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April 30, 2005

今ごろ『新選組!』番外編② 司馬遼太郎 『新選組血風録』

というわけで『血風録』です。もう一つの“司馬版新選組”ですね。
長編小説だった『燃えよ剣』とは異なり、こちらは様々な隊士の列伝というか、短編集です。時系列がまるでバラバラに収められているので、新選組の歴史をおおまかに振り返ってみてからトライされるのがよろしいでしょう。
他にも違う点をあげるとするなら、登場人物に対する距離感でしょうか。『燃えよ剣』では読んでいて土方に対する愛情がひしひしと感じられるのですが、こちらでは各編の主人公に対して「ちょっと冷たいんじゃ」と思ったとが何度かありました。あんまし言うとネタバレになりますが、「・・・・・は死んだ」とあって、余韻をもたせることもなくすぐ終ってしまう。読者の感傷を拒絶しているような感さえあります。やはり司馬氏の手による短編集『幕末』もそんなテイストでした。
新選組の特長の一つにいわゆる「血の粛清」があります。退けば切腹、進めば斬り死にというあまりにも過酷な環境。本書では「血風録」とあるように、新選組の持つ、そんな血生臭い一面がよく現れています。また、どこに裏切り者がわからないという緊迫感も常にあります。ハンパな私立探偵が裸足で逃げ出すくらい、ハードボイルドな世界なんですね。
例えば「弥兵衛奮迅」というエピソードに出てくる富山弥兵衛の生涯は、固ゆで卵どころか、重金属なみにハードです。事実は時として、フィクションを軽く越えてしまうということを実感させられます。本当にこんな人がいたんだなあ、と。
そんな中にあっても、たまにひょうひょうとしたユーモアが漂っているのが多少救いになっています。やけに念入りにモチを焼いている土方とかね(笑)。くれるのかと思って手を差し出す山崎にむかって、「あげない」と言うとこがまた笑えます。
本書で目立っているのは、この二人の他にやはりというか、沖田総司。だけどこの沖田が、かなりヘンな奴なんです。芹沢排除決定のしらせを聞いたとき、「えー。芹沢さんかわいそう」と言ったすぐあとで、「でも最初の一撃はぼくがやりたい!」とぬかす。後半に入るとやや持ち直しますが、こんな変人に、よくあれだけ熱心なファンが付いたなあ、と思わずにはいられません。初期のドラマで沖田を演じた島田順司さんの功績でしょうか。
他にも近藤はもちろん、原田、永倉、斎藤、源さんがメインのエピソードもあります。観柳斎の話もありました。司馬先生と三谷さんでは、「へタレ」の扱いに大きな差があることがよくわかりました。
個人的には先にあげた「弥兵衛奮迅」と、山崎の皮肉な出自が描かれた「池田屋異聞」、近藤と沖田、それぞれの佩刀にまつわる物語「虎徹」「菊一文字」の4編が、とくに印象に残りました。
仮に幕末に生まれたとしても、絶対に新選組だけには入るまい・・・・そんな思いをいっそう強くさせられました。別項でも書きましたけど、夢を追うということは、本当に狂気と紙一重なんですねえ。

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Comments

どもです。
Kakakai様のブログでもSGA851様が仰ってましたが、「御法度」の原作は「前髪の惣三郎」ともう1つの短篇(いずれもこの作品集に収録)でしたね。
「前髪の~」のラスト一行は正に謎。
ドラマ版(渡哲也が近藤勇、中村俊介が沖田)では黒田勇樹君が惣三郎を演じ、最後の一行の解釈は…
「御法度」、これは土方をたけしが演じましたが、最後の一行の解釈は文字通り+沖田(武田真治)の判断、でした。
どっちなのか、未だにわかりませんね。

Posted by: 高野正宗 | May 01, 2005 at 10:30 PM

補足ありがとうございます。調べてみましたら、ご指摘のとおり『御法度』は「前髪の惣三郎」と、もう一本「三条磧乱刃」がベースになっているようですね。

>「前髪の~」のラスト一行は正に謎。
「胸中の何を斬ったのか、当の土方自身にもわからない。」
わたしは惣三郎の毒気に当てられてクラクラしちゃったので、シャキッとするために気合いを入れた・・・と解釈しましたが。単純にすぎるかな。
それにしても沖田。「あっ! 忘れ物しちゃった!」って感じでアレですよ。やっぱりヘンなやつ・・・と同時に怖いやつです。

Posted by: SGA屋伍一  | May 02, 2005 at 07:28 PM

やっと読み終えました!(・・;)
トラックバックしたいのですが、何を書いていいのやら……。

高野様の新選組通ぶりには恐れ入りますね。もちろん新選組だけじゃないですけど。……実は、「ゲド戦記」のこと書いたの気になってます。思い込みで絶対読んでいらっしゃるとふんだんですけど。「指輪」、「ナルニア国」とくれば……ねぇ。
ちなみに私は「影との戦い」は2度読んだのですがいずれも10年以上前のことでレビューは書けそうもないです。読み直そうか。全巻。

Posted by: kakakai | May 03, 2005 at 04:46 PM

こんばんは。
>kakakai様
いや~…通というか、割と、その名のつくものは、今度はどんな手でくるのかとかなり興味本位で見ているだけです(^^;)上記の渡哲也版などは、今回の大河で世間的にもやっと認知された実際の”若さ”に比べたら、笑っちゃうほど落ち着きすぎな近藤勇だし。見ちゃあツッコんでいるというだけで。
『ゲド』は頑張って読んだのですが、うすい記憶を掘り返してみれば、やはり『影とのたたかい』が一番よかったという身も蓋も無いことに。最後の方はネイティヴ・アメリカン的なフェミニズムにシフトしていっているし、突然新作(『アースシーの風』)が出るし!グウィン、元気ですなぁと思うばかりです。
『ナルニア』は、結構読むのに骨が折れました。どうしてか、指輪ならあの訳がいいのに、ナルニアは元が童話童話しすぎているのかしら。でも、確か『銀のいす』での、”現実と虚構”についての考え方には共感しましたし、あの長い名前のネズミ君の活躍には涙でした。
あれもシビアな話だったなぁ…。
というぐらいしか憶えてません(^^;)ええ!長すぎますってば!
オックスフォードで、トールキンとC.S.ルイスらが定期会合を持っていたパブの前を素通りしてしまった高野でした。

Posted by: 高野正宗 | May 03, 2005 at 09:47 PM

お二人まとめてで申しわけありませんが・・・
>ゲド戦記
『影との戦い』はいいですね。わたしは伝記では少年時代の部分に一番興味があるので。
隠喩に富んだ哲学的物語であると同時に、単純なエンターテイメントとしても面白い。「自分の敵は自分」というこの構図も、色んな作品に受けつがれています。
>ナルニア国
はノータッチ。来年の映画を楽しみにするとしますか。

Posted by: SGA屋伍一  | May 03, 2005 at 11:06 PM

今日、奈良に行ってきました。奈良公園。そこで、なぜか新選組のピンバッジのガチャガチャがあった。誠のはちまきとかも土産物屋で売られていた。壬生にあるのはわかるけれど、新選組新参者の私にはなぜ奈良にあるのかがわからない。なぜですか?
ちなみにピンバッジは6個持っています。

Posted by: kakakai | May 04, 2005 at 09:10 PM

ぶっちゃけ東日本の連中の中には、奈良と京都の区別がついていないような輩が存在します。まあ、たしかに隣り合ってるし、両方とも昔、都があった場所だし。そんな認識の甘さを見越した便乗商法じゃないかと。
えっと、鹿にセンベイをあげるのは・・・奈良ですよね?
トラックバックありがとうございました。

Posted by: SGA屋伍一  | May 06, 2005 at 08:34 PM

今日、御法度のDVD借りてきました。明日の夜見ることにします。
武田観柳斎男色説があって、河合の切腹の回の二人はけっこう触れあっていたとほぼ日の対談で八嶋氏が言ってました。
男だらけの社会だから、男色がはびこってもしかたがないってことですかね。

>鹿にセンベイをあげるのは
奈良です。しっかりとあげてきました。

Posted by: kakakai | May 12, 2005 at 09:09 PM

>御法度
ごらんになられましたか? この作品では新選組が例のダンダラではなく、黒ずくめの見慣れぬコスチュームを羽織っていますが、池田屋以降はむしろこちらの方をよく着用していたそうですね。後に明治高官が「遠くからでもあの制服を見ると震え上がった」と語っていたそうです。
>男だらけの社会だから、男色がはびこってもしかたがないってことですかね。
アメリカ西部開拓時代も、女性の数が少ないために「でもしか」ホモが多かったそうです。
>センベイ
どうもです。そう言えば「からくりテレビ」に出てる外人さんがこれの歌を歌ってたかな?

Posted by: SGA屋伍一 | May 14, 2005 at 08:07 AM

>御法度
ビートたけしの土方は最初違和感あったけど、徐々に引き込まれるうまさがある。
それにしても、みんなおじさんだ。
「三条磧乱刃」は印象に残った物語の一つでした。源さん主役でしたから。
っていうか、田舎の人は「村」としての結束を重んじるのだなあと。あの章の最後で井上源三郎を生かすために隊士を二人殺すことになった理不尽さを語っていたけれど、「身内」意識ですね。鎖国した日本の縮図のようです。
台詞の一つ一つが、ほとんど原作の通りなので、わかりやすい。思わず、本を出してきて拾い読みしてしまいました。

Posted by: kakakai | May 15, 2005 at 09:24 PM

>ビートたけし
ああ、そう言えばそうだった
非情な顔と無邪気な顔の両面を持っているという部分は、土方とかぶるかもしれませんね。でもやっぱりちょっと老けすぎ。
>あの章の最後で井上源三郎を生かすために隊士を二人殺すことになった理不尽さを語っていた
『プライベート・ライアン』で悩むトム・ハンクスのようです。ちょっと状況はちがいますけど。
この「身内意識」、司馬さんが作中でやんわりと批判してましたね。平助や永倉・原田が離れていったのも、これが大きな原因だったようですし。
>わかりやすい
大島監督というと芸術家、という印象がありますが・・・・ いまは何やってんだろ

Posted by: SGA屋伍一 | May 15, 2005 at 10:14 PM

幕末のドラマをするなら、登場人物は全て若い奴にやってもらいたいですね。刻々と変わる状況と、それに対応するスピード感、躍動感を出して欲しいと思います。
それはそうと、SGA屋伍一さんは、カープファンなんですね。良かった!! このブログの色からして、てっきりシャイアンツかと思っていました。
僕が、カープで一番好きなのは、前田。「わしはバラエティ番組でファンを喜ばすことはできんけん、プレーでがんばるしかないんじゃ」と宣言しているかのようなプレーぶりに惹かれます。今年は調子がいいようで、嬉しい限りです。
最後になりましたが、僕のブログへのコメントありがとうございました。

Posted by: 朝霧 圭太(矮人観場) | May 25, 2005 at 08:49 AM

どうもです。
>幕末のドラマをするなら、登場人物は全て若い奴にやってもらいたいですね
そうですね。演技力も大事ですけど、もっと大事なのは「熱さ」が表現できているか、ということでは。
>カープ
まあ試合の結果だけ見て一喜一憂している程度のファンです。あの資金力の無さに親近感を覚えます。
>前田
彼は「野球は好きじゃないけど、打つのは好き」とか言ったとか(笑)。大したやつです。毎年怪我をするのが泣かせどころです。

Posted by: SGA屋伍一  | May 25, 2005 at 09:30 PM

遅れ馳せながらやっとレビューしたのでTBさせて頂きました。醒め切った感想ですみません。
>くれるのかと思って手を差し出す山崎にむかって、「あげない」と言うとこがまた笑えます。
すんごいウケましたよね、あれ。
で、この話では、やはり大阪人には愛情を注いでるな~と思いました(笑)

Posted by: 高野正宗 | June 23, 2005 at 10:53 PM

>醒め切った感想ですみません。
いやいや、なかなか楽しませていただきました。後日コメントいたします。
>ヤマザキ
大河ではカラッとした頼れる男でしたが、『血風録』ではダークサイド咲かせまくりですね。『池田屋異聞』は裏忠○蔵ですよね。連中の義挙のおかげで、迷惑をこうむった人も少なからずいたという。このEPのラストで「ガハハハハ、ザマ-ミロ」と思ってしまった自分は性格に問題ありでしょうか。

Posted by: SGA屋伍一 | June 24, 2005 at 10:44 PM

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