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July 03, 2005

岡山少年野球団 入学編 あさのあつこ 『バッテリーⅡ』

先日紹介した話題作『バッテリー』の続編。自分のピッチャーとしての才能に強烈な自信を抱く少年、原田巧。引越先の新田で、同じく野球に情熱を燃やす永倉豪と運命的な出会いをした彼は、豪と共に中学校に進学する。いまだ旧弊的な風習が根強い学校や野球部にあって、巧の自我は激しく対立する。果たして巧は己を貫く事ができるのか。

正直前作を読んだ時、それなりに面白い作品だと思ったし、丁寧な筆致に好感も抱きました。しかしなぜこの作品が児童文学のワクを飛び越えて、ここまで熱い支持を受けるのかはよくわかりませんでした。
でも今はわかります。この作品は面白い。そして熱い。扱っている題材は相変わらず地味ですし、破天荒な展開があるわけでもありません(ちなみに今回も試合のシーンはなし)。けれど1度ページを開いたら、最後まで読まずにはいられない。これほどな吸引力は実に久々に感じました。なにがそんなに面白いのか、自分でも理由がよくわかりません。考える間もなく、ぐんぐんと引きずりまわされてる間に終ってしまった、そんな感じです。
冷静に振り返ってみるならば、この作品の魅力は、やはり主人公・原田巧の魅力にほかなりません。この原田少年、あまりとっつきやすいタイプではありません。他者が傷つごうがなんだろうが、自分の意志は絶対に通す。相棒の豪や作者ですら、時として「お前、最低だよ」と言いたくなるほどに、傲慢な少年です。
なぜ作者はそんな可愛げのない少年を主人公にすえたのでしょう。普通なら周囲と触れ合うことで、人間的な成長をとげていく、というのが定石です。けれど巧は二巻終了の時点で、全くそういった成長をしていません。作者はこう言います。「それでも巧を変えることはできなかった。傲慢で稚拙なままでなければ、(略)この物語は放り棄てられた空き缶ほどの価値もなくなる。『バッテリー』を少年の成長物語など言わせるものか。友情物語などに貶めたりしない。絶対にしない。」
わたしたちは皆生きる上で、必ずどこかで妥協をします。自分など、それこそ妥協の連続です。そうやって妥協する事が、変る事が成長なんだと心に言い聞かせて。しかし心のどこかで、変らない事に、わがままと思えてもひとつの思いを貫くことに、強い憧れを抱いているのも事実です。
野球部の先輩や顧問に反抗的な態度を取りつづける巧。形だけでも頭を下げればそれで済むのに、それができない巧。そうしつづけていればやがてホサれるのは目に見えているのに、彼は「おれのこの球なら、やつらは必ずおれを使わざるをえなくなる」ことを信じて疑いません。
私自身、巧のような少年には苛立ちを覚える年齢になっていますし、「世の中そんなに甘いものじゃない」と言いたくもなります。その一方で、巧が力尽き崩れ折れる所など見たくないし、突っ張るなら突っ張りとおせ、と強く思わずにはいられません。
彼がどこまで自分を貫くことができるのか、最後まで見届けてみたいと思います。

もう一度言います。この物語は絶対に面白い(獏さん調)。これから読まれる方は、是非二巻まで一気に読んでみることをおすすめします。

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