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March 28, 2005

ブラックキャットによろしく 杉作 『クロ號』

猫ネタ第二弾。
猫の魅力ってなんだろう。たらたら挙げてみる事はできるけど、結局のところ「飼ってみないとわからない」というのが本当のところではないだろうか。わたしのまわりには、それ以前は猫なんかまるで興味なかったのに、ひょんなことから世話するはめになり、そしたら猫マニアになってしまったという人が多い(わたしの母のような天性の猫オンチも稀に存在するが)。
で、この『クロ號』も猫好きでなくても楽しめるけれど、猫を知っているとさらに深く楽しめる作品。
ストーリーはいたって単純。フリーターで漫画家志望のオヤジ?「ヒゲ」に飼われているクロ・チン子(・・・・)の猫兄妹の日常を、時にのんびり、時にシビアに描いている。
「シビア」な話にどんなのがあるかというと、まず第3話で弟が衰弱死。他にもいたいけな子猫がこころない野郎に(ああ、これ以上は) ・・・このエピソードは夜勤明けのコンビニで読んでいて、その場にへたりこみそうになった。
しかしそうした辛い部分も、杉作先生の温かみのあるタッチにより、だいぶやわらげられてはいる。筆ペンで描いたかのような、太く、柔らかい輪郭。薄墨でつけられた微妙な濃淡。さながら水墨画のようであるけれど、それでいてとても親しみやすい絵柄なのだ。
この作品のもうひとつ独特な点は、主人公のクロが、読者と猫社会の仲介役となってくれているところ。当たり前の事だが、猫は言葉をしゃべらない。しかし「ニャー、ニャー」だけでは話が成立しない・・・ことはないだろうが、極めてむずかしい。以前『うちのタマ、知りませんか?』というアニメがあった。最初の3話くらいまでは「ニャ―」と飼い主のモノローグで話を作っていたが、やはりむずかしかったのか、5話を過ぎたあたりではどの猫も流暢に日本語をしゃべっていた。
子供にはそれでもいいかもしれないが、そうなると完全にメルヘンの領域になってしまい、大抵のオトナは敬遠するだろう。しかし『クロ號』ではクロが片言でしゃべるのみ(もちろん人には通じない)。他の猫は「ニャ―」としか言わないのだが、わたしたちはクロのおかげで大体のことは理解できる。そんな風にして、メルヘンと現実の均衡が巧に保たれている。クロの淡々とした猫と人間に対する視点には、いちいち頷かされるものがあり、現代版『我輩は猫である』といっても過言ではないと、わたしは思う。
実はこの『クロ號』、先日『イブニング』誌上で惜しまれつつ堂々完結した。ラストについてはあまりくわしくは書かないが、実に『クロ號』らしい幕切れだったとだけ言っておこう。
最終巻となる第9巻も近日発売予定。『イブニング』にはやはり杉作先生の手による『マル犬ロッキー』も連載中だが、こっちの方はあんまり。
とりあえず、クロ、おつかれ&あんがとさん。楽しかったぞい。

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March 27, 2005

いまごろ大河ドラマ『新選組!』を振り返ってみようのコーナー⑩

あだだ、また歩くタコのダメージが・・・(二つ下の項をご覧ください。秦太さま、どうも)
「次も猫がらみ」と書きましたけど、先にこっちを。二月中に終える予定だったのが四月にずれ込みそうです。・・・・・・ごめんよ、かあさん。どうせオイラはダメな息子さ! 
では気を取り直して10回目いきます。

#44 戦争か平和
薩長同盟成立以降、日増しに勢力を蓄えていく反幕府勢力。対決はもはや避けられない。新選組もまた、その荒波に呑み込まれて行くのであった。その最中、局長をつけねらう一つの影が・・・
冒頭で和平論をとうとうと述べる近藤勇に違和感ありまくりです。ただある資料によりますと、近藤くんはそれなりに弁も立つ一面もあったとか。・・・ホントかな。
上のその場しのぎの采配で、あちらこちらへ回される新選組。中間管理職の悲哀を感じさせます。隊の呼称の存続すら危うい状況に、「名前残したい」という魁くん。自分の名前がチョコチョコ変っているだけに、この名称にはこだわりたかったのかも。今気がついたけど、「カイ・シマダ」と「カイ・シデン」は結構似て・・・ないか。
「うちはただあの人にそばにおってほしかったんよ」維新の英雄を愛した女性の、悲しい一言です。で、おりょうさんのこの後の人生は『竜馬の妻と、その夫と愛人』で語られるわけですか。わたしは未見ですが、ゼンザイ先生によりますと「あんましオモロない」とのこと。
この回の重要アイテム:竜馬の形見?の短銃
              山とつまれた朝鮮人参。沖田と優香二世、ラブコメ進行中

#45 とばくじみた戦い
凶弾にたおれたアンドレ、じゃなくて近藤。茫然自失となるオスカル、じゃなくて土方。フランス革命、じゃなくて鳥羽伏見の戦いがまさに始まるというその時に、役に立たない局長・副長。だが、新選組にはまだあの男が、「ホトケの源さん」がいた! 今、源さんの命をかけた最後のスーパーファイトが始まる。
考えてみりゃ源さんって凄い人です。それまでのほほん、と庭師などやってたおじさんが、道場主の都合でいきなりマジのチャンバラやらされるはめになったというのに、それでも十二分な働きをしてしまわれるのですから。番組では描かれませんでしたが、この鳥羽伏見の戦いでもゲリラ戦でけっこうな働きをされてるんですよね。
ラストカットは、まあそりゃあコテコテでしたけど、わたしは泣きましたよ。こういう現実離れした演出、三谷作品には珍しいですね。その前のマトリックスみたいなCGは本人の意思じゃなかったみたいですが。
他に印象的だったのはジリ貧の状況だというのに、「ひゃっほう」とはしゃいでいる若いやつら。火花とか見ると、ついつい血が騒いじゃうんでしょうか。でもそのお祭り騒ぎも長くは続かず・・・・・・
大切な仲間をまた一人失い、獅子奮迅の活躍を見せる斎藤。誰か気づいてやってくれ(涙)
この回の最強アイテム:泣く子も黙る「にしきのみはた」
初出時のタイトルは「錦旗ギラギラ夕日が沈む」というものでしたが、高野さまが上記の方がいいとおっしゃるので。

#46 そうだ 京都出よう
鳥羽伏見の敗戦が決定的となり、文字通り石を投げられるようにして京を出る新選組。海路で江戸へ向かうが、果たして幕府に起死回生のチャンスは残されているのか。
まずアヴァン・タイトルで大体済まされてしまう佐々木様の最後に涙。ほとんどセリフのなかった小西美帆さんの臨終にも涙。そして「うまれながらの監察役」山崎蒸の死にも涙。「山崎がはじめて人の頼みを断わった・・・」
最近はその存在すら疑問視されていた山ちゃん。この回の放送直前に日記が発見されたというニュースに、不思議な符号を感じました。
八木家のみなさんも久しぶりに登場。「あのひとたち、なにか悪いことしたん?」それなりに色々やってます。
「一緒に帰るか?」「ウン!」捨助、おめえってやつは・・・ 例の羽織をようやく着られてとても嬉しそうでした。
落日が目に見えてはっきりしてきたこの回でも、ギャグを忘れない三谷魂。艦長なのに置いていかれてしまう榎本武揚(笑) 明らかに浮いていた、山本耕史演じる田中邦衛。女性ファンはひいたろうけど、わたしは両手を上げて「ブラボー! コージ!」と叫びたいですね。あ、彼の名前「こうじ」でいいんですよね?
この回の重要アイテム:オートクチュ-ル特製(推定) 榎本さんの海軍制服

高野正宗さま、Kakakaiさま(お二人とも、いつもコメントありがとうございます)がそろってDVD-BOXを購入され、そろそろ細部のミスが明らかになるんではないかと、ビクビクしております。まあ、間違いなんざいつものこってすが(開きなおんな)。
さて、全話レビューも残りあと1回。気を引き締めていきたいと思います。それでは最後にもう一ネタ(再録)。

屯所跡地にて
「薩長のやつらに見られたくないものも色々あるんでな」
「なんだこれ? 『豊玉宗匠傑作選』?」
「よせ! 見るんじゃない!」

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March 23, 2005

すたこらチュウ太郎 ロブ・ミンコフ 『スチュアート・リトル』

ちょいと時間が空いたので、昨日地上波で「2」をやっていたこれを紹介します。
原作はE.B.ホワイトという方の絵本で、向こうでは50年以上親しまれているとか。
養子を探しに孤児院にやってきたリトル夫妻は、そこで人語を解す愛らしいネズミと出会う。夫妻はそのネズミ(スチュアート)をリトル家の新しい家族として迎え入れることを決めるが、人間の弟を期待していた息子ジョージはがっかり(そりゃそーだ)。しかしスチュアート(以下チュウ太郎)のがんばりに、ジョージは次第に心を開き始める・・・・・・
1作目ではチュウ太郎がリトル家に溶け込んでいく様子を、二作目では小鳥とのロマンスを通じて、チュウ太郎が人間的成長をとげる(ああ、もうなにがなんだか)様子を描きます。
オトナは少し電子レンジで頭をやーらかくして見る必要があるかもしれませんが、一本一本の毛がCGで描かれたチュウ太郎は大変イキイキしていて、本物のネズミにしか見えません。我々にとっては見慣れた風景でも、ネズミの視点から見ればそこはジャングルだったり、巨大な塔のそびえ立つ城塞都市だったりするわけで、そんな発想の転換が楽しい作品です。
1作目の脚本原案はなんとびっくり、『シックス・センス』のナイト・M・シャマラン。彼が手がけた作品群との、あまりのタッチの差に当惑いたしますが、「人ならざるものとの接触」「家族の結びつき」というキーワードで考えればそれほど違和感はありません。カースタント、ボートレース、ドッグファイトといったアクションのサービスもてんこもりです。

と、たらたら書いてみましたが、実はわたしにとってはネズミの成長譚なぞむしろオマケのようなもので、脇役で出てくるスノーベルという猫が目当てでこの作品を見ています。このスノーベル、秀麗な外見とはウラハラに、オヤジっぽくて、性格がややまがっていて、間が抜けていて、食い意地が張っていて、でも本当は根のいいやつで・・・・・・ 見れば見るほど4年前に死んだ飼い猫のシルバーにそっくりなんです。だから画面にスノーベルが出るたびに亡き友のことを思い出し、ついつい涙ぐんじゃったりするわけです(キモい)。
シル助、なぜ死んだ・・・・・・ わが生涯において、真の友と呼べる存在は、いまだお前ただ一人(匹)かもしれぬ(ゼンザイ先生は?)。
それにしても米国のファミリー向け映画・アニメでは、なぜ「猫は性悪で、ネズミは善玉」と相場が決まっているのでしょう。本当に納得イカ焼きそばです。「おれ様がどうしてネズミにペット呼ばわりされねばならんのだ」と憤るスノーベル。お前の怒りは至極もっともだ。
そういうわけで、もし続編がさらに作られるのであれば、次は『スノーベルの逆襲』で頼みます。

今回、かなり私情が入ったレビューで申し訳ありません。でも次のネタはまた猫がらみになりそうな予感。


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March 21, 2005

適当掲示板四枚目 及び近況など

なんとなく続いているこのコーナーです。
ご意見、ご感想、ご要望、オススメ品、みなさんの最近のご様子など、よろしかったらお聞かせください。

いきなり告知ですが、今週は私用のため大変慌しく、コメント、更新等遅れるかもしれません。コメントには必ずお返事いたしますのでどうかよろしく。

なんと『終戦のローレライ』、睡眠時間をゴリゴリと削って2巻まで読了いたしました。この分なら劇場版の公開終了前に読み終えられるかも。やっぱ福井ちゃんは面白いですよ。『川の深さは』はちょっともたついたけど。
劇場版は「こういうの苦手」と言いつつ観に行ったゼンザイ先生も大絶賛でした。ただ、けっこう空席が目立ったとのこと。・・・・不安だ。

みなさんに心配頂いた花粉症、まだ薬物にたよらずに耐えております。つまりまだそのくらいのレベルということ。前は薬飲んでたんですけど、水が苦く感じたり鼻の奥が乾く感じがいやで。やつらが散り果てるのが先か、おれが力尽きるのが先か・・・ 勝負だ!(むなしい)

そろそろ花見のシーズンでもありますね。ウチの近所では河津や伊豆高原が有名ですけど、河津は早咲きのため既に終了。伊豆高原の方は知り合いと連れ立って観に行く予定です。

   鼻水を たらして楽しむ 花見かな

いや、風流。

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異常な日常 カート・ビュシーク 『アストロ・シティ ライフ・イン・ザ・ビッグ・シティ』

そういえば、最近マンガのレビューをしていません。で、やっととりあげたと思えば、こんな(日本では)どマイナーなアメコミ作品。今回は完全に趣味の世界です。すいませんがお付き合いください。

アメコミにおいて、1980年代中盤は重要なターニングポイントとされている。なぜかといえばこの年代に『バットマン・ダークナイト・リターンズ』『ウォッチメン』の二作品が相次いで発表されたからだ(この二作品については12月の『Mr.インクレディブル②』の項を参照されたし)。この二つの傑作はアメコミの幅と深さを一層広げることに大いに貢献した。が、これ以降リアリズムを重視したものや深刻なテーマをあつかったものがレベルの高い作品、という見方が浸透してしまったのも事実だ。この辺、日本アニメにおける『ガンダム』『エヴァ』の功罪と似たところがある。

そんな風潮が広まってしばらくしたころ、さっそうとあらわれたライター(ストーリーを担当する人)がこのカート・ビュシーク。斬新なアイデアだけでなく、『サンダーボルツ』というなんの新味もないようなタイトルを、ストーリーテーリングだけで売上トップ10にならべた実力も持っている。
彼は、アメコミはバカッぽ・・・じゃなくて、センス・オブ・ワンダーだから面白いんじゃねーか、ということを提唱し、衝撃的作品『マーブルズ』(1993)を世に問うた。しかしこの作品、アレックス・ロスの超写実的なアートにより全体的に荘厳な雰囲気を帯びてしまい、これまた世間に「高尚な作品」として認知されてしまった。
カーたんは悩んだ(と思う)。で、「やっぱアメコミのバカっぽさを強調するにはコテコテのアメコミ絵でやらなきゃダメよね」という結論に達した(たぶん)。かくしてこの『アストロ・シティ』の登場とあいなった(んだと思う)。

アストロ・シティは不思議なシティ。そこはスーパーマン、バットマンみたいなヒーローが実際に多数活躍する世界にあり、ヒーローたちはなぜかこぞってこの都市を根城にしている。ふと空を見上げれば、スーパーマンもどきが悪者をひっつかまえて飛行しているなんてことは日常茶飯事。人々は政治やスポーツの話題と同じようにヒーローや悪の組織の動向について語りあっている。
この度邦訳された第1巻「ライフ・イン・ザ・ビッグシティ」には6つの短編が載せられている。冒頭の一編は秒単位でレスキューや悪者退治に追われるスーパーマンもどきの一日を描いている。「あー、たまにはなんの用事でもなく自由に空を駆け回りてーよなー」と愚痴る彼の姿は、会社にこき使われるサラリーマンとあまり変らない。また別のエピソードでは、魔界の入り口みたいな街で生まれ育ったOLが、そこから旅立つべきか煩悶する様子が語られる。
こんな風にある時はヒーローの、ある時は悪役の、またある時は平凡な人の目を通して、異常な都市「アストロ・シティ」の日常が描写されるわけだ。

この奇妙な作風をどう表現したらいいだろう。バカっぽくてシュールなんだけど、「ああ、こういうのあるある」みたいな。そう、言うなれば『スパイダーマン』『パーマン』と吉田戦車をブレンドし、そこに「スーパーヒーロー大集合!」というエッセンスを加えたような感じか。『Mr.インクレディブル』を観て、「ああ、こんな話もっと見たい!」という方には是非オススメする。
・・・・・・したいのだが、この本の唯一の欠点は「高い」ということだ。しめて3400円。さんぜんよんひゃくえんだ。オールカラーで大判でマイナーな出版社(JIVEという)からとなると、こんな値段になってしまうのだろう。下手なDVDよりも高額だ。だからあまり強いては薦められないというのが正直なところだ。だが一人でも多くの人にこの変な感覚を味わって欲しいというのも、まぎれもない本心である。
今月半ばにはやはりJIVEより第2巻「コンフェッション」も発売予定。すこしはこっちの懐のことも考えてくれ!

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March 19, 2005

カラスと不死鳥(弟) リドリー・スコット 『グラディエーター』

昨日地上波でやっていたので。
あー、わたしね、これ大好きなんですよ。皇太子の嫉妬を買い、全てを奪われた剣闘士マキシマスの復讐の物語。
弟は「これって『ブレイブハート』のパクリじゃん」っていってましたけど、だからいいんじゃねえか! じゃなくて、『ブレイブ』は将たる人物の大義の話という印象ですが、こちらは個人的怒りが主題となっている気がします。

監督はリドリー・スコット。『エイリアン』『ハンニバル』といった残酷系の、感情の入る余地のない作風で知られていますが、今作は何を思ったか男節大全開。ラッセル・クロウ演じるマッキーの涙に泣き、雄たけびに燃える二時間です。だけどボンクラとしては、ホアキン・フェニックスのバカ皇帝の気持ちもなんとなくわかるんですよね。あー、どっちも可哀相、みたいな二律背反に苦しめられます。やはりそもそもの元凶はじっちゃん皇帝のケア不足にあったんでは、と思います。

泣き所は町山智人氏が言っていたように、対戦相手がだんだんしょぼくなってしまうところ。「ラスボスがスライムのドラクエみたいじゃねえか」とありましたが、そりゃあんまりだよ・・・ と思いつつも納得。最後ドラゴンかなんかに乗って戦えばよかったんですよ。ホアキンは。しかし全体からみればそんなことは大したキズじゃございません。
興味深かったのは最高権力者の皇帝といえど、「民衆の人気」を気にしなければやっていけない、という点。どこの国家にも言えることかもしれませんが、ことローマはそういう傾向が顕著だったようですね。

好きなところを挙げていったら、もうキリがありません。早回しとスローを巧に取り入れたアクション。ハッタリの利いた衣装やヨロイ。ジュバにプロキシモにキケロにイノキに・・・・・・全員好きです。
あとこの作品のもう一つの主役ともいえるコロッセウム。「ひとが作ったものとは」というセリフがありましたが、やはりデカイ。現在の競技場にはない荘厳な雰囲気が、さながら異世界の物語のような錯覚を覚えさせます。
そしてクライマックスのひとつひとつ。「そうだろ、兄弟!」と悲しみをぶつけるコンモドゥス。お互いヨレヨレになりながらの死闘。決着のあと、畑の向こうで待っている妻子の元に向かう主人公・・・
ラストシーン、人のいないコロッセウムで友に思いを馳せつつ、遺品を埋めるジュバ。「いずれまた会おう。だが、今は・・・」  なんつーかね、もう問答無用です(この文章あとで読んで恥ずかしくなりそうだな・・・)。

さて、昨年だったか『グラディエーター2』が作られるという噂をきいたんですが、その企画が二転三転して、今度やる『キングダム・オブ・ヘブン』になったのでしょうか。タイトル『クルセイダー』でもよかったんじゃないの? まあ、期待です。

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March 18, 2005

スーパーワーカーZ 真保裕一 『奇跡の人』 完結編

実は昨日ゼンザイ先生とお昼をご一緒しました。例の記事にわずかながらでも反応があったことを、大変よろこんでおいででした。そんな彼の最近の一押しは『ダ・ヴィンチ コード』です。

もうあんまり真保先生の某作品とは関係ないような気もしますが、完結編行きたいと思います。
医療の最前線で日夜戦いつづけるスーパーケースワーカー、ゼンザイ。彼が今回担当する事になったのは、自分に関する全ての記憶をなくしてしまった男。彼の悲しみに心を動かされたゼンザイは、全霊をかけてその記憶を取り戻すことを誓う・・・というのが前回までのお話。

さて、数限りないデータベースにアクセスした結果、とうとうゼンザイは患者の戸籍を割り出す事に成功した。すると彼はその病院の近所ではなく、そこから電車で3時間ほどかかる都市に住んでいることが判明した。彼はもともと脳系統に病気をもっていて、今回の記憶喪失・・・じゃなくて全生活史健忘(ああ、ややこし)もそれが原因だったらしい。
住み慣れたところで療養した方が記憶も戻るかもしれない。そう考えたゼンザイは、彼が以前通院していた病院に転院手続きをとろうとした。しかし。
以前担当した医師が彼の転院を拒否した。なんでも以前彼とトラブった折り、「ぶっ殺す」と言われたかどうかはわからないが、かなりな剣幕で脅されたらしい。
目が点になるゼンザイ。まさかあの彼が・・・・ だが調べれば調べるほど、その証言を裏付けるような事実が明らかになっていく。近所では相当の乱暴者として知られていたようだ。
妻子がいたこともわかった。当然彼は対面を熱望した。ところが、所在がわからない。ゼンザイは迷いつつも娘の元担任にコンタクトを取ってみた。するとその教師は妻子の居場所を教えてくれたが、彼には知らせないで欲しいと言う。「相当、旦那さんが怖いみたいで」逃げるように転居していったから、というのがその理由だ。
ゼンザイは調査の結果を隠すところは隠して、患者に告げた。「どうして妻や子は、ぼくを探そうとしてくれないんだろう」泣きじゃくる彼。その様子はとても演技とは思えない。伝え聞く様子とはまるで別人で、ゼンザイの目には本当に「純真な少年」にしか見えなかった。いっそのことこのまま記憶が戻らない方がいいのでは・・・・・ ゼンザイは思った。話を聞いていて、わたしも本当にそう思った。

結局、ゼンザイは地元で療養させた方がいいという結論に達し、先の病院とはまた違う所に手続きをとった。県境を二つ三つ越えて、ゼンザイは彼をそこまで送っていった。涙、涙の別れになるかと思いきや、ゼンザイは正直「ようやく肩の荷が下りた」という気持ちだったそうだ。患者の方も案外サバサバしていたとのこと。

さて、この話にはまだ続きがある。ゼンザイとわかれてからしばらく経ったある日、なんと例の彼、めでたいことに、記憶をある程度取り戻した・・・・・・らしい。が、そのかわり今度はいい子ちゃんだったころの記憶を全部なくしてしまったという。もはやゼンザイのことも毛ほども覚えていないそうだ。今はすっかり元の凶暴な性格に戻り、元気に病院で暴れているとのこと。・・・・・・本当、開いた口が塞がらないとはこのことだ。
「どうする? 会いにいってやる?」とゼンザイに聞くと
「いや、もういい」 疲れきった声で答えた。無理もない。

一つの戦いは終った。だが医療という名の戦場は、彼に休息を許さない。
戦え、ゼンザイ! 負けるな、ゼンザイ!
にっくき事務長をぶち倒すその日まで!
ゼンザイ先生についてもっと知りたいという方は、どうぞコメントをお寄せください。コーナーできるかもしれません。
ひとつも来ないほうに(荒野の)1ドル銀貨。

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March 16, 2005

いまごろ大河ドラマ『新選組!』を振り返ってみようのコーナー⑨

先週『義経』を観てたんですね。そしたらお笑い系の方が山賊の役で出てきて、主人公の心意気に惚れて仲間になるんですよ。で、その回で主人公は初めて人を切ってちょっとブルーになったりするんですが・・・ アレ? オレいま『義経』観てるんだよな? と、軽い幻惑感に襲われた次第です。
さて、9回目行きます。

#41 傷だらけの軍師
色々失敗が続き、隊の中にいづらくなった武田観柳斎。隊内の揉め事を収めようとして、さらに失敗を重ねてしまう。やぶれかぶれになった彼は、伊東や薩摩に助力を請うが・・・・・・
いやあ、おべっか使いで、口だけ君で、ホ○の疑いすら観柳斎の死を、こうも哀切にもってくるとは。三谷さんのダメ人間に対する愛情がよくわかる回です。このドラマは英雄・豪傑が目白押しですけど、本来の三谷作品はどちらかと言えば観柳斎みたいなキャラのほうが主流ですから。
このころから汚れ役を一気に引き受けているのは大石鍬次郎くん。史実でもぶち切れた危ない奴だったらしいです。ただ、黒鉄ヒロシ先生は「あまり頭はよくなかったようだ」と評しておられますね。
冒頭の「かっちゃーん!」「南ー!(違)」のギャグについては、恐らく映画『笑いの大学』の中で解説があると思います。最後の最後で優香ちゃん再登場。
この回の使える英単語:伊東カッシーの「プリーズ ゴー ホーム」

#42 竜馬が逝く
そろそろ竜馬が邪魔になってきた岩倉&薩摩勢は、彼を始末する腹を決める。実行犯として白羽の矢が立てられたのは、見廻組のリーダー・佐々木只三郎だった。
第1回から物語をひっぱってきた竜馬の最期が描かれます。通例のようにドラマチックにもりあげるのではなく、当日の「その時」までをドキュメンタリー調で淡々と追う方式。こういうのも胃がシクシクきます。
諸説ある竜馬暗殺犯には佐々木さまが選ばれました。この回の裏メインは彼です。「○○先生ですか?」と油断させて、間髪入れずに斬る。さしずめ必殺「おうかがい☆ティーチャー」とでも申しましょうか。
斎藤を竜馬が「以蔵に似とるとは思わんか?」と言うシーンがあります。わたしもずっと思ってました。というのは、以前三谷さんがてがけた『竜馬におまかせ』で反町隆史演じる岡田以蔵が、ちょうどこんなキャラだったんです。薄汚れた風体の二枚目で、近寄りがたい空気を漂わせつつも、仲間を思う気持ちは人一倍熱い。岡田くんは非業の死を遂げましたが、斎藤くんにはこのあとも波乱の人生が待っています。
この回の重要アイテム:捨助が持ってった鎖帷子

#43 プロジェクト・エックスキュージョン
勤皇派の会議でつまはじきにされた伊東甲子太郎。大久保利通は信用が欲しければ近藤を斬れと唆す。勇の決死の説得で悲劇はさけられたかに見えたが、本当の悲劇はその先に待っていた。
「わし胡散臭いやつ大好き♪」といっていたくせに、岩倉卿冷たいですね。そういうあんたが一番胡散臭いよ!
伊東さんも願わくばイヤミなまま退場してほしかった・・・ 「いいひと」になってしまったからこそ、その死がつらくなるわけで。乱暴者ばかりだった芹沢派と違い、伊東派には篠原泰之進、服部武雄など優秀な人材がそろっていたようです。ただのイヤミではなかったんでしょうね。
そして藤堂平助。考えてみれば、冒頭からなにかとスルーされることの多かった彼。何度も逃げろと言われてるのに、その度にひょうたんみたいな口をして立ち向かっていったのは、平助の命をかけた存在証明だったのでしょう。「あいつが逃げるわけないでしょう!」と叫ぶ沖田。子供だ子供だと言われていましたが、ようやく人の気持ちがわかるようになったころには既に・・・というのも切ないですね。
この回の重要アイテム:カッシーの死体

え~、終わりもボチボチ見えてきたので今日はこの辺で・・・(コラアアアア!!)

おまけ 高野さまのとこでやったネタの再録 「もし『新選組!』の面々が七曲署の刑事だったら」
近藤:ボス  土方:ダンディ  沖田:キッド  山南:インテリ
原田:ファンキー  永倉:アニキ   斎藤:キラー  平助:ソーリー
島田:ファイト  松原:ヤマアラシ  河合:カシオ  山崎:ルパン  観柳斎:メガッパ
芹沢:ワイルド  伊東:ハンサム      源さん:源さん


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March 14, 2005

面白い巨塔 真保裕一 『奇跡の人』 実録編

えーと、なんの話しだったっけ・・・ そうそう。「記憶喪失」でしたね。
高校の頃からつきあっている友人(だよな?)に病院でケースワーカーとして働いている男がいる。名前を仮にザイゼン・・・じゃカッコよすぎるからゼンザイとしておこう。決定。
医療の現場というのはやはり相当大変なようで、毎日とは言わないまでも、毎週が『ブラックジャックによろしく』状態であるらしい。
でもたまには不謹慎ながらもつい噴出してしまうような事件もあり、ゼンザイはそういう話をよくわたしに教えてくれる。

例えば、車で日本一周をしていた男性が、急に体調が悪化した。救急車で病院に担ぎ込まれたが、様態はどんどん悪化し、危篤状態に。「どうしよう。保険証がないから身元も何もわからない」と焦りまくる医者&看護士一同。ゼンザイが「車に乗ってたんだから免許証があるんじゃないですか?」と言ったら、一同全員「あ。」   という話。

例えば、深い山中から救急に通報が入った。自殺を図った男性がいるという。
「だけどそんな山の中で、よくちょうどよく通りがかった人がいたもんだねえ」とわたしが言うと、ゼンザイは
「だれも通りがかった人なんていないよ」
「・・・・・・じゃあ誰が通報したの?」
「本人」   という話。

で、今から語る話も一応本当にあった話(また聞きなので多少ズレありかと思うが)。
彼の病院の管轄で、一人の男性が路上で倒れていた。財布を取られてしまったのか、所持品は手に持っていたキャベツのみ(このキャベツの謎は最後まで明らかにならなかった)。
病院に運び込まれると男性は意識を取り戻したものの、自分が誰なのか、どこに住んでいたのか、記憶の一切合財を無くしてしまっていた。いわゆる「記憶喪失」である。
昨日この話書いていいかとゼンザイにメールを入れたところ、「記憶喪失って言い方は医学的にはしません。正しくは『全生活史健忘』と言います。文字通り全部のプロフィールを忘れること。」と教えてくれた。ふーん、知ったかぶっちゃって! まあでも、やっぱりあるんですねえ。そういうこと。
そんなわけで当然身元は全くの不明。捜索願いを当たってみてもそれらしい届は出ていない。 

で、当の男性だが現状を把握すると、さして取り乱しはしなかったが、相当不安を覚えたようだ(そりゃ、そうだ)。一生懸命雑誌などに目を通してはみるが、ほんのわずかしか理解できない様子。そんな状況にありながらも彼はいたって純真。「ぼくはですねえ、国の世話にはなりたくないんです。それにいつまでもここにいちゃゼンザイさんや病院にも申し訳ない。だからはやくここを出て働きたいんですよ」と、ヨタヨタでとても働けるような状態じゃないのにそんなことを言う。「ぼくには家族とかいないのかな。いないから捜索願いも出てないんですよね」 目に涙を浮かべて語る彼を見て、ザイゼン、じゃねえや、ゼンザイはなんとかしてやりたい、という思いに強く駆られたそうだ(よっ!)。
そして必死に色々なデータベースを探しているうちに、とうとう該当するものを発見した。が、そこには驚くべき真実が・・・

なんかまだ長くなりそうなので、続きは「完結編」にてお届けします。


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March 12, 2005

歩く稲妻 オリバー・ストーン 『アレクサンダー』

歩く稲妻がペルシャ攻める ホモと文化 食い漁る ゲッチュー
・・・今回はホントひんしゅくネタだな。公開ぼちぼち終了しそうなんで急遽UPです。鳴り物入りで入ってきたわりに、成績苦しいみたいですね。いくら純愛ブーム真っ盛りと言えど、「ヒロインが男」というのがやっぱり致命的だったんではないかと。

実はO・ストーンほぼ初体験。この前と言うと、なんかやりながらテレビで『プラトーン』観たくらい。そんなわけでドキドキもんでしたが、まあ、楽しめました。オリバーさんと言うともっぱら1970年代を舞台にした作品群で知られていますが、今回はなんと紀元前。・・・・・時代飛びすぎだろ。
さて、物語はアレク三太君(以下三太)の複雑な家庭環境から始まります。三太君はパパもママも大好きなのに、夫婦仲は超最悪。どれくらい悪いかと言うと、いつ殺し合いになってもおかしくないくらい。ついでに言っとくと、ママは蛇フェチ。オリバーさんは三太君の以後の行動・・・東方遠征、民族融和、ホモに走る・・・の原因が全てこの幼少期に端を発したものだと主張します。
幼少期を終えると、話は彼の生涯で最も華々しい瞬間である“ガウガメラ(怪獣ではない)の戦い”へと飛びます。けっこう盛り上がるんですが、このパートが終了した時点でまだ1時間。あとの2時間は、三太君の苦悩が延々と語られます。
そんなわけでこの映画、去年の『トロイ』などに比べ、あまりスカッとする作品ではございません。が、オリバー監督は最初からそういうものを作る気はなかったのでしょう。希代の英雄アレクサンダーも、仮面をはぐれば母親から逃げたいだけの悩める青年だったと。しかし、そんな私的な理由で八年も遠征に付き合わされる部下達はたまったもんじゃありません。このあたりの部下達の描写に、自らもベトナム戦争に従軍したオリバーさんの心情がうかがえます。
ですが監督は三太君にもけっこう愛着があるようで、周囲に理解されない孤独な男として、三太君を同情たっぷりに描いています。主要人物であるプトレマイオスの心情が、そのまま監督の三太君に対する思いを表わしているような気がします。

主演はコリン・ファレル。演技派らしいですが、自分は『デアデビル』のいかれた悪役の印象しかありません。今回の登板でますます「へんなやつ」のイメージを強くしました。
また、中盤で出てくる古代都市バビロンの再現は見事。古代ファンは必見です。
あと、先ほど「『トロイ』を意識してない」ということを書きましたが、作中でしきりに「アキレスが、アキレスが」と繰りかえされるところを見ると、やっぱり意識してたのかもしれません。

ジュリアス・シーザーは30代になったある日、「自分は三太がペルシャを倒した歳になったのに、何もなしてない」と嘆いたそうです。
ついでに言うと、エド・ウッドも似たような歳の時、「自分はオーソン・ウエルスが『市民ケーン』を撮った歳になったのに、なにも出来ていない」と嘆いたとか。
自分ももう31ですが、さして特にそういう感慨はございません。あ、だからダメなのか(笑)

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March 11, 2005

注・へレン・ケラーとは関係ありません 真保裕一 『奇跡の人』 虚構編

うーん。この本は紹介するのがむずかしい。なぜかってーと、この作品が何年か前に発表されたとき、ある評論家がかなりネタをわった書評を書いてしまい、大々ひんしゅくをかったことがあったからだ(しかもそのあと開き直ったような発言をしたことが、さらにひんしゅくをかった)。
そんなわけでなるたけ慎重に行きたいものだが、なにせ天性の地雷ステッパー、あんまり自信がありません。でもとりあえずがんばっていきたいと思います。
自分が読んだのはハードカバーだったが、現在は新潮文庫版が手に入りやすい様子。真保裕一というと『ホワイトアウト』が有名だが、わたしはこの作品の方が好き。『ホワイト』も良いけれど。

物語は瀕死の重傷をおった我が子を懸命に介護する母親の手記から始まる。この辺が真保氏の筆達者なところだが、このお母さんの献身ぶりが真に迫った筆致で描かれていて、ついジンと来てしまう。
そんな努力の甲斐あって、すっかり記憶は失われたものの、青年はなんとか普通の状態まで回復する。しかしそこで気がぬけてしまったのか、母親はあっけなく死んでしまう。
悲しみの中、強く生きようと誓う青年。そして彼を暖かく見守る周囲の人々。
この周囲のひとたち・・・ご近所さんやお医者さん・・・が本当にやさしくて、いちいち泣ける。
また、主人公は赤ん坊からいったん人生をやりなおしているため、ナリは30でも、ココロは純真な十代の少年
なのだ。だからモノにたいする見方や感じ方がとても素直で、読んでいて大変微笑ましい。
さて、なんとか生活のメドがついたある日、主人公は母親の手記を読んでいて、ある疑念を抱く。もしかすると母は、自分の過去について何か隠していたのかもしれない。疑念はどんどん膨らんでいき、青年は激しい不安にかられる。そして青年は自分の過去に何があったのか? なぜ自分は重傷をおったのか? その答えを見つけるための旅に出る。

作者は以前インタビューで、「いままでの記憶喪失ものに対して、ある疑問があった」と語っていた。記憶を失っていた人々は、物語の終盤、たいていサーッと目がさめるようにそれを取り戻す。しかし不慮の事故で脳の一部をうしなってしまったとしたら、そこにあった記憶ははたして取り戻せるだろうか。
・・・・・・あー、なんかもういい加減ネタをわっている気がするが。あんな前口上を言った後で本当に気がひけるのだが。すいません! ぶっちゃけちゃいます!
この話、最後まで彼に記憶がよみがえることはありません!
それで果たしてカタルシスが得られるのか、疑問に思われる方も多々おられることだろう。「読んでよかった」と思えるかどうかは諸氏の判断にゆだねるしかないが、わたしは本当に「出会えてよかった」と思えた。

さて、先に紹介した『ボーン』シリーズもそうだが、フィクションの世界においては「記憶喪失」は本当によくあることだ。しかし実際、本当に記憶を失ったという人に、みなさんは会ったことがあるだろうか。軽い記憶障害といった程度のものではなく、自分の名前から何から全て忘れてしまった人。
実はわたしも会ったことはない。だが昨年、友人が実際にそういう人に会い、なかなか大変な経験をした。「実録編」ではその話について語ります。

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March 09, 2005

ひょっこり竜宮島 羽原信義 『蒼穹のファフナー』

えー。これも放映終了からすでに2ヶ月以上経過しておりますが、DVDはリリース続行中なので、ひとつお目こぼしを。
日本近海に浮かぶ奇妙な形の島、竜宮島(たつみやじま)。豊かな自然に抱かれて日々を暮らす少年達の日常は、“フェストゥム”と呼ばれる謎の怪物の襲来により、突如として打ち破られる。このことを予期していたのか、動揺することなく迎撃体制をとる大人たち。そして少年達は、自分らが異形の存在と戦うために育てられた戦士であることを知らされる・・・・・・
この竜宮島、瓦屋根や石垣が立ち並び、階段がやたらと多い。要するに大林宣彦監督の「尾道三部作」をロボットアニメでやりたいのか、と最初は思った。だが中盤でこの島が「平和というものがどんな物なのか」教えるためのテーマパークも兼ねていたことが明らかになると、むしろクレヨンしんちゃんの「オトナ帝国」に近い存在であることがわかる。
作品のテーマは、「実存」だろうか。作中で、登場人物はフェストゥムによりしつこいくらい「あなたは、そこにいますか?」と問い掛けられる。基本的に「群体」であるフェストゥムは、「個」の感情や行動原理を理解できないからだ。そこで彼らは人間を侵食したり、吸収したりすることでそれを理解しようとする。一方少年達は否応なしにやらされる事になった戦いの中で、なぜ、自分がやらねばならないのか、自分の存在価値はなんなのか、答えを探し求めていく構図になっている。
ただ、みていてちょっと辛いのは、色んなところで言われていたが、『エヴァ』その他の先行作品と、イメージがダブるところがちょっと目立つ。スタッフは承知の上でやっているのだろうけど、パッと観て「エヴァの二番煎じ」と結論してしまう人は多いだろう。
逆によかったところは、主人公・一騎とリーダー・総士の友情の回復を描いたくだりなど。一騎は総士の必要とあらば仲間をも切り捨てるような采配が納得できず、自分の肉体が変質していく不安も手伝って島をとびだしてしまう。しかし地獄のような外界の惨状を目の当たりにした彼は、友が背負っていたものの重さを思い知る。そして、自らの意思で友の助けとなることを決意し、島に戻る。こういう健やかなテイストは、エヴァにはあまり見られなかった点だ。
また、戦闘員の年齢層が幅広く(ばあちゃん含む)、平常時は魚屋やサテンのマスターとかやっている描写が面白かった。
あと一点、くだらないことを。主役メカである『ファフナー』はドイツ数字で呼び表わされている。前半主役の11号機は「マークエルフ」という具合。これで1から10まで、ドイツ語でなんと言うか知ることができる・・・と思ったら9号機と10号機は出てこなかった。というわけで、どなたか9と10だけおしえてつかあさい。

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March 06, 2005

比丘尼のビックリハウス 富樫倫太郎 『晴明百物語 八百比丘尼』

トガちゃん、3回目の登場。この本、1日で読んじゃいました。読書速度がめっきり遅くなった自分にしては、近年まれに見るスピード。「ものすごく面白かった!」ってわけでもなかったんですけど。まあ、この「読みやすさ」、トガちゃんの長所の一つですね。

軽い気分で登山に出かけたら、もろに吹雪と遭遇してしまった小泉八雲。命からがら逃げ込んだ洞窟で、彼は不思議な尼僧に介抱される。退屈しのぎにと、尼僧は八雲に奇妙な数編の話を語りだした・・・・・・
この『晴明百物語』、これ以前に『陰陽寮外伝一』と銘打ったものと、副題に『列願鬼』とついた二冊が出されている。どうして『陰陽寮外伝』の字が外れてしまったのかは謎だが、はっきり言ってこのシリーズは『陰陽寮』の外伝にほかならない。登場人物がやけにかぶっているのがその証拠。しかしまあ、本作だけでもそれなりに楽しめるつくりになっている。

トガちゃんは伝奇長編を書くと熱血純情巨編となることが多いのだが、短編となると途端に人が酷薄になる。この『八百比丘尼』、だからか文字通り「地獄にたたきおとされる」救いようのない話が多い。憂鬱なときは遠慮した方がいい。彼のもう一つの持ちネタ「江戸暗黒小説」にもそうした特質はあらわれているようだ。
物語は平安期から明治初期にまで及ぶ。最後の話だけなんか浮いているが、他の作品は時代がバラバラながらも共通するようなムードがあって、なかなか違和感なくまとまっている。

気になるのは前作から登場する「列願鬼」。「願いをかなえる代わりに約束をさせろ」という変な鬼。もちろん大体のやつは途中で守りきれず、恐ろしいオチがまっている。この鬼、ただの化けもんなのか、さらに出自があるのか、今のとこ不明。続巻で明らかになるんだろうか。

やはりみなさんにはまず『陰陽寮』シリーズをオススメする。既刊8冊。大丈夫、相性がよければ一冊3日あれば十分読めます。トガちゃんも手をひろげるのはいいが、ぼちぼち風呂敷をたたんでシリーズを完結させてほしい。しくよろ。

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適当掲示板3、というか近況など

「春は名のみの明の寒さや」
ご感想、最近オススメのもの、ネタ、なんでもお書きください。

春というと大抵の人は暖かくなってきてミもココロもウキウキ♪かもしれませんが、花粉症を患っている私にとっては春は「地獄の季節」に他なりません。
まだそんなに大したことはありませんが、その内涙と鼻水とよだれで顔面がぬらぬらになることは間違いないでしょう。暑さ、寒さは気合でなんとかできないこともないですが、こればっかしは、ねえ。文字通り泣いて暮らすしかありません。

辛気臭い話が続きますが、実は前回から読書状況がほとんどすすんでません。『トライガン』について書いたらついつい読み返したくなってしまい、ドツボにはまってしまったせいです。あ~、しかし泣けるのう。
『ローレライ』始まっちゃいましたね。できれば原作を読み終わってから観にいきたかったのだけど、公開の方が先に終ってしまいそう。明日は気力が持てば『アレキサンダー』を観にいく予定。

マンガについては給料が入り次第オンラインでアメコミ『アストロシティ』『JLA』を購入する予定。二つ合わせて7千円・・・・・ ああ、そうさ! バカだよ!
西原理恵子の『毎日かあさん』第2巻も近々発売ということなので、楽しみにしています。

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March 05, 2005

いまごろ大河ドラマ『新選組!』を振り返ってみようのコーナー⑧

『新選組!』が終ってはや二ヵ月半。去年の今ごろはまだ浪士組結成とかその辺をやっていたんですよね。嗚呼、時の経つのはまことに早いものです。そういえば去年は花粉が少なくてよかったよなあ。
んな、どうでもいい話はさておき、8回目行きます。

#36 たいけつ! ひまわりぐみ
洛中に颯爽と現れ、悪を懲らす正義のヒーロー、鞍馬天狗。新選組は彼をあと少しで捕縛できる、というところで見廻組とぶつかり、捕り逃がしてしまう。当然二つの組の仲は悪化。折りしも京で火災が発生。鎮火の指揮を巡って激突は必至と思われたが・・・・・・
見廻組は新選組のライバルと、そういうことになってます。黒鉄ヒロシ先生の『京都見廻組』という本のオビには、「見廻組はなぜ新選組に負けたのか?」とありましたが、やはりネーミングの時点で既に・・・・・・
隊士「みなさーん、お変わりありませんか-? 見廻りで-す(笑顔で)」
主婦「あらー! いつもごくろうさまでーす!(笑顔で)」
こんな情景が浮かんできます。また、この時代○○組、××党、△△隊など星の数ほどあったわけですが、新選組ほど「キャラ総立ち」な集団はなかったでしょう。そんな連中と張り合わなきゃならなかった見廻組は、いろんな意味で気の毒な方たちです。伊原剛史さん演じる佐々木只三郎は、真摯とダーティの入り混じった魅力がありますけど。
この回の重要アイテム:捨助のほっかむり

#37 燃えよドラゴンホース
この回は二つのパートに別れています。Aパートでは松原さんと未亡人の道ならぬ恋の結末が描かれます。
いやー、女って本当に怖いですね。そして、男って本当にバカですね・・・・・・。ここでツッコミたいのは斉藤一。
松原 「(そのひとを斬らないでくれ・・・)」
斉藤 「(うむ、わかった)」→松原がこときれたのち、ためらいもせず「バサ!」
 ・・・って、お前は全然わかっとらん! ついでにことの次第を聞いて「みんな、よくやった」と言う局長もよくわかりません。
続いてBパート。薩長同盟締結の瞬間です。竜馬の話では一番のヤマ場になるところですね。当然明治の三傑も揃い踏み。ここで二人を握手させるとこまではいいのですが、「ほおずりしろ」はさすがに悪乗りですね。さぞかしヒゲがじょりじょりしたことでしょう。
この回の重要アイテム:左之助がやぶいちゃった国宝級の掛け軸。彼ならかならずやると思いました。

#38 お金がない!
悲劇の勘定方・河合奢三郎が、なぜ死なねばならなかったのか? を45分かけてじっくりと描きます。わたしの周りで一番評判の悪かった回。でもこれ、ほぼ史実ですからね・・・・・・ 恐らく三谷さんはこの回を、33回「友の死」と対にするつもりで書かれたのでは。山南さんの場合はあれでいいと思います。しかしあのエピソードだけでは、新選組が行ってきた粛清等が美化されてしまう恐れがある。それでバランスをとるために、河合さんの死をあえて痛々しく、見苦しく描く必要があったのでしょう。そうはわかっていても、最後にやってきた飛脚に対し、「おせーよ!」と叫ばずにはいられません。
話を変えて、冒頭は寺田屋襲撃のシーン。ここでは大体おりょうさんがスッポンポンで報せに行く、というのがお約束です。けれどそこはさすがに国営放送。代わりになぜか野朗のハダカばかり目立つ回でもありました。
この回のバッドアイテム:禍根を残した西洋式兵術所

#39 PS.周平、弱気です
正式タイトルは「将軍死す!」というものでしたが、その話はラスト3分のみというあたり、巨人が負けた翌日のスポーツ報知を彷彿とさせます。で、主な内容は勇が養子にとった周平ちゃんが周囲に翻弄されてピンチに陥る話。
先のエピソードもそうですが、「新選組!の法則」に、「死にそうなやつをみんな助けようとするのだけど、報われない」というのがあります。その法則をただ一人切り抜けたのが彼、近藤周平です。いや、いい話です。でも、何もそこまで殴らんでも、な沖田。「どうやっても上達しない人間だっているんです!」そこまで言わんでも、な平助。「例外は認めん」と言い放つ局長。みんな微妙にひどい(笑)。そんなわけで、源さんのありがたみがしみじみと伝わるエピソードでもありました。
谷長兄、次兄もこれにて退場。まいどさん、笑顔がさわやかで嫌いじゃなかったんですけどね。浅野薫くんに関してはもっと膨らましたかったのだろうけど、時間的余裕がなくなって断念、というとこでしょうか。
この回の重要アイテム:斉藤が作ったピクミン似の結婚祝い

#40 幕末戦隊ごりょえんじゃー
イヤミでインテリのイケメン、伊東甲子太郎は、新選組に見切りをつけ、新たな隊を作ることを画策。永倉・斉藤を懐柔しようと試みるが、みごとに玉砕。そんな師を見て平助は、伊東についていくことを決める。しかし勝手な理由で組を抜けることはご法度。またしても血の雨がふるのか。
伊東甲子太郎。彼に関しては「どうもなにやら色々企んでいたらしいが、結局なにがやりたかったかよくわからないひと」というのが私の認識です。谷原章介氏は最近こんなイヤミな役ばかりやらされていますね。
平助がなぜ伊東についていくのか、不思議といえば不思議。どう考えても近藤派の方が居心地よさそうなのに。たぶん彼はリクルートに失敗してヤケ酒をあおる師匠をみて、「こっちの方が人材たらないのだろうな」と思ったんでしょうね。そんな人一倍優しい平助も、忘れがたいキャラの一人です。それにしても「三年後のお前がうらやましい」とか、「あいつだけは死なせたくない」とか、ついつい「あちゃー」と言ってしまうセリフが多いです。
冒頭で前回の全力疾走が祟ってか、深雪太夫がご逝去。でも優香ちゃんの出番はまだ終らない。
この回の重要アイテム:平助に送られた例のコスチューム

37回までが新選組の最盛期を描く「風雲編」ということ。そしていよいよ新選組の衰亡を描く「落日編」が始まります。実は、あの筆が遅いということにかけては定評のある三谷さんが、45分×49回もあるドラマを書けるのかな、とそれがけっこう不安でございました。で、このころ「最終回まで書いた」という話を聞き、「人間、やればできるんだな」と胸をなでおろした次第です。ご無礼の段、平に。

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March 02, 2005

帰ってきたジェイソン(・ボーン) ポール・グリーングラス 『ボーン・スプレマシー』

やっとこ本命にたどりつきました。アイデンティティーに比べると、supremacyってあまり聞かない単語ですよね。辞書でひいてみたら、「至高」とか「支配権」と出ていました。「至高のボ-ン」? 「ボーンの支配権」? うーん、わかんない。とりあえずベタでも『ボーン・アイデンティティー2』とかした方が、一見さんには親切だったのではないでしょうか。以下は前作をご覧になった方のみご覧ください。

あの事件から二年。フラッシュバックに悩まされつつも、ジェイソン(・ボーン)は彼女と平和な暮らしを満喫していた。しかしその安息の日々は、ある刺客の登場でもろくも崩れ去る。一方そのころベルリンで、CIAのスパイが内偵中に殺害されるとういう事態が発生。現場からはボーンの指紋が発見される。一体なぜ?という出だし。自分を罠にはめたのは誰か? なんの目的で? ジェイソンのあらたな戦いがはじまります。
前作は失われた気憶が徐々に蘇っていくのが面白かったんですよね。記憶もどったんだから、面白さも半減かと思ったら、どうやらジェイソン君、他にも色々忘れているやばい仕事があるようで。今回もやはり「段々思い出していく」展開は健在。ヨーロッパ旅行疑似体験や、雨どいクライミングなども同様です。

良かったところは、前作で「ちょっとスパイ教育が甘かったんじゃないの?」と言いたいところがありましたが、本作ではさらに時代を遡って、なぜあの任務ができなかったのか、という理由を補強してあります。また、最近予告で見せ場を全部ばらしちゃったり・・・・という事がちょくちょくあるけど、この『B・スプレマシー』の予告はベタなようでなかなか考えられていました。
2,3つっこみたい事もあるけど、あえて言いません。半ばを過ぎたあたりで、なんだかすごく「このまま終ったらどうしよう」という不安にかられる個所があるんですね。でもそのあとちゃんともう一山やってくれたので、それだけでわたしとしては大満足です。また、○○○にわざわざ○○しに行く、というヒーロー像も、今までのハリウッドにはいないタイプではないでしょうか。『ガン○ムW』ではやっていましたが。

さて、原作は全三作とのこと。もしさらなる続編が創られるのであれば、ボーン君はまだ当分カタギには戻れなさそう。あわれ。

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March 01, 2005

ジェイソン(・ボーン)は生きていた! ダグ・リーマン 『ボーン・アイデンティティー』

アクション映画連続企画第2弾は、現在続編が好評公開中の、この作品。たしか公開されたのは、今から二年前くらいだったかな? 原作はR・ラドラムの『暗殺者』。
イタリアの近海で、マグロになりかけた男が漁船に拾われる。彼は記憶をすっかり失っていた。所持品はというと、各国のパスポートとか、なにやら怪しげな品ばかり。どうやらヤバイことの関わっていた模様。パスポートには「ジェイソン・ボーン」の名があるけど、それとて本名かどうかは怪しい。
それを裏付けるかのように、彼の周囲に次々と刺客が姿を表わす。しかし頭に記憶が残っていなくとも、体がしこまれた技術を覚えていた。それにより敵をしりぞけ、逃亡と探求の旅に出る主人公。なんかそれって『新ワイルド7』みたい(知ってる?)。

この『B・アイデンティティー』、特徴はよく言えばリアル、悪く言うと地味な所ですね。アクションものを見ていると、「そんなん、ありえねーだろ」というくらい、ヒーローが人間ばなれした体さばきをするじゃないですか(それはそれで面白いのですが)。比べて本作のアクションは、思い切りがんばって鍛えれば、「あ、おれもできるかもしれない」というものが多いです。マンガでいうなら、『MASTERキートン』に似た味付け。こうした「地味アクション」がジェイソン君と観客の一体感を強くしています。ヒーロー、ヒロインがさして美形でないあたりまで、リアルです。
主人公が敵の攻撃をかわしつつ、自分の記憶の真相に迫っていく流れが、まことにハラハラさせられます。大抵アクションヒーローというのは自信満々で、あまり自分の行動について悩まないものですが、ジェイソン君はなにせ記憶がまるきしないので始終揺らぎっぱなし。おのれのルーツを懸命に探っていく様子に、「がんばれ」と応援したくなること請け合いです。最後には軽いオチもあり。ただ、人によっては怒り出すかも。
もう一点リアルなのは、背景にセットが少なく、ヨーロッパ各国の様々な風景が楽しめるところ。自宅にいながら、さながら欧州旅行にでもいった気分。ああああああああ! 欧州行きてえええええええええ!
失礼。まあ、続編があるくらいですから、あまりひどいオチにはなりません。ていうか、続編なんか創るから、せっかく○せいっぱいのボーンご夫妻が、あんなことになっちゃうんじゃないですか。

そういうわけで『ボーン・スプレマシー』をご覧になられる予定の方は、まずこちらを見てからどうぞ。

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