ブラックキャットによろしく 杉作 『クロ號』
猫ネタ第二弾。
猫の魅力ってなんだろう。たらたら挙げてみる事はできるけど、結局のところ「飼ってみないとわからない」というのが本当のところではないだろうか。わたしのまわりには、それ以前は猫なんかまるで興味なかったのに、ひょんなことから世話するはめになり、そしたら猫マニアになってしまったという人が多い(わたしの母のような天性の猫オンチも稀に存在するが)。
で、この『クロ號』も猫好きでなくても楽しめるけれど、猫を知っているとさらに深く楽しめる作品。
ストーリーはいたって単純。フリーターで漫画家志望のオヤジ?「ヒゲ」に飼われているクロ・チン子(・・・・)の猫兄妹の日常を、時にのんびり、時にシビアに描いている。
「シビア」な話にどんなのがあるかというと、まず第3話で弟が衰弱死。他にもいたいけな子猫がこころない野郎に(ああ、これ以上は) ・・・このエピソードは夜勤明けのコンビニで読んでいて、その場にへたりこみそうになった。
しかしそうした辛い部分も、杉作先生の温かみのあるタッチにより、だいぶやわらげられてはいる。筆ペンで描いたかのような、太く、柔らかい輪郭。薄墨でつけられた微妙な濃淡。さながら水墨画のようであるけれど、それでいてとても親しみやすい絵柄なのだ。
この作品のもうひとつ独特な点は、主人公のクロが、読者と猫社会の仲介役となってくれているところ。当たり前の事だが、猫は言葉をしゃべらない。しかし「ニャー、ニャー」だけでは話が成立しない・・・ことはないだろうが、極めてむずかしい。以前『うちのタマ、知りませんか?』というアニメがあった。最初の3話くらいまでは「ニャ―」と飼い主のモノローグで話を作っていたが、やはりむずかしかったのか、5話を過ぎたあたりではどの猫も流暢に日本語をしゃべっていた。
子供にはそれでもいいかもしれないが、そうなると完全にメルヘンの領域になってしまい、大抵のオトナは敬遠するだろう。しかし『クロ號』ではクロが片言でしゃべるのみ(もちろん人には通じない)。他の猫は「ニャ―」としか言わないのだが、わたしたちはクロのおかげで大体のことは理解できる。そんな風にして、メルヘンと現実の均衡が巧に保たれている。クロの淡々とした猫と人間に対する視点には、いちいち頷かされるものがあり、現代版『我輩は猫である』といっても過言ではないと、わたしは思う。
実はこの『クロ號』、先日『イブニング』誌上で惜しまれつつ堂々完結した。ラストについてはあまりくわしくは書かないが、実に『クロ號』らしい幕切れだったとだけ言っておこう。
最終巻となる第9巻も近日発売予定。『イブニング』にはやはり杉作先生の手による『マル犬ロッキー』も連載中だが、こっちの方はあんまり。
とりあえず、クロ、おつかれ&あんがとさん。楽しかったぞい。
Comments
えー、終わっちゃったんですか・・・
単行本の1~2を持ってます。
可愛い可愛いだけじゃなく、猫の生活のシビアさをもリアルに描いた珍しい漫画だったような。
リアルに、っていっても猫になったこと無いからわかりませんけど(^_^;
Posted by: 淳庵 | April 02, 2005 03:56 AM
>えー、終わっちゃったんですか・・・
終っちゃったんです(涙) 『モーニング』から移籍して、まだまだ続くのかと思ってたんですけど。『イブニング』最新号(4・1の時点の)がまだどっかにあれば最終回まだ読めるはず。泣いてください。
>単行本の1~2を持ってます。
続巻も面白いけど、そのあたりが一番話の密度が濃いですね。わたしは「チョビ(犬ではない)」の話や、ダンボールに入って「忘れてかけていた弟とママのことを思い出した」話が印象に残っています。
>リアルに、っていっても猫になったこと無いからわかりませんけど
わたしもありません(笑)
淳庵さまは『モーニング』を愛読されているようですね。『チーズスイートホーム』は『クロ』に比べてややぬるめの作品ですけど、わたしは「も~ チーたんたら♪」という感じで読んでいます。これもサガ。
Posted by: SGA屋伍一 | April 02, 2005 08:48 AM
猫はいいですニャー
・・・わー、ベタベタや。
Posted by: 淳庵 | April 05, 2005 03:05 AM
最近疲れてくると
「もう。ニャンコばか。ニャンコ大好き」
とうわ言のように口走っている自分がいて、はっとすることがあります。
やばいぜ。
そうだ、今さらですが、淳庵さまのお宅こちらからもリンクさせてもらいました。これからもよろしく。またお邪魔します。
Posted by: SGA屋伍一 | April 05, 2005 07:43 AM
ありがとうございますm(_ _)m
こちらこそ今後ともよろしくお願いしますニャー
Posted by: 淳庵 | April 07, 2005 03:03 AM
いまから子猫を これから子猫を
撫で繰り回すか
NYAH NYAH NYAH
NYAH NYAH NYAH NYAH
(『振り返れば奴がいる』OPテーマより)
Posted by: SGA屋伍一 | April 08, 2005 08:03 AM
初めまして。僕もすごい猫好きで、人生で猫がいない時間のほうが少ないというような生活を送ってきました。その中で感じた猫の可愛さ、憎たらしさ、喜び、悲しみがこの漫画には詰め込まれていました。
今、自分も涙雨にうたれている気分です。
Posted by: ねこ田 | May 26, 2005 12:16 PM
ねこ田さま、はじめまして。
>僕もすごい猫好きで、人生で猫がいない時間のほうが少ないというような生活を送ってきました。
おお、同志!
それだけに『クロ』は共感できると同時に切ない作品なんですよね。
最終巻もう出てるはずなのに、近所の書店ではどこにも置いてありません。職務怠慢じゃあ! 最終回のその後の話も掲載されてるとあったので、早く読みたいです。
もしよろしかったら、当ブログの猫コーナー「HARD PUNCHER モン吉」もご覧ください。
向かって右の「カテゴリ」の欄の「ペット」の行をクリックして頂ければ見られます。
Posted by: SGA屋伍一 | May 27, 2005 08:41 PM