« December 2004 | Main | February 2005 »

January 30, 2005

ライダー屋剣ちゃん総括 上級アンデッド編 『仮面ライダー剣』

昨日『風雲児たち』のファンの集いに出たら、誰も『剣』を観てないことが明らかになりました。うう。
そんなミーの心を癒してくれるのは、『イブニング』最新号にあった、吉田戦車先生の「趣味で仮面ライダーをずっと観ている」というコメント。吉田先生は『新選組!』も熱心に視聴されてたそうだし、なんだか君とは気があいそうだ。

さて、とうとう『響鬼』も始まってしまいましたが、上級編に行きたいと思います。完全にネタを割っているので、「それでもかまわん」という上の上たるアンデッドの方のみ、以降をお読みください。名セリフで振り返る『剣』の一年です。

「本当に裏切ったんですかあっ!」(#1)
バトルに始まり、絶望の叫びで終る第1話。多少ハッタリ感はあるものの、ツカミに必要なインパクトは十分にあった。
結局ギャレンの裏切りも誤解だったわけが、彼の振る舞いはわざと誤解されたがっているようにしか見えない。「李下に冠を正さず」とだけ言っておこう。考えてみると「他人をどこまで信頼できるか」が『剣』のテーマだった気がする。

「俺は今、むしょうに戦いたい。おまえのような奴を、この手でぶちのめしたい!」(#8)
夕闇の工場。すれ違うバイク。にらみ合う異形二人。ヴィジュアルがまことにかっこよく、『剣』を観ていて初めて「いいぞ! そこだ! もっとやれ!」と思ったシーン。決して手に入らぬ物があることを思い知り、戦いに苛立ちをぶつけるカリスが泣ける。

「サヨコオオオオーッ!」(#15)
『剣』前半で一番驚かされたくだり。まさかあのギャレンが、あの伊坂を倒すとは・・・ 強大な敵を葬り去ったものの、失ったものはあまりにも大きく、勝利の喜びなど湧き上がるはずもない。海に向かって立ち尽くす彼は、一体なにを思うのか。

「最後に雌雄を決しよう。最高の敵として」(#23)
次々登場する個性的な上級アンデッドの皆さん。「野暮なことしないの♪」の矢沢くん、「戦いが嫌いなんだ」の象さんも捨てがたいが、中盤でもっとも印象的だったのはイーグル(メガネ)アンデッドの高原さん。「勝負に対する美学」を重んじるところが、上のセリフからは感じられる。演じるは実力派の林泰文氏。

「おれが勝つか、カテゴリーAが勝っておれがいなくなるか・・・ でもこれがおれの運命ですから。」(#27)
精神を怪物に呑み込まれて行く睦月少年。このあとまたみんなを振り回すわけだが、泣き言ばっかり言っていた登場時に比べると、ちょっと「男」になったな、という気がする。

「例え今はきみ一人守るのが精一杯でも、あきらめない。運命に負けたくないんだ!」(#36)
実は観ていた時、「唐突で陳腐なセリフだなあ」と思った。だけど全編見終わったあとで思い返すと、「ああ、そういうことだったのか」と得心する。平成ライダーにはこういうセリフ多いですな。

「きみは広瀬義人の記憶をもつトライアルBではないか」(#38)
自分がもし自分ではなかったら? P.K.ディックによくある話だが、仮面ライダーでそれをやるとは。もと特撮俳優の春田純一氏は「娘への父性愛あふれる悪の敵幹部」という、難しい役を好演。そして広瀬のバックには、さらに上がいる!という事実が明らかに。終盤にむけて物語はさらに混沌を増し、否が応でも気分は盛り上がる。

「誰に命じられたわけでもない。ただ、一人でも多くの人を救いたい。・・・そう願った。」(#46)
さすがに元モロボシ・ダン。森次晃司氏の存在感はなみなみならぬもので、視聴者まで、「こいつの方が正しいかも」なんて思わされそうになる。そうした疑念を吹っ飛ばす剣崎のファイト一発。あんまり反論になってない気がするが、世の中しょせん気迫のある方が勝ち。

「しょせん俺とお前は・・・ 戦いを通してでなければ語りあえない!」(#49 および劇場版)
劇場版で一番感動したのが、冒頭のこの場面。劇場版が本編とつながらないことは、既にお約束と化していて、受け手の方でも最近は全然その辺期待していない。でもスタッフは多少良心の咎めがあるのか、こうやって微妙にリンクさせたりする。自分の存在が世界を滅ぼしてしまうために、自分が死ぬことでしか愛するものを救えない。そんな悲痛な叫びが胸に響くシーン。

「おれたちはもう二度と会わない。触れ合うこともない。だがそれでいいんだ。」(#49)
友の望みをかなえるため、人外の存在になることを選んだ剣崎は、皆の前から姿を消す。ひとつの世界を救ったというのに、そこには拍手も賞賛の声もない。そして彼の行く手には想像を越えた苦難が待っていることだろう。しかし我々は、彼ならば、剣崎一真ならば大丈夫と思う。なぜなら彼は「仮面ライダー」なのだから。

一年通して、本当に楽しませて頂きました。『響鬼』も「ヒビキ、カンゲキ!」といえるような作品になるといいですね!

| | Comments (0) | TrackBack (0)

January 29, 2005

なんでもどうぞ(掲示板代わり)

今日から隔週でこんなコーナー作ってみることにしました。
ご意見、ご感想、ご要望、苦情、質問、おすすめ品、雑談、なんでもどうぞ。
もりあがらなければ今回かぎりかもわかりません(笑)

| | Comments (22) | TrackBack (0)

January 25, 2005

いまごろ大河ドラマ『新選組!』を振り返ってみようのコーナー④

Yahoo!サイトで公式検索したら、『義経』に飛んじゃいました(笑)
いよいよ刻限が迫りつつある、ちゅうことでしょうか。では第4回目。

#16 会津という名のもとに
カッコつけて残ったはいいものの、はっきり言ってプー太郎状態の勇たち。とりあえず形だけでも、ということで将軍警護にでかける。そこで勇らはグリコ・森永事件の容疑者を発見。逃げられてしまったが、このことが会津藩主・松平容保公の耳に入り、会津藩の庇護を受ける事になる。
まだまだ上様は雲の上の方。遠くでヒョコヒョコお飾りだけが動いている絵がおかしい。「会津藩には家訓があって・・・」この家訓が定められた理由はついぞ出てこなかったが、ひょっとすると、『大奥~第1章』との連動企画だったのかもしれない。注目すべきは「声の出演」のみの高杉晋作。一体誰が声をやっていたのか、ちょっと気になる。結局出番はここだけでした。
・この回の重要アイテム
八木さんちから借りた間に合わせの羽織り

#17 はじまりはいつも血の雨
会津藩がパトロンになってくれてホッと一息。と、思いきや、はやくも浪士組では派閥争いが始まる。佐々木只三郎より連絡役として残された殿内義雄のストレスは限界に。脱走を図るも勇に見つかってしまう。順々とさとされ、思い直したかに見えたが・・・
『新選組!』の法則、その1.急に改心したり、身の上を語りだしたやつには、死期が迫っている。この殿内さんも、タイミングが悪かったですねえ。鴨ちゃんが「裏でこそこそやるやつはゆるせねえ!」と言っていたが、『風雲児たち』のファンサイトで、どなたかが、「あれは生瀬氏が翌週から裏番組の司会を始めることを揶揄して」と教えてくれた。本当だったら面白いなあ。
宴が終った後で、「そう言えばあれはああだった」と言い始める山南さん。歳三につっこまれていたけど、こういうこと、けっこうありますよねえ。
粕谷粧五郎氏や根岸友山先生はこの回で退場。粕谷さんにはこの後も波乱の生涯があったみたい。ドラマ化希望
・この回の重要アイテム
アピル君が残していった結核菌

#18 玄ちゃん数え歌
”ひとつ 人より知恵を持ち ふたつ 不埒な歌書いて 花の都で ウサ晴らし”
突如現れてゲリラ・ライブを繰り返すパンクロック・バンド“チョーシューメン”。彼らは庶民から人気を集め、オリコンチャート1位を独走。しかしそのあまりの内容の過激さに、お上は発売禁止を決定。何かと風当たりの強そうなその役目が、新選組の初仕事となった。
なぜ高杉でも吉田稔麿でもなく、久坂玄瑞が新選組のライバルに選ばれたのか。たぶんその答えは、「華があるから」ちゅうことなんではなかろうか。幹部たちとは別に、したっぱたちは親睦のため相撲に興じる。それまで背景の一部だった野口君が喋りだして、彼もそんなに悪い奴じゃないことが判明。
あと優香ちゃん演じる深雪太夫が初登場。「あなたも・・・」と諭そうとしたら、もうそこにはいない。このくだりけっこう笑った。
・この回の重要アイテム
左之助に折られた立て札

#19 今夜は眠れナイト
八木家のばあさんが亡くなる。最愛の人を失った左之助は号泣。束の間の恋であった。そんな彼をよそに、葬式の準備に張り切る一同。それなりに式が進んでたところへ、例の“チョーシューメン”が嫌がらせに来る。
葬式とか引越しとかそういうネタ好きですよね、このドラマ。たぶん彼らの日常を描く事も目的のひとつだからでしょう。どうせなら正月とかも見たかった。「ファイト一発」の島田魁くんが初登場。「気は優しくて力持ち」を地で行くようなキャラクター。ひでちゃんが男装を解除。試衛館のやつらのアレは、知っててセクハラしてるようにしか見えなかった。
・この回の重要アイテム
タイムリミットを告げるお線香。
斎藤「全部灰になる前に、はよ片づけて戻らな!」 (ドカ、バキ、ガス) ダッシュで帰ってくるとそこには・・・
いくらなんでも帰ってくるの早すぎじゃないか、という気もするが、わたしこういう話好きです。

#20 ナニワ勤皇道
新選組!の法則、その2。竜馬が「久しぶり!」と言って宴を催すと、かならずケンカが起きる。
この回でも出張で大阪に行った勇たちが、彼の引き合わせで桂小五郎と酒を酌み交わすが、芹沢と桂がヒートアップ。見事に敗北した鴨ちゃんはまわりに当り散らす。
今にして思えば、鴨ちゃんが本格的に壊れだしたのは、この回がきっかけだったような気がする。わかっちゃいるけど、感情をセーブできない。優しい言葉をかけられても素直になれず、ついワルぶってしまったりする。こういう人、憎めないんですよね。側にいたらいたで大変なんですが。
松原忠司と河合奢三郎が登場。高野さんには悪いが、松原さんに負けて落ち込む斎藤が笑える。
・この回の重要アイテム
例のダンダラの装束。今でこそ新選組のスタンダードだが、当時は集団コスプレであったことが判明。こりゃ恥ずかしい・・・

このあたり、都会に出てきたはいいけど、なかなか日の目を見れなくて焦るバンドか劇団のようでもある。三谷さんの青春時代と重ね合わせているのかも。あ、でも彼は東京出身だったか。

| | Comments (12) | TrackBack (1)

January 24, 2005

ハンサム双子の謎 アゴタ・クリストフ『悪童日記』三部作

なるたけ旬のものを紹介したいのですけど、はやくもネタがつきてきました。そういうわけでかれこれ10年前、ひそかにブームになったこの本を。

わたしが本に著者のサインをもらったのは2回だけ。一度は去年、『風雲児たち』のみなもと太郎先生から。
そしてもう一人がこのアゴタ・クリストフ女史。別に熱心なファンというわけでもなかったのですが、経歴を見ると「共産圏から命からがらフランスに亡命した」というなかなかハ-ドなことが書いてあり、どんな人なのか実際に見てみたくなったというわけ(高齢なので、これを逃したらたぶんもうこういう機会はなかろうとも思った)。
で、実際はやっぱりつつましそーな、ごく普通のおばあちゃん、て感じでしたね。

さて、『悪童日記』のあらすじを。時は第二次大戦中、ところはたぶんハンガリー。戦火を逃れるため母親につれられて田舎の村にきた、双子の可愛い兄弟がいた。母親は直後に死亡。双子は怪しげで意地悪そうな祖母に引き取られ、その村で暮らすことになる。
で、双子の悪戯の数々や、村の様々な人たちの様子が、日記形体で語られていきます。こう書くと世界名作劇場みたいですけど、その悪戯の中には計画殺人も含まれていたりするので、シャレになりません。村の住人もおホモなドイツ将校をはじめ、性モラルの欠落したような方々ばかりですので、お子様にはいささか刺激の強い内容。
淡々と物語は進んでいきますが、終盤では連合軍の進行がはじまり、さすがに平穏な村にも変化が訪れます。そして「あら?」と言わせるようなラスト数行でもって、この奇妙な話はひとまず終幕。

この『悪童日記』、これだけで終ってもまったく支障のない小説なんです。ところがほどなくして、続編『ふたりの証拠』が発表されました。あんまし書くとネタバレになるのでアレですが、この続編では1作目で語られなかった双子の名前が「リュカ」と「クラウス」であることが判明します。また、極力感情を廃した「ハードボイルド文体」で書かれた前作と異なり、こちらでは胸に迫るような、心情を吐露した文章がつづられます。そしてまたしても「ありらりら?」と言わせるようなオチでもって幕。物語は『第三の嘘』へと続きます。

この三部作、ミステリーとしても純文学としても読め、ちょっとピリリとするものの、とても面白い小説です。というのは、1作読むごとに、それまでの世界を根本から覆すような意表をつく展開があるからなんです。三作目でとりあえず
決着はついているものの、考えるほどにどこまでが○○で、どこまでが○○なのかわからなくなる、そんな幻惑感が味わえます。アゴタ女史はこの後に『昨日』という長編も著しています。これを続編と見る向きもあるようですが、やはり別個の作品と考えるのが正しいかと。ミステリ的な要素がない上に、あんまり面白くありません。

こうして『悪童日記』を振り返ると、わたしは色々共通点の多い、一つの作品を思い出します。その作品とは
(別項、『ジョルジョの青い空』へ続く)

*追記
その後個別にレビュー書きました。大概ネタバレしてますが、ご興味おありの方はご覧ください。
book『悪童日記』
book『ふたりの証拠』
book『第三の嘘』

| | Comments (4) | TrackBack (1)

January 22, 2005

ライダー屋剣ちゃん総括 中級編 『仮面ライダー剣』

(徐々にネタを割ってます。ご注意ください)
この『仮面ライダー剣』、前情報では「今度のライダーは組織に属し、給料をもらって怪人を倒す言わば“職業ライダー”ということだった。“ライダーは基本的にフリーな立場でいてほしいなあ。でも独特の味が出せればいいか”そんな風に考えていた。しかし雑誌に出ていた第1話サブタイトルを見て、わたしは目を疑った。
「第1話 組織崩壊」
・・・早い。早すぎるよ。そんなのありですか。
かくして職業ライダーから、失業ライダーになってしまった剣崎一真の苦闘が始まる。
ギャレンの裏切り(?)、ヒロインの鉄拳、カリスに失恋(??)、しまいにゃ拉致監禁と、不幸のフルコース状態。それでも主人公は「ウエイッ!」とめげない。見上げた根性だ。

普通第1話からこれだけハイペースでやると、中盤あたりでもうもたついたりするものだが、そういう時便利なのが新キャラクター。かくして1クールを終えたあたりで、クローバーのライダー、レンゲルこと上條睦月が登場する。
おそらくライダーとしては、史上最年少の現役高校生。トラウマから逃げたい、罪無きひとをまもりたい、といういい動機でライダーになったものの、そのべルトが悪の手によりつくられたものであるため、善と悪の間で葛藤する、という青年。で、スペード、ダイヤ、ハート、クローバーときたら、「当然ジョーカーのライダーもいるのでは?」と思うでしょ。ところがどっこい・・・、いや、こいつは一応伏せときましょう。

この『剣』で独特なのが、怪人をカード化するシステム。そしてこのカードを自分の武器で読み取ると、その怪人の技が使えるようになる(シカアンデッド→なぜか電撃、イナゴ→なぜかキック)。つまりどんな雑魚怪人も、その後の設定に影響を与えるという、非常に怪人に対して「愛」の強いシステム。結局一度も使わなかったカードもあったけど。

あとこの物語でもう一つ独自の存在と言えるのが、謎の怪人ライダー、カリス=始。「おれには戦いしかない」
そううそぶくものの、人の情愛を知ってしまったために、色々苦しむ事になる(しょせん妖怪人間だし)。その辺感情移入して見ると泣けます。

また、伏線や謎をうっちゃらかしたまま終ってしまうものが多い中で、ちゃんとそういう“おとしもの”を回収しようという努力がみられるのも、評価したい点。これは後半主に脚本を担当した曾川昇氏の功績だろう。ご苦労さんでした。

というわけで1年通していろいろあった『剣』も、明日いよいよフィナーレ。
今までの努力もむなしく、町中にあふれ返ってしまったアンデッド(あーあ)
ギャレンは消え、レンゲルも倒れた。
そして満身創痍のブレイド=剣崎の前に、最後にたちはだかる者とは?
「切り札は君の中」

上級編はベストシーン、名台詞なんかをふりかえってみたいと思います。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

January 21, 2005

がんばれ源氏 北崎拓『ますらお ~秘本義経記』

20080104175219_2このほど文庫版が小学館より発売された作品。いまから十年ほど前、週刊少年サンデーに連載されていました。まちがいなく大河にあやかっての復刊でしょう。
作者、北崎先生は世間ではラブコメ作家として認知されていると思いますが、この作品の少し前にも『望郷戦士』というよくまとまったサバイバル・アクションを描かれていて、ハードな作風もなかなかいける方なんです。
平安~鎌倉最初期って、一般では雅で優美で十二単?みたいな、そういうイメージって、あると思うんです。でもお、わたし思うんですけどお、宮殿の外を出れば、そこにはドロドログチャグチャネバネバっとした、ダーティな面もいっぱいあったんじゃないでしょうか。そういった「平安の闇」を書いた作品で思い浮かぶのが、芥川龍之介『羅生門』、富樫倫太郎『陰陽寮』、そしてこの『ますらお』だったりします。副題が「秘本義経記」とあるように、源義経の青春を描いたおはなし。
どんくらいハードかというと、第1話から、仲良くなった友達が、ワンコの餌になっちゃったりします。さらに、伊勢三郎や常陸坊海尊の顔が、なにもここまでってくらい、極悪。麻雀では絶対に対面に座りたくないタイプ。
こう書くとひいてしまうご婦人方もおられるかもしれませんが、全編実にかっちりした少年マンガになってますし、静との恋模様なんかもちゃんとページが割かれています。ですから男女ともに楽しめる作品になっています。また後半には知られざるもう一人の義経「山本義経」が登場し、物語に彩りをそえます。
で、文庫版の解説は『三国志』『平家物語』で知られた人形師、川本喜八郎氏が書いておられます。読んでないので確かな情報じゃありませんが、これは恐らく平安のころの装束や建築を、実に丁寧に再現してある点を、川本氏が評価されたからではないでしょうか。
そして全編にただよう濃密な闇の気配。繰り返すようですが、北崎先生はこんなものもしっかり書ける人なんですよ! 聞いてますか? ヤ○グ・サ○デー!

さて、こんだけもっちゃげたあとでもうしわけありませんが、このマンガ、一の谷を攻略したあとくらいで、終っています。どうもサ○デーのキャピキャピ・ソフト路線の中で浮いてしまったようで。作者のページで「いつか続きを描きたい」とありましたが、その言葉を信じてもよいのでしょうか。つーか、やるなら今がいい一番タイミングでしょうが!

最後にダイジェスト風に印象に残ったセリフを。
「だから・・・ 言ったんだ・・・ 戦わなきゃダメだって・・・」
「あんたが立ってやつらを討てるんなら、おれはなんだってする! こんな命でいいならくれてやる!」
「信じてくれたのは、あいつだけだったな。いつもいじめてばかりいたのに・・・ クソ・・・」
「これからは、お主が泣くときには ともに泣こう。お主が笑うときには ともに笑おう」
「あれじゃ血だらけで、傷だらけで、似ているかなんてわからないよ・・・」
「その瞳に吸い寄せられるまま 我らもまた鬼神なり!」

というわけで、興味を持った方は今のうちに買っておきましょう。全5巻。早くしないと、あた「あっ」という間にまた絶版になるやもしれませぬ。

| | Comments (10) | TrackBack (1)

January 19, 2005

いまごろ大河ドラマ『新選組!』を振り返ってみようのコーナー③

昨年のN○K企画会議室にて
「今年トシがいて来年はヨッチャンだから、再来年はマッチでいきたいと思う」
「マッチ、マッチ・・・ 誰かいますかね」
「山内一豊」
「・・・彼はヤマッチと呼ぶべきでは?」
えー(汗)、3回目です。

#11 空は青空 二人は和解
浪士組出発の日がせまる。京では夜な夜な平家の亡霊が現れ、耳なし芳一を量産しているという。周囲の人々は勇を心配して思いとどまらせようとするが、彼は動じない。そんな中、つねは勇と義母が和解するよう一計を案じる。
それにより、一話から引っ張っていた野際との確執が解消される。この和解、できれば最終回間際の方が感動したと思うが・・・
一生懸命二人のためにがんばるつねちゃんがけなげ。田畑嬢は朝ドラ『私の青空』でも、夢ばかり追いかけているろくでもないダンナのために、苦労を一身に背負う、という役を演じていた。ちなみにそのダンナというのが、松平容保。
「松平さま! お言葉ですがそれはあまりにも・・・」
「良いではないか、 近藤♪」
よくありません。
この回の重要アイテム:バッタモンの虎徹

#12 そんなトシにだまされて
浪士組出立の日。有象無象が会場にひしめく。清河八郎は場をまとめようと張り切るが、はやくも内部に亀裂の兆しが。一方で歳三は、勇を重要なポストにつけるべく、奔走する。
だれが一番組長をつとめるか、もめる組頭たち。ほんと、オトコって子供よね。それにしても浪士組の面々、面白い顔がたくさん。本当は三谷さんもみなもと先生と一緒で、ブ男の方が好きなんだと思う。考えてみれば試衛館の面々も、微妙な境界線上にあるようなヤツが多いような・・・ あ、まじいこといったかな?
今まで単なる女たらしだった歳三が、いよいよ“魔物”としての本性を表しはじめる。パンチとかセクハラとかやり方は強引だが、なんとか思い通りにことを運ぶ手際はみごと。
この回の重要アイテム:捨助の用意したワイロ用資金

#13 ストリート・オブ・キャンプファイアー
京へ向かう浪士組。途中寄った宿場町で、勇は幹事役に奔走。ところが手違いで暴れん坊鴨ちゃんに鳥小屋がわりあてられてしまい、芹沢はぶちきれる。路上で巨大な焚き火を燃やし、マイムマイムを踊りだす芹沢一党。どうする、近藤勇!?
柱に名前を勝手に名前を彫る左之助ら。修学旅行生か。しかしこのイタズラが、最終回でああも感動的に使われるとは・・・ この回で思うのは幹事ってホント大変だな~ってこと。苦労してやってるのに、感謝されるどころか、文句ばかり言われる。あと、近藤さんの土下座がもっともカッコよく決まった回。彼にベスト・ドゲッザー賞を。
この回の重要アイテム:総司が焚き火で焼いてたイモ・・・ってこれは『俺の新撰組』だったな。

#14 伊東家の画策
京へ着いた試衛館の面々。宿舎となった八木家の主人は、娘の貞操を守るため、彼女に男装を命じる。そして清河八郎はいよいよ野望をかなえるべく、「清河軍団設立計画」を進めていく。
どうして新選組ものをやると、決まって沖田に男装の麗人がからむのだろう。沖田自体が女ってのもあったし。
この回より悩殺パワー全開のお梅さんが登場。この色香、測定不能。
この回の重要アイテム:呪いの逆さホウキ。「ブブ漬け喰え」とかさあ、京都の人ってやることまわりくどいよ! あ・・・ みなもと先生、見てませんよね(焦)?

#15 斎藤再登ジョー
清河の狙いは、自分の手足となる攘夷集団を作ることだった。「話がちがう」と席を立つ近藤一派と芹沢一派。血の気の多い芹沢はそれだけではおさまらず、清河暗殺を勇たちにもちかける。
この回で近藤さんがキリングマシンへと変貌するのかと思ったが、清河を殺ろうとするどころか、むしろ助けようとする。まあ、清河が軽い笑いを残しつつ去っていくあたりが、名作『冗談新撰組』みたいだからOK。
そういうわけでひとまず清河氏は退場。これがフィクションならみんな忘れたころに、いいところで再登場するんだろうけど、現実は非情だ。この清河八朗、『竜馬におまかせ』では、『古畑』で恋敵にあたる(?)、西村雅彦が演じている。
この回の重要アイテム:お梅さんの額に着いたショウユ

このあたりで正式な第1部「多摩編」が終了。「鴨編」へとつながっていく。カモン!

| | Comments (5) | TrackBack (0)

January 17, 2005

ライダー屋剣ちゃん総括 初級編 『仮面ライダー剣』

剣と書いて「ブレイド」と読みます。正直に言うと、去年『新選組!』と並んでもっとも楽しみにしていたテレビ番組。
もっと正直に言うと、ここ数年、平成ライダーより楽しみな番組ってなかったりします。どうぞ笑っておくんなまし。

平成ライダーも五年目になりますと、視聴率が低下したり、各メディアへの露出が減ったりして、「ライダーブームももう終わりよね」なんて言われちゃったりします(なぜか主題歌の売上のみ過去最高でしたが)。
その辺の理由は、前とネタがかぶってきて新味に乏しくなってしまったことや、『龍騎』『555』にあった重いテーマがないために、物足りなく思った人が多かったのでは、と考えます。たしかになんとなく全体的に、昼メロを思わせるような作風ではありました。
でもねえ、やっぱり好きなんですよ。それにダメな子ほど・・・いや、ダメじゃない、ダメじゃない!
(自己催眠中)
は、おまたせしました。ではストーリー解説から。

今を去ること1万年前、地球では種族の繁栄をめぐって、各種の始祖「アンデッド」たちの激しいバトルロイヤルが行われていた。結果、人類の始祖たる「ヒューマンアンデッド」が勝利。地球には人間が栄えるようになった。
そして現代、カードに封印されていたアンデッドたちが何者かにより解放されてしまう。人類の平和を守るため、特設された組織「ボード」は、アンデッドたちの能力を抽出して使う戦士「仮面ライダー」を開発。アンデッドたちを再封印していく。当初計画は順調に進んでいると思われたが・・・
この「アンデッド」、4スートで各13種に+アルファがいて、全部で53体。要するにトランプの各札にあてはめられるようになっています。というか、トランプがこいつらをもとにして作られたという設定なんですね(苦しい・・・)。そしてライダーたちは「A」のアンデッドのカードを利用して変身するので、当然4人いるわけです。

主人公はスペードのライダー、ブレイド。本名は剣崎一真。性格ははっきり言って単純バカです。幼少時両親を火事から救えなかったという過去があり、人を守る事になんの疑問もない青年。演じる椿隆之くんは恐ろしく滑舌が悪く、注意力を働かせてセリフを聞かないと、何を言っているのかわからないこともしばしば。それでも一生懸命やってるんだな、というのは伝わってきますし、その意味不明な絶叫が某所で大流行してしまったりするから、世の中はわかりません。

そのブレイドの先輩にあたるのが、ダイヤのライダー、ギャレン。本名は橘朔也。この人、根は悪い人じゃないんですけど、多分に情緒不安定なところがあり、いろいろ厄介ごとをもちこんでは皆を振り回します。それでも「橘さーん!」と先輩を懸命に慕うブレイドはけなげ。

そしてこの物語のもう一人の主人公と言える、ハートのライダー、カリス。本名は相川始・・・ってことになってますが、どうもこの方、人間じゃないらしく、「お前らが繁栄していることがまちがい」なんて言ってくれちゃったりします。けれどもそんな言葉とは裏腹に、世話になっている大家の親子がピンチに陥るとダッシュで駆けつけ、ちょっかいを出したヤツを容赦なくぶちのめします。まるでテレビ版デビルマンを地でいくようなキャラ。

中級編では残る一人のライダーの紹介と、「“剣”のココが良かった!」という所を解説します。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

January 16, 2005

ああやん・ジ・アルバトロス 飯嶋和一『始祖鳥記』

小学館文庫というマイナーなレーベルから出ています。昨年『黄金旅風』が話題になった飯嶋和一氏の作品。なんともぶっとんだフィクションだと思ったら、どうもこれ実話をもとにしているみたい。
イカロス、ダ・ヴィンチ、ライト兄弟・・・ 太古より人は天空を飛ぶことを夢みてきた。そして鎖国の時代の備前岡山にも、その夢にとりつかれた男がいた。彼の名は“ああやん(兄貴の意)”こと幸吉。
表具師としてすでに申し分ない地位と実力を持ちながら、その願望にどんどんのめりこんでいく“ああやん”。城下の橋で試験飛行を繰り返すうち、いつしか彼は世が乱れるとき出現するという、妖怪「鵺」ではないかと噂されるようになる。
彼は純粋にただ空を飛びたいだけだった。しかし彼のその「飛ぶ」という行為は民衆に希望を、為政者に恐怖を、さらには諸国の、胸に炎を宿す男たちに闘志を与えていくことになる。

この作品、困ったことには全三部のうち、第1部が一番面白いんである。突如として海上に現れるモスクの蜃気楼、自在に砂絵を描きあげる絵師・卯之助、幸吉が弟と老婆のために作った不思議な掛け軸、そして夜な夜な飛びまわる怪鳥・・・ こうした幾つものファンタジックなエピソードが、淡い色調で整えられた詩画のように、はかないながらも鮮烈な印象を残す。江戸時代の話を読んでいるのに、どこか他の南国の物語を思わせるようなムード。
で、第2部以降なのだが、別に急につまらなくなるわけではない。むしろこちらの方がしみじみと感動するシーンが多いかもしれない。しかし、第1部にあったような幻想的な雰囲気はなりをひそめ、「普通の時代小説」になってしまっているところが惜しい。
個人的にうれしいのは、ひとつは『風雲児たち』に出てきたキーワードが、ちょこちょこ出てくること。
もうひとつは幸吉の語る初歩の航空力学が、昔読んだ学習マンガ『できる・できないのひみつ』で読んだ事のあるもの・・・翼と体重の比重、鳥の骨は軽量化のため中ががらんどうになっている・・・だった点。自分の知識のほとんどがマンガから得たものであることを再認識(笑)。
そういうわけで、1部だけでも(一応つづく部分も)読む価値のある本。読んだあとは、なんだかどこかから飛び降りたくなる本。主人公へのなりきりにご注意を!

| | Comments (0) | TrackBack (0)

January 14, 2005

宇宙最凶決戦! P.アンダーソン『エイリアンVSプレデター』

年明け最初の一本はこれ。やっぱりバカ映画(笑)
宣伝文句は「どっちが勝っても、人類に未来はない」 ・・・それじゃぼくらはどっちを応援したらいいのでしょう。どっちかって言うと、まだ人情とか理解してくれそうなプレさんちに勝ってほしいもんですが、知名度、凶暴さ、繁殖能力、どれをとっても分が悪いって感じです。

南極地下に謎のピラミッドが発見される。ある富豪が調査チームを召集し、さっそくそこへ向かった。その様子を天空より見守るものたち・・・ 実はその遺跡は、彼らプレデターの「大人になるための試験」会場だったのだ。そしてその試験の内容とは、宇宙最凶悪の生物、エイリアンをたおすことだった。
極地、カニ、宇宙人とくると、名作『遊星からの物体X』を思い出しますが、こちらもなかなか凝っていて楽しい作品。まず、極地の青白さを基調としたヴィジュアルがなかなか美しゅうございます。メイン会場のピラミッドはさながら巨大はからくり屋敷で、10分ごとに内部構造が変化するという大変変った造り。エイリアンさえいなければ、是非1度見学してみたいものです。

では選手の紹介を。まずプレデターさん。
誇りを重んじ、姿を透明化していきなり襲いかかるという、大変礼儀正しい方々。宙を飛んだり、円盤をぶん投げたりというアクションが、ピシピシ決まります。あのカニみたいな素顔さえなければ、「あん、ほれちゃうかも」ってくらいかっこいい。超科学を有しているわりには、いまどきマサイ族ですらやらんようなアナクロい風習を続けていたりと、よくわからないところもありますが、そこはやっぱし宇宙人ですから。

もう片方は、もはや説明不要のエイリアンさんち。
明らかに1作目より成長速度が速くなっています(笑)。あいかわらず殺ること以外、な-んも考えちゃいません。「しぶとさ」の点でちょっとダウンしたようなきらいもありますけど、そのくらいのハンデがないと試合が成立しないので、別にいーんじゃないでしょうか。

そしてこの戦いに茶々をいれるのが、われらがホモ・サピエンス代表。黒人の女性探検家です。この方ちょいとフケ顔ばがらも、まことにたくましく、かつうるわしい。アフリカ系の女性にそんな印象を抱いたのははじめてだったので、おれの嗜好もかわってきたのかなあ、単になんでもありになってきたのかなあと、妙な感慨にふけったりして。

宇宙頂上決戦を征するのは捕食動物か、異邦人か、久保田早紀か!?
その結果はどうぞご自分の目でお確かめください。

| | Comments (2) | TrackBack (2)

January 12, 2005

いまごろ大河ドラマ『新選組!』を振り返ってみようのコーナー②

ぼちぼち巷では、例の悲劇のお坊ちゃまの話題で盛り上がっているころ。
「古いやつだとお思いでしょうが」ひとつ付き合っておくんなまし。

#6 カピラ対ナガクラ
出張稽古に行った勇と歳三は、その帰途で異人襲撃計画を偶然知ってしまう。その標的はハリス知事の通訳、ヒュースケンだった。手塚治虫の『陽だまりの樹』ではめちゃくちゃイヤなやつだったヒュースケン。こちらではうってかわって、ずいぶん好人物にアレンジされている。日本を愛しまくり、ついでに日本の女性も愛しまくる。そんなカピラJに、ヒュースケンというより、みなもと太郎先生書くところのシーボルトを思い出してしまった(高野さま、すいません)。
「お前、本当は日本人だろ」「こいつ、おれたちより年下だぜ」歳三のツッコミが冴える。
この回の重要アイテム:ヒュースケンのマント

#7 ひとつ屋根の下 幕末編
4代目襲名のパーティー会場となった宿で、勇は竜馬と再会。土佐勤皇党のやり方を巡って口論となる。この回はどうしてこういう流れになるのか、よくわからなかった。ただ、小ネタにはなかなか面白いものが多い。政論をふってコンパにふられる山南さんや、「多摩勤皇党」(笑)など。あと、アゴのでかさで知られる武市半平太が1カットだけ登場。できればアントニオ猪木に是非演じて欲しかった。
この回の重要アイテム:ドクロのアップリケ 「これだけは得意なんだ」 そうか、これで上手なつもりなんだ・・・

#8 生麦酒事件
石田散薬の出張販売に出かけた近藤勇一行。行った先で、なぜか異人とたちと酒を酌み交わすことになる。だがその異人たちは勇の目の前で斬られてしまった。この回に出てくる伊藤軍兵衛という御仁、なんだかリストラにあってノイローゼになってしまったサラリーマンのよう。今の世相を重ねているのか。あと、勇と歳三が第1話で拾った物体がなんだったのか明らかになる。床に転がっていたビンの中に、生ビールがあったかどうかは不明。
この回のバッドアイテム:大量に余ってしまった(またしても)石田散薬

#9 大福はどこへ行った
出自のことがもとで就職がフイになってしまう勇。歳三も女関係が原因でボコスカにされる(自業自得)。二人が悶々としている裏で、山南がなにやらちょこまか動き回る。彼の目的は? ようやくホームドラマ編(勝手に命名)が終了。視聴者としては「やっとか」とかという感じだが、出番縮小を余儀なくされるつねちゃんはかわいそう。考えてみればこのとき左之助がつまみ食いをしなければ、新選組が世に出ることも池田屋事件もなかったわけで、偶然ってこわいなあとつくづく思う。が、それはそれで無問題では、という気もしないでもない。
この回の重要アイテム:(言うまでもなく)大福 

#10 おれたち欠金族
いよいよ浪士組参加に向けて動き出す試衛館の野郎ども。ひとり「年少だから」ということで外された総司はぐれてしまい、非行の道に走る(ウソ)。この沖田のキャラ、藤原竜也くんがやっているせいで、だいぶイヤな部分が目立たなくなっていると思う。とりあえず、藤竜也との区別はつくようになった。すごく調子のいい松平上総介さまが素敵。この役者さん、普段はもっとかっこのいい役やってるのではなかろうか。
この回の重要アイテム:剃りあとの痛々しい総司の月代

#6~#8などはメンバーの加入以外は、まあ無くてもいい回なんだけど、この辺を見ておくことでいっそうキャラへの愛着が強くなり、その分終盤がつらくなるというねらいかもしれない。三谷はん、あんたもあこぎやね。

| | Comments (4) | TrackBack (0)

January 10, 2005

坊主が上手にボールをゴールに・・・ 周星馳『少林サッカー』

おとといテレビで久しぶりに観た。
この映画が公開されたのは2002年。「大ヒット!」というふれこみのわりに、客の入りはまばらだった。
それもそのはず、その日はW杯で最も因縁の対決と言われた、イングランドVSアルゼンチンの試合がある日だったのだ。そんな日に『少林サッカー』を観ようなんてやつは、よほどのオタクか、うっかりものか、ひねくれものにちがいない。

改めて見て、その絵の美しさに、ほとほと感じ入った。
それは冒頭の、地球の向こうからあんなものやそんなものが昇ってくるヴィジョンであったり、バラバラに崩れ落ちた塀の向こうから主人公の後姿が表れるシーン、はたまたパンツをかぶったまま地面に突き立つ「鋼鉄の頭」であったり、ボールを指先でクルクルまわすヒロインであったりする。
こうした「静止画像の美しさ」は、やはり『マトリックス』の影響であるかと思われる。そしてさらにその源流を探ると、「本来止まったもの」であるアメコミの、大胆なパース、デフォルメに行き着く。
そう言えば周星馳は、この映画を作るに当たって同じくマンガである『キャプテン翼』を参考にしたそうだ。なるほど、ボールがコンクリの壁にめり込んでいく演出や、階段を上るように宙に駆け上がっていく描写は、まんま『翼』の世界だ。

ただ、周星馳が面白い理由は、こうした奇をてらう手法だけにあるのではない。彼のつむぐ物語には、ちゃんとした「骨格」がある。さえない主人公が、一生懸命がんばって、やはり貧乏なヒロインと幸せをつかむというストーリー。天地がひっくりかえるような逆境にも、己の肉体とファイトで敢然と立ち向かうスピリット。それらは周さんがチャップリンやキートンといった、王道的喜劇の正当な後継者であることを表している。だからわたしは『食神』が、『少林サッカー』が好きなのだ。

もし李小竜がこの映画を観たなら、きっとこう言うだろう。
「Don’t think・・・ Feel!」
いやあ、バカ映画って、本当にいいもんですね♪

| | Comments (6) | TrackBack (1)

January 09, 2005

サイバラ・クロニクル 西原理恵子あれこれ

わたしは西原理恵子が好きだ。
といっても、好みのタイプとかモノにしたいとかそういうわけではない。純粋に彼女の作品が好きだということ。
例えば、『まあじゃんほうろうき』の中で登場人物のひとり、“すえいどん”はこう語る。
「だいじょうぶ。借金は大きいいほうが人間が大きくなるよ。それに返したくないんだったら返さなくってもいいんだし。ぼくなんか絶対に返すつもりないよ(ちなみにこの時点で6億円) ほっほー」
こういうセリフを読んでいると、自分がチマチマしたことで悩んでいる事が、まことに馬鹿らしく思えてくる。

昨年末、『毎日かあさん』が文化芸術メディア賞、とやらを受賞した。でも彼女は「賞なぞどうでもいいが、いったいいくらもらえるんだ」と思っているにちがいない。この『毎日かあさん』オビにはこう書いてある。
「家庭円満マンガを書こうとおもったら、連載中に離婚してしまいました(笑)」
相変わらず、彼女の言葉はパンチが効いている。しかしその一方で、「このひとも変ったな」と感じざるをえない。かつて彼女はエッセイやインタビューで「子供は大嫌い」「子育てなぞ絶対にするつもりはない」と語っていた。しかしこの作品に満ちている、あふれんばかりの母性愛はどうだ。結局どれだけひねたふりをしていても、彼女のDNAには土佐の肝っ玉かあさんの情愛が刻まれていた、ということなのだろう。あと、先の言葉のひとつは、『まあじゃんほうろうき』で海千山千の雀プロどもにいいようにしゃぶられていたころのものなので、神経がいいかげんささくれだっていたのかもしれない。

この『まあじゃんほうろうき』、読んでみると田舎から出てきた純朴な少女が、都会の荒波にもまれてどんどんたくましく、あるいはひねていく様子が大変よくわかる。最初はさくらももこに毛の生えたような自画像が、最後にはまなじりを逆立てて鼻血・耳血を噴出しているところに、それは如実にあらわれている。まあ、ごの豪快な捨て鉢ぶりが、わたしを含めた多くのひとを虜にしてしまったわけだから、彼女の出費や出血もけっして無駄ではなかったのだろう。

さて、文化芸術メディア賞受賞とほぼ時を同じくして、西原はまた一冊の本をだした。タイトルは『上京ものがたり』。『まあじゃん』以前の上京してからデビューに至るまでの、彼女の鬱屈とした日々が叙情的につづられている。
この作品、彼女のこれまでのマンガとは決定的にちがうところがある。笑えないのだ。むしろ読んでいて苦しくなる。
これまでずっと豪快で破天荒な作品を発表してきた西原。しかし彼女にも自分が何者なのかわからず、ただもがき苦しんでいる時代があったのだ。それは考えてみれば、当たり前のことなのかもしれない。

昨年最後の『毎日かあさん』、元夫に「きみはなにか欲しいものはないの?」と聞かれ、彼女は「ない、全部持ってるから」と答える。
(そう、欲しいものは全部持ってる) そう胸の内でつぶやき、子供たちと夜の街を駆ける西原。
うん。そうか。よかったですね。

| | Comments (12) | TrackBack (1)

January 08, 2005

オモウラ箱館戦争 裏の巻 富樫倫太郎『殺生石』

幕末ネタが三連ちゃんになってしまいましたが、このネタにケリをつけたいと思います。
『箱館売ります』(実業之日本社でした)の感動から半年。書店の新書コーナーに富樫先生(以下“トガちゃん”)の新作を発見した。タイトルは『殺生石』(カッパノベルス)。
あらすじを見ると「土方歳三に陰陽師安倍泰成、サンジェルマン伯爵とカリオストロ伯爵がからむ」とあった。
あっけにとられつつも、「予告にあったのはこっちか!」と合点がいった。
最愛の人を復活させるために、わざわざ極東の地にやってきたサンジェルマン。その儀式にはかつてこの国を恐怖のどんぞこへと叩き落とした金毛九尾の狐が必要だった。が、その妖怪は蝦夷の地にて、さる陰陽師により封印・監視されていた。かくして箱館に集う旧幕府軍、異国の妖術師、陰陽師にアイヌの青年に大妖怪がくんずほぐれつのバトルロイヤルを繰り広げる。
・・・普通、つづけて同じ題材でこうも毛色の違う話を書けるものだろうか。はっきり別物と割り切ってしまえばいいのだろうが、文体もキャラの性格も一緒なので、読み比べると頭がくらくらしてくる。
トガちゃんの作品には主人公格のキャラが複数いて、それぞれのパートが同時進行で語られ、クライマックスで集結するというものが多い。これがうまくいくと、弾けたロックコンサートのように盛り上がるのだが、いまひとつ噛みあわないとお互いの音を打ち消すような結果になってしまう。で、どっちかというとこの作品は後者かな、と思った。
理由はたぶん、土方歳三と陰陽師という組み合わせの相性が悪かったことにあるかと。「接着剤としてサンジェルマンを持ってきた」とあとがきにはあるが、先生、この糊、着きが悪かったみたいです(笑)。
マイナスポイントはもうひとつ。実はこの作品、独立した一編というよりか、同著者の『地獄の佳き日』『陰陽寮』といったサーガの一部なんである。そのためこれだけ読んだひとは、謎が放置されっぱなしで終ってしまったような印象を受けるかもしれない。
こう書くとなんかいかにも駄作みたいだけど、アイヌの青年や少年兵のパートなんかはなかなか読ませる。また、これまでのサーガで先送りにされてきた問題も一区切りついているので、トガちゃんの他の作品を読んで気に入った方は、一応読んでみて損はないだろう。
でもその前にやはり入門として、『陰陽寮(一)』(トクマノベルス)か『雄呂血』(光文社文庫・すいません、犬塚さま、また間違えました)をおすすめいたします。

| | Comments (4) | TrackBack (1)

January 05, 2005

いまごろ大河ドラマ『新選組!』を振り返ってみようのコーナー①

懇意にさせていただいているサイト、『興味と妄想』(http://www.takamasa.seesaa.net)の管理人さんであられる、高野正宗さまの希望で立ち上げたこのコーナー。
でもあれ、単なるリップサービスだったりして・・・ そんな疑念をひきずりつつ、見切り発車でIT'S ALL RIGHT!

#1 鬼瓦近藤
多摩の百姓の出でありながら、剣術道場・試衛館の跡取に選ばれた近藤勇は、悪友の土方歳三や坂本竜馬らと黒船見物へ出かけ、そのパワーに圧倒される。
放送直後から「近藤勇が竜馬と仲良く黒船見物などと、史実からの逸脱も甚だしい」と抗議殺到(笑)。わたしは『風雲児たち』で、幕末の立役者らが並んで黒船を見ているシーンに馴染んでいたので、かえって親しみを覚えたくらいだった。
この回で特に印象深いのは第1話本編より、ちょっと未来に飛んでいるプロローグ。それぞれ周知のキャラにうまくはまりながらも、十分個性を出しているのを観て、「こりゃいける!」と思った。この序章、後に時系列が追いついた時、うまく組み込む予定だったそうだが、計算ちがいで実現できなかったとのこと。ま、よくある話です。
この回の重要アイテム:酒瓶の栓

#2 初めてのお立ちあい
故郷多摩へ、盗賊退治にでかける勇。そこで彼は、友を守るために初めて人を斬った。
「近藤勇は拳固が口に入った」・・・知るひとぞ知るエピソードが、『トリビア』とこのドラマで一躍一般常識に。この回では他の作品で勇を演じている阿南健二さんとの、ダブルパックンチョが実現。ちなみに八嶋智人氏も可能らしい。
捨助、永倉、原田といった濃い~い面々が初登場。お笑い出身の山口氏の堂々たる演技には意表をつかれた。
やはり以前土方を演じた、栗塚旭氏の重厚な芝居も印象に深い。
この回の重要アイテム:おみつさんの捕まえたカマキリ

#3 ずっとあなたが好きじゃなかった
江戸をひとまず去る竜馬。勇は彼を見送ろうとするも、義母にネチネチといじめられていたため、行けずじまい。
自分のアイデンティティを否定された勇は、「武士よりも武士らしく」生きることを決意する。
約束をかわしながら出会えなかった二人。このことは後の展開を想像させる。
「勇さん、ここはわたしの台所なの。勝手に入らないでちょうだい」
「ひ、ひどいわ。おかあさま。よよよ」
なんてやりとりは無かったが、野際が慎吾ちゃんをいじめるあたりは、嫁姑の愛憎ドラマと大差ない。
そして「武士よりも武士らしく」という本作品のテーマが登場。成り上がる、というよりか、「誰よりも誇らしく」くらいの意味だと思う(実物はそうじゃなかったと思うが)。
この回のバッドアイテム:石田散薬

#4 桜田門外が大変
授業料の取立てに行ったことがきっかけで、微妙に桜田門外の変に巻き込まれてしまう勇。そのころ、試衛館を山南という男が訪れていた。
ある意味新選組の両親といえる芹沢、山南の二人が登場。特に薄汚い料理屋で鯉を刻んでいる、芹沢の登場シーンにはたまげた。
桜田門外の事件を観て興奮する山南。しかし勇は昨日まで元気だった門下生がもの言わぬ体になっているせいか、沈痛な面持ち。先週に引き続き、重厚なシーン多し。
この回の重要アイテム:徐々に減っていくメザシ、シェフ芹沢特製の鯉のアライ
あ、斎藤もこの回初登場。ギラついてます。もはや五代雄介の面影は無い。

#5 つねの嫁入り
晴れて嫁を迎える事になった近藤勇(ケッ)。そのめでたい席に、招かれざる客が乱入する。
この回は大河ドラマというより、三谷作品の黄金パターン。まるでまとまりのない連中が、最後は一丸となって難局をのりきっていく、という流れ。
さりげなく源さんの強さがわかる描写あり。
「わたしの名前をおぼえていてくれた・・・」 そんなことで感動すな。このセリフで平助のキャラは決まってしまった。あわれ。
この回の重要アイテム:つねちゃんのへそくり 捨助の鼻血

という感じで引き続きいってみたいと思います。はたして公式HPが残ってる間にどれだけやれるか? そもそも全部やれんのか? 謎は深まるばかりにてございます。

| | Comments (6) | TrackBack (1)

January 04, 2005

オモウラ箱館戦争 表の巻 富樫倫太郎『箱館売ります』

富樫作品との出会いは5年くらいまえ。『雄呂血』という作品。弁当箱のような厚さと異様な雰囲気の装丁に、ひきずられるようにして購入。その面白さに、あっという間に読了した。
この『雄呂血』、一言で言えば保元の乱に材をとった伝奇小説なのだが、時代の違う人物が出た来たり、ド派手な魔術合戦があったりと、それだけには収まらないエネルギーがあった。これをきっかけに同著者の『陰陽寮』シリーズにも、足を踏み入れてしまうことになった。
さて、『雄呂血』のあとがきには「近いうちに箱館戦争をモチーフにした話を書く。それには安倍泰成という陰陽師が登場する」とあった。幕末の「箱館戦争」と「平安時代」のイメージが強い「陰陽師」がどう関わるのか? 首をかしげつつ期待した。
それから4年(笑)。
新聞の広告に『箱館売ります』という本の紹介を見つけた。「おお、これがあの」と、急いで探して読んだ。旧幕府軍と新政府ゲリラのにらみ合いが続く箱館。そこへ漁夫の利を得ようとあるロシア諜報員が陰謀を企む。死に場所を求めてさすらう土方歳三の怒りが、場の空気を読めないあつかましいロシア人に炸裂する! 
「ここは俺たちの土俵だ! コサックダンスならモスクワでやれ!」
・・・というストーリー(本当か?) 本来なら決して手を組むことのないであろう土方と、新政府ゲリラの斎藤順三郎。その二人の心が、一瞬だけつながりあう(この“一瞬だけ”というのがいい)。この場面に、「く~っ、泣かすぜ!」とおもわず布団のなかでつぶやいてしまった。
この作者はちゃんと資料を調べて、その上でぶっとんだ話を書くのがカラーだと思っていた。だけど、こんな地に足のついた、しみじみする「いい話」も書けるんだなあ、と意外な気持ちがした。
ただ、ひとつ疑問が残った。
「安倍のなんたらとかいう陰陽師は、どこに出てきたんだ?」
その答えを得るには、あと半年を待たねばならなかった。
(つづく) 

| | Comments (6) | TrackBack (1)

あらためてごあいさつ および2004映画ベスト補足

一週間くらいお休みしてしまいましたが、閲覧者の皆々様、今年もよろしくおねがいしますです。

さて、いきなりですが、2004年に観た映画のなかで、3本ほど言及していなかったものがありました。寝ぼけながら書いていたもので(またかい)。

10.5位 トロイ
合戦シーンより、アホ君主のために戦うことのジレンマに苦しむアキレス、「わかっちゃいるけど戦うしかない」へクトール、「個」の英雄像の方が印象に残った。
伝承がそうだから仕方ないんだけど、あんな怪しげなブツをほいほいと市内に運びこんでしまうトロイ市民のお気楽さにはあきれる。

12.5位 ヘルボーイ
アメコミ原作映画。原作のヴィジュアルを忠実に再現していたのはうれしい。天空より降りてくる巨大イカや、殴り合い主体のアクションがよかった。でかい歯車を抱えて「やるよ」のシーンに爆笑。

13.5位 タイムライン
規模はそんなに大きくないものの、よくまとめられたタイムスリップもの。中世の城攻めとか好きなひとにオススメ。

2005年の最注目作は、やはりスターウォズEP3ですね。ヘイ。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

« December 2004 | Main | February 2005 »