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January 24, 2005

ハンサム双子の謎 アゴタ・クリストフ『悪童日記』三部作

なるたけ旬のものを紹介したいのですけど、はやくもネタがつきてきました。そういうわけでかれこれ10年前、ひそかにブームになったこの本を。

わたしが本に著者のサインをもらったのは2回だけ。一度は去年、『風雲児たち』のみなもと太郎先生から。
そしてもう一人がこのアゴタ・クリストフ女史。別に熱心なファンというわけでもなかったのですが、経歴を見ると「共産圏から命からがらフランスに亡命した」というなかなかハ-ドなことが書いてあり、どんな人なのか実際に見てみたくなったというわけ(高齢なので、これを逃したらたぶんもうこういう機会はなかろうとも思った)。
で、実際はやっぱりつつましそーな、ごく普通のおばあちゃん、て感じでしたね。

さて、『悪童日記』のあらすじを。時は第二次大戦中、ところはたぶんハンガリー。戦火を逃れるため母親につれられて田舎の村にきた、双子の可愛い兄弟がいた。母親は直後に死亡。双子は怪しげで意地悪そうな祖母に引き取られ、その村で暮らすことになる。
で、双子の悪戯の数々や、村の様々な人たちの様子が、日記形体で語られていきます。こう書くと世界名作劇場みたいですけど、その悪戯の中には計画殺人も含まれていたりするので、シャレになりません。村の住人もおホモなドイツ将校をはじめ、性モラルの欠落したような方々ばかりですので、お子様にはいささか刺激の強い内容。
淡々と物語は進んでいきますが、終盤では連合軍の進行がはじまり、さすがに平穏な村にも変化が訪れます。そして「あら?」と言わせるようなラスト数行でもって、この奇妙な話はひとまず終幕。

この『悪童日記』、これだけで終ってもまったく支障のない小説なんです。ところがほどなくして、続編『ふたりの証拠』が発表されました。あんまし書くとネタバレになるのでアレですが、この続編では1作目で語られなかった双子の名前が「リュカ」と「クラウス」であることが判明します。また、極力感情を廃した「ハードボイルド文体」で書かれた前作と異なり、こちらでは胸に迫るような、心情を吐露した文章がつづられます。そしてまたしても「ありらりら?」と言わせるようなオチでもって幕。物語は『第三の嘘』へと続きます。

この三部作、ミステリーとしても純文学としても読め、ちょっとピリリとするものの、とても面白い小説です。というのは、1作読むごとに、それまでの世界を根本から覆すような意表をつく展開があるからなんです。三作目でとりあえず
決着はついているものの、考えるほどにどこまでが○○で、どこまでが○○なのかわからなくなる、そんな幻惑感が味わえます。アゴタ女史はこの後に『昨日』という長編も著しています。これを続編と見る向きもあるようですが、やはり別個の作品と考えるのが正しいかと。ミステリ的な要素がない上に、あんまり面白くありません。

こうして『悪童日記』を振り返ると、わたしは色々共通点の多い、一つの作品を思い出します。その作品とは
(別項、『ジョルジョの青い空』へ続く)

*追記
その後個別にレビュー書きました。大概ネタバレしてますが、ご興味おありの方はご覧ください。
book『悪童日記』
book『ふたりの証拠』
book『第三の嘘』

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Comments

おおっ、私もこの3部作興奮しつつ読みました。確か、「ダ・ヴィンチ」の創刊号あたりで、その昔徳川慶喜役をした元木くんが、表紙で「悪童日記」をもっていたのを見て、図書館で借りたのだと思います。

Posted by: kakakai | February 02, 2005 at 11:20 PM

ダ・ヴィンチ表紙の件、実物は見てませんが、話で聞きました。まあ、かの雑誌が創刊されたころですから、もうけっこう前の話ですよね。
『昨日』以降は邦訳も出てないみたいですが、アゴタ先生は今も元気でおられるのやら。

Posted by: SGA屋伍一 | February 03, 2005 at 12:15 AM

こんばんは~♪
昨晩、→の人気記事ランキングをみて、早速お邪魔したのですが、ココログさんが混んでいるとかでコメントをはじかれました・・・
で、、、再び来ました~♪(良かった・・・コメントが3つも4つも重なって入っていたら申し訳ないと思っていました・笑)

悪童日記にガツンとやられて、ふたりの証拠、第三の嘘を一気に読んじゃいましたが、、、
いや~~~ビックリ!!!
>考えるほどにどこまでが○○で、どこまでが○○なのかわからなくなる、そんな幻惑感が味わえます。
まさにそうでした!!!
一体何なの?!何なのコレは?!―って頭がパニックでしたよ~
柔軟性のない私は、いまだに何が何だか分からない・・・
スゴク面白かったんだけど、それを感想として書く能力がないと思う。
只今時間がないので、再読出来そうにないですが、是非もう一回読まないと、、、まだ自分の中でストンと落ちていません(涙)

Posted by: 由香 | August 17, 2010 at 12:00 AM

>由香さん

コメントせっかく送ってくださったのにどうもすいません! こころぐ~ シッカリシテクレヨ~

で、これ今から五年以上前の記事なんですよね・・・ だのに夏休み冬休みの時期はこうやってちょくちょくアクセスが来るという(笑)
 うん、まあなんにせよ書いたものを読んでもらえるってのはありがたいことです

>>考えるほどにどこまでが○○で、どこまでが○○なのかわからなくなる

もうね、前までの話は前までの話でいいんじゃないかと・・・ って何言ってんだかよくわかりませんね、すいませんcoldsweats01

わたしはとりあえず『ふたりの証拠』まで再読しました。再読っていってもそれこそ十年ぶりなので、忘れてることもいろいろ。一方でそれなりに新たな発見もあったり

とりあえず『第三の嘘』も読まないとな。それにしても十年ぶりに手を取ったらたまたま由香さんも読んだばっかりで、嬉しい偶然であります

Posted by: SGA屋伍一 | August 17, 2010 at 09:24 PM

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アゴタ・クリストフ †  ハンガリー生まれ→スイス 1935/10/30- アゴタ・クリストフ 『悪童日記』 『第三の嘘』 プロフィール ↑『悪童日記』 †  堀茂樹訳(早川書房)1991年1月 【現在は、ハヤカワ文庫もある】 旅人 PINO ナタナエル tok... [Read More]

Tracked on April 26, 2005 at 01:47 PM

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