比丘尼のビックリハウス 富樫倫太郎 『晴明百物語 八百比丘尼』
トガちゃん、3回目の登場。この本、1日で読んじゃいました。読書速度がめっきり遅くなった自分にしては、近年まれに見るスピード。「ものすごく面白かった!」ってわけでもなかったんですけど。まあ、この「読みやすさ」、トガちゃんの長所の一つですね。
軽い気分で登山に出かけたら、もろに吹雪と遭遇してしまった小泉八雲。命からがら逃げ込んだ洞窟で、彼は不思議な尼僧に介抱される。退屈しのぎにと、尼僧は八雲に奇妙な数編の話を語りだした・・・・・・
この『晴明百物語』、これ以前に『陰陽寮外伝一』と銘打ったものと、副題に『列願鬼』とついた二冊が出されている。どうして『陰陽寮外伝』の字が外れてしまったのかは謎だが、はっきり言ってこのシリーズは『陰陽寮』の外伝にほかならない。登場人物がやけにかぶっているのがその証拠。しかしまあ、本作だけでもそれなりに楽しめるつくりになっている。
トガちゃんは伝奇長編を書くと熱血純情巨編となることが多いのだが、短編となると途端に人が酷薄になる。この『八百比丘尼』、だからか文字通り「地獄にたたきおとされる」救いようのない話が多い。憂鬱なときは遠慮した方がいい。彼のもう一つの持ちネタ「江戸暗黒小説」にもそうした特質はあらわれているようだ。
物語は平安期から明治初期にまで及ぶ。最後の話だけなんか浮いているが、他の作品は時代がバラバラながらも共通するようなムードがあって、なかなか違和感なくまとまっている。
気になるのは前作から登場する「列願鬼」。「願いをかなえる代わりに約束をさせろ」という変な鬼。もちろん大体のやつは途中で守りきれず、恐ろしいオチがまっている。この鬼、ただの化けもんなのか、さらに出自があるのか、今のとこ不明。続巻で明らかになるんだろうか。
やはりみなさんにはまず『陰陽寮』シリーズをオススメする。既刊8冊。大丈夫、相性がよければ一冊3日あれば十分読めます。トガちゃんも手をひろげるのはいいが、ぼちぼち風呂敷をたたんでシリーズを完結させてほしい。しくよろ。


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