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September 21, 2005

面妖サスペンス劇場 ジェレミー・ドロンフィールド 『飛蝗の農場』

今日は2002年度『このミステリーがすごい!』海外部門第1位になったこの作品をとりあげます。話題になった時から読んでみたいとは思っていたのですが、文庫のクセに1060円という高飛車な値段のため、スルー。先日古本市で300円で売っていたので、すかさずゲットしました。

都会の生活に疲れ、ヨークシャーで農場を一人営む女・キャロル。ある雨の夜、彼女の家にいかにもワケアリそうな男が、一晩泊めて欲しいと頼みに来た。キャロルは、ついはずみでショットガンをぶっ放してしまう(怖い女だ)。幸い男の命に別状はなかったが、意識を取り戻した彼は、自分に関する記憶が思い出せないと言う。彼が結構二枚目であることに気づき、罪悪感も手伝って、男にどんどんよろめいていってしまうキャロル。奇妙な共同生活の中で、深まっていく二人の愛。しかし男は胸の内で、何かの影に必死におびえていた・・・・

物語はこの「本筋」の合い間合い間に、一見彼らと関係なさそうな幾つかのエピソードが挟まれた形で進行していきます。そしてそれらのエピソードの意味がわかり始めると、物語の緊迫感がグン、と増す仕掛けになっています。終盤には反則ギリギリの急展開もあり。個人的にこういうどう考えてもハッピーに終らなさそうなロマンス&サスペンスは嫌いなんですけど、さすがに『このミス』第1位。この奇妙な構成と巧みな語りでもって、500ページを一気に読ませます。
解説には「サイコスリラーの変化形」と紹介されていますが、わたしはあまりそういう印象は受けませんでした。確かになかなか悪趣味な部分もあります。しかしその「悪趣味」はいたづらに視覚的グロさを強調するサイコスリラーのそれとは違います。なんというか、「わかっちゃいるけど抜け出せない」状態でもがきつづける主人公たちを、高みからケラケラとあざ笑う、そんな種類のものです。日本の作家でいうと、東野圭吾をさらにもう少し意地悪にしたような作風でしょうか。

それにしても、発酵食品よろしく危険な匂いをプンプン漂わせた男というのは、時としてオンナのシトの目にどうしようもなく魅力的に映るようですね。「ちょっとヤバげな香りがするけど、この突き刺すような味がたまんなーい」みたいな。・・・・だとしたら、オンナって?哀しい生き物よね。でも哀しいのは、オトコだってそう。オカマだって、きっとそう。なんだか酒が脳にまわってきたみたい。飲酒作文って危ないわよね。気をつけましょうっと。

『飛蝗の農場』は創元推理文庫より、(繰り返しますが)1060円で発売中。作者のジェレミーさんは他にも幾つか妙ちきりんなサスペンスを著していて、「創元社より順次刊行予定」と書いてあります。が、3年経ったいまでも、二作目が出たという話は聞きません。流れた、という線も考えられますが、そこは仕事のせっかちな(←イヤミ)創元社さんのことなので、きっとまったりのんびり翻訳中なんでしょう。

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