。英雄になることができる。そうあってほしい。・・・・・そんな願いをこの作品からは感じました。

次回はたぶん『クウガ』のテーマについて語る予定。

|

« 山田風太郎に関しては色々言わせてもらいたい③ 『甲賀忍法帖』 | Main | 福田己津央 『機動戦士ガンダムSEED』を軽くかばってみる 無印編 »

Comments

まいどです。
おっ、高野さんより先だ!
>ドクロ
「スカルマン」というのを書いていましたね。石森センセ。
>悪の組織が作った人間兵器
原点ではあるけどいまさらそれを、尊重しなくても作品は成り立ってるのが平成作品ですね(やや近いのもあるけど)。
>0号=ダグバの方がカラーといい、スタイリ>ッシュなデザインといい、正義の味方然
某「ウルトラマンガイア」のラスボスみたく
全力でつつけば本性が現れて
トンデモナイ奴が激進してくる~ってか。
見た目に騙されんぞ・・・・。
>究極体のクウガは全身真っ黒
>「肝心なのは外見や環境ではなく、精神」
目も真っ黒というのが究極の闇を・・・でした。
でも本編のは目が赤かった。
黒い奴と言うのはどうにもこうにも
「悪い奴」という負のイメージが
付きまといます。
最近は某キュアブラックとか黒いコスの
キャラも市民権を受け入れられる
時代になったようですね。
ただ、現実はフィクションのように
イメージ先行で決め付けられるのが多いですが・・・・・・。
>しかし誰でも心を鍛えることにより、どんな>逆境にも絶えることができる。
だからこそ我々は「響鬼」に期待したのだが
プロデューサーとかを鍛えなおさんとな!
ではでは。

Posted by: まさとし | September 29, 2005 11:31 PM

遅れてすいません。

>「スカルマン」

未読ですが、レビューは読んだことあります。ヒーローものというよりピカレスクな内容だとか。

>原点ではあるけどいまさらそれを、尊重しな
くても作品は成り立ってる

ですね。いま実は「改造人間」というのは差別問題にひっかかるらしく、テレビではむずかしいらしいです。

>某「ウルトラマンガイア」のラスボス

最初は観音様みたいなスタイルでしたっけ? 押入れを探せば録画したビデオがあるはずだけど。

>黒い奴と言うのはどうにもこうにも
「悪い奴」という負のイメージが
付きまといます。

それに怒り狂ったのがマルコムXなわけですが。
ご存知でしょうけど、ライダーシリーズではずばり『仮面ライダーBlack』というのがありましたね。宿敵の方が一般的にカッコイイ(銀色だし)のも『クウガ』と似ています。

Posted by: SGA屋伍一 | October 01, 2005 12:09 PM

マルコムXを見るとみその「マルコメ」を
マルコメのパッケージを見ると
「マルコメX」・・・じゃなかった
「マルコムX」を何故か思い出すまさとしです。
この単語が出たらいつか誰かにばらしてやりたいと思っていただけです。すいません(笑)。
>仮面ライダーBlack
パワーかけると関節から煙出るあいつだ!
創世王(だったっけ?)をめぐり
「黒い太陽」と「月影」にされた2人の青年の
物語。「のぶひこ~」。
バッタバイクとピザの宅配便バイク2台保有したのもこのシリーズが初。
倉田てつをの主題歌が上手くないのは
内緒だぞ。「しんじるものはじゃすてぃす!」
月影は倒されたのに続編の「RX」では
甦ってしまいます。前作のような
葛藤が少なかったのが残念でした。
「RX」に出てくる光太郎のガールフレンド役は
私の高校(三年だけだったが)の先輩なのも
ないしょ。
ではでは。

Posted by: まさとし | October 03, 2005 12:17 AM

>マルコメX

いや、日本人ならだれでも一度はそう思うみたいですよ?

>パワーかけると関節から煙出るあいつだ!

そうそう。ヤカンのごとくシュウシュウと。そんな「なまもの」らしさが気に入っていました。一瞬だけ写る中間形体とか。細かいことをいうようですけど、バイク二台は「スーパー1」の方が先だと思いました。バトルホッパーはいいペット・・・もといバイクですね。
宿敵の方がスタイリッシュだったり、主人公ももともと世界を滅ぼす存在だったりするところは『クウガ』と似ています。

>倉田てつをの主題歌が上手くないのは
内緒だぞ。

いや、みんな知ってますから(笑)

>前作のような
葛藤が少なかったのが残念でした。

『RX』になると、作品のカラーといい、主人公の性格といい、完全な別物になってますよね。違う世界のはずだったのに、先輩ライダーも大挙して助けにくるし。
まあ、一応タイトルが変ってたのでそれほど腹は立ちませんでした。サービス精神の旺盛さは評価してあげたいです。

Posted by: SGA屋伍一 | October 03, 2005 09:39 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 平成ライダーの六年間を振り返る クウガ編②:

« 山田風太郎に関しては色々言わせてもらいたい③ 『甲賀忍法帖』 | Main | 福田己津央 『機動戦士ガンダムSEED』を軽くかばってみる 無印編 »