地球発バカボンド 幸村誠・谷口悟郎 『プラネテス』
そういえば、自他共に認めるアニメ好きでありながら、テレビアニメのレビューは初めてだ。この『プラネテス』、もともとはコミックが原作(ちなみに未読)で、原作のファンからも「再構成が見事」と絶賛されるという非常に珍しい作品。
わたしが始めて宇宙に思いを馳せたのは、幼少のみぎり親に買ってもらった、学研マンガひみつシリーズ第1巻『宇宙のひみつ』である。慣性の法則、月の重力、ウラシマ効果、光のスピードなんかは、大体それにおしえてもらった。ただ、なにぶん移り気な子どもだったので、興味の対象はすぐに昆虫や恐竜やロボの方へ行ってしまった。
けれど、『ガンダム』『宇宙の騎士テッカマンブレード』『無限のリヴァイアス』といった良質の宇宙アニメを観ていると、あの時の気持ちが、フイに蘇ることもある。この『プラネテス』もそうした作品の一つだ。
時は非常に近い未来。宇宙では地球を周回する、シップやステーションから出たゴミ“デブリ”が問題になっていた。ちょうど列車(宇宙船)に向かって無数の投石が飛んでくるような状況である。そこでゴミを回収する“デブリ屋”の登場である。この“デブリ屋”、直接利益に結びつくわけではないので、会社では完全にオマケ扱い。メンバーもどことなくやる気なさげなヤツばかり。しかし彼らはどんな困難なミッションもかならずやり遂げる。とまあ、前半ではそんな「宇宙版ショムニ」のような痛快なエピソードが色々と描かれる。
けれども、登場人物の精神をギリギリまで追い込むことには定評のある、アニメ界きってのSM師?谷口悟郎がそれだけで終るはずはない。後半に入るとわたしたちは愛着の沸いてきたキャラクターの精神的暗部をまざまざと見せられ、「いや、○○さんのこんな姿、知りたくなかった!」と女子高生のように、画面の前で身悶えすることになる。そう、地上から思いを馳せている分には問題ないけれど、行けば行ったで、死と孤独が常に隣り合う世界なのだ。宇宙とは。また、現在にも同様の、宇宙開発が抱える問題点・矛盾点も作品ははっきりと指摘する。もちろん、そうしたものを乗り越えてラストまで観たならば、「本当に観ていてよかった」と思えるはずだ。
「われ、思うゆえにわれあり」と言う。気障な言い方になるが、我々は宇宙全体から見れば、ゴミ以下の非常に微小な存在でしかない。けれども我々が知覚するがゆえに、宇宙もまた存在しうるのでは。そんな風な感想を抱いた。
で、今は『ふたつのスピカ』をチェックしているSGAでした。
Comments
私は逆に連載中の原作は読んでたけどアニメは見てないので、これを読んでちょっと興味が出てきました。
そういや、「バガボンド」はずっと「今週は休載させていただきます」の開店休業状態なんですよね。
井上雄彦氏の公式サイトでは再開に向けていろいろ準備中との事なので、別段終了ではないようですが。
Posted by: 淳庵 | February 20, 2005 01:50 AM
そう言えば『プラネテス』原作も一応「第1部完」扱いなんでしたっけ? 作者はもう描く気ない、なんてウワサも聞きましたが。とりあえず全4巻ならいつでもそろえられるかな。
>別段終了ではないようですが
ホッとしました。さすがに長い間マンガ読み続けてると気がながくなりますね。『スラムダンク』も雑誌での終了時には「第1部完」と書いてあったと思います。
この言葉便利ですよね~
特に中断でやきもきさせられたのは、淳庵さまとお会いしたサイトの、あのマンガ(笑)
Posted by: SGA屋伍一 | February 20, 2005 09:40 PM