ライオンと少女 柳沼行・望月智充 『ふたつのスピカ』
ちょっと時間が経っちゃいましたけど、先日地上波で放映が終了したアニメ作品。
夏だからってわけじゃありませんけど、みなさんは「あの世」の存在を信じますか? わたしは信じてません(笑)
かつて天国は空の彼方にあるものと思われていました。しかし宇宙科学の発展により、空の向こうには果てしない空間が広がっているだけ、ということがわかってくると、天国はだいぶ肩身が狭くなってしまったようです
そんなご時世にあって、堂々と「宇宙と幽霊」を両立させた作品が、この『ふたつのスピカ』。原作はコミックフラッパー連載中の漫画です。
かつてロケットの打ち上げ失敗という、悲惨な事故のあった町、由比ヶ浜。そこで生まれ育った少女アスミは、宇宙飛行士だったという、ライオンの着ぐるみをかぶった幽霊と知り合う。「ライオンさん」と仲良くなったアスミは、自身も宇宙へ行く事を夢見る。成長したアスミは宇宙時代へ向け創設された宇宙専門学校に入学。夢の実現に一歩づつ近づいていく。
お目目の大きな可愛らしい少女が主人公なので、最初に聞いた時はいわゆる「萌え系」作品かとおもったんですが、なかなかどうして、しっかりしたドラマになっています。周囲から変わり者扱いされたり、理不尽な妨害にあってもひたむきにがんばるアスミの姿には、30過ぎた野郎にも、胸が熱くさせられるものがあります。恥ずかしながら幾つかのエピソードでは、感極まって鼻水がブシュッと吹き出てしまったこともありました。こういう作品というのはさじ加減ひとつで、うざったくなったりあざとく見えたりするものですが、本作にかぎってはそういう印象は受けませんでした。スタッフの熱意のせいか、自分の感性にあっていたせいか。ただ最近は、いたいけな子供にいじらしいこと言わせたりするのは、それだけで反則じゃないか、という気もいたします。つまり、そういうものに極端に弱くなってしまったということです。・・・・・・ワシもトシかのう。アスミの声をあてているのはクレヨンしんちゃんでおなじみの矢島晶子女史。この人もそれなりの年齢のはずですけど、最近益々ご活躍のご様子。
影となり日向となりアスミを励ます「ライオンさん」が、またあったかくていい。タイトルの「ふたつ」というのは、恐らくアスミと、このライオンさんのことかと思われます。しかし幽霊はやがて成仏せねばなりません。そこでこのライオンさんの代わりになる者として、マリカという少女が登場します。アスミをハイジとするならば、マリカはさしずめクララ。・・・・ずいぶんとひねたクララではありますが。謎多いこの少女が徐々にアスミに心を開いていくところも、物語の魅力のひとつです。
アスミの級友となる府中野とシュウも、印象深いキャラクターでした。方やぶっきらぼう、方やナンパを気取りながら、胸のうちには熱いものを秘めている。「お前ら未成年のくせになんでそんなにかっこいいんだ!」と叫びたくなる事もしばしばでした。
惜しむらくは、原作のストックがあまりない状態でアニメ化を進めてしまったせいか、まだ十分語る余地があるのに終了してしまったこと。自分としては、アスミと仲間たちの活躍をもっと観ていたかったんですが・・・・・。「原作買え」ってことか? これは。
宇宙飛行士の中には、遊泳体験を通してなにかに目覚めてしまい、帰還してから信仰の道に入る人もけっこういるとか。「あの世」とはともかく、信仰と宇宙の両立はそんなにむずかしくはないようです。
Comments
>「あの世」の存在
はい、信じてたことありますよ。
今でも否定はしません。
>天国はだいぶ肩身が狭くなって
>しまったようです
信じる限り「心の中の天国」はいつでも無限大
>「萌え系」
すごくまじめな話だと思ってた。ややファンタジーを交えて・・・。
>いたいけな子供にいじらしいこと
>言わせたりするのは、それだけで
>反則じゃないか
はい、ですからまさとしはいまでも
泣き虫ですよ(笑)。
実は一巻ぐらいしか読んでないのでなんとも言えないのですが、機会あらばまとめて読みたいと思う作品です。
Posted by: まさとし | July 06, 2005 09:50 PM
>すごくまじめな話だと思ってた。
確かにギャグは少ないですね。でも息苦しくなるということはまったくありませんでした。「ライオンさん」自体をギャグとみること向きもあるかもしれませんが。
>はい、ですからまさとしはいまでも
泣き虫ですよ(笑)。
涙は心の汗です。たっぷり流しましょう!
ただ、自分の場合、涙より鼻水が出るのでちとバッチィです。
>実は一巻ぐらいしか読んでないのでなんとも言えないのですが、機会あらばまとめて読みたいと思う作品です。
さすが。チェックしておられましたか。いまのところ7巻くらいまで出ているようです。自分も読みたいけど、買いかけのコミックが最近多くて。
Posted by: SGA屋伍一 | July 07, 2005 07:13 AM
これについては自分のところでも触れようと思っていたのですが、「プラネテス」に続くNHK宇宙アニメの第二弾ですね。どちらも質が高く、楽しめました。一つ難を言えばライオンさん、かぶり物をした上からハーモニカを吹くって言うのは、いくら幽霊だからってどうかと思いますがね。
最近は原作マンガの前の方だけをアニメにするって言うのが流行っているのでしょうか。「エマ」もそうでした。予算の関係で質を高くするため、短いのかなと思ったりもしましたが。
Posted by: かに | July 10, 2005 12:02 AM
遅ればせながら、ライターデビューおめでとうございます。
>かぶり物をした上からハーモニカを吹くって言うのは、いくら幽霊だからってどうかと思いますがね
そういえばそうでした。霊力で吹いているのか(笑)?
>最近は原作マンガの前の方だけをアニメにするって言うのが流行っているのでしょうか。
単に漫画原作の青田買いが著しいのでは。『スピカ』はよかったですけど、大抵尻切れで終る場合が多いですよね。漫画原作アニメは星の数ほどありますが、高い完成度を誇るのは一握りじゃないでしょうか。
終了から少し経っちゃいましたが、できたら、かに様のレビューも読んでみたいです。
Posted by: SGA屋伍一 | July 10, 2005 10:00 PM