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June 15, 2005

果てしない百物語 富樫倫太郎 『陰陽寮』

あああああああああ! 終ったああああああああ!
先日、最終部となる9,10巻をもって、富樫倫太郎先生の超絶大伝奇絵巻『陰陽寮』が完結いたしやした。足かけ六年間、どうもお疲れ様でした。このシリーズについては前から当ブログで「終われ終われ」と言っておりましたが、まさかこんなに早く終るとは思ってもみませんでした(笑)。いやあ、なんでも言ってみるもんですねえ。
時は平安、藤原道長が台頭してきたそのころ、西国より恐るべき報せがもたらされた。大陸の異民族、刀伊が都に向かって攻め寄せてくるという。彼らの目的は不死の秘密を知るという、“来流須”の民を手中に収めることだった。この情けを知らぬ異民族に、希代の陰陽師・安倍晴明と逞しき武者たちが立ち向う。
物語はこの安倍晴明と、都の浮浪児・鬼道丸の一党、それに宮廷に仕える女官・杏奈を中心に進んでいきます。いくんですが、他にも多種多様な登場人物&怪物が出たと思えばひっこみ、お互いくんずほぐれつ入り乱れて、さながらお伽噺のバトルロワイアル状態となっております。例えば他にどんなもんが出てくるかというと、晴明のライバル葦屋道満はもちろん、渡辺綱、坂田金時、清少納言、徐福、シヴァ、セトetcetc・・・・ ははは。思いついたもん全部ぶちこんだれや、くらいの勢いです。
この物語のタイトルは、恐らく編集者が夢○獏先生の某人気シリーズの向こうを張って付けてしまったのでは、と憶測しているのですが、恐らくこちらはそちらよりも、はるかに収まりの悪い小説だと思います。富樫さんという方は、どうもプロットをおおまかにしか決めずに、あとはその場のノリで書き進めていくタイプらしいのですね。そういう感じでぐんぐん書いていったら、思わぬ方向へ筆が走ってしまい、「ありゃ-こんな展開にしちゃってオレどうすんだよ」と四苦八苦してる様子が目に浮かびます。なんせ御作者自ら、「どうしていいかわからず途方にくれていた」なんてことを後書きにかいておられますから。しかしそうしてノリのままにつむがれた物語というのは、時として並々ならぬエネルギーを発して、読者をひきつけます。そう、かつての(今も?)少年ジャ○プのように。
少年ジャ○プと言えば、この話のキャラというのはみな類型というか、変化しません。ヒーローはどこまでもかっこよく、ヒロインはひたすら可憐。悪人は果てしなく極悪で、無敵のはずの晴明はしょっちゅうピンチに陥っては、わたしたちをハラハラさせます。ここまでコテコテでいながらこんなに面白いのは、やはりそれが物語の王道だからか、はたまた作者の力量によるのか。
で、この度出された最終巻ですが、出来はどうだったかというと、またしても寄り道が多すぎて、わたしがもっともひいきしている鬼道丸のパートに行くまで時間がかかるのが不満でした。盛り上がりもどちらかってえと4,5巻のほうがあったんじゃないか、という気もしないではありませんが、今は素直にあれだけ八方に広がっていった物語が、なんとか完結したことを喜びたいと思います。なんだかんだ言って、この4年間一年に一度の新刊を待ちわびながらこの小説を追いかけていった自分は、読者としてほぼ理想に近い仕方で楽しむことができたんではとも思いますし。八割方のキャラが収まるところに収まったのに対し、問題が全然解決してない人もいるんですけど、それは恐らく近々始まる『新・陰陽寮(仮)』でなんとかなるでしょう。
そういうわけで『陰陽寮』は本伝が全10巻、外伝がいまんとこ3巻、トクマノベルスより出ております。外伝は『陰陽寮外伝一』と銘打たれているものを、9巻の前に読んでおかれることをオススメいたします。

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Comments

…あ。読まないでいるうちに完結してくれた(笑)
どうも、今日の「その歴」にカユがってる高野です。
いやしかし。リアルで追うってのに慣れてないもんで、一旦終わりが見えて有難いです。
でも、何だよ刀伊って!(笑)クルスって!(笑)あの「ぷるーと」みたいじゃないですか!
…うーん、『函館売ります』が死ぬほどまともなだけだったんだ、この人…(笑)
シヴァ、セトに至ってはもう…(笑)
逆に、どんどんわかる人しかついてこれないバトルロワイヤルになってますね。
歴史雑誌で出ただけあって、そもそも刀伊ってとこからしてマイナーなツボから来るよこの人は(笑)
あっそうか。メジャーではなくかといってドマイナー過ぎない線を持ってきて、以後ずーっと煙に巻く作風なのかな。徹頭徹尾ケムマキ。
しかし、『新』もあるですか。うーん。
山風が終わったら…読めるかなぁ…(^^;)

Posted by: 高野正宗 | June 15, 2005 at 09:48 PM

こんばんは。
>刀伊
自分はこの本でしか読んだことがありません。
>、『函館売ります』が死ぬほどまともなだけだったんだ
あと『風狂奇行』という伝奇もまともみたいです。まあ、『陰陽寮』の方は細かい突っ込みはよして、少年マンガのノリで楽しんでください。
>、『新』もあるですか。うーん。
正式な声明はありませんが、放置キャラについて「なんとかする」みたいなことを言っていたので。
で、物語はこのあと『地獄のよき日』『雄呂血』『殺生石』へとつながっていきます。

Posted by: SGA屋伍一 | June 15, 2005 at 10:33 PM

おはよう…あっ、午後になってる(休日はいつもだ)、高野です。
『陰陽寮』外伝が図書館にないや…買わせるか他区から取り寄せさせます。とりあえず本編を1から何冊か読んでみますね。
「陰陽寮」で検索したら『晴明百物語』が出てきた(つまり所蔵されている)のですが、これは外伝とは違うのでしょうか?

Posted by: 高野正宗 | June 18, 2005 at 02:56 PM

感想お待ちしてます。
『晴明百物語』ですけど、ちょっとややこしくていまのとこ出てるのは
・陰陽寮外伝一 晴明百物語
・晴明百物語 列願鬼
・晴明百物語 八百比丘尼
の三冊です。「外伝」と銘打たれているものは最初の1冊だけで、じゃあ後は関係ないのかというと、かなり関係あります。
でもストーリーを追うのに必要なのはやっぱり『外伝一』だけかな。

Posted by: SGA屋伍一  | June 18, 2005 at 09:48 PM

…というわけで、8までと外伝一を読みました。
いや~。力技です。読む方も体力です。
誰に思い入れしたらいいかわかんないのがツラいところですが、一応晴明おっかけてってます。
外伝の義仲が強烈。これまた王道に外道(笑)

Posted by: 高野正宗 | July 07, 2005 at 10:37 PM

おつかれです。
あの弁当箱を一気に平らげるのは確かに骨でしょうな。
>誰に思い入れしたらいいかわかんない
わたしはやっぱり鬼道丸ですね。いかにも少年マンガの主人公です。他には藤原保昌&袴垂の主従コンビが気に入ってます。

Posted by: SGA屋伍一  | July 08, 2005 at 07:24 PM

…というわけで、しつこくまたTBさせて頂きました。m(__)m
外伝3冊ともすんごく面白かったですよ。特に、『烈願鬼』。いい話だ~~~。
トガちゃんは、家族モノがいいぞ!

Posted by: 高野正宗 | July 08, 2005 at 11:13 PM

TBたくさんありがとうございました。
本当はわたしももっと小分けにして、丁寧にやりたかったんですがね~

>列願鬼
>いい話だ~~~。
・・・・そうでしたか。わたしはむしろ列願鬼の底意地の悪さの方が印象に残りましたが。晴明にやっつけられないかな~、こいつ。
「外伝一」の方は、なかなかいい話ですね。

Posted by: SGA屋伍一  | July 09, 2005 at 07:54 PM

こんばんは~。
取り急ぎ、TBなのですが、どうして2重になってるかと言いますと、TB先の私の記事自体がエラーで同じものが2つ投稿されており、1つを消したのですが、こちらのTB記録には残ってしまっているのです。
なので、右サイドバーの「最近のトラックバック」で2つ出ているうち、下の方(古い方。クリックしても、すでに記事が消されているので「ページが見つかりません」と出ます)を削除お願いします。

Posted by: 高野正宗 | July 11, 2005 at 10:33 PM

やっときました。

高野様がお休みの間に、わたしはゆっくり追いつくことにいたします。

Posted by: SGA屋伍一  | July 12, 2005 at 07:14 AM

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