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January 08, 2005

オモウラ箱館戦争 裏の巻 富樫倫太郎『殺生石』

幕末ネタが三連ちゃんになってしまいましたが、このネタにケリをつけたいと思います。
『箱館売ります』(実業之日本社でした)の感動から半年。書店の新書コーナーに富樫先生(以下“トガちゃん”)の新作を発見した。タイトルは『殺生石』(カッパノベルス)。
あらすじを見ると「土方歳三に陰陽師安倍泰成、サンジェルマン伯爵とカリオストロ伯爵がからむ」とあった。
あっけにとられつつも、「予告にあったのはこっちか!」と合点がいった。
最愛の人を復活させるために、わざわざ極東の地にやってきたサンジェルマン。その儀式にはかつてこの国を恐怖のどんぞこへと叩き落とした金毛九尾の狐が必要だった。が、その妖怪は蝦夷の地にて、さる陰陽師により封印・監視されていた。かくして箱館に集う旧幕府軍、異国の妖術師、陰陽師にアイヌの青年に大妖怪がくんずほぐれつのバトルロイヤルを繰り広げる。
・・・普通、つづけて同じ題材でこうも毛色の違う話を書けるものだろうか。はっきり別物と割り切ってしまえばいいのだろうが、文体もキャラの性格も一緒なので、読み比べると頭がくらくらしてくる。
トガちゃんの作品には主人公格のキャラが複数いて、それぞれのパートが同時進行で語られ、クライマックスで集結するというものが多い。これがうまくいくと、弾けたロックコンサートのように盛り上がるのだが、いまひとつ噛みあわないとお互いの音を打ち消すような結果になってしまう。で、どっちかというとこの作品は後者かな、と思った。
理由はたぶん、土方歳三と陰陽師という組み合わせの相性が悪かったことにあるかと。「接着剤としてサンジェルマンを持ってきた」とあとがきにはあるが、先生、この糊、着きが悪かったみたいです(笑)。
マイナスポイントはもうひとつ。実はこの作品、独立した一編というよりか、同著者の『地獄の佳き日』『陰陽寮』といったサーガの一部なんである。そのためこれだけ読んだひとは、謎が放置されっぱなしで終ってしまったような印象を受けるかもしれない。
こう書くとなんかいかにも駄作みたいだけど、アイヌの青年や少年兵のパートなんかはなかなか読ませる。また、これまでのサーガで先送りにされてきた問題も一区切りついているので、トガちゃんの他の作品を読んで気に入った方は、一応読んでみて損はないだろう。
でもその前にやはり入門として、『陰陽寮(一)』(トクマノベルス)か『雄呂血』(光文社文庫・すいません、犬塚さま、また間違えました)をおすすめいたします。

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Comments

読みましたよ、このシュールすぎる装丁のノベルス(笑)
結構はっきり別物!って割り切っちゃったんで、そんなに混乱はしなかったです。
ただ、風呂敷広げすぎたかなあという気はします。まあ、それでもなんとかタイムフロシキなところが作者のやっぱり力技ですね。
シバの女王を思い続けてる、っていう一点でまあ・・・やっぱ許すのは無理か(笑)相変わらずのメーソン過大評価しすぎもそろそろ飽きたかなぁ。
まあ、おっしゃるように、人物の描き方はいいですよね。この本読んだ後では、「北の×年」なんて、どうせキレイゴトなんだろうなあとか思っちゃいますもの。

Posted by: 高野正宗 | January 28, 2005 at 11:15 PM

今日はいろいろとありがとうございました。
>シバの女王
この人、中東の古代史と日本史を無理矢理くっつけるのが好きみたいです。

>人物の描き方
高野様的には、榎本軍の少年兵に感情移入しやすかったのでは。
「おれ、この船が好きなんです!」
トガちゃんは少年をイキイキと描くのがうまいですね。

Posted by: SGA屋伍一 | January 29, 2005 at 10:31 PM

「箱舘売ります」は東北・北海道の民衆の必読書となるでしょう。3・11以後の被災者の生き残りは今まで通りには生きては行けません。本当の犠牲者は2万数千の亡くなった人々です。その人々の反省している真の原因が明らかになっていないからです。特権階級は巨大地震も巨大津波も放射能拡散の真因を知りながら民衆の安全神話の所為にしていのではありませんか。東北の被災者の人権など沖縄人民の権利と同じように特権階級の政権には絵に描いたモチのようです。東北・北海道の民衆はせめて明治以後今日まで中央の特権階級からいいようにされてきたのです。ガストネル兄弟とロシアの北海道買収事件が宰相ビスマルクの賛成を得られずに終わったようですね…

Posted by: 縄文北九郎 | April 25, 2013 at 05:12 PM

>縄文北九郎さん

はじめまして。ああ、これブログはじめたばっかりのころに書いた記事ですね・・・ なつかしいな
被災した方たちへのその後のケアに関しては常々心配しているところですが、わたし自身東北の皆さんがどれほど辛い思いをしてるのかちゃんと理解してるかといえば想像の範囲でしかなく、せめて記憶が風化しないよう気をつけたいと思っております

『箱舘売ります』はもっと多くの人に読まれてほしい作品ですね。何かの機会に再評価されることを望みます

Posted by: SGA屋伍一 | April 27, 2013 at 10:14 PM

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Tracked on January 28, 2005 at 10:49 PM

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