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February 28, 2005

三作目を散策する ジョナサン・モストウ 『ターミネーター3』

まことに勝手ながら、ネタが腐る前にアクション映画の話題を3本続けます。めざせ! 連続更新!(目標低い・・・・・・)
最初の一本はおととい地上波でやっていたこれです。『ターミネーター3(さん)』、略して『ターミねーちゃん』。漫画家の久米田康二さんは、十年前にターミネーター三代目が女性であることを予見されていました。お見事。ちなみにこの女優さん、オーディション時、「ターミネーターをやるってことは冒頭素っ裸でで出るってことだよ! いいの?」と聞かれ、「どってことねえ」と答えたそうです。
この『ターミネーター』シリーズ、他のアクションと比べて何が違っているのかというと、「追うものと追われるものの間に挟まれて、右往左往する主人公」の構図だと考えます。前半のワゴン、クレーン車、バイクと、サイズのまるで違う三台がクルクル順番を入れ替えながらチェイスする、そんなところにこの構図がはっきりと表されています。こういうの、意外にあまりないと思うんですよね。
1、2作目と監督は違いますが、(キャメロンどうしちゃったんだろう・・・・・)3作目でもその構図は健在。今回メガホンをとったジョナサン・モストウさんは、この前に『U-571』というなかなかまとまった潜水艦映画を撮っておられます。この作品、一言で言うと「ハートウォーマーだった艦長が段々人でなしになっていく」お話。機会があれば、こちらもどうぞ。
それで、本作の印象ですが、「せっかくきちんとまとまっていたものを、散らかすだけ散らかして、後片付けも早々に逃げた」という感じでした。スカイネットが作られるきっかけを、あれほどしっかり処分したのに、またどうやって蒸し返すのか期待してたんですけど、結局のところ「歴史の復元力」ということでごまかされたようです。
でもですねえ、わたしこの作品、そこそこ好きな方です。それは単純なハッピーエンドに逃げなかったところとか、三作目でもパワーが落ちていない点を評価してのことです。
三作目を面白く作るって、難しいですよね。二作目ですら難しいのに。違う監督による三作目には例えば『ジュラシック・パーク3』などありますが、なかなかがんばっていたものの、目新しさが薄れ、ややこぢんまりしてしまった感は否めなせん。ですからそうなるよりかは、散らかしてでもインパクトを重視したこちらの方が正解と思いました。
もう一つ評価したいのは、ときおり一息つけるようなギャグがちょこちょこ盛り込まれているところ。どんな映画にもユーモアが必要と、わたしは考えます。ウォルフガング・ペーターゼン、あなたに言ってます。
恐らく本来の「ターミネーター1号機」も登場します。なんでもできちゃうタミさんも、最初はこうだったんだ・・・と、微笑ましい気分にさせられます。でもやっていることは、相変わらず凶悪。
思い切り4作目にひっぱったまま幕となりました。ぼちぼち企画はあがっているみたいですが、拝めるのはいつのことでしょう。シュワちゃん、州知事になちゃったし。
最後に。「スカイネット」って会社、IT系でいかにもありそうな名前ですよね。やっぱりアクセスすると、終末の日とか来ちゃうんでしょうか。みなさんもくれぐれもお気をつけください。

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February 26, 2005

人間台風の伝説 内藤義弘 『トライガン・マキシマム』

“はるか時の彼方 まだ見ぬ 遠き場所で 唄い続けられる 同じ人類のうた。”

最初に断わっておくと、この作品、後ろになにも付かない『トライガン』というコミックの続編である。
もともと『少年キャプテン』という雑誌に連載されていたのだが、雑誌の休刊→『ヤングキングOURS』への移籍に伴い、タイトルもちょこっと変わったというわけ。だから続編というよりかは、思い切り直接つながった関係にある。

殖民星への航海の途中、不慮の事故により最寄の星に不時着した人類。そこは過酷な環境であるがゆえに、人々は西部開拓時代のような暮らしを強いられる。これはそんな世界で「人間台風」と恐れられる、伝説のガンマン、ヴァッシュ・ザ・スタンピードの物語。
天はニ物を与えず、と言う。あんまり当てにならぬ言葉だが、確かに文才と画力の二つを併せ持った漫画家は稀だ。
この『トライガン』シリーズはその稀な作品の一つで、時折挿入される上記のようなモノローグがまことに格調高く、叙情的である。またそうした文章と、まことにしょうもないギャグが同居しているところも、ある意味すごい。
正直言えば、人の顔の書き方等に、ひっかかりを覚える読者もあろうかと思う。しかし広大な空間にちゃんと広がりをもたせたり、躍動感あふれるポーズや個性的な異形のものたちを次々と書き出していけるのは、紛れもなく「異能」である。

“だから思ったのだ 全てやりとげた明日を この男と共に 分かち合いたいと”

さてこのヴァッシュという男、大仰な噂が流れているわりには、笑顔のホニャララとした、一見頼りなさげな青年である。中身も見かけと同様で、あまり揉め事は好きでなく、ガンマンであるのに徹底した不殺をこころがけ、ひどい悪党でも決して急所は撃たない。その背後には、「どんな人間でも命は尊いもの」というポリシーがある。
作者はそんなヴァッシュのアンチテーゼとして、二人のキャラを用意する。
一人はヴァッシュの双子(またっす!)の兄、ナイブズ。こちらはまた極端で、「全ての人類は悪しきもの」という考えを強く抱いていて、最終的には人類の殲滅を企んでいる。彼はそれだけの力をもっているのだ。
もう一人は巡回牧師兼殺し屋の、二コラス・D・ウルフウッド。彼は自分や守るべきものを守るためには、殺人もやむなし、と考えている。到底相容れないヴァッシュとナイブズにくらべ、ヴァッシュと二コラスは多少共通点がないでもない。それで二人は弁証法にも似た論争を続けながら、果てしない荒野を延々と旅しつづける。
三人とも、そうなってしまったのには、それぞれもっともな理由がある。また、三人とも作者の分身であり、代弁者なのであろう。
昨年末、11巻と同時に出た10巻では、ヴァッシュと二コラスの旅に一つの転機が訪れる。このあたりのエピソードは、涙無くしては読めない。実はいまこうして書いている間にも、涙目にさせられてしまうほどなのである。笑ってやってくんなまし。

同じ時期人気を博し、なにかと共通点の多い『ベルセルク』が、いまだ出口の見えない迷宮のただ中にあるのに対し、この『トライガン・マキシマム』は今、確かに終局を射程に捕らえている。果たしてその旅の終着点で、ヴァッシュは何を見るのか。
“時は満ちる 語るべきは 未来へ続く その軌跡のみ”

PS.このマンガの単行本、カバーをとると、まことにくだらなく、妙チキリンなイラストが書かれている。それはそれで楽しいのだが、10巻に限っては感動が薄れそうで、見るのをこらえていた。が、先日とうとうガマンできずに見てしまった。
・・・・・・内藤先生のばか。

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February 23, 2005

ソフィーの洗濯 宮崎駿 『ハウルの動く城』

本日は昨年から続いている「多足歩行メカシリーズ」の決定版、『ハウルの動く城』を取り上げます。
今回のヒーローはコテコテの美形で、ヒロインは8、90のばあさん・・・ 男性ファンは置いてけぼりかーい、と言いたくもなりますが、いつもどおりにメカやゲテモノも色々でてきますので、それでガマンしましょう。

さて、「ファミリー向け映画」の第一人者のように言われている宮ちゃんだが、けっこう趣味の悪い部分もある人だと思う。そして私にとっては、その悪趣味さが目立っている作品の方が面白かったりする(←単にてめえが悪趣味なんじゃ?) この『ハウル』、そうした意味ではまあまあ良かった。今回は特にスライム系の活躍が目立っていた。さながら101匹スライムちゃん大行進の感あり。
他にも例によってガラクタ、食い物、異国情緒、飛翔感など、絵を見ているだけで2時間はあっと言う間だ。だが、「じゃあどういう話だったの?」と聞かれると、ひごろわかり易い話に慣れ親しんでばかりいると、こういう時非常に困る。

そこで足りない頭を使ってそれなりに考えてみました。まずヒロインのソフィーにとっては、歳相応の若さを取り戻していく物語。冒頭老婆に変えられた彼女は、わりかしはやくその環境に順応する。普通あのくらいの子が一夜にしてばあちゃんになったら、くびをくくりたくなるんじゃ? と思うけど、呪いを受けるより前から心がフケこんでいたので、なりもバアサンになったところで「どってこたない」ということなのだろうか。そんな彼女もハウルと知り合うことで、徐々に心の(体も)若さを取り戻していく。
逆にヒーローのハウルにとっては伴侶を得た事で、少年から大人になっていく物語。ソフィーに茶髪を黒く染められてしまったり、最後で本当の○○を取り戻す・・・・生きる上での真の目的を見出す?、という箇所から、そう類推できる。
・・・・・と書いてはみたものの、いささか安直かもしれない。ご意見ある方は是非聞かせて欲しい。

くだらないことを幾つか
・倍賞千恵子より、我衆院と美輪明宏の怪演が強烈だった。
・カカシのキャラに愛情が芽生えたが、最後の最後で裏切られた気がした。
・ハウルみたいなやつどっかで・・・と思ったら石川賢は『魔獣戦線』の来留間慎一くんによく似ています。

さすがに今回は宮ちゃん、「これで引退」とか言わないみたいだが、かえって不安になったりして。まあ次回も期待してますよ!

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February 22, 2005

いまごろ大河ドラマ『新選組!』を振り返ってみようのコーナー⑦

伊東 「この際一から新しく隊を作り直してみてはいかがですか? 実はもう名前も考えてあるのです」
近藤 「どんな名前なのですか?」
伊東 「はい。ずばり初心に返るという意味で、『少年隊』」
近藤 「・・・・・・」
伊東 「私がヒガシ、あなたがカッチャン、そしてニシキは・・・」
新見 「おれ、もう死んでんだけど」
失礼しました。第7回です。

#31 江戸の国から‘64 帰郷
夢を抱いて故郷を飛び出した青年がいたわけであり。しかし都会での生活は楽しいことばかりではないわけで、青年の心と体は深く疲労してしまうわけであり。そんな彼を、故郷の人々と純朴な父親は優しく包み込むわけであり・・・
倉○聡の名作を思わせる一編。三谷さんは絶対にこの効果をねらって、周斎役を田中邦衛にしたのだと思う。
しかし局長が江戸で癒されている間に、以前造反したメンバーの一人が粛清されてしまうわけであり(しつこい)。
この葛山武八郎を演ずるのはぐっさんの相方の平畠さん。「影がうすい」という芸風のためか、「いつの間にかいた」という扱いでしたが、最後は痛切な印象を伴って退場されていきました。
それに加えて伊東甲子太郎の本格加入。このイヤミなイケメンがなにも企んでないはずはない。山南さんはますます居心地が悪くなり、多くの波乱をはらんで次回へ。
この回の重要アイテム:朱里の名の由来。ええお話でがんす。

#32 敬ちゃんの「どこまで行くの?」
良かれとおもってやったことが犠牲者をだしてしまい、激しく落ち込む山南さん。ウンチクでも伊東に押されてしまい、ますます自分の存在意義について悩む。そして彼はある決定をくだす・・・
山南退場編の前編。彼が最後に色々な人に別れを告げていくところが思い出深い。竜馬には「託す」という手紙を残す。これが後に竜馬にやる気をおこさせるきっかけとなるわけで、「山南さんの死を無駄にしたくない」という三谷さんの心情が伺える。でもこれが新選組衰亡の遠因ともなってしまうわけで。うーむ。
個人的に涙ちょちょ切れたのは、「もっともっと近藤や土方のために働きたい」と必死で剣を振るう総司に、黙って行けばいいのについつい「剣先が下がっているね」と声をかけてしまうところ。
永倉&原田のわざとらしい芝居が数少ない笑いポイント。
この回の重要アイテム:朱里との個人授業の教材に使われた『風雲児たち』(高野正宗さまのネタより)

#33 サンナン記念日
逃げてくれ、逃げてくれという皆の気持ちも知らず、自分から出てきてしまう山南さん。だれもがなんとかならないものかと天に祈るが、とうとうその時が来てしまった・・・
年末にアンコール放送されたほどに、視聴者に深い感銘を与えた回。月並みですが、わたしもこの回がベスト、というか、最も印象深いエピソードです。
山南さんはすでに覚悟を決めている。悲しいのは残されていく人たちなんですね。特に彼が死ぬのを察しつつ懸命に笑顔で見送る朱里ちゃん。おいおいと泣き喚くより、よっぽど切のうございました。
原田、永倉、河合もそれぞれ遺言を受け取りますが、後の展開を知っている身としては、「おまえら人の話ちゃんと聞いとけ」といいたくなります。
ラストで号泣する近藤と土方は、なんだか親に置いていかれた子どものよう。芹沢が乗り越えねばならぬ荒々しい父親だったとすれば、山南さんはみんなを暖かく包み込む母親のような存在だったのかもしれません。ただ、新選組ってあんまり出来のいい子どもじゃなかったような。
この切れ味が いいねと君が言ったから 二月二十三日はサンナン記念日 (思いきり字余り)
この回の重要アイテム:季節はずれの菜の花

#34 6年目の浮気発覚
山南さんの死で気落ちした近藤は、その寂しさを埋めるためにか、長年お付き合いしていた深雪太夫を身請けすることを決める。ところが天のイタズラか、同日に抜き打ちで本妻が来てしまったからさあ大変。
先回のあとにこれですよ・・・ みーたーにーさーん!!!! けれどこのコントラストが、視聴者にも出演者にも強烈な印象を与えたことは確かなようです。
この回の名場面、名台詞をあげていったらキリがないのですが、自分が一番ツボだったのは源さんの「歳三、おめえってやつは・・・」。さすがにキャリアが長いだけあって、「芝居してるんだな」という芝居が大変お上手。
他にも「近藤勇の妾がきてるぞ。ニヤリ」(BY桂小五郎)とか、「みなそれぞれにありがとー!」とか。
三谷さんの得意ギャグに「せっかく話がまとまりかけたところへ、間の悪い奴が来て台無しにしてしまう」というのがありますが、この回はそのオンパレードという感じでした。最後に急にキリリとかっこつける慎吾くん。いまさら遅いっつーの。
この回の重要アイテム:源さんが涙目で喰ってたまんじゅう

#35 ほうき・はたき・みゆき
「京都引越案内」というのも考えました。かねてより計画されていた屯所の移転が実行される。行き先は西本願寺。それは長い間親しんでいた八木家の人々とのお別れでもあった。
というわけで、ひっこしのドタバタの合い間をぬって、ヒデちゃんと総司の切ないロマンスが展開される。「沖田さんがいたという証がほしいの」というヒデちゃん。果たしてカメラが消えたあとに何があったのか・・・ 病気持ちなんだからあんまりディープなことはやらなかったと思いますが。
面白かったのはほっかむりをした捨助が「天狗!」と呼ばれるところ。おそらく鞍馬天狗を意識しての演出かと。次回の大河へのヒキも兼ねてかと。でも出てきたのは天狗じゃなくて、もののけのバーサン(ジーサン?)でした。
松原さんの悲恋のエピソードもこの辺から。ガキが覚書をそっと近藤さんに手渡すシーンがようございました。
この回の重要アイテム:なにがなんだかわからなかった小汚いはたき。桂さん、言伝はもうちょっとわかりやすく。

いつもとくらべてシンミリしたレビューになっちゃいました(どこがだっ!)。やはり「最大のヤマ場」って31-33話のことを言ってたんでしょうね。基本的にいつも似たような表情の堺雅人氏。この人の演技は言わば「能面」で、場面や状況によっていかようにも見えるという。だからたまにその「面」がはずれると、我々としてはドキッとするんですよね。見事な山南敬助でした。

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February 19, 2005

人間不合格 太宰治 『走れメロス』

(注・以下の文章は到底文学を真面目に論じたものではありません。「冗談は嫌いだ」という方、太宰治を心から愛する方はどうかお引取りください)

あれは何年前のことでしょう。帰りの電車で何か本を読みたい。でもポッケに残ったのは300円だけ。これで買える文庫本はないかな~と近くの書店を探したところ、一冊見つかりました。それは太宰治著・『人間失格』。
・・・ブルーな気分の帰り道でした(笑)

で、『メロス』です。最初に知ったのはニッセイの作ったアニメ。のちに教科書で原典を読み、単純に感動しました。まあ、メロスの約束を果たすためには死をも厭わない男気とか、セリヌンティウスの友のためには命の一つくらいくれちゃるわい、という友情に、心打たれたわけですね。
ところが最近、あるサイトで「『メロス』のここがおかしい」という内容の文章を目にしました。読んでみると、なるほど、いちいちもっともなことが書かれてるんです。「ああ、そういえばそうだなあ」と。自分、好きになってしまうと欠点とかまるで目に入らなくなってしまう性向があり、それで何度か失敗もしております。
ま、それは置いといて(笑)、『メロス』に感動してしまった人間としては、そのまま引き下がっているのはなんだか癪な気がします。そこで『メロス』擁護のために一筆?書くことにいたしました。そういえばそれにうってつけの、「いい話」がひとつあったんです。以下は、わたしが中学生の折り学校に配られた、『文学者のA海』という冊子に載せられていたものです(やや脚色入れてますが)。

太宰治と壇一雄。当時「文壇のダブル・ダイナマイト」と呼ばれた二人は、旅先の小料理屋で一杯やることにしました。ところが計画性のまるでない二人のこと。高い魚をホイホイ注文しているうち、手持ちの金額では勘定がとても払えなくなっていることに気がつきます(馬鹿だ)。そこで太宰はダンを泊まっていた旅館に人質として残し、一人東京に金策のため、帰ります。太宰の帰りを待ちわびるダン。ところがどっこい大作、まてどくらせど太宰は戻ってこない。いい加減堪忍袋の緒が切れたダンは、親戚を呼び寄せて金を払わせ、なんとか自由の身になります。
「だざいーッ! ぶっころーすッ!」と殺る気まんまんで東京にかえってきたダン。血眼になって太宰の居所を探し回った結果、I伏鱒二宅で飲んだくれている標的を発見。「ワレええ度胸しとるやないけ!」と締め上げます。すると、太宰は、「お、お、おれだってつらかったんだぞーっ!」と逆切れしたといいます。

・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・

なんていい話でしょう。本家『メロス』の感動もふっとびます。しかし自分の失敗を、ずうずうしくも美談に造り変えて発表してしまう太宰のこういうダメダメさに、ある人は母性愛をくすぐられ、ある人は共感を覚えてしまうのでしょう。数年前のデータですが、新潮文庫の累計売上トップが『人間失格』というのもその辺から来ている気がします。「安いから」というのもあると思いますが(ちなみにダンさんは『メロス』発表後、「名作を創る手助けができてよかった」なんてコメントをのこしています。この人もようわからん人だ)。

少しは『メロス』擁護になったでしょうか。ていうか、全部敵に回した気がします。
馬鹿は死ななきゃ治らない、というお話。以上。

追記:より正確な事実が知りたい方は、以下のURLをごらんください。
    http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/memb/hayashi/meros.html

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February 18, 2005

地球発バカボンド 幸村誠・谷口悟郎 『プラネテス』

そういえば、自他共に認めるアニメ好きでありながら、テレビアニメのレビューは初めてだ。この『プラネテス』、もともとはコミックが原作(ちなみに未読)で、原作のファンからも「再構成が見事」と絶賛されるという非常に珍しい作品。

わたしが始めて宇宙に思いを馳せたのは、幼少のみぎり親に買ってもらった、学研マンガひみつシリーズ第1巻『宇宙のひみつ』である。慣性の法則、月の重力、ウラシマ効果、光のスピードなんかは、大体それにおしえてもらった。ただ、なにぶん移り気な子どもだったので、興味の対象はすぐに昆虫や恐竜やロボの方へ行ってしまった。
けれど、『ガンダム』『宇宙の騎士テッカマンブレード』『無限のリヴァイアス』といった良質の宇宙アニメを観ていると、あの時の気持ちが、フイに蘇ることもある。この『プラネテス』もそうした作品の一つだ。

時は非常に近い未来。宇宙では地球を周回する、シップやステーションから出たゴミ“デブリ”が問題になっていた。ちょうど列車(宇宙船)に向かって無数の投石が飛んでくるような状況である。そこでゴミを回収する“デブリ屋”の登場である。この“デブリ屋”、直接利益に結びつくわけではないので、会社では完全にオマケ扱い。メンバーもどことなくやる気なさげなヤツばかり。しかし彼らはどんな困難なミッションもかならずやり遂げる。とまあ、前半ではそんな「宇宙版ショムニ」のような痛快なエピソードが色々と描かれる。

けれども、登場人物の精神をギリギリまで追い込むことには定評のある、アニメ界きってのSM師?谷口悟郎がそれだけで終るはずはない。後半に入るとわたしたちは愛着の沸いてきたキャラクターの精神的暗部をまざまざと見せられ、「いや、○○さんのこんな姿、知りたくなかった!」と女子高生のように、画面の前で身悶えすることになる。そう、地上から思いを馳せている分には問題ないけれど、行けば行ったで、死と孤独が常に隣り合う世界なのだ。宇宙とは。また、現在にも同様の、宇宙開発が抱える問題点・矛盾点も作品ははっきりと指摘する。もちろん、そうしたものを乗り越えてラストまで観たならば、「本当に観ていてよかった」と思えるはずだ。
「われ、思うゆえにわれあり」と言う。気障な言い方になるが、我々は宇宙全体から見れば、ゴミ以下の非常に微小な存在でしかない。けれども我々が知覚するがゆえに、宇宙もまた存在しうるのでは。そんな風な感想を抱いた。

で、今は『ふたつのスピカ』をチェックしているSGAでした。

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適当掲示板2&(よせばいいのに)近日公開予定

とりあえず置いときます。よっこらしょ、と。
ご意見、ご感想、ご要望、ご指摘、よろず承りますが、カミソリは安全に限らせていただきます。

ついでにいまのとこ予定している作品をば
活字:読了・・・富樫倫太郎(またか) 『晴明百物語 八百比丘尼』
    現在進行中・・・島田荘司 『龍臥亭幻想』 早川いくを 『へんないきもの』
    蔵出し・・・太宰治(マジか?) 『走れメロス』 真保裕一 『奇跡の人』
    購入済み・・・福井晴敏 『終戦のローレライ』(Ⅰ・Ⅱ) 村山知義 『忍びの者』(正・続)

マンガ:内藤義弘 『トライガン・マキシマム』

アニメ:幸村誠・谷口悟郎 『プラネテス』 羽原信義 『蒼穹のファフナー』 宮崎駿 『未来少年コナン』
    
映画:鑑賞済・・・宮崎駿 『ハウルの動く城』
    現在鑑賞途中・・・クァク・チェヨン 『猟奇的な彼女』
    観にいきたいと思っているもの・・・『ボーン・スプレマシー』『アレキサンダー』
    あと1997年公開の作品を振り返ってみたい

ドラマ:大河ドラマ『新選組!』あと4回です。・・・がんばろう。 平成仮面ライダーシリーズ

ま、予定は未定ということでひとつよろしくお願いするでやんす。

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February 16, 2005

シンチー一路 周星馳 『カンフーハッスル』

あ。公開終っちゃってる・・・ それこそ今さらって気がしますけど、どうかご容赦ください。
うーんとね。えーとね。面白かったんですよ。ただ、前作『少林サッカー』と比べるとねえ、あの、その。原因を考えてみました。

例えば『食神』はカンフーで料理をやることが面白かったんですよね。『少林サッカー』はカンフーでサッカーをやることが以下同文。ところがこの『ハッスル』はカンフーでカンフーをやっていると。もちろん周さんの軽妙なギャグセンスは健在だけど、そうした発想の時点でまず、いまひとつかなあ、と。
もう一点。前2作は主人公が中心になってずっと話をひっぱっているわけですが、本作は半分過ぎまで、主人公と豚小屋砦の二つに視点が分かれてしまっています。そういう構成がシンチー作品のイキのいいテンポをやや殺してしまった気がしました。殺してしまったといえば少林サッカーでは誰も死ななかったのに、こちらではわりと「いいやつ」があっさり死んでしまって、その辺もマイナスポイントです。最後で「首がつながりました」くらいやってほしゅうございました。

しかしそこはやっぱりシンチー作品。見るべきところはいろいろあります。
これまでもずっと彼が挑んできた「マンガ的表現の実写化」。その手法は今回も健在です。
もっとも感動したのは、どおくまんやアラレちゃんがやっていた、「高速で走ると足が渦巻状になる表現」。まさかこれを実写で観られる日が来ようとは。いかりや長介状になるクチビルもよかった。
先月の『少林サッカー』の項で本作について「実写版『北斗の拳』か? 『ドラゴンボール』か?」と書きましたが一番テイストとして近いのは『ジョジョの奇妙な冒険』だった気がします。お琴から“スタンド”みたいなの出てました。
あと、巨大な手形が壁をぶち抜くシーン。あれはガンダム史上最大の怪作、『機動武闘伝Gガンダム』を参考にしたのではないかと思います。そういえば『Gガンダム』は後半がほぼずっと香港が舞台という点でも異例の作品でした。

あとヒロインは、またしても貧乏。いくらサクセスしてもこういう貧乏魂を忘れない周さんが、わたしはとても好きです。最初はブスだったらもっとよかったです。

いろいろとクサしてしまったので、好きな方には申し訳ないと思いますが、やはり周さんには高いハードルを要求してしまうのですよ。そして次回作ではそのハードルを越えてくれると信じてます。一昨年読んだ雑誌では「いま考えているのは『少林サッカー2』」とおっしゃっていましたが・・・・・・

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February 14, 2005

いまごろ大河ドラマ『新選組!』を振り返ってみようのコーナー⑥

パトラッシュ、なんだかとても眠いんだ・・・ でも明日は朝のお仕事休みだし、ボクがんばる。
ついでに過去のネタ再録
「ヒマラヤって10回言ってみて」
「ヒマラヤ、ヒマラヤ、ヒマラヤ・・・・」
「芹沢派で唯一命を永らえた隊士は?」
「野口くん?」
「・・・・」
正解のわかった方はコメント欄にてお答えください。なにも出ませんが。

#26 組長近藤勇
名前を改めて新メンバーも続々加入。意気の揚がる新選組だが、一方で「どっこい事件」以来折り合いの悪くなった大坂の与力、内山彦次郎との確執もヒートアップ。勇は内山を処断することを決意する。
日常描写→悪事発見→仲間のピンチ→「・・・ゆるせん!」→成敗と、すごく普通の時代劇みいたな構成。ちがうのは、主役が現場に行かないところ(笑) ことが終ったあとで土方が「攘夷派の仕業にみせかけよう」と小細工していたけれど、後世にバレバレであることを考えると、あまり役にはたたなかった様子。
新メンバーには山崎、観柳斎、谷三兄弟などが加入。これで第1話プロローグに出ていた連中は一応全員そろったことになる。「わたしのこと覚えてませんよね」と楽しげにいう山ちゃんだが、それはちょっと悲しくないか?
この回の重要アイテム:内山さまのピストル(お約束)
 あと、ほっぺのご飯粒。総司と平助、あなたはどっち?

#27 直前・参院選開票!
さていよいよ新選組最大の正念場「池田屋事件」を迎え、序盤からかっとばす・・・のかと思いきや、局長はいそいそと家庭訪問にいそしむ。他の連中も色恋にうつつをぬかしてたり、コマを回してたり、真面目に仕事してんのは副長だけじゃねーかという有様。まあ三谷さんは何気ない日常が突然大事件に発展していく様子を描きたかったそうなので、こういう仕様になったようだけど、面食らった人は大勢いたと思います。面食らったといえば実際の事件とリンクさせて、7月に池田屋をもってきたものの、前編であるこの回は参院選とぶつかって時間変更という憂き目に。次回視聴率大丈夫なのか?と、別な意味でもスリル万点でした。
この回の重要アイテム:五寸釘とロウソク(やっぱこれでしょ・・・)
テレビの前で「ねえ、お父さん、あれ何に使うの?」「・・・きっと部屋が暗くならないようにロウソクを壁に打ちつけるんだよ」なんて会話があったのでは。真相は黒鉄ヒロシ『新選組』、もしくは鬼平犯科長第1巻にのっけからでてます。

#28 そしてえぐりあい
♪ひと突き ふた突き・・・ 副題は「あ、よよいのよい」
 かくしてようやく事の重大さに気がついた新選組。古高俊太郎から陰謀をゲロさせたはいいが、過激派の場所が特定できない。応援も来る気配なし。勇は「我々だけでやる」腹を決める。
脚本家にとってはチャンバラというのは腕を振るう割合が乏しく、あまり書いてて面白くないそうだが、この回は現場のスタッフの気合のせいか、「せまい・くらい・こわい」剣劇が非常にリアルに再現されていた。なにせ原寸大の池田屋をこしらえてしまったというくらいだからすごい。第25回や某作品にもありましたが、屋内でヤットウをふりかざすと鴨居にあたります。みなさんも出入りの際はご注意ください。
「かっちゃん後ろだ!」本当にいいとこで現れる土方隊。なんとか大勝利を収める。しかし総司の喀血や平助の負傷、第7回から出ていた亀さんのご逝去と、暗い要因もチラホラ。
今回の重要アイテム:斉藤の京都一口メモ 及びイカ焼き

#29 蛤御門って変(名前が)
池田屋事件で煮え湯を飲まされた長州は、強引にミカドをゲットしようと軍を動かす。京はたちまち火の海と化す。
序盤で佐久間象山先生が退場。「さんぼんの川か、さんずいの河か」と余裕シャクシャクのご臨終でした。
結局長州は見事に敗退。「この真心さえあれば!」と熱意はみなぎるも、当のミカドに全然その熱意が伝わってないあたり、やはり熱意だけではどうにもならんということを感じさせる。2.26事件とよく似ています。恋愛と同じで、駆け引きとか金品とかタイミングも大事っすよ。まあわたしもかつては・・・いや、いいです。
しかしこんだけメタメタにやられてもまた這い上がってくる、そのしぶとさは大したもの。当時の人はその驚異的な打たれ強さのことを「長州力」と呼んだとか(信じないでください)。
狂歌師久坂玄随も退場。「命は大切に」という捨助だが、彼もやがては・・・
今回の重要アイテム:戸田恵子のアンパンチ 玄ちゃんのモトドリ

#30 ぼくらはみんなイカっている
土方の決めた「都合のいい」新編成や恩賞の分け方に対し、永倉は猛反発。ついでに芹沢暗殺も露見してしまい、隊内にはきまずいムードがたちこめる。山南は場を収めようと、永倉に会津への建白書を提出することをもちかけるのだが。
やっとことが収まったとおもったら、今度は内部に亀裂が生じる。第26回がオーソドックスな時代劇だとすれば、この回は強引な部長・副部長、反発する部員たち、最後は懐の広い先生が丸く治めて・・・と、なんだか学園ドラマを思わせるようなつくり。
部長「みんな、すまなかった」 部員「いやおれたちの方こそ」 松平先生「みんな、もうなにも言うな。今年は甲子園だ」 しかし現実はそうサッパリと解決とはいかない。この回以降、土方と山南との対立は決定的なものになってしまう。
斉藤の密偵人生もこの辺から。みんなが感動に浸っている時の彼のビミョーな表情がなんとも言えません。
今回の重要アイテム:破られたものの、禍根を残す建白書

実は途中で結局寝てしまい、こんな時間(午前3時)になっちゃいました(笑) お肌の曲がり角が気になる今日このごろ。
このあたりが新選組にとって一番華やかな時期なんだけど、それは長くは続かないんですよねー。「最大のヤマ場は池田屋のあとにやってくる」とは三谷さんの弁。たぶんそのヤマ場というのはあのエピソードなんでしょう。というわけで次回。

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February 11, 2005

夜飛ぶ 加賀美雅之 『双月城の惨劇』

昨年のいつごろだったか、書店で『監獄島』という分厚い上下巻のミステリをみつけました。「ルパン(3世じゃないぞ!)の再来と言われた男が収監されている孤島で起きる連続殺人」という紹介に、すこぶるそそられたものの、カバーをよく見てみるとシリーズ第2作とのこと。じゃあまず1作目からよむっぺかと、本書をあちこち探したものの、これがなかなか見つからない。結局オンラインで購入。カッパノベルスからです。

ドイツはライン川のほとりに、双月城という城がありました。その城には、城主に仇なすものに亡霊が現れて首をチョンパするという、まことにおそがい伝説が伝えられておりました。現在(といっても1920年代)の当主は双子の美女。そこへ昔は城の使用人の息子で、今は映画スターになりあがったある男が、「映画の撮影」という名目で乗り込んできます。しかし彼の真の目的が、双子の妹をゲットすることであるのは、誰の目にも明らか。そのため城にはきな臭い空気がたちこめてきて、ついには殺人未遂とも思えるような事件が発生します。城に呼ばれていた主治医は、知人(ちなみに主人公)を通じてパリきっての名予審判事、シャルル・ベルトランに応援を要請するのですが・・・

「また双子か!」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、小生、別に双子フェチではありません。本当に偶然なんです。
外国が舞台で、外人しか出てこない。だけど登場人物がちょっと浪花節がかっていて、訳文よりすごく読みやすい。それはなぜかって言うと、やっぱり日本人が書いているからなんですけど、この感覚昔どっかで・・・と思っていたら、そう、南洋一郎訳で出ていた児童版アルセーヌ・ルパンシリーズとなんかよく似ているんです。なるほど解説にも、本当は某有名作家の持ちキャラクターの贋作を書きたかったのだけど、著作権とかの事情で探偵役の名前をちょい変えたということ。このあたり、ルブランが自作でホームズをおもちゃにしていたらドイルにこっぴどく怒られ、名前をショルメスに変えたという逸話を思い出します。
古城、怪奇趣味、密室殺人、1920年代、名探偵の対決・・・ 本当にコテコテのゴシック本格ミステリ。楽しいのは中世の古城に関する色々なウンチクがもりこまれているところ。豊かなな風景描写とあいまって、なんだか当地を旅行しているような気分が味わえます。つーか、旅行いきてええええええええ! ・・・・・・失礼、取り乱しました。
肝心のトリック&犯人の正体も「驚天動地!」と言わないまでも「驚屋根動床!」くらいには驚きます。「ミステリにはムードも大事」と思っている方や、あの車みたいな名前の大家の作品が好きな方には是非ご一読をオススメします。

で、『監獄島』ですがまだ購入していません。なにせ買ったはいいけど、積んだままになっている本がたくさんありまして・・・ なんとか今年中には読めるといいなあ。

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February 09, 2005

イムジン・オーバー・ピープル 井筒和幸『パッチギ!』

井筒和幸という人に、あまり好感は抱いていない。理由は簡単、なんかやたらと偉そうだからだ。
ただ、才能と人格は別物である。井筒氏の才能がどれほどの物なのか、確かめたくはあった。が、『のど自慢』とか『ゲロッパ!』というタイトルに食指が動かなかったのも事実だ。
そういう意味ではこの『パッチギ(頭突きの意)!』もいい勝負ではある。なのになぜ行く気になったかというと、あらすじを読んで「なんか逆『GO』みたいな話だなあ」と思ったのと、Akimboさまが「コールスロー」でほめておられたからである。

舞台は1960年代末の京都。主人公コウスケの通う高校と近隣の朝鮮系の高校は、いつ果てるとも知れぬ抗争を続けていた。ひょんなことからその「敵地」へ親善サッカーの申し込みに行ったコウスケは、そこでフルートを吹く美少女に一目ぼれしてしまう。しかし彼女はその高校の番格、アンソンの妹だった・・・
こう書くと「結ばれぬ運命がゆえに一層燃え上がる二人の恋」みたいな展開を想像してしまうかもしれないが、途中まではあまりそんなことはなく、主人公はその純粋さでもってわりかし普通に異文化の人々と接していく。が、もちろんそのままメデタシメデタシともいかない。ある事件をきっかけに、コウスケは彼らと自分との間に横たわる、深くて大きな河の存在に気づかされてしまう。

『GO』が主人公クルパーの個性に、引っ張られるように語られる作品だったのに対し、こちらはコウスケが接することになる人々の群像劇といった構成。中でもヒロインの兄、アンソンの暴れっぷりは強烈だ。
また、『GO』よりも本作の方が、テーマやメッセージがはっきりしている。しかしそれとても隣国との問題に限定されたものではなく、世界に普遍的に見られる問題を、我々にとって一番身近な題材を通して考えよう、といった感じだ。
井筒監督はまず、事がこじれた原因を冷静に見つめることを映画の中で訴える。そしてそれを乗り越えられるものは、いわゆるその、アレであることを提示するわけだが、監督はそれを世界の極東で声高に叫ばせたりはしない。むしろ茶化してサラッと言わせてしまうところに、井筒和幸という人間の一端を垣間見た気がした。

特撮ファン的な見所としてはハリケンレッドと仮面ライダークウガの夢のセッション。どうした、オダギリ、そのさわやかな笑顔は(笑)。どうやら同じ畑で採れたやつと共演したことで、昔の自分をちょっと思い出したようだ。
それにしても『GO』『パッチギ!』ともに市井の人々の日常を描いた作品であるのに、流れ出る血の量のなんと多いことか。血を見るのが苦手、という人にはあまりオススメできない。
あと、井筒監督の次回作タイトルは、たぶん『ギックリ!』だと思う。

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February 07, 2005

そこはギャグの巣窟だった 野中英次『魁! クロマティ高校』他一本

『魁! クロマティ高校』は奇跡の作品である。なぜか? マガジンの読者アンケートで「読み飛ばすマンガ第1位」に選ばれ、作者の「はやくやめたい」という心情がヒシヒシと伝わってくるのに、でも面白い。単行本は既に11巻を数え、近々映画化も決まっているという。世の中そんなんでいいんでしょうか。
(むなしい気もするが)ストーリーを説明すると、優等生の神山高志は出来の悪い親友と共に学びたいがため、「名前が書ければ入れる」というクロマティ高校に入学する。しかしそこは悪の巣窟だった・・・という話。だったはずが、校内をゴリラやフレディ・マーキュリーが徘徊し始めたあたりから、徐々におかしくなり始めた(二重の意味で)。次から次へと珍妙な番長が登場するわ、学園ものなのに先生の影がやたら薄いわ、主人公が何ヶ月も登場しないのはザラだわ、もう好きにしてちょ、って感じです。

その中で特に異彩を放つキャラを二人紹介します。まずメカ沢新一。ドラム缶に手足を付けたなりの、まあロボです。ロボのくせにやたら男気が篤く、道に外れた悪には容赦なく文字通り鉄拳を振るいます。でも「機械だけは苦手」なんだそうで。まあ人間だって「人間が苦手」な人はいますから。
もう一人は「ネット番長」藤本貴一。高見山を思わせる風貌の、マニエル高校のNO.1。その一方でネット技術を駆使し、CGI理論(なんだそりゃ)にも詳しいという剛の者。正直に申しますと、わたしが知っているネット上のマナーの大半は彼に教えてもらったものです。
で、この藤本君、ダイナミック次郎氏の『ロボット大作戦』というマンガがお気に入りで、ファンページを作成するものの、「一ヶ月以上書き込みなし」という笑えない事態に陥ります。そこで彼は禁断の「あの手段」に出てしまうのですが・・・

で、作中でチラッと出てくるこの『ロボット大作戦』、なんだか本当に面白そうなんですよ。『クロ高』と別に書いてくれないかなーと思ったら、こともあろうにコミックボンボンでダイナミック太郎という方が、『メカ沢くん』というマンガを始めてしまいました(原作はもちろん「のなー」こと野中英次)。まさか31にもなってコミックボンボンの単行本を買う事になろうとは思いませんでしたよ・・・ でも、これもけっこう面白い。池上遼一風だった絵が学習マンガ風になったり、ややシュールだったギャグが豪快なボケ・ツッコミになったりと、色々変更点はあるものの、子どもだけに読ませるのはなんだかとってももったいない。というわけで、みなさんにも是非読んで笑ってほしい作品です。「どうしても買うのがはずかしい」という方は、「それプレゼント包装してください」とかなんとか言ってごまかしましょう。

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February 05, 2005

いまごろ大河ドラマ『新選組!』を振り返ってみようのコーナー⑤

高視聴率とは裏腹に、わたしの周囲では急速に大河離れが起こっています。
そんな中、ひとりどっぷりと『義経』にはまっているのはウチの母。
やっぱ昔気質の人って、こういう親と子の可哀相なお話に弱いんでしょうかね。
「伍一、今日より母はなきものと思え」
べつに全然かまいませんけど。で、(ようやっと)5回目です。

#21 ああ、舞の海
上様が江戸に戻る事になり、京に残るかどうか迷う勇たち。そんなことなどお構いなしに、飲み歩いていた芹沢たちと総司は、行き会った力士たちと衝突。総司は野口をかばおうとして、力士の一人に傷を負わせてしまう。
21話になっても「新選組」の名称が出てこないという、『Zガ○ダム』よりも大変な事態に。勇と芹沢の地位が逆転した回でもある。
舞の海秀平氏がゲスト出演。葬式のシーンで親方が「あいつは小柄だけど面白い相撲を取るやつでね」なんてセリフに、神妙な場面なんだけどニヤリとしてしまった。「猫だまし」や「八艘とび」で土俵を沸かしてくれたのも、けっこう前の話になっちゃいましたね。
今回の重要アイテム:内山様印の六角棒

#22 目をさませ ソウジロウ
タイトルは小沢正氏の児童文学より。勇たちがおわびで誘致した相撲大会は大盛況。面白くない鴨ちゃんはお梅さんに乗せられて(あのひとはー あーくまー)大和屋に恐喝に行く。だが、それが彼の首を絞める結果になった。
又三郎といういけすかないキャラがいたが、あまりにも悲惨な形でもって退場。捨助が久々に再登場。前回の流れからして復讐の鬼になっているのかと思いきや・・・・ まあ、ここがヤツのいい所なのかもしれない。
鴨粛清のプロローグでもあるため、やや暗いムードが漂っていたが、それを吹き飛ばしたのが照英のオールヌード。元モデルなのによくやったなあと。そしてNHKがよく許可したなあと。
今回の重要アイテム:クロガミ関の手形(バッタモン)
死を告げるオウム(声・山口智充)が出てきたのもこの回だっけ?

#23 お花畑でほかされて
あるところにミカドさんと会津くんという仲の良いカップルがいました。そこへ自身満々でカン違い野朗の長州くんが割り込もうとします。が、あえなく敗退。長州くんは再度アタックを試みるも、突然横から入ってきた薩摩くんに「あきらめろ」と言われ、泣きながらお家にかえります。でもクラスメイトはなんでかみんな長州くんに同情的・・・という話。
松平さまに「運命の出会い」とか言われて感激する近藤さん。男同士でそれをやられると、ちとキモいです。
新選組が受け持たされたのが「お花畑」というのが失笑を呼ぶ回。ツボだったのは「桂を追い出せるかと思うと」とニッコニコの歳三。根に持つタイプとみた。
今回の重要アイテム:ひでちゃんの作ったオニギリ。総司許すまじ。

#24 鬼の居ぬ間の切腹
芹沢派排除に向けて本気で動き出す歳三。手始めに参謀役の新見を巧妙に追い詰める。事を知った近藤は激怒。だが既にそれは会津により決められていたことだった。
三谷さんはこのドラマを「小学生に向けて書いている」と言っていたが、全編通じて一番教育的によろしくない回。あんなワル、こんなワル、とワルの見本市状態。そんな中頭一つ抜けていたのが歳三。法度を利用してうまく罠にはめる、これぞまさしく法度トリック! え・・・ ぼくも切腹ですか? 
ちなみに本物の新見さんは芹沢に負けず劣らずのランボー者だったそうです。あと竜馬が腹踊りとかしてヤケになっていたのは、旧友の多くいる土佐勤皇党壊滅の報を聞いたからかもしれません。
今回の重要アイテム:又三郎のおサイフ

#25 さよなら精忠浪士組
いよいよ芹沢粛清の決断を迫られる勇。かたくなに拒んでいた彼だったが、もはや覚悟を決めた芹沢の真意を知り、鬼になることを決意する。
物語前半のクライマックス。本作の主要人物はみんな好きだけど、誰が一番印象に残ったかというと、やはり佐藤浩市の芹沢鴨でございました。最後を前にひと時安らぐ彼とお梅さんに、「俺たちに明日はない」のボニー&クライドが重なります。「新選組」の名称を聞かされて「いい名前じゃねええか」と言うところも、涙を誘われた。
そういうわけでお梅さんを含め、芹沢派の他の面々ともお別れ。××だったはずの野口くんはなぜか生きながらえたようで。しかしこの後水戸に戻ってもそれはそれで大変なんだけど。
今回の重要アイテム:鴨ちゃんがずっこけたひょうたん

あー、なんとか予想通り予定をずれ込みながらも、半分まで参りました。こっから先は記憶も多少しっかりしている・・・といいなあ。しつこいようですが、間違いがありましたら訂正よろしくです。

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February 04, 2005

在日挑戦人 行定勲『GO』

先日、ちょくちょく出入りしている「コールスロー(独特の文化論が興味深いブログ ttp://d.hatena.ne.jp/Akimbo)」のAkimboさまオススメの映画、『パッチギ!』を観ました。
でもそちらの前に、この『GO』の方をまず語りたいと思います。

タイトルには「行定勲」とつけましたが、金城一紀の原作(未読だが←コラ)、宮藤官九朗の脚本、どれが欠けてもこれほど面白い作品にはならなかったのでは。主演はいまやどこかへ飛んでいってしまった感のある窪塚くんですが、彼がクドカンと組んだ『池袋ウエストゲートパーク』(TVドラマ)、『ピンポン』、そして本作はとても好きな作品です。クドカンは原作付きの方がいい仕事をすると思うのは、自分だけでしょうか。

「これは僕の恋愛に関する物語だ」そういうモノローグで、この映画は始まります。しかし話はなかなか恋愛の方へは行きません。というか、全体の中で恋愛が占める割合はいいとこ3割くらい。在日朝鮮人の主人公“クルパー(すごい呼び名)”をとりまく家族、友人、ケンカ、進路など、とりとめもなく話は転がっていきます。でもこの散漫な語り口が、作品に奇妙な活気を与えているから不思議。
在日朝鮮人を主人公にしているからといって、あまり深刻にそっち方面の問題は語られません。なるほど、クルパーの直面する問題はわたしたちのそれより、いささか異質で厳しいものではあります。けれど、他人からの拒絶、将来への迷い、生まれる前から決まっていたこと・・・そうしたことは多かれ少なかれ、誰もが経験することではないでしょうか。そしてそうした障害に吼え狂い、笑い飛ばすクルパーが、あまりにもまぶしいのです。

好きなエピソードは夜の公園で、主人公と山崎務演じる父親がボクシングの果し合いをする一連のくだり。わけもなく張り切るタクシーの運ちゃん(大杉蓮)とか、ものすごくおかしい。

ワタクシ事ですが、主人公の親友で「ジョンイル」という少年が出てきます。このジョンイルの名が漢字で書かれたシーンがあるのですが、それが自分の下の名前と一緒でした(笑)。これには少々ヘコみました。

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February 02, 2005

ジョルジョの青い空 リザ・テツナー『黒い兄弟』

(「ハンサム双子の謎」の項からの続き)
で、『悪童日記』(ハヤカワ文庫でした)と色々共通点が多いなあ、と思うのが、この『黒い兄弟』。自分の持っているのは福武文庫の版ですが、現在はあすなろ書房版が手に入りやすいようです。
ドイツの方がスイスで書いた、イタリアのお話。父の畑が燃えてしまったため、ミラノに煙突掃除夫として売られたジョルジョ。彼の苦難、仕事、友情、抗争、ほのかなロマンスなどが、あたたかく活気に富む筆致で描かれています。タイトルの「黒い兄弟」とは、煙突掃除夫の少年たちが作った同盟の名前。
『ロミオの青い空』の題でアニメ化されたこともあるので、そちらでご記憶の方も多いかもしれません。主人公の名前が変更されているのは、「ロミオ」の方が日本人に馴染みやすいから、とのこと。・・・おお、ロミオ、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの?
で、アニメ版では黒い兄弟が団結して雇い主に訴訟を起こすくだりが諸般の事情でカットになり、作品の出来がすばらしいものであるがゆえになおさら残念でございました。また、アニメでは主人公の親友アルフレードに関する痛快かつ感涙必至のオリジナルエピソードが多々あります。いつかこの両者が含められた「完全版」が観られないかなあ、と夢想する次第。

で、『悪童日記』との共通項ですが
・作者が女性で、亡命を経験している
・親を頼れない少年たちが主人公
・登場する大人たちは、人格面で難がある人が多い
・終盤における主人公の決断
などです。
しかし、作品から受ける印象は大きく異なります。『兄弟』の方が健康的で、読後感が爽やかなのに対し、『悪童』の方は全編シニカルでやるせない空気が漂っています。ジョルジョの方が双子より過酷な環境にいるのにも関わらず。
この違いはどこから生じるのか。もちろん作者の資質、対象年齢などもありましょう。ただ思うのは圧制的な政府から
いわれなき仕打ちを受けたとき、リザ女史は既に大人であり、自分で亡命を選ぶことができた。けれどもアゴタ女史は子供だったために自分ではどうすることもできず、国語さえ奪われてしまう。そして亡命に踏み切るまでにさらに長い月日を必要としました。その辺の経験が冷笑的、悲観的な視点となって現れているのでは、と愚考する次第です。

二作品計5冊読んでみて、「子どもにとって健やかに育つ環境があるのは当たり前のこと。しかしその“当たり前であること”というのは、けっこう貴重なものでもあるかもしれない」と思いました。
今の日本は、果たしてその点クリアーしているのでしょうか。

追記:アニメ『ロミオの青い空』は現在も熱心なファンによりHPが運営されています。URLは下記のとおり。
ttp://www2.tokai.or.jp/lmon/michiru
今秋には放映10周年を記念するイベントもあるそうです。

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