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April 22, 2005

いまごろ大河ドラマ『新選組!』を振り返ってみようのコーナー⑫

総集編 友情・努力・敗北

今回はくだらない小理屈などをあれこれ。
昨年暮れ、総集編を観ていて改めて思ったのは、「そういやこのドラマはナレーションがほとんどなかったなあ」ということ。大体アヴァン・タイトルでどこぞのお兄さんが背景を簡単に説明するくらい。また、既に他のところでも指摘されている点でもありますが、一話がおおむね一日くらいの長さに相当しているところも史劇としては独特でした。これは三谷さんの舞台時代からの一つのスタイルなんですが、こうした形式をとることで、我々としては、あたかも実況中継を見ているような臨場感がありました。こう考えてみると『新選組!』という作品は、これまでの大河ドラマをリスペクトしつつも、様々な点で異例な作品であったと言えます。

そもそも毎年それほど熱心な大河ファンでもないわたし(『炎立つ』などは好きでしたけど)が、なぜこの作品に限っては一話も欠かさず視聴していたのか。それは三谷さんのエッセイ『ありふれた生活』で、「今回はマンガ『風雲児たち』にどれだけ近付けるかが目標」とあったからです。『風雲児たち』の大ファンで、三谷さんの中ファンであったわたしは、これはもう「観なければ」と心に堅く誓いました。
『風雲児たち』の作者、みなもと太郎先生は、「今の若者も幕末の若者も基本的には同じ。しかし今の若者が幕末にそのまま行って、幕末の偉人たちと同じ働きができるわけではない」というようなことをおっしゃっていました。『新選組!』はこの言葉を忠実に反映していたと思います。ギャグや食事のシーンをふんだんに盛り込んで、歴史上の人物を身近な存在にする一方で、あの激動の時代のただ中で、若者たちが一生懸命努力し、苦しみ、歓喜するさまが丁寧に描かれていました。
「子供たちにもわかりやすく」「史実を忠実に追うよりも、ことの本質を伝える」「娯楽精神を忘れない」「登場人物が“なぜそうしたのか”、を丁寧に描く」・・・・・・こうしたスピリットにも『風雲児たち』の影響が強く現れています。

このドラマは史劇とであると同時に、若者達の青春群像でもありました。実際三谷さんはみなもと先生との対談で、「新選組の軌跡と、劇団での若いころの経験がすごくかぶるんです」と言っていました。仲間同士でのぶつかり合い、志をともにしていながら袂を分かたざるを得なかった友・・・・ そんなことが東京サンシャインボーイズでも色々あったんでしょうね。そんなわけでわたしは最初から「史実性」とかは期待せず、一風変った青春ドラマ+少年マンガのノリで楽しんでいました。ただ、幕末というのは史劇の中でもかなり現代に近いところであり、資料もゴロゴロ残っています。加えて、新選組にはもともと熱心なファンもいるので、このノリに付いて行けなかった方たちも多くいたようです。その一方で、「これまで歴史に興味がなかった」のに、「これだけは面白かった」「これで歴史に興味が湧いた」という人も大勢いました。特にわたしの周囲ではそうした人が多かったです。

一年通して、本当に楽しませて頂きました。大河ドラマとみなもとマンガとこれまでの三谷作品が渾然一体となって、そのどれとも違うという、不思議なドラマでした。恐らく三谷さんにも、もうこんな作品は書けないのでは。だけどできることであれば、またいつかこんな史劇が観たいな、と思います。

完 
・・・・とできれば、まことにかっこいいんだけどな(笑) 終りそうで終らないこのコーナー。いつの間にやら当ブログの看板にもなっちゃったし。
次は番外編として、司馬遼太郎御大の『燃えよ剣』『新選組血風録』について語りたいと思います。

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Comments

>>「史実性」とかは期待せず、一風変った
>青春ドラマ+少年マンガのノリで
私も見てくうちにこのノリが
気に入ってしまいました。
もともと新撰組は興味対象外だったのですが新撰組を積極的に見てみようと思った
作品でした。
気がついたら現住所より一番舞台(の一部)
が近い作品でした。
多摩モノレールの役者の顔のラッピング
モノレールを見てニヤリとしたり(えーと
因みにこのモノレールは勝手に
源さんモノレールと命名しました(笑))。
>新選組にはもともと熱心なファン
案外、人間というのは柔軟的でない
なあと思いました。
鉄道や特撮でもいるんですけど
「異端」的なものは
どうしても保守的ファン層からは
受けがよくないですね・・・困った。
私のクウガレビューでも書きましたが
異端な物は理解できなくても
せめて存在するという「事実」ぐらいは
受け入れて欲しいですね。
ではでは。

Posted by: まさとし | April 23, 2005 at 12:03 AM

どもども
>多摩
地方者にとっては巨人軍の基地と多摩テックのあるところですね
タマちゃんは現在消息がしれないとか

>源さんモノレールと命名しました(笑))。
そうか、まさとしさまのお気に入りは源さんでしたね。他の新選組ものでは何気に忘れられていることが多いですけど、この作品では色々いいとこもらってましたね。優香ちゃんにくっつけたりとか(笑)

>「異端」的なものは
どうしても保守的ファン層からは
受けがよくないですね・・・困った。
わたしなんかはむしろ「異端」とされるものの方が好きな性分ですので・・・ 『風雲児たち』もどちらかと言えば「異端」に属する部類ですかね
『クウガ』はその後の作品に比べれば、むしろかなりスタンダードに近い部類だと思いますよ
そんなわけで『ネクサス』もひとつ許してやってはもらえないでしょうか。

Posted by: SGA屋伍一  | April 23, 2005 at 07:49 AM

このブログにはあんまり関係ないことですが、山本耕史サマのHPを見たら、ひの新選組まつりにも箱館五稜郭祭にもゲスト出演するらしいですね。大河は「義経」になっているのに、山本耕史はまだ「土方」なのか。ほんとにはまり役って感じでしたけど。(っていうか、新選組もののドラマ・映画を私はこれと「壬生義士伝」しか知らない)大河ドラマの影響というのはかなりのものなんですねぇ。もう、「一つ屋根の下」の車いすの文也君はどっか行っちゃいましたね。
第1回で江口洋介と山本耕史が対等に張り合ってるのを見て、おまえも成長したなあと思ってしまったもんです。

>『新選組!』という作品は、これまでの大河ドラマをリスペクトしつつ
昨日、「新選組!」DVD完全版後編が届き、その解説を読んだのですが、中村獅童の捨助のモデル(?)は「草燃える」での滝田栄の伊東祐之だとか。私は「草燃える」で一番印象に残っているのが、この滝田栄(当時は初めて見る俳優さんでした)演じる伊東祐之だったので、ほーっ。とため息。なつかしー。あの眼光の鋭さは忘れられません。ほかにもいろいろこれまでの大河ドラマの手法を踏襲したネタ話を語っていましたが、今手元にないので書けません。

Posted by: kakakai | April 23, 2005 at 04:24 PM

>第1回で江口洋介と山本耕史が対等に張り合ってる
そういえばそうでした。わたしも初めて山本くんが土方役と聞いた時は「?」と思いましたけど、三谷さんにははじめから勝算があったみたいですね。
かつて土方のはまり役であった栗塚旭氏をして、「本物みたいだった」と言わしめたのは見事。ただ、三谷さんある番組で「ぼくはもう山本くんは使いませんから」と言ってたそうで。なんかあったのかな(笑)

>草燃える
これね~、うちのすぐそばでロケやってたんですよ。頼朝と政子が逢引してたという場所があるもので。でもドラマの記憶はほとんどない・・・ 滝田氏は信長配下の滝川一益とか、宮本武蔵なんかをNHK関連でやっていたのを覚えています。三谷さんは大河では特に『黄金の日々』という作品がお気に入りのようですね。

Posted by: SGA屋伍一  | April 23, 2005 at 10:31 PM

まあ、なんと爽快なこと。
自分の言いたいことを、自分じゃ書けないスッキリした文で言葉にしてもらえると。

「『風雲児たち』の大ファンで、三谷さんの中ファン」というのは、
このドラマを一番楽しめる、シアワセな視聴者だったんだなぁとしみじみ思います。

>「ぼくはもう山本くんは使いませんから」
三谷氏が有言実行の人なら、最終回で近藤の首級がハイサワー漬けになった筈ですから(笑)
「ほぼ日」で今頃になって山本耕史のインタビューが読めます。
危ない人まで紙一重ですが、間違いなく「新選組!」のMVPですね。

Posted by: 秦太 | April 24, 2005 at 01:23 AM

>中村獅童の捨助のモデル
思い出したんですけど、たしか「オリジナルキャラの祖先」のような書き方でした。
>『黄金の日々』という作品がお気に入り
その通りで『黄金の日々』の手法を踏襲しているということも書いてありました。どんな手法だったかは覚えてません。

Posted by: kakakai | April 24, 2005 at 08:08 PM

>秦太さま
お褒めにあずかり光栄です。いつも貴重な情報を拾ってきて頂いて感謝でございます。イトイ新聞での連載も、秦太さまに教えてもらったんでしたっけ。
>ハイサワー漬け
それはそれで観たかった気もします
>山本耕史
>危ない人まで紙一重
三谷さんもはじめは「車椅子の少年」のイメージだったそうですが、『オケピ!』で使ってみて本性がわかった、みたいなこと言ってました。

>Kakakaiさま
>オリジナルキャラの祖先
大河ではよく架空のキャラに狂言回しをやらせますけど、その元祖ということかな?
可能でしたら、これまでの大河との比較など、「あることないこと」で語っていただけるとうれしいです。

Posted by: SGA屋伍一  | April 25, 2005 at 08:01 AM

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