2026年7月に観た映画
☆『ロングウォーク』
ひとつ前の記事で原作の感想を書いた、キング初期の名作の映画化。映像で観ると雄大で美しい北米の風景と、それをバックに定期的に行われる銃殺刑のむごたらしさのコントラストが際立ちます。
原作は恐らくベトナム徴兵を意識して書かれたと思うのですが、今回の劇場版は最近世界で進みつつある国家間の分断や右傾化を危惧して作られたのでは。終盤は小説とはかなり異なる展開となっております。そうしたら自分の命を犠牲にするとわかりながら、お互いが勝利を譲り合おうとする二人の姿に鼻水が止まらなくなりました。原作とどちらが優れてるということはなく、両方とも深い印象を残します。キングも感銘を受けたからこそこの脚本にGOを出したのでしょう。
下半期入って早々の本年度ベストの1本。ゴールを決めて誰一人脱落することなく全員生還する「ロングウォーク・オフ会」やりたい。30キロくらいで希望
☆『THE ORIGIN OF ULTRAMAN』
初代『ウルトラマン』に関わったスタッフや、リスペクトしているクリエイターたちのインタビューを集めたドキュメンタリー。びっくりするのが、おおよそ特撮ヒーローとは遠いところにいそうな是枝裕和氏が監督を務めている点。ただ是枝作品にどういう影響を与えているかとかはあまり語られてなかったような。あと意外なところでは『ドライブ』などで知られるデンマークのアート系作家ニコラス・ウィンディング・レフンも登場してたり。ウルトラマンの造形へのねっとりした性癖を語るところで、やっぱこの人変わってるなあ、と思ったり。
逆にやっぱり出て来たか…となったのは『パシフィック・リム』他のギレルモ・デル・トロ氏。レフンもトロもそんなに熱く語るのであればウルトラマンの新作撮ってくださいよー
☆『トイストーリー5』
トイストーリーは1作目からリアルタイムで追い続け、世評芳しくない「4」も評価している自分ですが、今回はほとんど心に響きませんでした。なぜだろう… もう心が大人になっちまったってことなのかな… でも(残念ながら)たぶんそれはない。
理由のひとつはこのシリーズは作品ごとにスケールのでかい息を呑むようなアクションがあるんですが、今回はいまひとつ小ぢんまりしてたような。背景美術も目を引くワクワクさせてくれるものが乏しかった。
新時代の申し子であるタブレットを題材にするあたりはさすが外れなしのアンドリュー・スタントン…と観る前は思ってたのに、不思議なものです。シリーズおなじみの個性豊かな新キャラには笑わせてもらったし、クライマックスで披露される新バージョンのバズのギミックには興奮しましたが、そこくらいしか記憶にひっかかってない。でも日米共にまたしても超大ヒットとなっております。かつての子どもたちが同窓会的に懐かしい面々に再会して喜んでるのであれば、もうそれはそれでいいかなーと。
☆『鬼平犯科帳 本所の銕/密告』
時代劇専門チャンネルで作られている新体制での『鬼平犯科帳』。一昨年に1作目が公開され、その後もCSで定期的に新作が放映されてるようです。今回は特別にその1本が劇場で先行公開されました。母はなぜ盗賊である息子の企てを密告したのか…という謎が、荒れていた鬼平の青春時代の記憶から明らかになっていくという内容。
性格の異なる二つの役を『ゼンカイジャー』『ドンブラザーズ』の駒木根葵汰君が好演。中村吉右衛門版では「兎の忠吾」を演じていた尾身としのり氏が、今回は「彦十」役で出演していて「(兎忠を)他人とは思えないんだよな~」と言うあたりでニヤリとさせられました。
前回もおまさ役を演じていた中村ゆりさんは変わらずの美しさでしたが、この映画が公開されてほどなくして突然の訃報が。梶芽衣子とはまた異なる魅力を放っていただけにまたその姿を見たかった。しんみり。
☆『キングダム 魂の決戦』
王騎の死で一区切りついたかな…という感じだった劇場版『キングダム』ですが、興行がどんどん上向きになっているせいか、新作が出来てしまいました。原作の中規模のエピソードをすっ飛ばして、秦の歴史的にもターニングポイントとなる「合従軍」との戦いが描かれます。
今回キーパーソンとなる「万極」は原作ではもっと不気味で妖怪っぽいデザインでそんなに重要ではないポジションでしたが、山田裕樹君が演じることによって外見もアクションも華やかなキャラとなっておりました。前から山田氏をこのキャラで起用してたということは、やっぱり5作目以降も計画してたということなのか。そして案の定これ1本で「合従軍編」は収まらず、えらい中途半端なところで「つづく」となります。
偶然にも一緒に観た『ちいかわ』と「憎しみの連鎖を止めるのってたやすいことではないよね…」というテーマが共通していたり。で↓
☆『ちいかわ 人魚の島の秘密』
恐らく今年度興行第1位になりそうな大人気コミックの映画化。「いかにも狙いすましたようなかわいいキャラで荒稼ぎしやがって! ケッ!」とか思ってた自分がまさかはまってしまったのがこの「島編」からでした。連載時の感想↓
「暗黒版『ガンバの冒険』とも言うべき」「愛憎の連鎖の果てに匂わされる永遠の哀しみと不思議な安らぎ。このエピソードに限っては文芸作品といっても過言ではない完成度でございました」 そう、映画版のエピソードって通常時の『ちいかわ』とは違ってやや波乱万丈で深刻なムードなんですよね。その中にあってもふんどし一丁のおじさんが出てきたり「しるこサンド」が重要な小道具だったりする珍妙なセンスは健在ですが。
一応子供向けの映画でありながら、今年観た中でも鑑賞中最もビールを飲みたくなった映画でもありました(問題)。あとこれは原作からの流れではありますが、普通なら一つ一つ顔を描き込まれるであろう島民を一色塗りののっぺらぼうで押し通したのはこの種のアニメ映画にしては異色であります。
原作ではラスト薄めに描かれてたセイレーンがけっこうはっきり出てたあたり、全国の子どもたちにしっかりとしたトラウマが植え付けられたのでは… やったね!!
いま日本は『ちいかわ』に支配されかかってるので、この流れに染まらない人も必要だと思います。ただ自分はもうダメです。あとを頼みます。
次回は『スパイダーマン ブラン・ニュー・デイ』のみで久しぶりに1本書きたい… できるかな… その後『オークストリートの異変』『ミニオンズ&モンスターズ』『きれっぱしの愛』『まどかマギカ ワルプルギスの廻天』『ラスト・サバイバー』についてまとめて。


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