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July 17, 2005

HARD PUNCHER モ・シュクラ  クリント・イーストウッド 『ミリオンダラー・ベイビー』  

イーストウッドにネタぱくられた・・・・ 畜生、訴えてやる!
なんてアホはさておき、アカデミー賞4部門に輝く『ミリオンダラー・ベイビー』について語ります。もう公開あらかた終了してるようですけど・・・・

腕はあるけど金はない、老トレーナー・フランキー。彼のジムに、ある日マギーという女が入門に来る。「女はみない」とにべもなく断わるフランキーだったが、彼女の熱意に根負けして、トレーナーを引き受けることに。自分を慕うマギーに、フランキーはいつしか疎遠になっている娘の影を重ねあわせていく。年齢のハンデをものともせず、マギーは連勝街道を驀進。ついには百万ドルのかかったタイトルマッチに挑む、 の  だ  が。

イーストウッドってよくわからない人です。ハリー刑事のころは「てめえらに人権なぞねえ!」って感じで悪党をパンパン撃ち殺してたくせに、近年は人の命の重みを問うような作品を多く手がけています。『許されざる者』しかり、『パーフェクト・ワールド』しかり。
この『ミリオンダラー~』でもやはり同様のテーマが、「暴力のもたらすリスク」と共に語られます。フランキーはしきりに「自分を守れ」とガードの大切さを説きます。しかしディフェンスばかりしていたのでは、教育的指導の累積で負けてしまうのは必定。自らを危険領域に投げ出さなければ、到底勝つことは出来ません。マギーはどうしょうもない家族への愛のため、そのリスクを進んで受け入れます。

「夢を追う」とは聞こえのいい言葉です。ですが、その「夢」の中には他者を蹴落としでもしないかぎり得られない物も数多くあります(この辺をまざまざと見せ付けてくれたのが、漫画『ベルセルク』)。自分が蹴落としている側にいる間はまだいいとして、戦いつづけていればいつかは蹴落とされるわけです。そうなった時、人は自分の置かれた状況を直視できるでしょうか。

後半は某文豪の某短編のような(と書いただけで、勘のいい方はピンとくるだろうな・・・・)息苦しい展開がえんえんと続きます。ここにきて、わたしたちは「自分を守れ」というフランキーの言葉の重みを、つくづく実感させられることになるわけです。けれどわたしにはどうしても、イーストウッドが「分不相応な望みなど抱かず、てめえの穴倉でじっとしてろ」と主張しているとは思えないのです。でなければ、黙々とトレーニングに励み、リングの上で奮闘するマギーの姿を、あんなに美しく撮ったりはしないでしょう。「夢を追うのは、やはり美しい。」どれほどの犠牲を払ったのかはわかりませんが、自身も底辺を這いまわり、そして夢をつかんだクリントさんなら、きっとそう言うことでしょう。
胃袋にズシリとくる、ヘビー級の一本。非常に優れた作品だと思いますけど、わたしはもう二度と観ないと思います。

この作品、PG12指定になってましたけど、なにがいけなかったのでしょう。女性ボクサーの筋肉がセクシーすぎたからか。対戦相手の鬼気迫る形相がおっかなすぎたからか。
どうでもいいことですが、わたしには主演のヒラリー・スワンクさんにクリソツな知り合いがいます。彼女は鼻の真下に腫瘍をこさえてけっこうな手術をされたと言ってましたが、ヒラリーさんも劇中とはいえ、鼻骨をボッキリ折っておられました。どうもこの手の人相の方は、顔面に災難を受けやすいようです。「それ系」の顔の方、どうぞお気をつけください。

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Comments

前作の『ミスティック・リバー』でも感じたのですが、
どれだけ前向きに生きていたとしても、
理不尽なことが人生の中ではいくつか起こって、想像以上のリスクを背負うことがあって、
自分の大事なものを守る為に究極の選択をしなければいけない時があって、
その後残された者が背負う罪の大きさは他人が考える以上に重くって、
死んでいくものも苦しいけど、生きていく人間はもっと苦しくって・・・・・
うっっ、まとめられない(苦笑)。
とにかく、プラマイゼロの人生をどう生きるか、善悪別にして大きな事を成し遂げた人にしかわからない何かがそこにあるような気がするのです。
だから私は年をとってから、もう一度見てみたいんですよねぇ。

Posted by: ハル | July 19, 2005 at 01:39 AM

>死んでいくものも苦しいけど、生きていく人間はもっと苦しくって・・・・・
同感です。果たして一人姿を消した彼はその後どうなったのか。順当なら警察に捕まると思うんですけど。語り手が「おれはこんな風に想像する」と言ってましたが、その想像のとおりになってたらいいな、と願わずにはいられません。
あのバカ家族はどうでもよし。
>大きな事を成し遂げた人にしかわからない何かがそこにあるような
安穏と生きている身としては、うらやましいと同時に、「こんなんじゃいけないなあ」と思わされます。

Posted by: SGA屋伍一 | July 19, 2005 at 09:56 PM

 トラックバックしていただいてありがとう。わたしのブログを読んで物足りなかった方はきっとこれでほっとすることでしょう。映画の感想が、クリントさんの皺が見れたのがよかったってんじゃあ、あんまりですもの。
 お二人のコメントを読んでいて思ったのは、30代の前半というのは、たぶん一番人生とか生き方とかなんのために生きるのかっていうことを深く考える時期なんだろうなあということでした。20代は突っ走って終わるけど、30代だとそうはいかなくなる。40代になると先が見えてくる。だから、この映画の主人公も30代の設定だったのだと思います。
 なんだかすっごくシビアなコメントになってしまいました。ははは。ではまた。

Posted by: kakakai | July 20, 2005 at 08:45 PM

>クリントさんの皺
スクリーンだからこそにじみ出る男の苦悩ですね
>30代の前半というのは、たぶん一番人生とか生き方とかなんのために生きるのかっていうことを深く考える時期なんだろうなあということでした。
・・・・すいません。あんまり深く考えてません(笑)。
>40代になると先が見えてくる。
そうかあ。その「先」には光輝くなにかが見えるんだろうなあ。楽しみだな!40代!
きっとあっという間だろうな、という気はします。

Posted by: SGA屋伍一 | July 20, 2005 at 10:08 PM

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2004年度アカデミー賞の作品賞、監督賞(クリント・イーストウッド)、主演女優賞(ヒラリー・スワンク)、助演男優賞(モーガン・フリーマン)を獲得した心の奥にズシっとくるドラマ。静かな涙が流れていました。ボクシングのトレイナーでありジムを経営しているフランキー(クリント・イー... [Read More]

Tracked on July 19, 2005 at 01:44 AM

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