ブラックキャットにもういっぺんよろしく 杉作 『クロ號』完結編
はじめに。今回は完全に『クロ號』の結末をばらしてありますので、「これから読もうかな」と思われている方はご遠慮ください。また「『クロ號』ってなんじゃあ?」という方は当ブログで3月末に作成された記事「ブラックキャットによろしく 杉作 『クロ號』」(http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2005/03/post_16.html)をご覧ください。
「う~ なんでクロが○○なきゃならね~んだよ~ バカヤロ~」
う~ そりゃこっちのセリフだよ~ バカヤロ~
そういうわけで先日発売された第9巻をもって、杉作先生の大傑作『クロ號』単行本の方も堂々完結いたしました。
シビアな面もあるこの漫画なので、きっとラストもほろ苦い形になるんじゃなかろうかと考えていました。
予想としては
①クロが死ぬ
②チン子が死ぬ
③クロとチン子が捨てられる
④クロがどこかへ旅に出る
というとこだったのですが、本当はこのどれも当たって欲しくなかったんだよ~! いつものようにほのぼのとした日常のまま終ってほしかったんだよ~! 「せめて④くらいでなんとか」と思ってたのによ~! あ~ ちくしょ~!(号泣)
最終話近く、クロはあることで一つの罪を背負ってしまいます。その罪を必死に償おうとしたクロ。しかしその結果はあまりにも厳しすぎるものでした。
しかしクロはその結果がわかっても決してジタバタません。むしろ従容として、来るべきものを待ち受けます。その前に自分の務めをちゃんと果たして。そう、猫は悲しくても涙を流したりはしない。切なげに鳴くか、じっと耐えるだけなのれす。
悲しいのは飼い主であるヒゲの方。こいつ(失礼)はどちらかというと、クロにひっかかれている場面の方が多かったはずなんですが、クロの死を目前にして、情けないほどに取り乱します。連載分でのラストシーン、泣きつかれて寝ている彼の姿には、本当に胸をつかれるものがあります。
そう、もっとはやく気づくべきでした。連載時目次のコーナーでいつも「チン子が」「チン子が」と書かれているのに、クロのことは一回も書かれていなかったことに。
この最終第9巻には、連載分のさらにそのあとのことが書かれた、「完結編」が十数ページに渡って付け足されています。そしてこの完結編の最後のページを見るとき、わたしたちは『クロ號』という珍妙なタイトルの意味と、この作品が最初からクロにむけて書かれたレクイエムだったことがわかるようになっています。なんとも心憎い、つーか小憎たらしい演出じゃあーりませんか。
クロは生前「人間なんて、飼っている猫が死んだとしても、すぐに代わりを見つける薄情なやつら」みたいなことを言っていたけど、ヒゲ(たぶん作者)は君が死んだあとも、ずーっと君のことを忘れないでいるいんだよ、クロ!
ついでなのでこのマンガのもう一匹の主役であるチン子のことにも触れておきましょう。「小んこいから」ということで、あまりにも呼びにくい名前を付けられてしまったチン子。その名前がよくなかったのか、兄貴よりもはるかに喧嘩がつよくなってしまったチン子。回りのことなど「どーでもいーわ」という顔をしながら、いつもみんなのことを、こっそり心配しているチン子。メス猫だけど、その男気にはマジで惚れます。「チン子長生きしろよ。クロの分まで」ヒゲのこの言葉は、このマンガを愛した読者みんなの気持ちであるにちがいありません。
杉作先生は近日発売中の時代マンガ専門雑誌『乱』にて新作を発表予定。『ロッキー』もあるけど、こちらも楽しみに待ちたいと思います。
以前実家で飼っていた猫のシル助が死んだとき、いつも「猫なんかきらいだ」と言っていた父が、「ショックだ」ともらしていたのには感動しました。でもその後に「オフクロが死んだときよりも」とつぶやいたのには、さすがに人間として問題だと思いました。
Comments
ああああああああ、クロー!(ToT)
実は最終回いまだに読んでないんですけど(ぉぃ、この作品、カワイイようでいて、初回から「死」の影があちこちで顔を覗かせてるんですよね。
私が一番ぞっとしたのは、クロたちが子供をさがしていると、子供達の気配はするけど姿はどこにも見えない場所にたどりついた話。
そこがどこだかクロたちが理解していないのが余計強烈でした。
ちなみに、クロの元になった短編では、死んでしまうのはクロではなく・・・続きは以下のURLへどうぞ。
杉作氏のアシスタントさんのページの一部です。
http://sugikuri.hp.infoseek.co.jp/imo-1p.htm
さて、いそろくさんのとこでもお願いしてきたのですが、うちのブログにMusical Batonというのがまわって来ました。
Musical Batonについては、
http://d.hatena.ne.jp/keyword/Musical%20Baton
よろしければバトンを受け取ってもらえませんでしょうか。m(_ _)m
Posted by: 淳庵 | June 27, 2005 10:38 PM
>ああああああああ、クロー!(ToT)
だからちゃんと最初に警告しといたのにィ(笑)
淳庵様は3巻以降は持っておられないとのことですが、まあ良かったらこの最終巻だけでも読んでみてください。
>子供達の気配はするけど姿はどこにも見えない場所にたどりついた話。
わたしはそんなに怖くは思いませんでしたけど。実はあの場所ですねえ・・・・おっと、内緒内緒。
>クロの元になった短編
『イモウトヨ』ですね。存じております。実は最終巻の末尾に収録されております。杉作先生のHPのカレンダー、いいですね。
淳庵様のお宅に「今月の『乱』、『クロ』かと思った」とありましたけど、ヒゲオヤジがちっこいのにいいように振り回される様は、ホントそのとおり。
>Musical Baton
なんか流行ってるみたいですね。止めちゃってもいいのなら、次の掲示板でお答えしますけど。
Posted by: SGA屋伍一 | June 28, 2005 10:19 PM
今日、最終巻買って参りました。
突然に、でも淡々と、最後の務めを果たして。
ふと、某有名ミュージシャンを思い出しました。
えーと、下手に言うとネタばれになっちゃから、クロはクロでもクロマティ高校にも出てるあの人。
猫と一緒にしたら失礼なんですけど、あの人も最期の日の前日まで、堂々と務めを果たして去っていきましたね。
おおお、載ってましたね。「イモウトヨ」。
失礼しました。
・・・うちの猫はチン子にそっくりなんですよ。
チン子と同じく避妊手術もしました。
ケンカは弱いけど。
物置で野良猫が産み落としていった(引越しの途中だった?)のを発見してから13年。
名前はまだない。
というか「ネコ」という名前(^_^;
これも当時、どこかでもらい手を捜すまで一時的に飼おう、という話だったのでちゃんとした名前をつけなかったのですが・・・。
長生きせぇよ。
さて、Musical Baton。
こちらから一方的に指名してしまった話ですし、もともと受け継がないのも自分のところで止めてしまうのも自由、という趣旨ですので、受け取ってもらえるのであればそれだけで感謝です。
Posted by: 淳庵 | June 29, 2005 12:07 AM
>クロはクロでもクロマティ高校にも出てるあの人。
「え! クロ高で誰か死んだのか!?」と早とちりしました(笑) 水星の人のことですよね。『ジェットストリーム』の名DJ、城達也さんもそんな感じで亡くなられたそうです。
>というか「ネコ」という名前(^_^;
何年か前の、「飼い猫のよくある名前ベスト20」みたいなので、「ネコ(無名)」というのけっこう上位に来てましたよ。同時にイヌ版もあったんですけど、「イヌ」という名は(ややこし)ランクに入ってませんでした。面白いですね。
最終巻買われたんですね。自分はクロが最後のパトロールによたりながら出かけるところと、ヒゲが泣きながらクロを桜の下に埋めるシーンが忘れられません。
Posted by: SGA屋伍一 | June 29, 2005 09:20 PM
完結編はもう全編、涙、涙ですね。
本編はクロが生まれる瞬間からまさに死ぬ瞬間まで、100%クロの視点で描かれているんですね。
でもやはり物語としては本編までだと(ある意味リアルではあるものの)中途で断ち切られたような感じ。
やはり、この完結編はすばらしいです。
で、結局全巻そろえました。(^_^;
>クロマティ高校
メカ沢君は何回か死にそうに(?)なってますけどね。
そうそう、ご存知とは思いますが、噂をすれば何とやら。
クロ高が大変な事に!
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050629-00000149-kyodo-ent
Posted by: 淳庵 | June 30, 2005 03:05 AM
>やはり、この完結編はすばらしいです。
同感です。連載分での傷心が、少し慰められるところがいいですね。
>で、結局全巻そろえました。(^_^;
責任感じるな(笑) でも、最近書店でどんどん見なくなってきているので、今のうちに押さえといて正解かもしれません。
>メカ沢君は何回か死にそうに(?)なってますけどね。
ていうか、あれはそもそも生き物なのでしょうか。
>クロ高が大変な事に!
見ました。これはやはり・・・笑うべきなのか・・・
Posted by: SGA屋伍一 | July 01, 2005 08:24 AM