正義の見方 アレックス・ロス 『JLA リバティ&ジャスティス』
はじめに謝っておきます。今回のタイトルはダウンタウンのコントからの完全なパクリです。
こないだゼンザイ先生から「君のとこのマンガネタは食いつきが悪いね」と言われました。大きなお世話です。そして今日も普通の書店ではまずおいていないこんな本。先日紹介した『アストロシティ』と同じく、JIVEさんが出してくれたアメコミです。
この『JLA』という題名、決して「JAL」と間違えたわけではありません。「ジャスティス・リーグ・オブ・アメリカ」略してJLAなのです。直訳すれば「米国正義同盟」というとこでしょうか。
構成メンバーは超豪華。スーパーマン、バットマン、ワンダーウーマンをはじめ、フラッシュにグリーンランタン、アクアマンにホークマン、(鉄腕でない)アトムにプラスティックマン、etc etc・・・
まるでウナ重に牛丼にカツカレーに上寿司がいっぺんに運ばれてきた感じです(といっても日本人に馴染みがあるのは最初の二人だけでしょうか)。
スパイダーマンはなぜ入ってないのか。それは本を出している会社が違うからです。『JLA』はDCコミックスより出されていますが、スパイダーマン、X-MEN、ハルクなどはもう一方の雄、マーヴルコミックのキャラなんです。
話を戻して。JLAのメンバーはいつもは単独で行動しておりますが、全地球的規模の災厄が起こると直ちに集まり、一致団結してことに当たります。無論彼らにもそれぞれ事情や個性があり、そのバラエティを見ているだけでも大変面白い。例えばJLAは国防総省と提携しているんですが、「国に味方したくない」というバットマンは同盟を抜けています(でも影ながら助けてくれる)。みんながちゃんと正門から招かれている中、ひとり裏口かどっかから、こっそりと侵入するところは笑えます。他にも海を汚す人類を必ずしも快く思ってない、海底の王・アクアマンのような者がいるかと思えば、単に「ヒーローって気持ちいい!」って感じのフラッシュや、明らかに遊び半分でやってるプラスティックマンみたいのもおります。そういった王道からイロモノまで所属している、玉石混交なところがJLAの魅力のひとつといえます。
またこの「リバティ~」は普通の勧善懲悪路線とは少し違います。まず悪役に当たるのが宇宙から来た超ウィルスであるということ。そしてそのウィルスの威力を知った一部の人々はパニックに陥り、暴徒と化します。ヒーローたちは暴動を鎮めようとしますが、その行為が大衆から敵視されるきっかけとなり―というなかなか一筋縄ではいかない展開となっています。
あと、この作品の売りは、なんと言ってもアレックス・ロスの手による超写実的アート。1ページ1ページ、一コマ一コマが完成された絵画となっています。映画『スパイダーマン』をご覧になった方は、OPに出てきた流麗なイラストを思い出してください。あれもロスの作品です。
写真が発明されたとき、ある画家は「これで絵画は死んだ!」と嘆いたそうです。しかし実際には絵画は今もなお生きつづけております。
ロスの仕事も時として写真とみまごうほどの完成度でありますが、そこには写真にはない迫力と魅力が満ち溢れています。このペインティング・ア-トという手法、日本でももっと多くの人に味わっていただきたいもの。
ただこの本の唯一の欠点は(略)さんぜんよんひゃくえんです。アイタタタ。
でも決してそんなに売れるようなものじゃないし、これくらい付けないと商売にならないのでしょう。
JIVE AMERICAN COMICSが一日でも長く続くことを祈っております。
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