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January 21, 2005

がんばれ源氏 北崎拓『ますらお ~秘本義経記』

20080104175219_2このほど文庫版が小学館より発売された作品。いまから十年ほど前、週刊少年サンデーに連載されていました。まちがいなく大河にあやかっての復刊でしょう。
作者、北崎先生は世間ではラブコメ作家として認知されていると思いますが、この作品の少し前にも『望郷戦士』というよくまとまったサバイバル・アクションを描かれていて、ハードな作風もなかなかいける方なんです。
平安~鎌倉最初期って、一般では雅で優美で十二単?みたいな、そういうイメージって、あると思うんです。でもお、わたし思うんですけどお、宮殿の外を出れば、そこにはドロドログチャグチャネバネバっとした、ダーティな面もいっぱいあったんじゃないでしょうか。そういった「平安の闇」を書いた作品で思い浮かぶのが、芥川龍之介『羅生門』、富樫倫太郎『陰陽寮』、そしてこの『ますらお』だったりします。副題が「秘本義経記」とあるように、源義経の青春を描いたおはなし。
どんくらいハードかというと、第1話から、仲良くなった友達が、ワンコの餌になっちゃったりします。さらに、伊勢三郎や常陸坊海尊の顔が、なにもここまでってくらい、極悪。麻雀では絶対に対面に座りたくないタイプ。
こう書くとひいてしまうご婦人方もおられるかもしれませんが、全編実にかっちりした少年マンガになってますし、静との恋模様なんかもちゃんとページが割かれています。ですから男女ともに楽しめる作品になっています。また後半には知られざるもう一人の義経「山本義経」が登場し、物語に彩りをそえます。
で、文庫版の解説は『三国志』『平家物語』で知られた人形師、川本喜八郎氏が書いておられます。読んでないので確かな情報じゃありませんが、これは恐らく平安のころの装束や建築を、実に丁寧に再現してある点を、川本氏が評価されたからではないでしょうか。
そして全編にただよう濃密な闇の気配。繰り返すようですが、北崎先生はこんなものもしっかり書ける人なんですよ! 聞いてますか? ヤ○グ・サ○デー!

さて、こんだけもっちゃげたあとでもうしわけありませんが、このマンガ、一の谷を攻略したあとくらいで、終っています。どうもサ○デーのキャピキャピ・ソフト路線の中で浮いてしまったようで。作者のページで「いつか続きを描きたい」とありましたが、その言葉を信じてもよいのでしょうか。つーか、やるなら今がいい一番タイミングでしょうが!

最後にダイジェスト風に印象に残ったセリフを。
「だから・・・ 言ったんだ・・・ 戦わなきゃダメだって・・・」
「あんたが立ってやつらを討てるんなら、おれはなんだってする! こんな命でいいならくれてやる!」
「信じてくれたのは、あいつだけだったな。いつもいじめてばかりいたのに・・・ クソ・・・」
「これからは、お主が泣くときには ともに泣こう。お主が笑うときには ともに笑おう」
「あれじゃ血だらけで、傷だらけで、似ているかなんてわからないよ・・・」
「その瞳に吸い寄せられるまま 我らもまた鬼神なり!」

というわけで、興味を持った方は今のうちに買っておきましょう。全5巻。早くしないと、あた「あっ」という間にまた絶版になるやもしれませぬ。

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Comments

 ますらお、はあずみ、や五条霊戦記みたいな今風
スタイリッシュ時代劇のはしりだったと思います。
 このあと毛利元就にV6が出たりしてこの路線が
始まったような気がします。
 伊勢三郎とか確か顔がね。でもみんな格好がオシャ
レでした。義手とか。
 SGA様も言われる通り静とのラブや義経と弁慶
のキス(?)シーンもありましたね。 
 北崎先生は会川昇原作のハードなOVAエンジェルコップのコミカライズもしていたはず。
 「いざ組まん」「いざ組まん」のくだりがなにか
ハードボイルドです。耽美系と両立しているのは
立派です。
 
 勝手に改○を切り捨てた編集長から変わったらしい
ので何とかなりますかね。椎名先生自身も、大きな
お友達はやりにくくなりました。と少し苦笑して
おりました。
 っていうかマガジ○の方が何か、、、チャンピ○○
も、、、、。ジャン○少しだけマシになったような。
(編集長がマッチ茨木になって)
 
 雄呂血買いました。同名の映画についてふれていま
すね。

Posted by: 犬塚志乃 | January 27, 2005 at 08:20 PM

おお、『ますらお』、ご存知ですか! このマンガ、あんまり知ってる人いないんですよ。

>スタイリッシュ時代劇
たぶん『るろうに剣心』『修羅の刻』のヒットで「よっしゃうちも・・・」って感じで始めたんじゃないかと睨んでます。でもどちらかというと、そういう「娯楽活劇」よりも、“リアリズムも忘れません”『バガボン』に近い作風でしたね。

>エンジェルコップのコミカライズ
あった、あった。NE○ TYPEでしたっけ。そのころとくらべると、かなり絵がうまくなってます。こういうメリハリのついた鎧武者とか、ここまで描けるなかなかいないんじゃないでしょうか。
でもヤ○サン見たら、またラブコメ描いてました(泣)

父親が早々と死んで息子が同じ仕事を目指す、ってのはサ○デーの伝統なんでしょうか。

>雄呂血
思い出したんですけど、あのやんごとないお方が、相当すごい扱いをされていました。ちょっと犬塚さま的に、許しがたいかもわかりません(汗)

Posted by: SGA851 | January 28, 2005 at 10:29 PM

ますらお 大好きです。私は今19ですが、10年たった今でも私の中の最高の男の人はますらおの義経です。義経の、妖しい顔も好きですが、奥州平泉での少年のような笑顔が大好きです。
お願いですから もう一度最後まで書ききってください・・・。
でも、最後というと、義経は静とはまた別の女性と衣川で自害・・・。
静は失意のまま病没してますし。何より佐藤兄弟の死に様はみたくないような・・・。

Posted by: | May 07, 2007 at 05:56 PM

はじめまして

リアルで読んだとしたら当時9歳ですか? 早熟なお子さんだったのですね。わたしは当時大学生で、「いままでにないマンガだ!」とウキウキしながら読んでいたのを思い出します
キャラの顔でいうと、伊勢三郎の凶悪なフェイスが気に入っておりました

>最後というと、義経は静とはまた別の女性と衣川で自害・・・。

途中チンギス・ハーンみたいなやつが出てきたので、「モンゴルへ脱出」みたいな結末も考えられなくはないでしょうか? 静と離れ離れになってしまうのはどうしようもないですけど

北崎先生は『クピドの悪魔』のヒットで、ますますラブコメ作家のイメージが強くなってしまったようです(泣)

Posted by: SGA屋伍一 | May 07, 2007 at 07:00 PM

初めまして!lycorisと申します。
今から七年前に偶然立ち寄った古本屋で全巻購入したのが、『ますらお』との出会いです。この作品が今の私を作ったといっても過言ではありません!!
大姫と義高の悲恋と平家の没落、そして義経の逃避行は見たくないので、これで終わりで良いなという気持ちもあるのですが、それ以上に「北崎さんはこれらをどのような解釈で描かれるのだろうか?それがとても気になる!」という気持ちが強く、是非とも『クピドの悪戯シリーズ』(三部作らしい)が終了したら描いて頂きたいと思っております。
北崎さんの作品が『クピドの悪戯』のヒットにより、注目されている事と御本人のブログに現在でも歴史・時代物のお仕事の依頼が来ていることをほのめかす一文があったので、可能性はあると思います。
変な話ですが、歴史・時代物はご高齢になってから描かれている漫画家さんが多いですし…。

長々と書いてしまい、申し訳ありません。それでは失礼致します。

Posted by: lycoris | July 30, 2007 at 01:54 PM

lycorisさま、はじめまして

>この作品が今の私を作ったといっても過言ではありません!!

おお! これはまた入れ込んでおられますね~
この記事は今から二年半くらい前に書いたものなんですけど、未だにちょくちょくアクセスがあるんですよ
どマイナーなマンガだとばっかり思ってましたが、根強いファンもけっこうおられるみたいですね

>これで終わりで良いなという気持ちもあるのですが、

義経主従にとって最も幸福なところでお話が終ってますからね・・・
読んで見たい反面、ツライ話になりそうだな・・・とも思います
特に三郎の最期は想像しただけで涙腺に来るものがあるなあ

>御本人のブログに現在でも歴史・時代物のお仕事の依頼が来ていることをほのめかす一文があった

それは意外でした。てっきりもうラブコメの仕事しかきてないのかと思ってたもんで(笑)
北崎先生の描く歴史劇、ぜひまた読んでみたいですものですね

また気が向いた時などありましたら、ぜひお立ち寄りください。では


Posted by: SGA屋伍一 | July 30, 2007 at 07:41 PM

 初めまして。都内在住の43歳です。検索エンジン経由でお邪魔しました。ご紹介の『ますらお』は誌面連載当時大学生だった僕も、生まれて初めて単行本全巻買い揃えるほど嵌った思い出の作品です。
 執筆20周年の節目に刊行された『大姫哀想歌』と正式続編である『波弦、屋島』の連載誌、ヤングキングアワーズ。その発行元・少年画報社さんから新装版全3巻で再発されますね。しかも『波弦、屋島』第2巻との同時発売、アワーズ11月号も九郎が表紙を飾るので今から楽しみです!
 大姫哀想歌以降、扉絵や単行本ジャケット画ではおなじみとなっている「胴丸鎧」姿。いよいよストーリー本編にも登場することでしょう、これからも注目していきたいですね!

Posted by: ネズミ色の猫 | September 21, 2017 at 11:45 PM

>ネズミ色の猫さん

はじめまして。12年も前の記事にコメントありがとうございます!
わたしとほぼ同世代の方のようですね。
この記事を書いたときはまさか本当に続きが書かれるとは夢にも思いませんでした。中年になるまで生きてきた甲斐があったというものです。北崎先生の筆致もさらに美しさを増して胸躍る反面、これからの悲劇に不安もつのります。
ともかく次巻の発売が待ち遠しい!

Posted by: SGA屋伍一 | September 25, 2017 at 09:29 PM

 早速の表示許可ありがとうございました。実は僕、サンデーコミックス版の『ますらお』から文庫版『秘本義経記』に買い替えていたんです。
 そこで気づいたのが印刷可能な面積の狭さ。文庫本は三方に余白を確保する必要があるらしく、B6判に比べて厳しい制約となっているみたいですね(事実、見開き絵の周囲も若干欠けているんです)。

 旧作のなかで最も気に入っているのは第61話「決断」(サンデーコミックス版6巻、文庫版四巻、YKBEST修羅の章収録)ラスト見開きですね。空を仰ぐ九郎の武者姿、鎧の背に大きく靡かせた母衣(ほろ)が目を引きます。西国の吊り橋で遭遇した平維盛、その母衣武者姿に自らを重ねた想像図という設定かもしれません。
 長鍬形の兜も維盛と同じかぶり方。ざわりと頬にかかる大童(おおわらわ)の長い髪、鉢の頂辺孔(てへんのあな)から出している烏帽子も中は空という設定になっていて(大姫哀想歌版の木曽義仲も同じく乱髪姿に変更されています)、この後九郎と対峙する山本八郎や義仲、そして敦盛が髻(もとどり)を結い上げて兜鉢の上に出す武者姿なのとは対照的ですね。ここまで長文失礼致しました。

Posted by: ネズミ色の猫 | September 26, 2017 at 02:26 AM

>ネズミ色の猫さん

気合の入ったコメントありがとうございます。その読み込みぶりに感服いたしました。してみると文庫版よりも安い廉価版の方が絵が栄えるというわけですね。この年になると細かい絵が見づらくなってくるので自分も大きい方がありがたいです

維盛はなにかと嫌味なキャラクターではありましたが、旧シリーズで人間的成長を遂げるあたりは大変読み応えがありました。もう彼のドラマは決着がついた気もしますが、果たして新作での再登場はあるのか…

Posted by: SGA屋伍一 | September 26, 2017 at 10:23 PM

 ごぶさたしております。自宅ブロードバンド断線の修復を待ち、今回は初めてPCから伺います。前回までの投稿に使っておりましたガラケー…っぽくない外見の端末(苦笑)がとうとう起動不能になってしまいました。
 嵐をついて渡海、四国徳島へと迫る鎌倉軍一行(アワーズ12月号『波弦、屋島』第19話)。上陸後直ちに北上への準備を進める九郎と、彼を背後から呼び止める畠山重忠に着目します。

 第5話の角張った大鎧から遂に、胴丸鎧へと移行した九郎の武者姿。胴丸鎧、といえば実は旧作の時点でも第2話「月と闇と」の扉絵に描かれていたことをすっかり忘れていました。
 旧作では童顔だった重忠も、今回は甘いマスクの爽やかな好青年に成長(!?)しましたね。大姫哀想歌版はちょっと年取っちゃった感のある表情でしたが、そこから少し若返っています。髪型も九郎とは対照的、烏帽子の中に髻を立てていて「しょうゆ顔」も更に引き立っていますね。

Posted by: ネズミ色の猫 | November 01, 2017 at 10:10 PM

>ネズミ色の猫様

またまたご来訪ありがとうございます。
先日『波弦、屋島』2巻購入いたしまして。この巻で屋島の例の悲劇が描かれるのかな、と思いましたが、普通にほのぼのした話がメインで終わってしまいました。アワーズ本誌のようでようやくそちの方へ入っていく感じでしょうか
北崎先生がツイッターで「エロ絵を描くのは楽しいけど合戦シーンを書くのは気が重い」みたいなことをおっしゃってました。やっぱりあれだけの描きこみですから、身体の消耗もよほど激しいのでしょうね。先生がんばれ!
新刊でたら畠山重忠に注目してみます!

Posted by: SGA屋伍一 | November 02, 2017 at 10:08 PM

 こんばんは。SGAさんもエントリ本文で触れていらっしゃる『クピドの悪戯』シリーズ、これまた最新作が兄弟誌・アワーズGHで連載中だそうですね。

 『ますらお』の話に戻りましょう。九郎の武者姿、特に兜のかぶり方で学術研究上矛盾するとされる点があることは否めないものの、是非とも最後まで現行のコーディネーションを踏襲して描ききってほしいと思います…もう今後登場することは無いでしょう父・義朝やかつてのライバル・維盛の分まで。

 ここからは『波弦、屋島』第19話の続きです。
 着岸に備え兜をかぶり直す九郎。高波と暴風雨で流されてしまっていたはずの烏帽子…鉢からしっかり出ています!予備、持ってたのね…さすがだわ(苦笑)。
 そして重忠が呼び止める九郎の後ろ姿、兜の「しころ」から毛先が覗いてもおかしくないほど髪は伸びているはずなのですが…先生描き忘れですねぇ。単行本収録は第4巻(早くとも来年夏以降)の計算、そのときは是非加筆しておいてもらいたいところですね(最後の一コマ、左向きの横顔ではちゃんと後ろ髪も出ていますので)。
 単行本第2巻のジャケット画も、往年の大映(現KADOKAWA)『新・平家物語』シリーズ第2作「義仲をめぐる三人の女」へのオマージュとパロディが同居して思わず「ニヤリ」としてしまいます。

Posted by: ネズミ色の猫 | November 04, 2017 at 09:06 PM

>ネズミ色の猫さん

毎度の鎧兜チェックお疲れ様です。ここまで熱心に見ておられる方がいるとは、先生も気を抜けませんね~ 上にも書きましたが人形劇『平家物語』の允恭の衣装もそれは見事でした。またああいう史劇人形劇作ってくれないかなあ、NHK
まだまだ屋島に時間がかかりそうで気が遠くなりそうですけど、再開に20年待ったわけですからここは腰をすえてじっくりと付き合っていく所存にございます

Posted by: SGA屋伍一 | November 08, 2017 at 09:36 PM

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