« 今週(5/22)の『義経!』 | Main | はみだし刑事英国系 イアン・ランキン 『紐と十字架』 »

May 24, 2005

サイバラ・クロニクル・リターンズ 西原理恵子あれこれ

先ごろ、我らがサイバラ女王様が手塚治虫漫画文化賞を受賞されました。文化庁芸術メディア祭の賞とSGA屋漫画文化賞と、漫画文化賞のグランドスラム(はい、つっこんで)を達成なすったわけで、まずはめでたい。
その関連か知りませんが、先週のAERAで特集記事がありました。それによると、サイバラ作品は「無頼」と「叙情」からなるとありました。なるほど。
もっとも初期の作品は無頼一辺倒だった気が。自分から鉄板に突っ込んでいって、血をダラダラ流しながら、「オラア、おもしれえだろうがあ、笑えよ」と言っているような話が多かったっす(この場合鉄板というのは権威、バクチなど)。
その作風に変化がはっきり表れるようになったのは名作の誉れ高い『ぼくんち』のあたりから。この時期女王さまは結婚、出産、鬱と色々大変だったようです。とはいえこの作品も序盤は「無頼」よりのポジションでした。例えば主人公の少年二太は、仲のいいホームレスの老人と彼のダンボールハウスをこしらえる。しかしそのハウスは宅地造成のため、ブルドーザーであっと言う間にペシャンコにされてしまう。泣きじゃくる二太。しかし老人はブルドーザ-を盗んで闇ブローカーに売り払い、もっと立派なハウスをこしらえてしまう。こういう不幸も無頼と笑いで吹き飛ばすようなカラーが好きでした。ところが中盤あたりから、それだけではどうにもできないような不幸が二太と周辺の人々に次々と降りかかる。結局「笑いで乗り切るしかない」という結論で物語は終るが、なんともやりきれないものが心に残りました。
「泣かせ」の上手い作家(他に浅田次郎、浦沢直樹など)って嫌いです。自分がやすやすと計算に乗せられてしまうのがしゃくだからです。と言いつつもちょくちょく本棚から引っ張り出してその度に涙ぐんでいるのは、結局「好きだから」なんじゃないのか? ああもう! 自分で自分の気持ちがわからない! イヤ!
近年女王さまはますます「泣かせ」がうまくなりやがりました。無頼系の作品にも上手に叙情のアクセントが織り交ぜてあり、それがまたお上手。
こないだ買いそびれていた『人生一年生 2号』をようやくゲットしました。ファン必携の濃いーい内容ですが、『毎日かあさん』で喜んでいる子供達は火傷必至の危険なブツでもあります。冒頭の『パヤオ親父船』には「ハシダサンイナイネー イラクイッター」なんてシャレにならない会話もありの。
わたしが一番やられたのは巻末の『波兎とぼく』。サイバラ兄の視点で描かれた、サイバラが産まれる前の話です。ここはまだるっこしい解説はやめて、セリフだけを拾っていきましょうか。
「お父ちゃんはお酒で頭をやられてしまって」「だからぼくがここでおさえんといかん。ここでがんばらんといかん」
「お父ちゃんは『また買うたる』『お前が一番じゃ』てゆってバンザイバンザイしてくれた」
「その日の夜中お父ちゃんはずっと包丁を研いでいた。目をとびでるくらいむいて」
「それでぼくはお父ちゃんの手をはなした。それでお父ちゃんは本当にダメになった」
「ボクは本当は、お母ちゃんと妹とそれからお父ちゃんの手をぜんぶにぎって それでどうにかやっていく方法が どっかにあったんじゃないかとずっと考えていた」
・・・・・・ああ~ も~ ちくしょ~ もってけドロボ~(号泣) 

|

« 今週(5/22)の『義経!』 | Main | はみだし刑事英国系 イアン・ランキン 『紐と十字架』 »

Comments

手塚治虫賞は「人生一年生 2号」で「ほしい」っちゅーてましたからねー。
「きたー」って感じですねー。
泣かせでいくと「上京ものがたり」と「女の子ものがたり」は、泣けちゃいます。

特に「女の子ものがたり」は「えらいことなったなー」って感じでした。

Posted by: やまわき | May 24, 2005 at 09:46 PM

どうもです。
>手塚治虫賞
候補には名前上がってなかったのに、あんたはどっから出てきた(笑)という感じでした。これでしりあがり先生や井上雄彦ともタメってことで。
>上京ものがたり 女の子ものがたり
は後者の方が好きかな。サイバラ版『スタンド・バイ・ミー』。やっぱり切ねえ話ですけどね~ AERAの記事ではきいちゃんとみさちゃんが実名でコメント寄せてました。すげ。

Posted by: SGA屋伍一 | May 24, 2005 at 10:25 PM

SGA屋伍一さまに教えていただいた西原理恵子氏。
想像以上に凄かったです。
で『ぼくんち』ですが、私は一太お兄ちゃんが好きかなぁ。
鶏肉に似たかけらを拾ってきて、お葬式ごっこをする二太を心配する一太に優しさを感じてしまいましたもの♪
>結局「笑いで乗り切るしかない」という結論で物語は終るが、
>なんともやりきれないものが心に残りました。
後姿の鼻水は見せても、涙を見せないところが余計に苦しかったですわ。

Posted by: ハル | January 18, 2006 at 05:12 PM

おいでませ
>想像以上に凄かったです。
某書店のポップには「表紙からは想像できない内容です!」とありました(笑)

>一太にいちゃん
苦労して集めたお金でケーキを買い、それを「二太からのプレゼントや」とお姉ちゃんにあげてしまう一太くん。泣かせますね。自分はこれほどいいお兄ちゃんではなかったです。ハンセー。

>後姿の鼻水は見せても、涙を見せない
ああ、俺がかの子さんを幸せにしてやりてえ! でもたぶん「あんたは自分のケツもふけん」とか言われてしまうことでしょう(笑)

Posted by: SGA屋伍一 | January 18, 2006 at 10:01 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/70832/4257858

Listed below are links to weblogs that reference サイバラ・クロニクル・リターンズ 西原理恵子あれこれ:

» 「まあじゃんほうろうき」(西原理恵子) [「いろいろ感想文」]
言わずと知れた、りえぞうちゃんの初期作品であり、代表作であります。全4巻やけど文庫なら全2巻であります。1巻目なんかあまりに初期なため、りえぞうちゃん自身の自画像もかたまっておらず(「ちくろ幼稚園」の最初のころ風)、真ん中あたりでやっとこさ見覚えのあるりえぞうちゃんが誕生してる状態なので、これを一気に4巻読むと、りえぞうちゃんの漫画家バブルの大山を一緒に体感してる気分になれるっちゅーもんでありますよ。「まあじゃんほうろうき」は麻雀パイも触ったことない状態のりえぞうちゃんが、麻雀を覚えていくさまを「近... [Read More]

Tracked on May 24, 2005 at 09:41 PM

» ぼくんち?〜?巻-スピリッツとりあたまコミックス- ★★★★(西原理恵子/1996〜1998年/カラー各79ページ/小学館) [ukkiki]
1巻第1話 〜ぼくのすんでいるところは―― 山と海しかないしずかな町で―― はしに行くとどんどん貧乏になる。 そのいちばん はしっこが ぼくの家だ―― 〜 から始まる、『ぼくん [Read More]

Tracked on January 18, 2006 at 05:14 PM

« 今週(5/22)の『義経!』 | Main | はみだし刑事英国系 イアン・ランキン 『紐と十字架』 »