坊主が上手にボールをゴールに・・・ 周星馳『少林サッカー』
おとといテレビで久しぶりに観た。
この映画が公開されたのは2002年。「大ヒット!」というふれこみのわりに、客の入りはまばらだった。
それもそのはず、その日はW杯で最も因縁の対決と言われた、イングランドVSアルゼンチンの試合がある日だったのだ。そんな日に『少林サッカー』を観ようなんてやつは、よほどのオタクか、うっかりものか、ひねくれものにちがいない。
改めて見て、その絵の美しさに、ほとほと感じ入った。
それは冒頭の、地球の向こうからあんなものやそんなものが昇ってくるヴィジョンであったり、バラバラに崩れ落ちた塀の向こうから主人公の後姿が表れるシーン、はたまたパンツをかぶったまま地面に突き立つ「鋼鉄の頭」であったり、ボールを指先でクルクルまわすヒロインであったりする。
こうした「静止画像の美しさ」は、やはり『マトリックス』の影響であるかと思われる。そしてさらにその源流を探ると、「本来止まったもの」であるアメコミの、大胆なパース、デフォルメに行き着く。
そう言えば周星馳は、この映画を作るに当たって同じくマンガである『キャプテン翼』を参考にしたそうだ。なるほど、ボールがコンクリの壁にめり込んでいく演出や、階段を上るように宙に駆け上がっていく描写は、まんま『翼』の世界だ。
ただ、周星馳が面白い理由は、こうした奇をてらう手法だけにあるのではない。彼のつむぐ物語には、ちゃんとした「骨格」がある。さえない主人公が、一生懸命がんばって、やはり貧乏なヒロインと幸せをつかむというストーリー。天地がひっくりかえるような逆境にも、己の肉体とファイトで敢然と立ち向かうスピリット。それらは周さんがチャップリンやキートンといった、王道的喜劇の正当な後継者であることを表している。だからわたしは『食神』が、『少林サッカー』が好きなのだ。
もし李小竜がこの映画を観たなら、きっとこう言うだろう。
「Don’t think・・・ Feel!」
いやあ、バカ映画って、本当にいいもんですね♪
Comments
こんばんは。
「少林サッカー」。これ、DVD(しかも特典付き「足球箱」)持ってるのにね。相方の実家にいたのにね。見ましたよ。相方もファンなのです。私はチャウ・シンチーのファンなのです。
「バカを大マジメにやる」
って、なかなかできないですよね。これに尽きます。
「君はきれいだ。もっと自信を持って」
は、当時流行語になったそうです。
でも、偉いですね、映画館で観られたのですか。
この映画は、LotR第一部の頃に散々予告編を見て、もうその予告編だけでみんな爆笑していて、これから金払って見る映画以上のインパクトを残していたぐらいで(笑)私も、「絶対見よう!」と思っていたのでした。
・・・しかし。実際W杯が始まってみると、実際のサッカーにはまりまくり日本とドイツを応援しまくり、観ませんでした。
こうした個人的な例からしても、W杯の年に公開する(日本だけでしたっけ?)、というのは、良かったのか悪かったのか、未だにわからないところです。
でも、DVDで観てみて、「やっぱ劇場で見ればよかった!」と思いましたから、つくづく映画ってギャンブルですね。「お試し」とかできないもんですかね。
チャウ・シンチーは「食神」も最高です。これもこの人のパターンというかプレ「少林サッカー」みたいなもんで、やっぱり、イカサマがばれてすべてを失った料理人が、少林寺で修行します(笑)悪い悪役がいます。パッとしない女性と恋をします。そして・・・
「チャウ・シンチーファミリー」というものがあるようで、ン・マンタ(監督役)をはじめ、あのオカマ役はセーラー服!で登場します。
おすすめです。
Posted by: 高野正宗 | January 11, 2005 07:35 PM
トラックバックありがとうございます。
お礼参りさせて頂きました。
シンチー最高!
Posted by: SGA屋伍一 | January 12, 2005 09:21 PM
こんにちはAkimboです。
本日分、タイトルが最高です。う~んうまい。ポスターのコピーにしたいくらい。
で、SGAさんと高野さんふたりに刺激されて、いまさら少林サッカーをAmazonで注文しようとしているわたしって一体…。
Posted by: Akimbo | January 15, 2005 01:01 PM
そういえば、馳星周という作家がいますが、周星馳と名前がにているのは偶然なんでしょうかね。
Posted by: Akimbo | January 15, 2005 01:04 PM
はせせいしゅう
いや、これはシンチーのファンだから逆にしたんだそうですマジで。
Posted by: 高野正宗 | January 15, 2005 02:25 PM
Akimboさま、いらっしゃいませ。今後ともどうぞごひいきに。
>馳星周
高野さまのおっしゃるように、チャウ・シンチーからとったPNだそうです。日本ではこっちの方が先にメジャーになってしまいましたが・・・
馳作品『漂流街』では、中華系のチンピラがゲラゲラ笑いながらシンチーのビデオを見ているシーンがあります。チンピラは「香港で一番有名」と解説しますが、主人公は「何が面白いのかさっぱり」とか言ってたような。
あのドス暗い作品の中で、唯一笑える場面です。
Posted by: SGA屋伍一 | January 16, 2005 09:10 PM