November 12, 2023

2023年9月に観た映画

バディーヤバーディヤ バディヤバーディヤ。セプテンバーに観た映画の覚書です。

 

☆『マイ・エレメント』

8月の宿題第1弾。予告の時「『インサイドヘッド』の二番煎じ的な…」と感じたのですが、これは観てみないと面白さが伝わらないタイプの作品。久々にピクサーのアイデア百連発乱れ打ちを楽しませていただきました。火・水・気体・植物の各種族が暮らす都会を舞台にした童話的な設定ながら、人種差別や移民の問題もしっかりと描かれていて、さらにお話が痛快でラストもすっきりする。今年度有数のエンターテインメントのお手本のようなアニメでした。とりわけ面白かったのは気体集団のフットボールみたいな競技。本当にああいうの、どういう頭してたら思いつくのだろう

 

☆『バービー』

8月の宿題第二弾。というかこれ、先月末に観てたら映画館で上映トラブルが起きてしまい、翌週にもう一回見直したというね… 毎週のように劇場に行ってる自分ですが、こんなことは小学生の時以来です。

玩具の国バービーランドに暮らすバービーが、ある悩みをきっかけに現実世界を訪れ…というストーリー。私の観る映画だと大抵傷だらけ・泥だらけになってるマーゴット・ロビーが終始キラキラしてて和みました。玩具映画・ウィル・フェレルが出てる・現実に玩具世界が侵食してくる・タイトル末尾にビーが付く、というところで『レゴムービー』を思い出したり。

おっさんなのでバービーについてはほとんど知らなかったので、その歴史をざざっと学べたのが収穫でした。あとこの映画、恐らく本国では今年度トップクラスのヒット作品になる模様。こういう独創的なアイデアのオリジナル作品が売れるのはいいことです。

 

☆『ホーンテッド・マンション』

ディズニーランドの有名アトラクションをモチーフにした作品。20年前のエディ・マーフィー主演のバージョンは未鑑賞。

世間のはみだし者的な面々が奇妙な因果で伝説のお化け屋敷に集まり、強大な怨霊と戦うことになるというお話。おおまかなプロットがたまたま少し前にやってた『ヴァチカンのエクソシスト』ともろかぶりしてしまいましたが、こちらは子供達でも安心して観られるのがよきところかと。主人公チームそれぞれにちょっと悲しい過去があったりして、『ゴーストバスターズ』よりもややしんみりしたところもあります。

この映画、もうディズニープラスで配信で観られるんですよね。いくらなんでも早すぎだよー

 

☆『アステロイド・シティ』

箱庭的・絵本的な絵作りで多くのファンの支持を集めているウェス・アンダーソン最新作。1955年、ある砂漠の町にUFOがやってくる…というお芝居が演じられてる…というちょっとややこしい設定の作品。一応ウェス作品好きのわたしではありますが、ごめんなさい、今回のこれはちょっと眠くなった… 前作『フレンチ・ディスパッチ』ですでに観念的・抽象的な空気が濃くはなってはいましたが、今回さらにそれが加速した感があります。こういう毒にも薬にもならない作風、確かに彼らしくはあるんですが。ただ一点感心したのは宇宙人役をジェフ・ゴールドブラムがやっていたところ。さすがはSF大将のジェフ。えらい

 

☆『グランツーリスモ』

だいぶ脚色が効いてるようですが、一応は「事実を基にした」物語。凄腕ゲーマーのウェールズの青年が、その技術を見込まれて本物のレーサーにスカウトされるというストーリー。無名で何の後ろ盾もない若者が、度胸と腕で瞬く間にサクセスしていくのは本当に観ていて気持ちが良い。ただ、あまりにサクセスが早すぎると中盤あたりで「…これ、もしかしてこれからでっかい落とし穴が待ち受けているのでは」と思っちゃうんですよね。案の定でした。そんな風にレースに興奮するというよりは終始お父さん目線で、「順位とかどうでもいいから頼むから事故らずに完走してくれ」という気持ちで鑑賞しておりました。

お父さんといえば主人公の父役のジャイモン・フンスーの瞳がムダにキラキラキラキラしてたのが印象的でした。さすがホームレスしてた時にモデルにスカウトされただけのことはあります。

 

☆『名探偵ポアロ ベネチアの亡霊』

ケネス・ブラナー監督・主演の「ポアロ」シリーズ第3作。殺人事件と一緒に風光明媚な観光名所を堪能する…というコンセプトは前二作と共通してますが、今回はどこまでが霊の仕業で、どこまでが現実かわからないというちょっとオカルトめいた趣向が施されています。そういう演出はクリスティというよりポーや島田荘司先生の提唱する「本格ミステリー」に近かったりして。

一応理詰めの回答が最後には明かされるんですが、やんわり霊の存在の可能性も残されていて、なかなか上手な落としどころだとおもいました。好きか嫌いかといえばまあまあ好きな作品ですけど、難点をふたつばかし。『ナイル殺人事件』でもそうでしたが、これから犯行に及ぼうって時に世界最高の名探偵を現場に招き入れちゃダメです。あと急に椅子がぐるぐる回り出したトリックがわからなかった。何か自分見落としてるんだろうか。

 

☆『ミュータント・タートルズ ミュータントパニック!』

少し前実写版二部作が公開されてた人気アメコミキャラ「ミュータントタートルズ」のアニメ版。今回は「普通の高校生活を送りたいけど、外見があまりにもアレなんで無理だよね…」というタートルズの「ティーンエイジ」特有の悩みが強調されていました。「それはいつ、どこで生まれたのか誰も知らない」「醜い体には正義の魂が宿っていた」そんなフレーズが思い出されます。タートルズってけっこう『妖怪人間ベム』に近いキャラだったんですねえ。

一方で彼らの哀しみと裏腹に休む間もなく繰り出されるバッチィ系のネタの数々。この辺は製作・出演でばっちり絡んでるセス・ローゲンの趣味かと思われます。先の『スパイダーバース』同様、落書きのようなペンキ絵のような独特のアートが見事でした

 

☆『ジョン・ウィック コンセクエンス』

キアヌ・リーブス演じる「伝説の殺し屋ジョン・ウィック」を主人公としたシリーズの第4作。以下、ラストまでネタバレで

 

 

 

今回予告でも「最後」とうたってなかったし、「5作目以降も構想あり」なんて噂を聞いてたので、「やんわり次回への展開を匂わせて終わるんだろうなあ。もうこのシリーズにつきあうのもここまでにしようかな」と思いながら臨んだのですが、普通にウィックさんがあっさり死んでしまったのでたまげました。正当な理由があったとはいえ無数の命をバタバタと葬ってきたウィックさん。これが「コンセクエンス(報い)」ってことなのかもしれませんが、それじゃ今まで彼がずっと必死で生き延びてきたのは何の意味があったのかな…とむなしくなってしまいました。新しくひきとってきたワンちゃんと穏やかな生活を送ることになって幕…というのが自分の希望だったんですけどね。

ただなんかあまりにあっさりしすぎて、あのウィックさんがあれくらいで死んだとは思えないのも事実。死を装って続編で普通に出てきそうな気もします。彼には気の毒ですがもう一戦派手にドンパチをやって、改めてハッピーエンドを迎えてほしいものです。

 

次回は10月に観た映画ということで、『キングコング対ゴジラ』『イコライザー THE FINAL』『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』『ザ・クリエイター』『ドミノ』『SISU 不死身の男』について書きます。

 

 

 

 

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October 29, 2023

2023年8月に観た映画

さよなら夏の日 いつまでも忘れないよ~

というわけで8月に観た映画を思い出していきます。

☆『地球防衛軍』

1957年の東宝作品。「午前10時の映画祭」で観てきました。日本の山村にいつの間にか宇宙人の侵略基地が作られてた…という出だしから始まるこの映画、たぶん東宝なりの『宇宙戦争』みたいなものを作りたかったんだと思います。ただ注目がいってしまうのはそういうSFドラマ的な部分よりも、独特な造形が愛らしい?ロボット怪獣モゲラ。全体的に面白く観ましたがモゲラの出番がもっと多かったらもっとよかった。

クライマックスは富士山麓のドーム状基地を世界各国の兵器が集中攻撃してぶっ壊す…という流れ。『エヴァンゲリオン』の「ヤシマ作戦」ってこの辺が元ネタだったりして。

 

☆『トランスフォーマー/ビースト覚醒』

日本の玩具から生まれた人気SFシリーズの最新作。また1から設定を刷新したのか、と思い込んでいたのですが、どうもひとつ前の『バンブルビー』とはつながってる模様。

今回の売りはアニメ版の中興の祖とも言える『ビーストウォーズ』の面々が一部参戦していること。他にもロボがアーマー状になって主人公の青年が着こむようなギミックが登場したり、ラストであのシリーズとの関連性が示唆されたりと新要素を色々盛り込んでがんばってました。

でもやっぱりリアルタイムでアニメ版『ビースト』を観てた世代としては、あの声優さんたちの無茶苦茶なアドリブを期待してしまうのです。いや、それを映画でもやらかしたら本国からとっても怒られるであろうことは百も承知なんですが。お目こぼしいただいた?アニメ版声優陣の予告編がまたとっても面白く出来てたし… これはあの当時暴走しまくってた子安さんや千葉繁さんの責任ですね。責任とってください。

 

☆『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 ~とべとべ手巻き寿司~』

映画『クレヨンしんちゃん』の最新作。今回は構想を含めると7年もの歳月を有したというフルCG作品。「とべとべ手巻き寿司」に7年もかけるなよなw

で、なぜこの作品がフルCGかと申しますと、恐らくシリーズ屈指の作中作キャラ「カンタムロボ」の質感をリアルに再現するためではと思われます。確かに「カンタムロボ」の存在感・重量感は十二分に反映されておりました。それにしてもこのネーミング、そろそろ某アニメ制作会社から訴えられるのでは…

そんなわけでロボ描写だけでも満足しましたが、今回良かったのはこれがかつて「しんちゃん」が大好きだった青年たちに向けられた作品だったということですね。家庭と社会の不幸ゆえにねじくれまがって青年にも、やさしく手を差し伸べるしんちゃんにおじさんは鼻水が駄々洩れでございました。ネット上の評判とかは決してよくはないのですが、「しんちゃん」映画史上最高の興行収入を達成したとのことでホッとしました。

 

上記3本は同じ日に観たのですがいずれも「地球が未知の力により滅亡の危機を迎える」という内容でした。地球も大変です。

 

☆『リトル・マーメイド』

ディズニー100周年で作られた名作アニメの実写バージョン。夏休みで来ていた姪っ子たちのリクエストで観てきました。上の姪っ子は幼稚園のお遊戯で魔女役をノリノリで演じたことがあるのですが、本当はアリエルがやりたかったことをおじさんは知っています。そんな悲しい思い出を抱えていた姪と一緒に観られて、そして「面白かった」という感想を聞けて大変楽しい一日となりました。個人的にはラスト近くで波間を海坊主のように漂っていたハビエル・バルデムがシュールで笑えました。

 

☆『イノセンツ』

北欧4国の合作による不気味SF映画。ちなみに『イノセント』は1975年のヴィスコンティ作品で『イノセンス』は押井守監督のアニメです。

ある公営集団住宅に家族と越してきた少女。そこで出会った友達は、微かながら超能力を有していた。最初はそれでたわいもない悪戯を楽しんでいた子供たちだったが、次第に一人が暴走していき…というストーリー。

「大友克洋の『童夢』っぽい」という前評判を聞いていたのですが、なるほど、想像以上に『童夢』でした。実際監督もかなり影響を受けているようです。あと愛していた者が突然人格が変わってしまう恐ろしさなど、楳図かずお作品によく見られるモチーフも見られました。まず無理だとは思いますが、コミカライズされることがあれば楳図先生に描いていただきたいです。

前もって「猫が死ぬ」という情報を得ていて覚悟をもって臨んだのですが、やっぱりそこは大変きつかったです。作品は面白く観ましたが、その一点だけで本年度のワーストかも。

 

☆『MEG ザ・モンスターズ2』

5年前公開され好評を博した巨大ザメ映画『MEG ザ・モンスター』の続編。前よりもスケールアップしたぞ!とばかりに今回は巨大ザメMEGが3匹登場、さらには海中から陸上にやってきたヴェロキラプトルみたいな連中と、オオ蛸怪獣まで出てきます。本当にごちそうさまです。

終盤ではこれらの怪獣軍団とステイサム、さらに彼を仇と狙う悪漢がくんずほぐれつのバトルロイヤルを繰り広げます。悪役さんなんかわざわざこれに参戦しなくても、ステイサムが怪獣にやられるのを黙って見てればいいのに…と思うんですが、たぶん怪獣さんたちだけだと不安だったんでしょうね。実際全部敵に回して全部勝っちゃったし… あ。ネタバレごめんなさい。

そんな風に今回も無敵のステイサム。深海で素潜りまでやってのけます。水圧で潰されないのか?とツッコまれると「魚は服なんか黄てない!」とかわします。そんなアホな…と思いましたが確かに長年の疑問ではあるんです。なぜ深海魚は鉄の船でもつぶれてしまう水圧地獄の中でちょろちょろ平気で泳いでいられるのか。詳しい方いたら教えてください。

 

次回は『バービー』『マイ・エレメンツ』『ホーンテッド・マンション』『アステロイド・シティ』『グランツーリスモ』『名探偵ポアロ ベネチアの亡霊』『ジョン・ウィック コンセクエンス』『ミュータント・タートルズ ミュータントパニック!』について書く予定

 

 

 

 

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October 01, 2023

2023年7月に観た映画

というわけで続けて7月もいきます。この月は1本を除いてもっぱらメジャー系の大作映画ばかり観ていました。

☆『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』

ハリソン・フォード演じるインディ・ジョーンズ、驚きのカムバック。しかもほぼ若返りCGのない役者さんそのままの年齢で。物語より中の人が大丈夫かハラハラしました(実際怪我したみたいだし)が、無事作品が完成したことを祝したいです。

この映画で感心したのはアイテムとタイムスリップの理屈でしょうか。よくそんなとんでも設定思いつくなあと。でも映画の中ではなんとなく説得力があるように感じられるのです。

終盤のインディの決断で「あ、これで本当にこのシリーズを終わらせるんだな」と思ったのですが、残念ながら博士の意思は強行的に中断させられてしまいました。ちょっとかわいそうな気もしましましたが、あれで良かったんだと思います。作ろうと思えばまた続き作れちゃいそうですけど。

 

☆『君たちはどう生きるか』

宮崎駿、驚愕のカムバック。公開前一切の情報がシャットダウンされ、提示させられたのは鳥人間のような男のイラストのみ。その内容が気になって公開2日目に観てきました。…まあ変な映画でしたね。たださすがは御大と言うべきか変であっても品があります。

特に近いと思ったのは『不思議の国のアリス』でしょうか。あれも不条理で難解なお話ではありますが、一応児童文学としても成立している。だから幼児は厳しいだろうけど児童ならある程度楽しめるかと思います。

宮崎御大が自分の人格を幾つかに分けて複数のキャラに投影してるように見えるのが面白いですね。主人公の少年はもちろんそうだろうし、閉ざされた世界の王のような老人にもその影が見えます。しかし監督が特に自分に近いと言及してるキャラはインコ大王なんだそうで… 謎です。

『千と千尋』が好きな自分にとっては幕切れが似た感じだったのがホッコリしました。

 

☆『ミッション・インポッシブル:デッドレコニングPART ONE』

トム・クルーズ主演のドル箱シリーズ最新作…にして完結編の前編。この映画の難点は予告でトムが崖からバイクごとダイビングするシーンを繰り返し見せられていたために、他がほぼ印象に残らなくなってしまったことですね… ヘイリー・アトウェル演じるほぼ峰不二子のような新ヒロインとか、サブレギュラーの悲しい退場などもありましたけど。

で、この映画のメイキングをIMAXの本編前に流してた時がありまして。スタッフがめちゃくちゃ緊張してる中、無事ダイビングの撮影が終わりみんなホッとしたのもつかの間、トムトムが「よかったけど直したいところがもう一回」とか言い出すわけです。そんなんCGで直せばいいじゃん! いや、出来てもそうしないのがトムトムなんでしょうけど… 後編が完成してシリーズが完結したらトムトムの「無茶アクションに挑みたがり病」も落ち着くのでしょうか。お願いですから無茶はほどほどにして天寿を全うされてください。世界中が心配してます。

 

☆『ヴァチカンのエクソシスト』

スルー予定だったのですが、ネットでの一部の異様な盛り上がりにひかれてビビりながら観に行ってしまいました。一応ホラーものに類する映画なのでしょうけど、エクソシストであるラッセル・クロウが抜群の頼もしさを発揮してたのであまり怖くありませんでした。あー、よかった。このおどろおどろしい現場に飄々と現れてユーモアを振りまいていく姿、石坂浩二演じる金田一耕助と似たものがあります。そう、どんなピンチにおいても忘れてはいけないもの、それはユーモアなのですよね。

もうひとついいなあ、と思ったのは事件の依頼者が解放されたらエクソシストコンビは大急ぎで彼らを逃して、またすぐ悪魔と対峙するのですけど、恐らくこの時お礼を言われてる暇もないのですよ。見返りなど何もないだろうし、せめてお礼くらい…と思います。でも彼らはそんなこと全く気にしてなさそうなのですよね。そんなどこまでも無私の精神を示す仏のような(クリスチャンだけど)師弟コンビに心温まりました。

 

☆『キングダム 運命の炎』

漫画原作の人気シリーズ第3作。今回は秦国の強敵である「趙」との因縁と合戦が描かれます。自分原作を大体読んでるので鑑賞しながら「このペースでいくと、思いっきりキリの悪いところで終わって『続く』となるんじゃないか?」と思っていたのですが、予想的中でした。本当に… 最近そういうの多いよ!! なぜでしょう。年を取るごとにそういうのが嫌いになっていきます。ちなみにこの2つ前に書いた『ミッション・インポッシブル』はそれなり一区切り付けてたしそもそも「PART ONE」となってたので多少は印象が良いです。

おまけに終わってからも次作の予告もなにもない(笑) 最近になってようやく第4作製作の発表がありましたが、あそこで終わっちゃったら本当にシャレになりません。

ともあれ、3作目も興行収入が無事50億を突破したそうで、実写邦画としては貴重なドル箱シリーズとなりました。でもまだまだ先は長いので(そもそも原作がまだ終わってない)どこら辺までやるかが難しいところではあります。

文句をたらたら書きましたが杏さん演じる紫夏のエピソードには鼻水が垂れました。杏さんは『TOKYO MER』もあったし、『翔んで埼玉』続編もたぶんヒットするので今年の邦画界に最も貢献した女優さんとなるでしょう。

 

次回は8月に観た『地球防衛軍』『トランスフォーマー ビースト覚醒』『しん次元 クレヨンしんちゃん』『リトルマーメイド』『イノセンツ』『MEG2』について書きます。いつになるか… 年内には何とか書きたいですね

 

 

 

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2023年6月に観た映画

実に3ヶ月ぶりの更新であります… ああ… では前の続きで6月に観た映画の覚書をば

☆『怪物』

その時によって観たり観なかったりする是枝裕和作品。こちらはなにやらミステリーっぽいということで鑑賞してきました。行きつ戻りつする時間軸。その繰り返しによって当初見えなかったものが見えてきたり、思っていたことが真実とは違っていたり…という構成になっています。絶えず空気が張り詰めているような繊細なムードと、透明感のある少年たちが織り成すドラマは萩尾望都先生の漫画を思い出させました。

ラストは現実だったのか、幻想だったのか、それともあの世だったのか。自分は少年たちの見ていた夢なのでは、と思っていますが。瑛太氏演じる若先生は悪い人じゃないのにあまりにも気の毒。

 

☆『フリークスアウト』

イタリア映画。サーカスで糊口をしのいでいた超能力者たち4人が、その力に目を付けたナチス高官から追われて、決死の戦いに挑むというお話。ただサーカス団の面々の珍妙さ故か、全体的にのんびりした空気が漂っています。で、監督さんの愛情が特に注がれているな…と感じたのが悪役のナチス将校。残酷なことをたくさんやってるんですが、先天的な不幸や、かなわぬ夢を追い求める姿を悲哀たっぷりに描かれるとついつい同情してしまったりして。おまけにピアノがめちゃくちゃ上手。真の主人公はどう考えてもこの人だと思います。

 

☆『ザ・フラッシュ』

☆『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』

DCとマーベルの人気ヒーローが、自分の大切な人を守るため、平行世界の出来事を塗り替えてしまったために世界の崩壊が始まる…というストーリー。片や実写、片やアニメという違いはありますが、こんなにもかぶりまくってしまった2本が日本では同日公開になってしまったから驚きです。せめてどっちか一週ずらせや…!と思いましたが、今振り返ればこれはこれで滅多にないタフなお祭りでした。

で、共通点は多々あれどそれぞれ導き出した答えは正反対なところも興味深かったり。「家族を救うためなら世界を変えてしまってもかまわない」という結論と、「世界を救うために『家族の死』をあえてそのままにしておく」という答え。自分はどっちもアリだと思います。生ぬるい人間なので。

『ザ・フラッシュ』はヒーロー映画なのにクライマックスがヴィランを倒すのではなく、「お母さんにキチンと別れを告げる」というところに鼻水が垂れました。想像を超えたラストのカメオ出演にも度肝を抜かされました。

『スパイダーバース』は完結編が一応来年公開予定なのでそれから評価を定めたいと思います。最近多いね、こういうパターン…

 

☆『雄獅少年/ライオン少年』

現代中国を舞台にしたCGアニメ。獅子舞に憧れる少年たちが都会で行われる大会への出場を目指すのですが、その前に多くの困難が立ちはだかります。面白いのが中国における獅子舞という競技の独特さ。獅子の前部と後部、そしてなぜか太鼓係の3人でチームが構成されます。躍動感とリズム感溢れるその描写には思わず息を吞みました。しかし悲しいかなこの競技、それほどに人気を誇るにも関わらずほとんど儲からないようで… 大会の賞金とかないんでしょうか。というわけで彼らの障壁となるのは主に金欠というか貧乏だったりします。世界有数の華やかな都市の影で、食うや食わずの暮らしを続けている出稼ぎ労働者たち。そんな社会の厳しい現実の中で、ライオン少年たちには幸せをつかんで欲しいと願ってやみません。

 

3ヶ月ぶりなので気合が抜けなければ続けて7月の分もまとめます。

 

 

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June 25, 2023

2023年5月に観た映画

気が付けば今年もあと半分終わり… ああ…

とりあえず先月観た映画の覚書をば

☆『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol.3』

9年の長きに渡ったGotGシリーズひとまずの完結編。一時ジェームズ・ガン監督が離脱か…ということになりかけましたが、無事彼の手で幕が閉められることになりました。

今回ちょっと驚いたのは、知性のかけらもなさそうなロケットが超インテリキャラだったということ。ただそうなったのには非常に悲しい過去があり… いたいけな動物をかわいそうな目に会わせて泣かせようとするのは反則だと思うのですが、まあ良かったので良しとします。

以下ネタバレで良かった点を列挙

・死亡フラグまき散らかしてたやつらが全員無事だった ・原作と全然違うアダム・ウォーロックのトンチキ具合 ・〆のカムゲチャラッカムゲチャラッカムゲチャラッラッ♪

『BLUE GIANT』のようにたまたま偶然で集まった連中が、絆を深めながらもまたそれぞれ自分の道を歩んでいくところも最高に良かったです。さよならだけが人生だけど、生きていれば再会出来る日も来るのでしょう。

 

☆『ザ・スーパーマリオブラザーズ ムービー』

言わずと知れた任天堂の大スター・マリオブラザーズのCG映画版。ゲームってのは必ずしも映画にしやすいわけではない…というか難しい場合の方が多いと思うのですが、これはひとつの理想形と言ってもいいのでは。

自分忘れてたんですけど、マリオって実は同業者なんですよね。だもんで冒頭で修理にいったのに壊して帰ってくるエピソードはとても身につまされました。あとはクッパ渾身の弾き語りくらいしか強烈に覚えてる箇所がないんですけど、GWに姪っ子二人と観たのが滅法楽しかったので良かったです。任天堂ありがとう!

 

☆『TAR』

本年度アカデミー賞6部門にノミネート。ケイト・ブランシェットを主演に迎え、カリスマ的マエストロの華麗なる転落を描いた作品…なのかな? とにかく思わせぶりというかはっきりしない描写が多く、どこまでが現実なのか彼女の錯覚なのかがわかりづらい話。それがかえって作品に深みや観客に考えさせる余地を与えております。

GotGのとこでも似たことを書きましたが、人の縁というのは切れる時にはスパスパあっさり切れていくものだな…ということを痛感させられます。それでもさすがはケイト様と言うべきか、どれだけ逆境に面してもおのが道を歩んでいく姿は大した説得力でありました。これを機に引退、なんて話も出てるようですが…

オーケストラを題材にした映画なのに本番の演奏場面がほとんどないのは狙いなんでしょうか? それもまたよくわからなかったりして。

 

☆『世界の終わりから』

『CASSHERN』で脚光を浴びた?紀里谷和明監督の引退作。監督初の完全オリジナルストーリーであり、これまでと違って現代社会への嘆き・怒りがふんだんに込められた作品となっておりました。自分ももういい年ですけど、世の中をよくするためにこれまでなんか出来たことがあったかと言えば無に等しく、色々生きづらい時代になってしまった令和の若者たちには少々申し訳ない気持ちがあります。たぶん紀里谷監督も同じ気持ちではなかろうかと。

童話調の本筋に社会問題、『デビルマン』的クライマックスは正直違和感なく溶け合ってるとは言い難いのですが、自分はやっぱり監督の作風が好きなので、軽率にまた復帰して『CASSHERN』みたいな映画を撮ってほしいです(それにはお金がかかりますが)。

主演の伊東蒼さんはこないだの大河や『さがす』でもしんどい役ばかり演じられてるので、次はさわやかなイケメンと軽いラブコメでもやってほしいですね。

 

☆『ワイルドスピード ファイヤーブースト』

言わずと知れた(2回目)超人気カーアクションシリーズ最新作…にして完結編二部作(三になるかも)の前編。最後の敵はジェイソン・モモア演じる仇敵の息子。父の復讐のためにドミニク・ファミリーを巧妙な罠に誘い込みます。

前にも書いたけど、ワイスピシリーズって昔の少年ジャンプなんですよね。一度戦うと仲間になるし、死んだはずのキャラはあっさり生き返るし。ですので今回亡くなったように見えるあいつもあいつも次ではさわやかに笑いながら生き返ってくるでしょう。ついでにミニ・ブライアンのお母さんも生き返って「みんな生きてた!! 超ハッピー!!」となればこれ以上ないくらいふさわしいワイスピのラストになるのでは。

観てる間は普通に楽しみましたが、一週間後観たのを思い出すのに5分くらいかかったりして。そんな映画です。ただこれにはわたしの記憶力低下もかなり関わっております。

 

☆『65』

こらまたなんつーシンプルなタイトル… ハリウッドに時々ある、大物俳優を起用したはいいけどなんか地味な仕上がりになってしまってぶっこけた類のSF作品。他に例を挙げると『パッセンジャー』とか『カオスウォーキング』とか『アフターアース』とか。やっぱり人のいない荒廃した世界をやろうとすると地味になりがちなんですよ。今年公開のギャレス・エドワーズの新作『ザ・クリエイター』も確実に同じ轍を踏む予感がします。

でもまあシリーズもの・原作ものばっかりの時代にあえてオリジナルSFに挑もうという気概は素晴らしいし、何よりも恐竜が出てくるのでそれだけで応援しなくてはいけません。もう公開終わっちゃったけど。

 

☆『クリード 過去の逆襲』

『ロッキー』のスピンオフである新世代ボクサー、アドニス・クリードの物語3作目。開始早々に引退を決めたアドニスの前に、ややこしい関係の親友が訪ねてきたところからお話は始まります。この親友デイミアンがなかなか一筋縄ではいかない。アドニスが好きなようでもあるし、恨みを抱いてるようでもあるし、一体彼の狙いがなんなのか前半はハラハラしながら見守ることになります。

結局リングの上で全力でぶつかることにより友情は回復します。『Gガンダム』並みにベタベタな解決法ですが、自分昭和生まれなのでこういうのに弱いんですよ… あと今回「出ない」とアナウンスされてたロッキー、その後どうなったのか全く触れられてませんでしたが遠くで元気にやってるってことでいいんでしょうか。

監督・主演マイケル・B・ジョーダン氏が「日本のアニメをリスペクトした」と嬉しいことを言ってくれたのに、初週から圏外だったのは本当に残念。我が国を代表して土下座してお詫びしたいです。

 

次回は『フリークスアウト』『怪物』『ザ・フラッシュ』『アクロス・ザ・スパイダーバース』『雄獅少年』について書きます。

 

 

 

 

 

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May 28, 2023

2023年4月に観た映画を振り返る

近年まれに見る更新スピードです。がんばれ俺

☆『逆転のトライアングル』

第75回カンヌ映画祭において最高賞のパルムドールに輝いた作品…の割に、わかりやすく所々お下品。一組のカップルのバカンス旅行を通じて格差社会の問題を描いている…わけではないか。突発的なアクシデントにより立場が「逆転」してしまった人たちの、「運命の皮肉」が主なテーマかと。

「三角形」と呼応してるのか、三幕構成となっております。一幕目は知らん美形カップルの痴話げんかに巻き込まれてるようであまり面白くないのですが、二幕目で舞台が豪華客船に移ると「趣味悪いなあ」と思いつつそのアナーキーな展開に楽しませてもらいました。お下劣な『タイタニック』のようでした。三幕目に入っても面白さは持続しますが、こちらは同時に物寂しくなったり、緊張感溢れる人間関係にハラハラしたり。

セレブモデルのヤヤ役の女優さんはこの出演後ほどなくして不慮の病で亡くなったそうで。そんなところにも運命の皮肉を感じます。

 

☆『仕掛人・藤枝梅安 弐』

2月に1作目が公開された『藤枝梅安』二部作の第二弾。前作はずっと江戸が舞台でしたが、こちらは半ば過ぎまで京までの旅物語となっております。またそこはかとない慰めが感じられた1作目と比べると、こちらは無常感が強調されていて観終わった後ひしひしと虚しさが押し寄せてきました。「梅安」はハードボイルドでもヒーローものでもなく、ノワールなんだなあ…ということを改めて感じ入りました。

そんなニヒルなムードの癒しとなるのが、梅安を世話する近所のおばさん役の高畑淳子さん。彼女が出るとものすごくホッとします。高畑さんのベストアクトと言ってもいいかと。あとクライマックスの「卵かけごはん」VS「醤油焼きおにぎり」の息詰まる対決。ある著名料理家は料理対決の時塩むすびで挑んだそうですが、究極のグルメというのは限りなくシンプルになっていくものなのかも。

死への願望を抱きつつもギリギリのところで生を選んでしまう梅安さん。そういうところは「いいことをしながら悪いことをする」池波正太郎の矛盾した人間観をうかがわせます。

 

☆『ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り』

「梅安」と同じ日に観ました。図らずもアウトローつながり。長年親しまれてるテーブルトークのRPGを原作としたファンタジー映画。ぱっと見世界観やガジェットはそんなに目新しくないのですが、陽気で能天気なキャラクターたちと、魔法のアイテムの使い方・見せ方でべら棒に面白い映画となっていました。難点をあげると観てる間の面白さに全力を注いだため、観終わったあとほとんど残るものがないということ。まあたまにはこういう映画も必要です。

出番があまりないキャラがTwitter上で大人気というのも面白い点。最初はセクシーさが駄々洩れしてるパラディンさんがぶっちぎりだったのですが、さらに登場時間が少ない「ジャーナサン」という鳥人間の人気がだんだん肉薄しつつあります。謎です。

 

☆『AIR』

ベン・アフレック久々の監督作。盟友マット・デイモンを主演に据えて、NBAの伝説的プレイヤー、マイケル・ジョーダンとナイキが契約を結ぶまでの苦労を描いた「実話を基にした」作品。サスペンスやアクションばかり撮っていたベンアフですが、こちらは血が一滴もも流れない、平和でほっこりする映画となっております。

OPから矢継ぎ早に繰り出される80年代の音楽・風俗に懐かしさで死にそうになりました。ここで「この頃はよかったな…」とか感じてしまうと老人の仲間入りを果たすことになってしまいます。危ないところでした。あとスポーツ用品の製造会社にとっては、有名プレイヤーと契約を結ぶことが社運を左右するほどの一大事になるのですねえ。

Amazon製作のせいか1か月ほど公開した後間髪入れずにすぐAmazonプライムビデオで配信が始まりました。これからはこういう例も増えていくのですかね。

 

☆『聖闘士星矢 The Beginning』

80年代人気を博した少年漫画『聖闘士星矢』をハリウッドが実写化!…したはいいのですが、興行的には近年まれに見る爆死作品となってしまいました。何がいけなかったのでしょう。

個人的にはそれほど悪くなかったと思うのです。監督の原作愛も伝わって来るし、誠実に作られてます。ただ、アクション大作というのは「悪くない」だけでは良くないのです。巨額の製作費を回収できなくなってしまうので。

副題からわかるように何部作かに分けて、少しずつキャラを増やしていく予定だったのでしょうか。しかし『星矢』の魅力ってカラフルなキャラが勢ぞろいするところにあると思うのです。メンバーを出し惜しみした結果画面が地味になってしまったのが敗因かなあ…

ファムケ・ヤンセンやニック・スタールといった久しぶりに見る俳優さんたちが元気そうにしてたのは良かったんですが。

 

次回は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol.3』『スーパーマリオブラザーズ』『TAR』『世界の終わりから』『ワイルドスピード ファイヤーブースト』『65』『クリード 過去の逆襲』あたりの感想を書きます。

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May 21, 2023

2023年3月に観た映画を振り返る

というわけで続けざまに3月に観た映画のまとめ記事です。アカデミー賞の時期でした。

☆『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

昨今流行りの「マルチバース」を題材にした1本。死体がおならをひりまくる『スイス・アーミーマン』の監督コンビがこの映画で作品・監督部門を含む7部門を受賞するようになるとは… 世の中本当にわからないものです。

正直自分この映画ぶっとびすぎててちゃんと理解できてるか怪しいのですが、そんなにむずかしく考えるようなものでもないのかも。とりあえず劇中で市井の主婦から世界の映画スターまで違和感なく演じてるのはさすがのミシェル・ヨー様でした。

以下好きだったポイントを列挙すると「セクシーコマンドーの映像化」「『レミーの美味しいレストラン』リスペクト(そしてアライグマが無事だった)」「岩の会話」「相手を幸せにして戦意をなくさせる攻撃」などです。

 

☆『フェイブルマンズ』

これまたアカデミー賞関連作品。スピルバーグ監督の自伝的内容で、監督が幼少期に影響を受けた映画が次から次へと登場するのかな…と予想してたのですが、主題となってるのはどちらかというと彼の両親の複雑な事情だったり。

スピルバーグと思しきサミー少年の両親には共通のベニーという気さくな友人がいるのですが、3人が3人ともお互いのことがすごく好きなために、「結婚できるのはうち二人だけ」という現実がのしかかってきてしまうのです。この辺ちょっと『タッチ』を思い出させます。

一度彼らと離れることに同意したベニーおじさん(演セス・ローゲン)が、サミーに押し付けるように高いカメラをプレゼントするシーンが好きです。

 

☆『シン・仮面ライダー』

今年最も待望していた1本。これに関してはひとつの記事で書きたかった気もするけどいかんせん映画の感想をため過ぎた…

現代を舞台にしてるのにまるで70年代のようなムード。一言でいうと、これ(東西冷戦のころを意識した)スパイものですよね。社会の影で人知れず戦い、人知れず散っていくエージェントたち。そんな名もなき彼ら彼女らにも人並みに人の温もりを欲する気持ちがあり。ラストに敵のアジトに乗り込んでいくのは007の名残かも。石ノ森先生には『009ノ1』というスパイ漫画もありますが。

そんな感じで映画全体を覆う寂寥感や荒漠としたムードや、わずかながら差し込まれるホッとするようなシーンが好みでした。『仮面ライダー』は漫画版とTV版でけっこうかけ離れた要素があり、今回はなんとかそれを融合できないだろうか…という意図があったように思います。結果として漫画版6:TV版4くらいの配合だったかと。すべて綺麗に混ぜ合わさったわけではありませんでしたが、そうした歪さもまた「シン・シリーズ」の特色だと思います。

 

☆『シャザム! 神々の怒り』

新体制への移行が決まったDCユニバース。今年はその前に決まった作品を消化すべく実に4本の公開が予定されてます(出来んのか…)が、第一弾がこの作品。姿は大人、心は子供のシャザムを主人公とした映画の続編となります。アメコミ版『ハリー・ポッター』のようなところもあるこのシリーズ、とりあえず子供たちがでかくなりすぎる前にもう一本撮れたのはよかったですよね。あと先の『アントマン』や『エブエブ』もそうですけど、映画にもかっこいいアクションを決めるおばあさんが増えたなあ…と感じました。

昨年末の『ブラックアダム』と深い関わりのあるキャラだけにそちらへの言及とかあるかな…と楽しみにしてたら何もなかったのは残念。逆にラスト付近での予想外のカメオ出演には素直にびっくり。またお茶らけが続く中で、ビリーと家族たちの絆が描かれるくだりにはホロリと来ました。もういい年なのでこういうのがあるのと条件反射的に涙腺に来てしまうんです。やめてください。

 

☆『グリッドマンユニバース』

TVアニメシリーズ『SSSS.グリッドマン』と『SSSS.ダイナゼノン』がとうとうクロスオーバーを果たした劇場オリジナル作品。これに関しては主題歌「ユニバース」が素晴らしすぎて… これだけ観てくれれば自分の野暮な感想などいらないかと思います。https://www.youtube.com/watch?v=m4vjI6InDJM

『ダイナゼノン』ラストで切ないお別れをしたガウマさんが超あっさり復活したのはアレですが良しとします。監督さんによりますと「初日3日間の興行で今後の続行が決まる」とのことでしたが、結局どうだったのだろう… もしあるとすれば次は原点である『電光超人グリッドマン』にもっと踏み込んだ話が観たいです。

 

☆『ベネデッタ』

エログロの巨匠?ポール・パーホーベンの新作。イタリアに実在した「キリストを見た」という修道女の騒動を描いた作品。戒律でがんじがらめのはずの身が、こっそり隠れて背徳的なことをしてる…というストーリーはヴァン・サン・カッセルのマイナーな映画『モンク 破戒僧』を思い出したり。どう考えても破滅にしか向かわなそうな暗いお話なのに、時折なぜかクスっと笑ってしまいそうなところがあるのは「これこれ、パーホーベンだよね」という感じでした。あと予想に反してそこまでバッドエンドでもなかったような…?

 

☆『アラビアンナイト 三千年の願い』

『マッドマックス 怒りのデスロード』から8年。ジョージ・ミラー待望の新作…のはずが話題も規模もこぢんまりしたような? それはそれとして現代のおとぎ話としてはまあそこそこ面白かったです。もうだいぶいい年のはずなのにティルダ・スィントンさんも相変わらずの美しさでしたし。ベネデッタ』と「バイオレンスな作風で人気を得た監督が老いて撮った、メロメロな愛の物語(でもちょっと変)」という点で共通してました。まあ無味乾燥な毎日を送ってますとたまにはいいですよね。メロメロな話

 

なんとか3月分まで書けました。次は一ヶ月以内に4月に観た映画…『逆転のトライアングル』『仕掛人・藤枝梅安 弐』『ダンジョンズ&ドラゴンズ』『AIR』『聖闘士星矢』の感想を書ければと思います。

 

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2023年2月に観た映画を振り返る

いまごろ3ヶ月前に観た映画のことを書くとか、このブログもいよいよ末期だな…と感じるこの頃です。でもあがくだけあがいてみましょう。

 

☆『鬼滅の刃 上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』

ご存じ『鬼滅の刃』の劇場版…というかTV放送の特別上映。『遊郭編』のクライマックスと『刀鍛冶の里編』の第一話を強引に1本の映画にした構成となっています。

ただやはりufotableさんの超作画は大画面でこそ生きてくるものなので、本来この状態で鑑賞するのがふさわしいのかもしれません。あと妓夫太郎&堕妃の最後のくだりは、TV放送の時は泣きませんでしたが映画館で観たらけっこう鼻水が垂れました。ちょろいです。

 

☆『仕掛人・藤枝梅安』(1作目)

池波正太郎生誕100年記念の映画化プロジェクト第1弾。『藤枝梅安』シリーズは何度か映像化されてきましたが、これまでで最もけれんみを排し、リアルにこっそりと暗殺を遂行する描写に力が入れられてます。

もう一点力の入ってるところは、池波作品特有の江戸グルメ。そんなに凝った料理は出てこない(肉禁止の世ですし)んですが、どれもシンプルながらめちゃくちゃおいしそう。そんな描写から梅安さんと一緒に江戸で生活してるような気分を味わえます。

プロットが偶然に頼りすぎるところが玉に瑕ですけど、これは原作がそういう話なんでしょうがないといえばしょうがない(笑)

それにしてもこの日たまたまチョイスした二本が両方とも「貧困ゆえに哀しい運命に見舞われる兄妹の話」だったのはちょっとびっくりでした。

 

☆『バビロン』

デミアン・チャゼルによるハリウッド草創期の青春物語。監督の代表作『ラ・ラ・ランド』とテーマは同じなんですが、こちらの方はかなり趣味が悪いです。これまでチャゼルさんの作品は上品というかお洒落嗜好が強かったのに、一体何があったのでしょう。

ともあれ、序盤の無声映画の撮影シーンなどは何でもありの時代ゆえのでたらめさがべら棒に楽しい。で、その後トーキーが導入されたことで登場人物たちが、どんどん追い詰められていく様子がしんどい。つまり全体の2/3はしんどいパートなのがしんどい映画でした。でもまあこういう失われた青春をしみじみ思い出す話は嫌いになれないんです。あとトビー・マグワイア、なかなかの怪演でした。

 

☆『アントマン&ワスプ クアントマニア』

MCUフェイズ5の第一弾。超ミクロの量子世界に迷い込んだアントマンと仲間たちの活躍が描かれます。自分としては「ぷにぷにした量子世界の風景・生物」「さばけた性格になったダレン」「メタルヒーローみたいな3アントマンそろい踏み」「クライマックスの蟻とジャイアントマン大暴れ」など十分に楽しませてもらったのですが、世間的には評価はイマイチみたいで。前二作みたいな現実世界のこぢんまりした期待されたということでしょうか。

とりあえずラストの「オレ、もしかしてやらかした…? でもいまんとこ大丈夫だし大丈夫だろ♪」的なマインドは大いに見習いたいものです。

 

☆『BLUE GIANT』

「なんかすごい熱くて感動するらしい」という評判だけで鑑賞を決めたアニメ映画。ジャズに情熱を燃やす三人の若者のお話(漫画原作)。ジャズのことなど何もわかりませんが、「一見さんに魅力を伝えたい」という作品のポリシーのせいか、「なんかすげえな」ということはよく伝わって来ました。上原ひろみさんが監修されてるだけのことはあります。あとやはり原作あっての映画なんでしょうけど、「本当に音が聞こえてくる」というのは漫画にはない強みだと思います。

三人のうち主人公の大は最初から最後まで全くブレないのですが、脇の二人が色々葛藤するというのが独特です。特にずぶの素人からドラムを始める玉田君は我々凡人に一番近いキャラなので共感させられることしきり。また、田舎から出てきた若者が貧しいながらも東京に馴染んでいくあたりは先ごろ完結した『イチジョウ』を思わせてほっこりしました。

 

気力が持てばこのあと続けざまに3月観た映画のまとめも書きます。もつかなー

 

 

 

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March 05, 2023

2023年1月に観た映画を振り返る

ようやく今年最初の映画まとめ記事であります。

 

☆『空の大怪獣ラドン』

本当は昨年に「午前十時の映画祭」で観ました。近年リバイバルで『ゴジラ(1954)』『モスラ(1961)』も鑑賞しましたが、その中ではこの作品が一番面白かったように思えます。ミステリーのような導入部、今は失われた炭鉱の風景、メガヌロンのホラー的な描写、そしてラドンの大暴れ…などなど楽しめる要素が色々詰まってまして。まだ先の話ですが今年の年末は『地球防衛軍』をかけるようでこれまた楽しみです。

 

☆『かがみの孤城』

『オトナ帝国』の原恵一監督最新作。前作『ハッピバースデー・ワンダーランド』が氏にしてはかなりファンタジー要素の強い作品で、いまいちその持ち味が感じられなかったのに対し、今回はしんどい現実に立ち向かわざるを得ない子供たちの姿にその本領を見ました。というわけでけっこう見ていて辛い・切ないところもありますけれど、最後には爽やかな後味を残してくれるところも原テイストでした。

ストーリー上のある「仕掛け」に関しては私にしては割と早々に気づきました。ただこれは自分が鋭いというよりは少し前に同じ発想のアニメを見ていたから。

 

☆『仮面ライダーギーツ×リバイス MOVIEバトルロワイヤル』

良かった点…『龍騎』関連はみな良かったです。

悪かった点…ラスト付近、一輝が願いをかなえられる場面で「何もないよ」と微笑んで言うところ。そこはバイスの復活を願ってあげるべきではないのか… 

 

☆『ケイコ 目を澄ませて』

耳の聞こえない女子プロボクサー・ケイコと彼女を支える人々の物語。ただスポ根的ムードはなく、主人公が属するジムの閉鎖がストーリー上最も大きなヤマ場であったりします。現在の都会を舞台にした作品であるのに、出てくる風景がいちいち郷愁を誘うような懐かしさに溢れています。あと彼女が会長と行うミット打ちの「バシュ!」という音がとても心地良いのですが、それも本当は彼女の耳には届いていないわけで。

最後の試合はどうしてこんな風にもってったんだろ…と思いましたが、これ、一応実話を下敷きにした作品だったのですね。現実の結果に倣ったというとこでしょうか。

 

☆『ノースマン 導かれし復讐者』

西暦9世紀の北欧が舞台。叔父に父を殺され、母を奪われた男の復讐譚。『ハムレット』の原型となった「アムレート」という人物の叙事詩を元にしてるそうです。

復讐ものには2通りあります。復讐が遂げられてスカっとする話と、復讐の陰惨さにゲンナリする話です。こちらはどっちかというと後者。ラスボスのおじさんがあまり強くなさそうなところからもそれはうかがえます。ただそんなカタルシスの乏しそうなお話ではありましたが、ストーリー自体は意外にも面白く観ることが出来ました。これまで「脇の人」という印象が強かったアレクサンダー・スカルスガルドさんは、これで堂々たる主演の「代表作」をゲットできたのでは。

 

☆『エンドロールのつづき』

インド版『ニュー・シネマ・パラダイス』。いつものインド映画と雰囲気が少々違うな…と思ったらフランスとの合作でした。

主人公の少年のものすごい行動力にとにかく圧倒されます。映画を自分で上映したい…という目的のために平気で盗みまでしたりして、悪い方向に進んだら犯罪組織のボスにまで上りつめてしまうのでは…と心配になりました。

劇中に登場するお母さんのお弁当が肉とかあまり入ってなくてほぼ香辛料と野菜が主体なのですが、それでもすごくおいしそうで、晩御飯を後回しにしたお腹には少々堪えました。

 

☆『蒼穹のファフナー BEHIND THE LINE』

少し前リバイバルがあった『HEAVEN AND EARTH』の直後の物語。つまり『蒼穹のファフナー』シリーズの中で最も平和だったころのお話。その後のエピソードで散ったキャラ達もまだ元気な姿を見せていて、戦闘シーンはなく、よってロボの出番もほぼないのですが、ファンの満足度はめちゃくちゃ高いという不思議な作品。もうこれが真の完結編ということにして、『EXODUS』以降はなかったことにしませんか… 真壁指令の中の人のつぶやきによると、竜宮島のモデルはやっぱり尾道みたいですね。そんなわけで尾道観光の疑似体験もできる一本

 

☆『イニシェリン島の精霊』

『スリー・ビルボード』監督による今年のアカデミー賞作品部門候補の1本。前日まで仲良くしていた友人から突然絶縁を迫られた男が、狭い島の中で悩みまくるというお話。ほかの映画でアクの強い役を多く演じているコリン・ファレルが「退屈極まりない男」を演じているのが無理があるんですけど、まあそれは置いといて交友関係・対人関係において色々勉強になるお話です。できるだけ他の人を楽しませたい・面白いやつだと思われたい…という願望は誰にでもあると思うのですが、これがなかなか難しいのですよね… あとリアルではあまりないけれど、ネットではいきなりバサッと縁を切られてしまうというのは時々あること。あれはこちらでは唐突に感じられるけど、向こうにしてみれば積もり積もった「こいつうざいな」メーターがとうとう極に達したということなのかもしれません。

最後の方すごい状態になってしまったコリンの友人と、平然と学生さんたちがセッションしてるのは明らかに無理があると思いました。

 

次回は『仕掛け人 藤枝梅安』『鬼滅の刃 ワールドツアー』『バビロン』『アントマン&ワスプ クアントマニア』『BLUE GIANT』についてちょっとずつ書きます。

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February 27, 2023

第19回SGA屋漫画文化賞

例年であれば映画ベストと共に年末に発表する年間漫画ベスト。今年は怠け癖が働いていつもより二か月遅れの発表となりました。ははは…

ま、誰も注目してなくて限りない自己満足で決めてる賞なので何の問題もないのですが。

それではさらに投げやりに発表してまいります。

 

☆少年漫画部門 松井優征 『逃げ上手の若君』 佳境に入りつつある松井版『太平記』。楠木正成も登場しますます盛り上がりを見せています。

☆少女漫画部門 田村由美 『ミステリと言う勿れ』 僕は常々思うんですが、ミステリー漫画久々の新星ヒット作ですよね…

☆青年漫画部門 野田サトル 『ゴールデンカムイ』 ダレルことなく要所要所を盛り上げながら、最大のクライマックスを迎えて堂々の完結。これが出来る例ってごくごくわずかなんですよね。

☆中年漫画部門 萩原天晴・三好智樹・瀬戸義明 『上京生活録イチジョウ』 これまた先日完結。青年が主人公ですが、これ中年が在りし日を懐かしむ漫画なんですよ

☆海外漫画部門 ヴィレッジブックスの翻訳事業に対して 長年名作をたくさん紹介してくださり本当にありがとうございました。翻訳飢饉にあえいでいたころ、『バットマン:ロング・ハロウィーン』を出してくれたことは忘れません。

 

★大賞 井上雄彦 『スラムダンク』

昨年末映画を観て久しぶりに埃をかぶった原作本を読み返してみたら、これがもうべら棒に面白くて。25年経っても色あせないそのエネルギーに脱帽しました。というわけで今頃勝手に大賞を差し上げます。

 

果たしてまた次回があるかどうか… いや、諦めてしまったらそこで試合終了なのです。

 

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February 06, 2023

『鎌倉殿の13人』を雑に振り返る⑫ やっとこ12月編

すでに『どうする家康』が始まって一月以上。いまさら感が半端ないですが、マイBEST大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の感想を〆とうございます。

 

第45回「八幡宮の階段」

雪の中行われた実朝の右大臣拝賀式。階段を下りていく彼を物陰から狙う公暁。目の前で今まさに将軍暗殺が実行されようとしていることを知りながら、しかしそれを止めようとはしない義時。そして運命の時が訪れた。

ある意味『鎌倉殿』の真のクライマックスとも言える回。頼朝の血筋が絶え、名実ともに北条が武家社会の頂点に立つことになります。刀を下げた公暁を前に、あえて逆らわず命を投げ出す実朝。血を血で洗い生き馬の目を抜く鎌倉にあって、彼は勝ち残るにはあまりに優しすぎたのでしょう。実朝登場からこの回が来るまで毎週が本当にしんどかったですが、シリーズ最大の悲劇が終わってなんだかホッとしてしまったのも事実です。

一方で素っ頓狂な散り際を見せてくれた源仲章氏。やけくそに「寒いんだよおお!!」とがなる姿はジーパン刑事の最後を彷彿とさせました。

こんなに大事な回なのにワールドカップの日本ーコスタリカ戦と重なってしまったために視聴率が最低だったというのもまた悲劇でした。

終わりに登場する運慶×義時の会話も印象深かったです。「お前は俗物だ。だからお前の作るものは人の心を打つ」

この回の重要なアイテム:血で読めなくなった公暁の弾劾文とポイ捨てされた実朝の小太刀

 

第46回「将軍になった女」

1219年。鎌倉では次なる暗闘が始まっていた。自分の息子阿野時元を次の将軍に据えようとした実衣だったが、その陰謀はもろくも崩れ去る。絶体絶命の彼女を救うべく立ち上がったのは子供をすべて失い悲嘆に暮れていた政子だった。

『鎌倉殿』最終章の開幕にしていわゆる「尼将軍」誕生の回。政子のことを「稀代の悪女」と評する向きもあるようですが、1人でも十分つらいのに4人もの子供に先立たれた心情を思えばあまりに気の毒でありません。そしてどん底から妹を助けるためもう一度立ち上がるその姿が凛々しくもやはり悲しい。「田舎の行き遅れが」と連呼されてたのもちょっと悲しく、少し笑えました。

実衣の方はなんというか自業自得だし懲りないしであまり同情できないのですが、耳たぶひとつ切られず無事で済んだのはまあよかったですね。

この回の重要アイテム:無事だったミイさんの鼻と耳たぶ

 

第47回「ある朝敵、ある演説」

1221年。鎌倉で最高権力者となった義時に、ついに後鳥羽上皇が刃を向ける。彼一人を引き渡せば兵は出さないと諸将に文を送る上皇。幕府を守るため自ら朝廷に身柄を預けようとする義時だったが、姉はそんな彼を見捨てなかった。

義時と言う人も本当に不思議な人で、ここに至るまでに権力欲にとりつかれたマックロクロスケのような男になり果ててしまいましたが、彼の欲って金とかスケベ心とかにはいかないんですよね。あくまで主導権を握ることだけに邁進し続け、他に熱心に取り組んでることといえば仏像や寺を作ることくらい。ある意味めちゃくちゃストイックな男とも言えます。そんな彼だからこそ鎌倉(そして息子)を救うためには迷いなく命を投げ出します。「あの親子はぶつかり合うほどに絆を強くしていく」というのえさんの評、聞いてる方は微笑ましいんですけど、彼女にとってはねたましくてしかたなかったのでしょうね。

『東京リベンジャーズ』の如く坂東武者に「ひよってるやつはいるかああ!!」とぶちかます政子。非道をつくしてきた自分でさえまだかばってくれる人たちがいる… 涙する義時の姿にちょっぴり白味が戻ったラストでした。

この回の重要なアイテム:「記念にほしい」とトキューサに言わせた上皇様のお手紙

 

第48回「報いの時」

そして始まる承久の乱。尼将軍パワーに奮い立たされた坂東武者に雅な京の侍たちはなすすべもなく、戦いは短期間のうちに幕を閉じた。これで今度こそ歯向かうものは誰もなくなった北条義時であったが、死は意外なところから忍び寄っていた。

「アガサ・クリスティの作品からヒントを得た」と三谷さんが言っていたラストシーン(結局どの作品だったの?)。小栗さんも小池さんも特番で「すげえすげえ」と興奮していたその終幕はどんなものだったのだろう…と固唾を飲んで見守っておりましたが、予想を上回る衝撃に打ちのめされました。ちなみにこの放送時間、自分は某宅で忘年会に呼ばれていて、酒盛りに一人背を向けてTVに見入っておりました。

前回助けてくれた姉にとどめをさされてしまう義時があまりにやるせない。でもあれは復讐や処刑ではなく、永くない弟にこれ以上罪を重ねさせないための処置だったのでは。思わず駆け寄ってしまうところとか、「もっと似てる人がいるわ」という言葉からそれを感じますし、宮沢りえさんも全く同じ意見だったのに慰められました。

もう少し余韻とか残された人たちの反応とか見たかったところですが、あそこでバサッと終わるのがやはり美しいのかも。脳内を「ゴッドファーザー 愛のテーマ」がただただ流れていきました。

この回の重要なアイテム:書き上げられた御成敗式目・毒(キノコ由来?)

 

最後こそ遅れましたが無事全話感想書き上げられてホッと一息です。ただ「13」が強調されたドラマだったので、あともう一回くらいなんか書きたいですねえ(挫折する可能性高し)

 

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December 29, 2022

2022年、この映画がアレだ!!

年々投げやりになっていく年間映画ベスト。腐乱死体のように見苦しいですが、今年もやります。まずはどん尻から。

 

ワースト:『仮面ライダー〇〇〇 10th 復活のコアメダル』

伏字になってるようななってないような。でもあんまりこの映画の悪口言いたくないんです。主演の渡部秀君がこれで満足されてるのだったらそれでいいです。三浦君は怒ってましたが。

 

リバイバル部門:『ロード・オブ・ザ・リング』三部作IMAX上映

公開からはや20年。色々忘れてたので新鮮な気持ちで感動出来ました。

 

ではBEST25を一気に発表いたします。

第25位 『ハウス・オブ・グッチ』 お金って怖いよね。でも欲しいよね

第24位 『バブル』 ネトフリ同時公開とか、やめよう

第23位 『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』 次は「時間よ、止まれ」の映画化よろしく

第22位 『FLEE』 ジャン・クロード・ヴァンダム再評価映画

第21位 『ソー ラブ&サンダー』 2年ぶりに会った友人と一緒に観たのが大変楽しかったので

第20位 『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』 電〇は悪

第19位 『ベイビーブローカー』 かつてないくらい優しいソン・ガンホ

第18位 『SING ネクストステージ』 稲葉さんのU2が良かった

第17位 『鋼の錬金術師 完結編』2部作 今年の「そこまで悪く言われることなかったんじゃないか」賞

第16位 『ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー』 二代目はシュリチャン

第15位 『コーダ あいのうた』 無音演出が斬新でした

第14位 『神々の山嶺』 フランスのお洒落なセンスで描かれる昭和風景

第13位 『ドクターストレンジ マッドネス・オブ・マルチバース』 ラストのアレは『三つ目がとおる』のオマージュでしょうか

第12位 『ノープ/NOPE』 みんな『AKIRA』好きだよね

第11位 『トップガン マーヴェリック』 今までで映画館で一番多く予告編を見た映画。4DXSCREENは壁際に座ると片っぽの横画面がほとんど見えません。

第10位 『マークスマン』 今年ナンバー1のリーアム・ニーソン映画(これしかないけど)

第9位 『キングダムⅡ 遥かなる大地へ』 良かったけど、このペースじゃ最後まで映画化とか無理だよね…

第8位 『DCがんばれ! スーパーペット』 クリプトたちだけじゃなく、DC映画は全体的にがんばろう

第7位 『さがす』 さがし さがしもとめて~ ラストシーンがすごく好き

第6位 『ザ・バットマン』 東京コミコンでアンディ・サーキスに会いに行きたかった…

第5位 『すずめの戸締り』 「人間椅子」も新海誠が手掛けるとこんなにさわやか?

第4位 『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』 観たてのほやほや。今年はどん詰まりに来てツボな作品がラッシュして来ました

第3位 『THE FIRST SLAM DUNK』 今年の「公開されるや否やみんなの手の平がひっくり返った」大賞。ワールドカップ日本代表の姿とダブりました。

ラストは2作品同率で

『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』

『シン・ウルトラマン』

東西を代表するヒーローの総決算的な作品を並んで1位といたします。誰に強いられてでもなく、好きな人たちを守るために笑顔で自分を犠牲にする、彼らの姿に涙と鼻水を搾り取られました。片や10代、片やウン千才?という開きはありますが。それにしてもアンドリュー・ガーフィールド、騙してくれてありがとう。許さないけど許す。

 

振り返りみれば今年もいい映画いっぱいありました。来年も『シン・仮面ライダー』『スパイダーバース』などに期待しております。それでは良いお年を。

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December 27, 2022

2022 年12月に観た映画

今月は後『ラドン』の4Kリバイバルを観る予定なのですが、とりあえずここで締めます。

☆『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』

そのまんまですね。ギレルモさんがストップモーションアニメで表現した「ピノッキオ」。ネットフリックス製作ですが、幸い近くの映画館でもちょっとだけかけてくれました。ピノキオといえば去年の生々しく、原作に忠実な実写版が記憶に新しいところ。デルトロさんが差別化を意識されたのかはわかりませんが、今回はかなり独自のアレンジが効いておりました。戦時下のイタリアが舞台となっているので、戦争の悲しさや恐ろしさが強く伝わってくる内容となっております。キュートでコミカルなところもたくさんありますけどね。

思えばギレルモ氏が純粋に子供向けの映画を手がけたのはこれが初めてかも。観客に「あとはご自分で想像してください」と委ねるような結末は『パンズラ・ビリンス』や『シェイプ・オブ・ウォーター』を思い出しました。

 

☆『ブラック・アダム』

揺れ動き続ける(笑)DC映画ユニバース最新作。ブラック・アダムさんといえば『シャザム!』の名悪役の一人なのですが、今回はビリー君ちとは関係なく映画化。代わりにホークマンやドクターフェイトといったコミックでは古参なのにいまいちメジャーになりきれないヒーローたちがチーム「JSA」を組んで登場してきてたのしゅうございました。特にドクターフェイトのデザインはもろ好みでフィギュアが欲しくなります。

印象に残ったのはJSAが「ヒーローとかいう割に中東の問題は全く解決してくれない」とか皮肉られるところですね。これ、現実の米軍へのかなり痛烈な皮肉になっているのでは。あと『フライト・ゲーム』や『ロスト・バケーション』といった限定空間でのサスペンスを得意とするジャウム・コレット・セラ氏が監督でしたが、彼の持ち味はあまり生きてなかったような。題材が題材だけに仕方ないところでしょうか。

 

☆『THE FIRST SLAM DUNK』

90年代の名作スポーツ漫画を、原作者自らが映画化。この「原作者自ら」ということを知った時はたまげて記事を二度見しました。井上先生ってあんましアニメに興味ない人だと勝手に思ってたので…

正直あまり期待はしてなく、大好きな漫画だったのでまあ一応観とこう…くらいの気持ちでした。でもまあ、何度も読み返したあの場面、あのセリフが出てくると感極まって条件反射的に鼻水がブシューッと噴き出てしまうんですよね。今回のメインは湘北5で最も地味な宮城君で、出番が最も多いのは彼なのですが、自分はやっぱり桜木花道がここぞというところで活躍するところにテンション上がってました。

宮城君の性格が原作とはちょっと違っていて、原作者が作っているのに二次創作みたいなところがあります。多分先生はこのアニメを1本の映画、あるいは「現実(リアル)に近い作品」として仕上げたかったのでしょうね。ギャグ含めてコミックをそのまんま再現するとそこからかけ離れてしまう恐れがある。その辺を考慮に入れての改変だったのだと思います。

懐かしい面々にまた会えてよかった(あまり期待してなかったくせに)。大変でしょうけどぜひともTHE SECONDも作っていただきたい。こんなタイトルにしたんだからその辺責任とってください。

 

☆『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』

この十年間ずっと「やるやる」詐欺を繰り返していた『アバター』待望の続編。今回は惑星パンドラの海が中心となっていて、この水の3D表現が本当にすごい。デビュー作『殺人魚フライングキラー』から、『アビス』そして『タイタニック』と、キャメロンはやっぱり海を扱うのが本領の人…という思いを新たにしました。3D旋風を巻き起こした前作ですが、その後「すげえ立体映像を見せてやるぜ!」というのを第一目標として作られた映画が何かあったかというと、『怪盗グルーの月泥棒』くらいしかなかったんではないかと。「ゲーム画面みたい」という評価も聞きましたが、ゲーム画面はいかに美麗であろうと飛び出してはこないし、なにより大スクリーンでは観られないのです。

映像以外には海で活躍する悪役のメカ群とか、長男ばかりひいきされてないがしろにされる次男、その次男とクジラとの友情などもツボでした。しかしキャメロンは本当に̪シガ二ーと大佐が好きですねえ。この二人への肩入れがあからさまで今回前回の主人公ジェイクの影がちょっと薄かったです。

「3作目は何がなんでもやる」とのことなので、興行がたとえアレな結果になったとしても責任とって続けてください。

 

☆『MEN 同じ顔の男たち』

『エクスマキナ』のアレックス・ガーランド監督と聞いて観ました。あちらが一応条理的なSFだったのに対し、今回はかなり不条理なお話。タイトル通り同じ役者さんが管理人、牧師、警官、ホームレス…と風体を変えてヒロインの前に何度も現れるのですけど、そのことに関しては特につっこまない主人公。神経のまいってしまった人が見た幻覚とも、田舎の変な妖怪を目覚めさせちゃった話とも取れます。リンゴがいっせいに落ちるシーンとか、ヒロインが逃げ惑う中、背景の夜空がめちゃくちゃ綺麗だったりするところが印象に残りました。

 

☆『MAD GOD』

『スターウォーズ』『ロボコップ』『ジュラシックパーク』など名だたる娯楽巨編に関わってきたクリーチャー操演の神様フィル・ティペットが、一からオリジナルで作り上げたストップモーションアニメ。で、これがかなりシュールで難解でえぐい。アニメといえど子供に見せちゃいけない作品です。『JUNK HEAD』とかぶってるところも色々あるんですけど、こちらにはあちらにあった「かわいらしさ」というものが一片もありません。

その映像の力強さや作りこみには圧倒されながらも、共感を拒絶するような作りに「ポカーン」としてしまったのも事実。実はこれクリスマス・イブに一人で見たのですが、なんだか寒さとやるせなさが一層募った気がしました。

 

おお、なんとか超雑ではありますが、年内観た新作映画の一言メモを全部書き切りました。次は誰も注目してないであろう2022年映画ベストについて書きます。

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December 25, 2022

2022年11月に観た映画を振り返る

10月はリバイバルと特集上映しか観てなかったので飛ばします。余裕があったらそのうち書くかも…

☆『RRR』

『バーフバリ』のラージャマウリ監督が描く近代インドアクション。偶然出会った時から互いに強くひかれあったラーマとビーム。だがそれぞれに一族を背負った使命があったことから、その絆は分かたれてしまう。…と書くと男女のラブロマンスのようですが、主人公二人は凄腕の武芸者なので激しいアクションの応酬が繰り広げられます。

3時間の長尺を退屈させずに一気に観させる手腕はさすがのラージャさん。ただちょっとラーマさんもビームさんも大事なお勤めがあるのにサボって遊びすぎだと思いました。あと最後の一人が倒れるまでぶっとおしで続けられる死の舞踏「ナートゥ」ダンスが圧巻です。

 

☆『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』

みんな大好きタイムリープ映画。ただ日本でタイムリープをやるとなぜか青春の甘酸っぱいムードが濃厚になったりするのですが、こちらは辛気臭いサラリーマン社会が舞台となってるのが斬新であります。作品紹介を読むとブラック企業で酷使されて大変そうな話を想像しますけれど、こちらの会社の同僚はみないい人たちで、出来たらこんなメンバーと一緒に働きたいなあと思ったり。その代わりクライアントである広告代理店?はけっこう腹黒い感じ。やっぱり電〇あたりがモデルだったりするのでしょうか。

 

☆『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』

待望のMCU最新作。前作の主演で会ったチャドウィック・ボーズマン氏が不慮の死を遂げられたため、作品世界でもブラックパンサー=ティチャラが突然の病で亡くなったという展開に。主役不在の中脇役たちがそれぞれ懸命に働き、やがて新たなるブラックパンサーが誕生する…という流れ。言ってみれば映画丸丸一本使って一人の俳優さんの追悼式を行ったようなもの。それだけ社会にもスタッフにもチャドウィックさんの存在が大きかったということなのでしょう。自分としては代役立ててでも、映画の中ではティチャラに死んでほしくはなかったですけど… ただCGでボーズマン氏を再現して、安っぽい感動的なセリフを言わせたりしなかったのは評価いたします。

 

☆『すずめの戸締り』

待望の新海誠最新作。こう言ってはなんですが爽やかな孔雀王(もしくは仮面ライダー響鬼)がピュアな女子高生に助けられる話。強引なところはあれど、冒頭から中盤まではスペクタクルの連続で観る者に休みをくれません。それが少し転調するのが、悲壮な決意を固めたヒロイン・すずめの前に孔雀王の友達である芹澤という軽そうなにーちゃんが現れるところ。こっから多少肩の力を抜いてのんびり楽しめるロードムービーへとシフトしていきます。かようにちょっと変な映画ではあるのですが、この芹澤のキャラと縦横無尽にすっとび回る人間椅子があまりにも楽しかったので年間ベストに入れたいと思います。

ちらっと地元熱海も映りました。あそこも実は土石流が流れてったところだったり…

 

☆『ザリガニの鳴くところ』

ザリガニって鳴くんか…?? それはおいといて、アメリカ南部の自然で育ったややワイルドな女の子が、町のプレイボーイを殺したという罪で訴えられ、果たして彼女がやったのか、それとも無実なのか…という謎でもって観客をひっぱっていきます。

某ロッテントマトの点数はあまり高くありませんでしたが、十分に面白かったし原作は全米でベストセラーになったとのこと。だからこの面白さの功績は原作小説に負うところが大きいかも。その原作者さんは自然学者として名を馳せてた方で、だいぶご高齢になってから初めて書いた小説が大ヒットとなったというのだから驚きです。

舞台となったノースカロライナ州の豊かに広がる河は『トム・ソーヤの冒険』とも似た景色だったり。あちらはミズーリ州のお話なのでそれなりに近いと言えば近い…かな。

 

☆『グリーン・ナイト』

日本でも人気の高いアーサー王伝説に出てくる「円卓の騎士」の一人、ガウェインの冒険物語。といっても明るくモンスターを倒していくような内容ではなく、追剥にあって苦労したり説明のつかない怪異に出くわしたり…といったストーリーで、正直なかなかわかりにくいところもあって困惑いたしました。ただラストも含め不快な難解さではなく、わけわからないながらも爽やかな気持ちで劇場を後にすることが出来ました。そんでこれ、大元は監督が考えた話じゃなくて、イギリスで昔から伝わってる民話みたいなものをアレンジした作品なんだそうです。

快活な青年の役が多かったデブ・パテル氏がこちらでは悩める修行者的な役を好演してて感服いたしました。

 

次回「12月に観た映画」の感想は年内にまとめられるかどうか。『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』『ブラック・アダム』『THE FIRST SLAM DUNK』『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』『MEN』『MAD GOD』について書きます。

 

 

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December 04, 2022

『鎌倉殿の13人』を雑に振り返る⑪ だいたい11月編

第41回「義盛、お前は悪くない」

一時は回避されたかに見えた和田勢との衝突。しかし不幸な行き違いから、義盛の郎党たちは幕府に向けて進軍を開始してしまう。ここに幕府内乱で最も激しかったと言われた「和田合戦」が始まった。

和田義盛退場編の後編。和田さんに関してはドラマを見る前から名前だけ知ってましたが、本当に名前だけ。その性格は三谷さんの誇張によるところが大きいとは思いますが、歴史の記号みたいだった人物が、またしてもこれで全国の皆さんの親しみやすい人気者になったのでは。それだけにその壮絶な最期がつろうございました。和田さんを葬った後何とも言えない表情を見せる義時にも…

数少ない笑いどころは、追討に向かう際なぜかべろんべろんに酔っぱらってた泰時。几帳面な彼にしては珍しい乱れっぷりでした。

大抵源平ものでは義仲の死と共に姿を消す巴御前は、この41回までねばりを見せてくれました。秋元才加さん演じる凛とした巴と髭もじゃの熊さんみたいな義盛公は、実に微笑ましいカップルでしたねえ。

この回の重要なアイテム:大江さんが別人のような刀さばきで取り戻してきたドクロと、朝時が思いついたことにされたファランクス戦術

 

第42回「夢のゆくえ」

和田合戦を経て、平和な鎌倉を作ろうと心に誓う実朝は、実権を取り戻すべく義時と対立していく。そんな折都から宋の匠・陳和卿が鎌倉を来訪。船を作り宋との交易を興すことをすすめ、実朝は大いに乗り気になる。

西暦1216年の出来事で、豪快に失敗したプロジェクトXみたいなお話。若いなりに一生懸命がんばってる実朝君の努力が報われないのが、これまた切ない…んだけど、裸の男たちがギャースカわめきながら船を引っ張ってる絵はなかなか笑えました。なぜか脚本に「脱いでる」と書かれてた義村。書いてないのになぜか脱いでた八田さん。見事な胸筋を披露してくださりありがとうございました。

他にはお父さん譲りの超能力なのか、冒頭で実朝の夢枕に現れる後鳥羽上皇がインパクト大でした。あとエピローグで3回ぶりに姿を見せ、そのままナレ死した時政パッパにほっこり。

この回の造船マメ知識:船を陸で重く作り過ぎてはいけない

 

第43回「資格と死角」

1217年。後継者に将軍職を譲ることに決めた実朝は、京より帝の子息をその地位に据えることを提案。そこへ運悪く僧として修業していた二代将軍の忘れ形見公暁が鎌倉に戻ってくる。鎌倉殿を継ぐ気満々だった公暁に義村が要らないことを色々吹き込んだせいで、新たなる悲劇がまた幕を開ける。

これまでも辛いエピソードが山ほどあった「鎌倉殿」ですが、ここからの3回で言わばつらみのピークを迎えます。キーパーソンとなる公暁は役の上では頼家、役者さんとしては佐藤浩市氏のギラツキぶりを見事に継承していてお若いのに凄みを感じさせます。

一方でのんきだったのが政子とトキューサが都を訪れるエピソード。政子×シルビア・グラブの交渉戦とトキューサ×上皇様のリフティング勝負は両方とも見応えありました。

この回の珍妙なアイテム:政子が一杯のツマミに持ってきた干しダコ

 

第44回「審判の日」

1218年。都より皇子を将軍職に迎える準備が着々と進んでいた。だがその陰で義時は朝廷と接近しすぎた実朝を排除することを決意。公暁もまた自分が鎌倉殿となるべくクーデターの計画を練っていた。そして公暁のターゲットには実朝だけではなく、父を葬った義時も含まれていた。

某所で「みなもとの なんかむかつくなかあきら かおはいいのに かおはいいのに」と歌われていた源仲章。本当にむかつくというか、怒りの煽り方がうますぎる。演じる生田斗真君は『いだてん』や『脳男』などが印象に残っていますが、それぞれ全然別の役どころで感心いたします。

運命の日の直前に会話を交わす実朝と公暁。表向きは和解できたように見えましたが、公暁の闇は実朝の光を受け入れることが出来ません。まっすぐで清らかな心がかえって相手の心をかたくなにしてしまうこともあるという。

ここに至って本当にギャグがなくなってしまった『鎌倉殿』。前半のコメディ調が嘘のよう、というか別のドラマのようです。三谷作品としてもここまでドス黒いものは例がないのでは。雪の降る中階段を上っていく実朝。物陰で息をひそめる公暁。ぽっかり口を開けて義時を嘲る仲章。緊張が極に達したところで生殺しのように次回へ。

この回の謎の動物:義時の夢に出てくるソフトバンクのお父さん

 

いよいよ残り一ヶ月。さびしいようなホッとするような…

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November 20, 2022

2022年9月に観た映画

☆『NOPE/ノープ』

『ゲットアウト』『アス』に続くジョーダン・ピール監督最新作。予告では突然上空に舞い上げられる人の映像があり、『ツイスター』みたいな竜巻の映画かと思いきや、これがなかなか意外な方向へ進みます。

ジョーダンさんは『ゲットアウト』のお笑い混じりのムードが好きだったのに、『アス』はただ普通に怖い感じの映画になっていて、今回もそうだったらイヤだな…と思いながら観ておりました。果たして前半こそホラー調でありましたが、後半はなんというかこう、「燃える」展開になっていて手に汗握らせられました。こういう風に共通したタッチも持ちながら、1作ごとに趣向を変えていく作家さんもちょっと珍しい。

合間合間に昔のオランウータンのシットコムに関するエピソードが挿入されます。これ、別になくてもいいような気もしましたが、これが作品にある種の不気味さや個性を添えていてぬぐいがたい印象を残します。

 

☆『この子は邪悪』

さるご縁で、自主映画を作られてるころから追いかけさせていただいてた片岡翔監督の長編第3作。前2作は一応原作付であったので、一からストーリーをこさえた長編となると初…ということになりますか。

事故にあって以来、心身共に傷を抱えたある精神科医の家族。ただ一人無傷だった長女が、同年代の少年と交流を持ち始めたころから、保たれていた見せかけの平安が崩れていきます。

建物等の古めかしい様子や「犬神家」のようなマスクをかぶった少女などから、現代が舞台であるにも関わらず戦前の探偵小説のような空気が漂っております。クライマックス近くにはなかなかびっくりする超展開もあり。ここがこの作品の賛否が特に別れるところかもしれません。自分は夢野久作や楳図かずおのオマージュと捉えて「アリ」といたしました。

病院に放たれているたくさんのウサギが可愛くも不気味。でもやっぱりかわいい(笑) 片岡氏は映画と並行して小説も発表されていて、特に近作の2冊『ひとでちゃんに殺される』(ホラー)と『その殺人、本格ミステリに仕立てます』(本格ミステリ)はなかなか力が入っていて唸らされました。『ひとでちゃん~』には『この子は邪悪』に共通するアイデアもあって合わせて読むと面白いかと。

 

☆『ブレット・トレイン』

伊坂幸太郎のノワール小説を『デッドプール2』の監督が映画化。ハリウッド製作なもので、登場人物がみんな外国人に置き換えられたりしてます。予告から漂うお茶らけたムードからも、かなり原作からかけ離れてそうなことがうかがえますが、自分未読なんでもしかしたらそれなりに忠実なのかも…?

とある任務をピンチヒッターで引き受けた殺し屋が、ミッション遂行のために新幹線に乗り込むもアクシデントの連続で降りるに降りられず、終点の京都まで旅行する羽目になる…というストーリー。珍妙な殺し屋たちが次から次へと登場するのですが、そういったたくさんのキャラの「交通整理」が実に見事でした。

自分が特に興が乗ったのはあまり向こうの映画には出てこない東海道新幹線の駅名が色々出てきたことですね。この辺実際に旅行したことがあるので。地元の静岡は横に長いので中盤けっこう時間を割いてもらって地味に嬉しかったです。そして北陸本線に乗り換える時利用した米原駅も登場。地元の人には申し訳ないのですが、この駅、新幹線の駅なのに本当に周りにほとんど何もないんですよね。その寂しさが上手に再現されてて笑いました。

 

☆『HiGH&LOW THE WORST X 』

「ハイロー」シリーズ最新作にしてコミック『WORST』とのコラボ第二弾。鬼邪高校に現れた新星・花岡楓士雄と仲間たちの新たな戦いが描かれます。前作からちょびっとしか経ってない設定のようですが、現実世界では3年くらい月日が流れてるのでその辺のギャップに少し戸惑いました。

自分はやっぱり主人公のフジオちゃんがお気に入りですかね。バカで能天気なんだけどケンカは鬼のように強いし締めるところはきちっと締める。今回はいつの間にやら鬼邪高のリーダーになってたみたいで、自分一人のことだけ考えていればいい、というわけにはいかず悩んだりもしてました。あとわたし最近「職長・安全衛生責任者」という資格の講習に行ってきたのですが、あらためてハイローの山場のバトルって工事現場でやっちゃいけない事例のオンパレードだな、と感じました。たぶん撮影現場ではちゃんと安全対策が取られているとは思いますが。現場猫たちが泣いちゃうことがありませんように。

ケンカの合間にみんなで放課後にプールサイドで焼きそば作って食べてるシーンとか特に好きです。青春ですよね。

 

今年も残りあと40日ほど… 10月は『ロード・オブ・ザ・リング』などのリバイバルばかり観てたのでたぶん次はそれを書きます。

 

 

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October 30, 2022

『鎌倉殿の13人』を雑に振り返る⑩ 10月編

第38回「時を継ぐ者」

鎌倉で更なる権力を得るため、実朝に退位を迫る時政。だがそれは最初から失敗することを覚悟しての、自滅的な行動だった。

タイトル元ネタはJ・P・ホーガンの『星を継ぐもの』からでしょうか。牧氏の変、というか時政パッパ退場編の後編。なぜそれなりに分別もある時政が妻に煽られるままに暴走したのか…というのは不思議なところですが、Twitterでどなたかが「我々の世代は宮沢りえにお願いされたら絶対に断れない刷り込みのようなものがある」ということを申されていて納得いたしました。

北条時政という人は「風格のある老獪な戦国武将」に近い…それこそ武田信玄みたいな…イメージだったのですが、このドラマを見てからは「やる時はやるけど、作物を愛する気のいい田舎のおっちゃん」という風に変わりました。

なぜ最後まで自分のそばにいてくれないのか、涙ながらに父に詰め寄る義時。もしかしてこれが彼の流す最後の涙だったりして。いよいよ権力の頂点に上り詰め、腹の底から真っ黒黒スケになってしまいました。『ゴッドファーザー』のマイケルそのものでございます。:

この回のまず使わない日本語:「羽林」 やっぱ「武衛」の方がかっこいい

 

☆スペシャルトークショー

残り10回の最終章突入の前に突然放映されたトークショー。飽くことない権謀術数の連打に疲れていた視聴者にちょうどよい癒しとなりました。

まあやはり一番印象に残ったのは大泉洋氏の「日本国民全員の『全部あいつのせい』を僕が受け止める」発言でしょうか。本当に劇中の頼朝そのものでイラっと来ました(笑) スタジオでも概ねそんな反応。ただやっぱり彼の退場と共にお話の陰残さがどんどん増してきたことを考えると、貴重なキャラだったんだなあ…と認めざるを得ません。

あと胸に迫ったのはこれまで退場していった多くの方たちのまとめムービー。中には「死んだ」とも言われずいつの間にか消えてた土肥実平みたいな人も… もっと扱いがひどいのはムービーにすら出てこなかった文覚とかですね。

三谷さんからラストの脚本を頂いて震えあがったという小栗・小池のお二方。ガイドブックには詳しく描かれてなかったですけど、果たしてどんな結末なのか。アガサ・クリスティの某名作からヒントを得たとのことですが…

 

第39回「穏やかな一日」

牧氏の変の後から和田合戦の間の1207~1212年あたりの出来事を、さらっと一日に編集したエピソード…ということを冒頭で説明する実体長澤まさみ。あなたは一体誰なんですか!?

それはともかくこの回は義時よりも将軍実朝のデリケートな心情を細やかに描いた内容となっておりました。勘のいい方は先のおばばとの面談でお気づきになっていたようですが、このドラマでは実朝はやはり同性愛者だった…と捉えているようです。ただその意中の相手が泰時だったとは意外でした。女子からは「朴念仁で面白みがない」と言われる泰時ですが、一体彼のどこに惹かれたのか。やっぱり顔が坂口健太郎だからか。ノンケの気持ちのいいやつに恋してしまって苦しむという話、最近吉田秋生先生の『詩歌川百景』でも読みました。

オリキャラなのか実在の人物なのか不明だった鶴丸は、この回で「平盛綱」だったことが判明。彼と泰時主従は見ていて微笑ましいですね。あと「殺しときゃよかった」と言った直後に「父上にうまいもんでももってってやれ」と言う義時はかなり屈折してます。

この回の重要なアイテム:間違えて渡した…ということだったけど本当は間違いじゃなかった恋の歌

 

第40回「罠と罠」

1213年。鎌倉ではトップに立った義時の専横を苦々しく思う御家人たちが、歴戦の勇士である和田義盛の元に集まるようになっていた。義盛自身は何の野心も抱いていなかったが、その勢力を無視できなくなった義時は和田の一党を滅ぼすことを画策する。

どうですこの粗筋。どう読んでも悪役としか思えない人物が大河ドラマの主人公なんだからすごいとしか言いようがありません。

幕府草創期最大の内紛と言われる「和田合戦」への過程を描いたエピソード。今まで愛すべき多くの人たちを見送ってきましたが、今度はとうとう和田さんまで… 何とか助かってほしい… まあもう検索しちゃってどうなるかわかってるんですけど。

そんな重苦しいムードに和田さんの女装という強烈なギャグをぶっこむ三谷脚本。あわや成功するかと思いきややっぱり悲劇に向かってしまうのがこのドラマのセオリーです。

ただ義時も心の底では和田さんが好き…というところを指摘されて肯定してしまうところは切ない。自分の中に望んでいる正反対のことがある。でも鎌倉を守るために誰かを犠牲にする方を選んでしまうわけですね。修羅の道であります。

この回のそれなりに重要なアイテム:あんまり意味なさそうな女物の上っ張り

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October 16, 2022

2022年8月に観た映画

今年もあと二か月半で終わりとか本当に恐ろしいことでございます。とりあえずまたしても今頃ではありますが、夏の盛りに見た映画について覚え書くとします。

☆『劇場版 Gのレコンギスタ』

放映時見そびれてた富野由悠季監督の最新作が、劇場版5部作が完結するころになって盛り上がってきたので慌てて1~3部をアマゾンプライムで予習、4・5部を映画館で観てきました。

富野監督というとやはりガンダム・イデオン中心の重厚なイメージで語られることが多い方ですが、『ザブングル』『ダイターン3』のような力の抜けた元気いっぱいの作品も作れる人。この『Gレコ』はそこまでくだけちゃいないけど、「重富野」と「軽富野」の中間くらいのムードになっておりました。かつてにくらべると丸くなったな…という印象がある反面、若かった時の「元気」は衰えていないようで頼もしい限りです。

今までのガンダムもそうなんですが、こういう近未来SFというのは異なる二つの勢力の争う単純な構図になりがちなもの。しかし『Gレコ』では主に4つの国家が登場し、それぞれに和平派と好戦派がいたりします。各勢力から和平を望む者たちが寄り集まり、その集団が戦いを収束させていく流れが面白かったです。独特なセンスで描かれた宇宙建造物も見応えがありました。

 

☆『三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち

マイBESTコミックである『風雲児たち』で最も好きなパート「大黒屋光太夫」編を、同作のファンである名脚本家三谷幸喜氏が歌舞伎化。それをさらに「シネマ歌舞伎」として映画館用にアレンジした作品。

まあこれ当たり前のことなのかもしれませんが、原作の大事なところはおさえつつも、漫画の忠実な舞台化というよりは、これはこれでひとつの「三谷幸喜作品」になっておりました。代表的な漂流民のキャラクターも微妙に性格が違ってたりしてて。あと歌舞伎というより新劇に近い印象。

現在放送中の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』といっぱいかぶっていたのが楽しかったです。やはり三谷さんの歴史劇って「みなもと太郎メソッド」をお手本にして作られてるんだな…と改めて思いました。少し前亡くなられたみなもと先生の絵が、冒頭でスクリーンいっぱいに動いていたのにも感動しました。

 

☆『ソニック・ザ・ムービー ソニックVSナックルズ』

コロナ禍でありながら早くも続編を作ってきた『ソニック ザ・ムービー』の2作目。はっきり言うと「今回も面白かった」くらいしか感想が浮かんでこないという… それでもひねり出してみると

・『鎌倉殿の13人』で活躍中だったイケメン・中川大志君の吹替がめっちゃうまい

・なぜ宇宙からやってくるエイリアンがそろいもそろってモフモフの可愛い動物なのか(可愛いからゆるす)

・ロシアでのダンスバトルが楽しかったが今の情勢を思うと悲しい。

あと今夏観たキッズムービー三作品、クライマックスがなぜかみな怪獣映画でした。『ゴジラVSコング』ヒットの影響でしょうか。

 

☆『バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー』

フランス発のアメコミヒーローパロディ映画。さえない俳優が主役に抜擢された作品『バッドマン』撮影中に事故にあい、自分を本物のバッドマンだと思い込んでしまうお話。ポスターはアベンジャーズ風ですが、どっちかというと中心になってるのはバットマン。ただ一応マーベルのネタも色々入ってます。

監督が海外版『シティハンター』の人ゆえか、恐ろしく下ネタが多く、そういうのあまり気にしない私でさえ「これどっかから叩かれないだろうか」と心配になりました。今やアメリカよりも欧州の方が下ネタに寛容なのでしょうか。なんとか料金分くらいは楽しみましたが、これスクリーンよりうちで寝っ転がって観た方が楽しいかも。

 

☆『DC がんばれ!スーパーペット』

DCの数あるキャラクターの中でも、まず映画化されなさそうなスーパーヒーローたちのペット、特にスーパーマンの飼い犬「クリプト」にスポットをあてた物語。一発ネタ的映画かと思いきや、これがなかなか人間関係における重要な教訓が含まれていて深い内容となっておりました。例えば一人の友達にべったり依存しすぎちゃいけない、他にも等しく親しい友人を何人か作っておいた方がいい…とか。実際にすんなりそうできたらなんも苦労はないわけですが。

他にもクリプトのよき理解者となるバット犬エースの悲しい過去とか、モルカーをほうふつとさせる珍妙スーパーモルモット軍団とか、クリプト決死の最終奥義とか、動物たちの見どころがあまりに多く、本来なら一番目立ちそうなジャスティスリーグの面々がちゃんと脇固めになってるところがなかなかすごい。

自分的には年間ベストの一本に入るくらいお気に入りの作品となりましたが、日本では壮絶にぶっこけてしまったのが悲しい。本国ではきちんと売れてるようなのがせめてもの救いです。

 

次回は9月に観た『NOPE』『この子は邪悪』『ブレット・トレイン』『ハイ&ロー ザ・ワーストX』などについて書きます

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October 02, 2022

『鎌倉殿の13人』を雑に振り返る⑨9月編

第34回「理想の結婚」

後味の悪い頼家暗殺の後、鎌倉は実朝を中心とした体制を一層強いものとしていく。さすがに自分の罪の重さに落ち込んでいた義時だったが、影の薄さナンバー1だった13人の一人二階堂行政から孫娘を嫁にとすすめられ、年甲斐もなく(地味に)浮かれ出す。

タイトル元は『最高の離婚』でしょうか。たぶんまだ1204年ごろのお話。陰残な内ゲバがず――――――っと続いていて疲れ切った視聴者たちに、オアシスのように訪れた息抜き回。「義時最後の妻」である「のえ」さん、清純派であまり菊地凛子っぽくないなあと思っていたら終了間際にやらかしてくれたというか笑わせてくれたというか。これをもって義時の「おなごはキノコが好き」説は完全に誤りであったことが証明された感。

この回は実朝を鍛えるべく各御家人たちが各々得意分野を代わる代わる教授するシーンも楽しかったですね。義村の「おなごとのあとくされの無い別れ方」講座はいらない、というか無い方がいいと思います。

この回の重要なアイテム:何度目かの山盛りキノコ ナベになった鹿之助

 

第35回「苦い盃」

実朝がまだ若いため、実質鎌倉のトップに立っているのは執権・北条時政。だが基本は田舎のおっさんなので、その治めっぷりは情に流されやすくいい加減な采配も多い。そこへ来て妻のりくに煽られて、さらなる領地拡大を狙い始める。そのことが発端で、婿であり同胞である畠山重忠との間柄に亀裂が入っていく。

前回に引き続き笑える場面も多いのですけど、それと並行して畠山さん退場の前奏曲が奏でられていくのがつらい回。引き続き、といえばいまひとつ掴みどころのなかった実朝君はアットホームな和田邸で鹿鍋をいただいてから、どんどん彼と奥さんになついていきます。その様子が大変微笑ましいのですけど、不在の間に御所は大騒ぎになってしまい、こいつら絶対あとですげえ怒られるぞ…とハラハラしました。

そして抜き打ち的に出てきた謎の老婆=大竹しのぶ。悩める実朝君に「お前の悩みはお前だけのものではない」と、見かけとは裏腹にとてもいいアドバイスを送ります。それを聞いてさめざめと泣く実朝君。なんていい子なんでしょう。前二代がアレすぎたというのもありますが、この子は一体誰に似たのでしょう。

この回の重要な教訓:よくわからない書類にハンコは押さない 雪の日は出歩かない たまには風呂に入る

 

第36回「武士の鑑」

悪妻に煽られまくった時政パパはとうとう重忠を陥れることに成功。ここに「畠山重忠の乱」が勃発。ただ重忠は軍勢を集めることはせず、恭順もせず、少数の兵で武士の誇りを守ることで歴史に名を残そうとする。

1205年の出来事。この回はもう畠山重忠&中川大志君の独壇場でありました。顔もいい、頭も切れる、武芸も達者となればちょっと嫌味なキャラになりそうですが、おごるところは少しもなく、質実剛健を地で行く畠山殿にただただ感服し、泣かされた回でありました。まだ若いのに貫禄たっぷりにそれを演じきった中川君がまたすごい。

また、悲痛なエピソードに笑いを添えてくれた和田さんとのあれこれも印象深かったです。「あいつとは同じものを感じるのです」とか「なんでわかったんだ!」とか「腕相撲で決めよう」とか。この「美男と野獣」コンビも見納めと思うと寂しい限りでした。クライマックスにおける小四郎との『クローズ ZERO』みたいなヤンキーバトルも迫力ありましたね。

結局なんでいるのかわからないままに足立遠元氏もこの回でフェードアウト。「13人」も残り7人となりました。

この回の重要なアイテム:重忠と和田さんの別れの水杯

 

第37回「オンベレブンンビンバ」

時政の悪政により無実の罪で討たれた重忠。鎌倉でさらなる悲劇が起こらないようにするため、政子と義時は父と戦う決意を固める。両者の激突は必至…かと思われたが、なぜか時政は酒と魚持参で一人政子たちの元を訪れる。そして北条親子の最後の宴が始まる。

突然の謎タイトル。ネットでは「イタリア語で『子供のための影』の意味では」という考察が流れてましたが、単に大姫の呪文「オンタラクソワカ」を適当に覚えていた、ということでした。誰もちゃんと覚えていなくて放送禁止すれすれのワードまで飛び出して来ましたが、そのあまりの和やかさに「毎回こういうのでいいんだよ! もう史実も無視していいから!!(駄目です)」と思わずにはいられませんでした。

時政さんも色々ひどいことやってんですけど、「もうこここまでかな」と悟ったような笑顔を見せられると坂東彌十郎さんの人柄もあってか、速攻で許したくなってしまうのがずるいですね。和田さんが結果的に上総広常の思い出話をしてたのにも和みました。

この回の重要でもないアイテム。トキューサがモチモチモチモチしてた餅

 

先ごろ「全48回」という発表がありましたので、『鎌倉殿』もあと残り11回。早くも寂しくなってきました…

 

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September 04, 2022

『鎌倉殿の13人』を雑に振り返る⑧8月編

第30回「全成の確率」

この題は『寄生獣 セイの格率』からでしょうか… 頼家をプチ呪いしていた証拠が見つかってしまった全成は、死罪こそ免れるが常陸の国に流される。事態は収拾したかに見えたが、比企と頼家の軋轢が原因で彼はさらに追い込まれることに。

1203年のお話。数ある頼朝ブラザーズの中でも最もうさんくさく、そして最後の一人となってしまった全成の退場回。「大した能力はない」と自ら認めていた彼ですが、今わの際の大一番で見事な暴風雨を呼び起こしてくれました。これ、日蓮上人が処刑されそうになった時、異様な光がひらめいたとかいう伝説を意識してたのかな。ともかく貴重なお笑い要員がまた一人減ってしまいました。『七人の侍』の「笑わせてくれるやつがいなくなるといよいよ厳しい」みたいな言葉が思い出されます。実際の全成さんはもっと豪放磊落な人物で、頼家に睨まれたのも呪ったからではなく堂々と逆らったから…ということのようですが。

比企能員を追い詰めるべく謀略を巡らすものの、いるべき場所に頼家はおらず豪快に空振りしてしまう義時。思わずテレビの前で「かっこわり~~~」とつぶやいてしまいました。

この回の重要な教訓:見つかったらまずいものを回収する時はしっかり数を確認するべき

この回の久しぶりに聞いたフレーズ:臨兵闘者開陣列在前

 

第31回「諦めの悪い男」

突如として病に倒れ、重篤となってしまった頼家。息を吹き返す見込みは乏しく、その死後鎌倉を動かしていくのは北条か比企か。二つの一族はとうとう全面対決に突入する。

引き続き1203年のお話。まあこの回は佐藤二朗さんのほぼ独断場でですね。彼は「僕はこの前の回で見せ場は終わったと思ったんだけど、小栗君や坂東さんがさらなる高みにひきあげてくれた」というようなことをおっしゃってました。そう、時政演じる坂東彌十郎氏との「これから殺し合うことがわかってるのに、和みながら語り合う」シーンは『鎌倉殿』屈指の名場面でした。 正直数回前から「はよ〇ね」と思っていた比企殿ですが、亡くなってしまうとそれはそれで寂しくなってしまうのがこのドラマの不思議なところです。あの独特な「こしろう~」という口調をついつい真似して寂しさを紛らわせています。

この回はお盆でこっちに来ていた姪っ子と観ていたのですが、クライマックスの鬼気迫る暗殺シーンで姪ちゃんはひたすら無言で顔をひきつらせてました。NHK&三谷さん、もっと子供の情操のこともかんが…いや、いいです。

この回の使ってみたいフレーズ:「手段を選ばねえのが坂東武者よ! 名前に傷がつくくらい屁でもねえ!」

 

 

第32回「災いの種」

九死に一生を得て息を吹き返してしまった頼家。彼の妻や舅を殺してしまった北条の面々は頭を抱える。なんとかごまかそうと悪あがきを試みるが、結局母の政子が真相を伝えることに。

いや、世の中こういうこともあるのですね… 一時は「ダメだこいつ」と思ってた頼家君ですが、この回は気の毒で気の毒で気の毒でなりませんでした。他にもしみじみと悲しいエピソードがバンバン連発された回。義時のためを思い自ら離れていく比奈、息子に拒絶される政子、将軍職を追われ泣き崩れる頼家、そして意外や意外、一幡を殺せと言われ動揺する善児… 本当に大河の主人公が「後々禍根になるから」と子供を殺そうとするってどんだけ容赦ないんですか。視聴者にわずかな逃げ場所すら用意してくれません。

この回の重要なアイテム:兄の形見のヒスイ玉だったかなんだか。時房くんが「兄上~」と必死に語り掛けてたのに義時は自分の兄のことを考えてたのは貴重なお笑いシーン

 

 

第33回「修善寺」

修善寺追われた頼家に代わり、鎌倉では頼朝の次男・実朝が新たなる将軍となった。しかし当然頼家がそれで納得するわけはなく、流された地で現政権への陰謀を練り続ける。一時は静観していた義時だが、とうとうそのままにはしておけない事態となり…

1204年のお話。悲運の将軍・頼家の末路が粛々と描かれていきます。が、びっくりしたのは超絶アサシン・善児もこの回で最期を迎えたこと。それも弟子であったトウの手によって。三谷さんはトウ役の女優さんに「『火の鳥』って読んだことある?」と尋ねたそうですが、このコンビ「黎明編」のナギと猿田彦を意識してたのかなあ。あちらはラストは親子の絆で結ばれたのですが。

頂点を極めた男と、時代の影に隠れ続けた者の壮絶な死。この回の放送が終わった時はしばし呆然としてしまいました。本当にわたしはなんでこんなしんどいドラマをしんどい思いして夢中で観てるんでしょうね。自分で自分がよくわからなくなってきました。

悲劇の地として記憶に刻まれてしまった修善寺ですが、現在は自転車競技が盛んでサイクルスポーツセンターという遊園地もあります。

この回の重要なアイテム:猿楽のお面とか哀しみの干しアワビとか

 

『鎌倉殿』も残り1/3。なんとか耐えてラストまで見届けたいです。

 

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