September 17, 2019

カメを落とすな! 上田慎一郎・浅沼直也・中泉裕矢 『イソップの思うツボ』

昨年邦画界に一大ブームを巻き起こした『カメラを止めるな!』。その立役者である上田慎一郎監督が、二人のクリエイターと共に「三人監督体制」で挑んだのが本作品。『イソップの思うツボ』、ご紹介いたします。

平凡な家庭の地味な女子大生、亀田美羽。タレント一家の一人娘で自身もアイドルの兎草早織。父親を手伝って「復讐代行業」を生業としている戌井小袖。性格も環境もバラバラの三人の少女の運命は、ある「事件」をきっかけに複雑にからみあっていく。

落ちてくる動物、徐々に明かされる相関関係。とりあえず観終わって最初に抱いた感想は「P・T・アンダーソンの『マグノリア』みたいなものがやりたかったのかな?」というものでした。

よかった点から申しますと、まず主演の女の子たちがみなそれぞれに魅力的でありました。またとにかく「意外性」を重視して作られているので、幾つかの場面ではけっこうビックリさせられました。問題はその意外性を優先するあまりか、「それ、さすがにおかしくないか?」という点もちょこちょこあるところですね… 傍でいうのは簡単ですけど、その辺の不自然さをカバーするためにもっと脚本を練り練りする必要があったのでは。ただ公式サイトを見ますと「構想3年」とあるのでこれが限界だったのか… 『カメラを止めるな!』があまりに自然で見事な脚本だったので、いかんと思いつつ、ついつい比べてしまうのでした。あと自分がわりとがっかりしたのは、ポスターでうなだれてる三人の着ぐるみがどんな風に活躍するのかな…と期待していたら全く出てこなかったことですねw

まあブレイク作の直後の作品というのは厳しいですよね。どうしたって前作と比べられてしまう(お前が言うか)。でも『アンブレイカブル』でがっかりされたシャマランや、『ゲーム』でぼろくそに言われたフィンチャーがその後リベンジを果たしたように、上田監督も捲土重来をいつか果たしてほしいものです。というか本来の彼の正念場となるのは単独作『スペシャルアクターズ』(来月公開)の方でしょうか。そちらももちろん拝見します~

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September 12, 2019

ジャングル大帝ブック ジョン・ファブロー 『ライオン・キング』

 

ここのところ矢継ぎ早に過去の名作の実写化を連発してくるディズニースタジオ。この度はその最新作で劇団四季のミュージカルでも名高い『ライオン・キング』をご紹介します。

雄大な自然に恵まれたアフリカの大地。サバンナを治めるライオン・ムファサの息子として生まれたシンバは、両親の暖かい愛情のもとすくすくと育ち、自分もいつか父親のような立派な王になることを志す。だがその影で、王位継承に敗れたムファサの弟スカーは、権力を奪うべく姑息な策略を巡らしていた。

1990年代、「ディズニールネサンス」と言われた時代がありました。低迷していたディズニースタジオが『リトル・マーメイド』を皮切りにヒット作を連発し、手描きアニメの黄金時代を築いた期間のことです。特に『美女と野獣』と『アラジン』は日本でも一大ブームを巻き起こしました。『ライオン・キング』もそれに大いに貢献した1本です。

ただこの作品、わが国では「『ジャ○グル大帝』のパクリでは?」ということもよく言われています。でも『ジャン○ル~』の方は人間もバンバン出てきますし、王族争いとかもないので、仮にインスパイアを受けてるとしたらキャラクター造形などでしょう(マントヒヒは長老でハイエナは悪党だとか)。代わりに監督が原作としてあげたのがあの『ハムレット』。なるほど、『ハムレット』から暗い要素を大体抜き去ったらこんな風になる…かな?(それはもう『ハムレット』じゃない気もしますが…)。少し前おじさんと甥っ子が王位をめぐって激突する映画が何本かありましたが、あれらは『ライオン・キング』を経由した『ハムレット』の子孫なのかもしれません。

さて、この度の新作、ある一場面を除いては動物も背景もすべてCGで作られております。こうなるともはや「実写」というよりCGアニメに近い気がします。でも見た目は全然実写だしなあ… 公式でもそれを逆手にとって「超実写」なんて言っております。本当にCGの進化もいくところまでいってしまった感がありますね。

一方でかつての名作を次々と「実写化」していく流れには批判もあるようです。すでに完成されてるものをそのままそっくりリメイクするのに何の意味があるのか?という意見ですね。ただ自分は正直むかしのディズニーの画風がそんなに好きではなかったので、アニメの方は劇場ではスルーしちゃってたんですよね。今回は実写と見まがうほどにモフモフ感満載だったので張り切って映画館にいきました。そしたら自分だけかもしれませんが、はしゃいだりいきったりするシンバ君が十代くらいの男の子と重なって見えてきたりしたのでした。擬人化したイメージが下の落書きです(友人にみせたら「80年代感ただよう」と言われました)。

あと他のキャラクターではシンバの友人となるイボイノシシとミーアキャットの痛快なコンビや、悪役のスカーさんもおきにいりです。スカーさん、二年前に亡くなった飼い猫のモンさんとよれよれ具合が非常にそっくりだったもんですから… 好きな曲である「ライオンは寝ている」がけっこう長々とかかっていたのも高ポイントでした。

それにしても90年代手描きアニメでブイブイいわしていたディズニーが、00年代に入ってCGでしかアニメを作らなくなり、10年代ではかつての名作アニメをどんどん「実写化」していく流れにはあまりの移り変わりのはやさに呆然といたします。「あまり好きじゃなかった」身で言うのもなんですが、たまにでいいから手描きアニメの方も伝統をひきつぐために復活してほしいものです。欧州ではぽつぽつと個性豊かな手描きアニメが色々生まれておりますけど。

「あんまり日本ではあたらないだろう」というわたしの予想を覆して、『ライオン・キング』は現在50億越えのヒットを達成。まだ伸びそうです。劇団四季のミュージカルが浸透していたせいでしょうか。そんなわけで公開もまだ続きそうなので、モフモフや猫が好きな人はぜひごらんください。 

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September 10, 2019

ベストマッチじゃないやつら デビッド・リーチ 『ワイルドスピード/スーパーコンボ』

もうじき公開終わりそうな映画紹介第二弾です。世界的人気シリーズ初のスピンオフにして、スーパー筋肉スター二人の共演作。『ワイルドスピード/スーパーコンボ』紹介します。

凄腕のドライバー・ドミニクと関わったことで、知り合うことになったホブスとショウ。だが熱血漢の捜査官とクールなアウトローでは当然ソリがあうこともなく、お互いを蛇蝎のごとく忌み嫌っていた。そんな折MI6に属していたショウの妹が、任務の途中細菌兵器を奪って逃走したという知らせが入る。彼女を確保するよう協力してことにあたってほしいとCIAに依頼されたホブスとショウだったが、二人の返事は「誰がこんなやつと!!」だった…

元はと言えばヴィン・ディーゼルとポール・ウォ―カ―のバディものとしてスタートした本シリーズ。しかし一通り迷走したのちは、コンビというよりどんどん「ファミリーもの」としての要素が強まっていきます。本作はスピンオフとなってはおりますが、そういう意味ではシリーズの原点に立ち返ったと言えるでしょう。というかどっちかといえば2作目や3作目の方が番外編っぽいような… まあ細かいことを言うのはやめましょう。

番外編っぽいといえば監督が『デッドプール2』の人のせいか、本家よりかなりお笑いムードが濃かったです。特にお互いをあげつらうロック様とステイサムの悪口合戦には腹を抱えて笑わかされました。あとやたらアメリカのサブカルに関してのネタが多かったですね。わたしまだゲーム・オブ・スローンズ半分しか見てないのに思いっきりネタバレを食らわされたような… まあ「誰それが死ぬ」というバレではなかったので許容範囲です。

筋肉スター2人に立ち向かうのは、最近だと『ダークタワー』(…)の活躍が記憶に新しいイドリス・エルバさん。彼も十分にかっこいい上に仮面ライダーなみの改造手術を受けてるという設定なんですけど、やっぱりホブス&ショウに本気で勝とうと思うならパシリムのイェーガ―くらい持ってこなきゃいかんと思います。それはさすがにワイスピから逸脱しすぎでは…という気もしますが、どんどん枠からはみ出していくのがこのシリーズのウリなのでアリです。

ホブスの故郷のサモアの風景も心やわらぐ本作品。というかサモアってなんか服装とか建築が沖縄に似てますね。そこのおばあちゃんがだんだん平良とみさんに見えてきたりしました。

正直一番ツボにはまったのは序盤のコンビの対比平行映像だったのですが、その後も普通に面白かったです。クライマックスではちゃんとワイスピ特有の無茶カーアクションもありましたし。キャラは減りましたけどシリーズの名に恥じないトンデモ映画でありました。

『ワイルドスピード/スーパーコンボ』はしっかり世界で製作費の3.5倍を稼ぎ、彼らだけの続編もすでに決まっているとか。本家の方も来年春に新作の公開が予定されています。ヴィン・ディーゼル派とロック様派での不仲の噂も伝えられてますが、ファミリー映画なんだから仲良くやってほしいものですね!

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September 04, 2019

苦衷戦艦ヤマト 三田紀房・山崎貴 『アルキメデスの大戦』

当初はスルー予定だったのですが、ネットでの好評を見ているうちに「そういやオレ山崎監督好きだったっけ…」ということを思い出しました。『アルキメデスの大戦』、ご紹介します。

日本が世界から孤立しつつあった昭和初期。海軍では空母建造を推し進める山本五十六派と、巨大戦艦にこだわる平山派が対立していた。平山派の意見が通っては諸外国にますます警戒心を抱かせると考えた山本は、戦艦の建造費があまりに安いことに目をつけ、数学の天才である若者・櫂直(かい ただし)にその不備を見つけるよう依頼する。軍を嫌う櫂は最初それを断るが、日本が戦火に巻き込まれることを憂い、結局は協力を受け入れることに…

この映画はいきなり壮絶な「大和」の沈没シーンから始まります。『スペース・バトルシップ ヤマト』(これも好きでしたがー)とは打って変わった迫真のリアリティに息を呑みました。これ、言ってみれば一番派手なシーンを一番最初に持って来るという大博打をやらかしているわけです。しかし普通なら尻すぼみにになるところを、キャラクターの魅力と巧みなストーリーテーリングで乗り切っておりました。

やはりまず惹きつけられるのは菅田正暉君演じる櫂直の変人ぶり(笑) 眉目秀麗で頭も切れるのに、世渡り下手で「美しいものは計測しないと気が済まないののだ~」と目を付けたモノに片っ端からメジャーを当てる。そして周りがそれをいぶかしんでるとそっちの方を変人扱いする。またクールを装いながら実のところ情を捨てきれなかったり… ちょっとべネディクト・カンバーバッチが演じていた「シャーロック」を彷彿とさせます。ただ彼が気に入ったものをなんでも測りたがるのは、人が「美しい」と思う形の比率やパターンを知りたいからでは…と考えます。

で、この映画で「美しいもの」の代表として出てくるのがご存知戦艦大和。わたしあんまり大和って好きでもなかったんですけど、『アルキメデスの大戦』を見たらなんかあまりのかっこよさに見入ってしまいました。アホな将校が模型を見て「これこれ、こういうのが欲しかったんだよ~!」と目をキラキラさせていましたが、いい年こいてロボットが好きなものとしては非常に共感してしまいました。ただ現実にある兵器にそういう気持ちを抱いてしまうことにうしろめたさも少々感じます。海洋堂の名物専務が言っていた「戦車をこころおきなく楽しむために世界から戦争をなくしたい」という言葉が思い出されました。

で、ここから先は後半もネタバレで…

櫂たちの奮闘を見ていると彼らの努力が実を結んで、大和は作られず、戦争も避けられたら…と思わずにはいられません。しかし現実はそうならなかったことは言うまでもありません。櫂たちは一度は大和の建造を阻止しますが、軍艦のコンペくらいで世界の大きなうねりは変えられない…というオチがなんとも説得力があり、皮肉が利いていました。

平山は「負け方を知らない(最後の1人まで戦い続けそうな)日本人に、諦めるふんぎりをつけさせるため」大和を造りたいと主張します(本人の趣味もありそうですが…)。偶然とはいえ国が誕生して以降、一度も他国から徹底的な打撃を被ったことがなかったことが日本をそういう状況に追い込んでしまいました。ですがわたしたちは先の大戦で日本がいかに悲惨に負けたかを知っています。時代の流れというのはそう簡単にせきとめらるものではないでしょうけど、少しでもこの国が戦争に向かっているとしたらなんとかそれをおしとどめたいです。

いつになくかしこまってしまいましたが、山崎監督のいつになく(失礼)理にかなったメッセージ性の強いお仕事に感嘆いたしました。そして高まった評判を続く『ドラゴン・クエスト ユア・ストーリー』でまた地に落としてしまう山崎さん。素敵だ! 年末にはCG版『ルパン三世』もひかえておりますが、ちょっと働き過ぎではないでしょうか。

あと書き忘れましたが、この映画はヤングマガジンにて連載のコミックが原作です。映画はきっぱり一本で終わりましたが、漫画の方は17巻を数えた今もまだまだ終わらなそう。櫂君のその後が気になるのでいずれ読んでみようかなー

 

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September 03, 2019

新・てつぞら ティモ・ヴオレンソラ 『アイアン・スカイ 第三帝国の逆襲』

重い扉をこじあけたら 暗い宇宙が続いてて めげずに歩いたその先に 知らなかったスカイ

…7年前クラウドファインディングで作られ、好評を博したフィンランドの珍作が忘れたころに帰ってやがりました。『アイアン・スカイ 第三帝国の逆襲』、ご紹介します。ちなみに前作の感想はこちら。

月面にナチス残党の基地が発見され、すったもんだの末に人類がほぼ全滅した未来。月で生き延びた人々は少ない物資をわけあい細々と生活していた。そんな折、地球の内部に秘密帝国が建造されていて、無尽蔵のエネルギーを有する「聖杯」がそこにあることが明らかになる。血気盛んな若者オビと仲間たちは月のエネルギー問題を解決すべく地下帝国へ乗り込んでいくが…

あらすじだけで見事なアホアホしさです。世界で最も教育水準が高いと言われるフィンランドですが、「アホネン」というスキー選手がいたくらいなのでアホなのかもしれません。まあこういうアホらしさ、嫌いじゃないですけどねw

特に感銘したアホ設定は月にスティーブ・ジョブズを教祖とした宗教組織が出来てること。眺めてるだけで笑いがこみあげてくるのですが、不思議なリアリティがありまして、近い将来現実に結成されそうな気がしてなりません。

そしてジョブズ本人も登場します。彼のみならず古今東西の選ばれた歴史上の有名人がナチスの地下帝国に大集結。FateGOなみのきらびやかさです。その中心にいるのはもちろんナチス創始者のあの方。あと恐竜も出てきます。なんでも出せばいいってもんじゃないと思いますが、まあ面白かったのでよしとします。とりあえずお話のテンポは前作よりも良かったですし。あとなにげなく出てきたものが重要な伏線になるとこなどもよく考えられてました。アホアホ言ってしまいましたがこういうところは頭のいい設定でした。すいませんフィンランド。

盛大に笑わせてもらったシーンをもうひとつ。それは冒頭のロゴ。いきなり「アイアン・スカイ・ユニバース」とドーンと出てくるのでふるってます。これから先どうやってユニバース展開に持ち込んでいくのかお手並み拝見といきましょう。

わたしは『モンスターズ』『スカイライン』と本作を勝手に「21世紀の3大低予算SF映画」と位置付けているのですが、前二作は1本ずつ続編が出来たところでそのまま収束しそうです。『アイアン・スカイ』はさらなる飛躍を見せることができるでしょうか。がんばれ! わたしは映画代しか払ってないけど!

 

 

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August 30, 2019

平成時代にさよならを 『仮面ライダージオウ』まとめ

令和が始まってはや4ヶ月。本日は先ごろ完結した「平成」ライダーの総決算『仮面ライダージオウ』について劇場版も含め思うところをまとめます。

平成の終わりも近づいたころ。平凡な高校生常盤ソウゴは、将来「王様になりたい」という夢を吹聴しては級友たちに笑われていた。そんなある日ソウゴはタイムトラベラーの青年ゲイツに襲われる。理由はソウゴが未来で最低最悪の魔王「オーマジオウ」になり、人々を苦しめているからだった。それと呼応するように彼の周りにあらわれる「仮面ライダー」と、人々を襲う怪人「アナザーライダー」たち。やはり未来から来た彼の「家臣」ウォズから変身ベルトを与えられ、「仮面ライダージオウ」となったソウゴは、いつしかゲイツと共に平和を守り、「最善最高の王」となることを目指して戦い続ける。

というわけでこの物語の大きなポイントのひとつは、本当に人を思いやるいい子のソウゴ君が、なぜショッカーの首領のような独裁者になってしまったのか?というとこでした。話が進むにつれその辺の謎が徐々に明かされていくんだろうな…と予想していたのですが、いきなりばらしてしまうとうやむやのままに終わりました(笑) まあ毎回のように20年に及ぶなつかしヒーローたちが入れ替わり立ち代わり登場するので、ソウゴ君はどうしてもホスト的な役回 りにならざるを得ず、彼自身の物語をじっくりやる余裕がなかった…というところですかね。わたしも思い入れのあるライダーがオリキャスで登場するたびに我を忘れて喜んでましたし。10周年記念の『ディケイド』と違って(あれはあれで好きでしたが)、今回は可能な限り演じた本人を連れてきてくれたのが嬉しかったです。特に『龍騎』『剣』は十ウン年ぶりに懐かしい友達と再会できて、彼らが元気でいる姿が観られて感涙いたしました。

先日公開された単独の劇場版も観てまいりました。暮れの佐藤健のようなシークレットゲストがあるのでは…ひょっとしてオダ○リジョーか、竹内○真か!?と胸ワクワクで臨んだところ、予想のはるか斜め上のビッグネームが出てきて驚愕しました。ここではあえて名前は明かさないので知りたい人は映画のキャスト一覧でも調べてみてください。

映画で印象的なセリフのひとつに「お前たちの平成って醜くないか?」というものがありました。平成ライダーもとうとう20作。そこはかとなく統一感があった(そうか?)昭和ライダーと比べると外見も設定も恐ろしくてんでバラバラです。シリーズ初期は「こんなの仮面ライダーじゃない」という声もよく聞かれましたが、最近ではもうみんな「そういうもの」と諦めてしまったのか、あまり見られなくなりました。実際こんだけ多様性に富んでたからこそそれなりに飽きられずに20年続いたのだと思います。わたし自身数作脱落したものの、今にいたるまで視聴を続けてるわけですし… 本当に『クウガ』が始まった時は2019年になっても切れ目なくライダーが続いて、そんでずーっとお付き合いすることになるだろうとは夢にも思いませんでしたよ…

ついでに好きなタイトルのベスト5を書いておくと

1位…龍騎 2位…剣 3位…ビルド 4位…鎧武 5位…555 別枠…アマゾンズ となります。

令和になってもまだ続行される仮面ライダー。次の作品は背景がなにやら『アイアンマン』っぽい『仮面ライダーゼロワン』だそうです。また一年楽しめますように~

 

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August 21, 2019

魔法中年ウィル☆スミス ガイ・リッチー 『アラジン』

ここんとこ過去の名作の実写化に力を注いでいるディズニーさん。本日はそのうちで最も成功した1本である『アラジン』を紹介いたします。

むかしむかし、アラビアのとある国で。街でコソ泥としてきままに暮らしていた青年アラジンは、ある日お忍びで市場に来ていた王女ジャスミンと出会う。ジャスミンと再会するため城に潜入したアラジンだったが、運悪く王位を狙う大臣ジャファーに捕まってしまう。ジャファーはアラジンを捨て駒として使うことを思いつき、罠の張り巡らされた洞窟に、魔法のランプを取ってくるよう命じる。苦労の末ランプを手に入れたアラジンが何の気に無しにそれをこすると、たちまち中から青い陽気な魔神が現れる。魔神はアラジンを主人と呼び、三つの願いをかなえると申し出るが。

原作はもちろんアラビアン・ナイト…ですが、それよりは92年に作られたアニメ版の忠実なリメイクになっているようです。ようです…というのは、自分は未だにアニメ版を観ていないから。今回も大体知ってる話ですし、容易に結末も予想できたのでそんなに鑑賞意欲もわかなかったのですが、家族が一緒に観ようというので付き合いで行ってきました。そしたらめっぽう楽しかったので、やっぱり名作を甘く見ちゃいかんと思いましたね…

まずとにかく虎やオウムや猿、絨毯といった人間以外の連中が滅法面白い。特に猿。役に立つ反面足もひっぱるプラマイゼロ的なマスコットでございましたが、見ているだけでとにかく愉快。わたしのベスト猿映画である『キートンのカメラマン』に肉薄するほどの名演技でした(CGだけど)。ちなみに姉と母はブロードウェイで舞台版を見ているのですが、猿はどう再現したのかと聞いたら完全にオミットされていたそうです…

ついでひかれたのが魔法の絨毯。布なのにドクターストレンジのマントのように表情が豊かでした。特に魔神がノリノリでしゃべっているうしろで全く話を聞いておらず、砂のお城をこしらえて喜んでるシーンには萌え萌えズキューンでした。

人間の役者でいうと一際輝いていたのは魔神(ジーニー)演じるウィル・スミス。それこそ90年代後半は出る映画全部ヒットさせていた彼ですが、ここのところそんなに目立った活躍はなかったような。アニメ版では変幻自在のジーニーをどうやって…と心配しておりましたが、CGの力を借りてめっちゃファンキーに暴れておりました。ぶっちゃけ最近のベストアクトだったのでは。色のついた不定形の怪人が山寺さんの声でしゃべるとジム・キャリーの『マスク』の姿がちらつきはしましたが。

最近ぱっとしないといえば監督のガイ・リッチーさんもそう。『キングアーサー』も『コードネーム・アンクル』も激しくたのしいんですけど売上的には赤字だったりして。ですが今回『アラジン』で逆転一発ホームランをかましてくれたのでなんだか安心しました。本当にあの支離滅裂だった『リボルバー』のガイさんが世界中の老若男女を笑わせる百点満点のエンターテイメントをこしらえるようになるとはねえ… というかいい加減『リボルバー』のことは忘れてあげないと。

まあこれは元のアニメ版がよくできているから、というのもあるんでしょうね。クライマックスで絶体絶命のピンチをアラジンが切り抜ける方法には大変感心しました。また生身の人間が暑そうなところで華やかな衣装で歌ったり踊ったりしてると、中東の話なのにインド映画のように見えたりもして。貧しいアラジンが機転と勇気でなりあがっていくストーリーもマサラ・ムービーっぽかったですね。

『アラジン』は現在『トイストーリー4』『天気の子』に肉薄されてはいますが、2019年の日本公開作品で初めての100億円代を突破しました。たいしたもんです。続けざまにディズニーが放つ超実写『ライオン・キング』も先日観て来たので近いうちレビューします。

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August 20, 2019

傷だらけの… 新海誠 『天気の子』

『君の名は。』でジブリに匹敵するほどのブレイクを成し遂げた鬼才・新海誠。言うまでもありませんけど、その待望の新作が現在公開中であります。『天気の子』、紹介いたします。

わけあって離島から東京へ家出してきた少年・帆高。ネカフェ難民として苦しいくらしを続けた後、彼は怪しげなフリーライター須賀に拾われ、怪しげな都市伝説を調査する仕事を見つける。なんとか仕事も板についてきたころ、帆高はチンピラにつきまとわれていた少女陽菜と出会う。彼女はなんと帆高が取材の際うわさを聞いた「空を晴れさせる能力を持つ少女」だった。

前作のあまりの大ヒットぶりに置いてかれた元からのファンが、「おれたちの新海が帰ってきた!」と喜んでいる本作品。たしかに『君の名は。』よりも直情的というか、作家性が強く表れた映画となっていました。でもやっぱりこの二作で新海監督は大きく変わったと思うんですよね(自分はまだ未鑑賞作品もあるなんちゃって新海ファンですが)。以下にその理由を述べます。

以前の新海作品の主人公はすかした感じのかっこつけた少年がほとんどで、心の中はともかく表面上はエッチなことなど全く考えてないようでした。が、帆高くんと瀧くんは普通におっぱいに興味があるようです。そのことを指摘されて真っ赤になって否定するシーンもあったり。こんなにかっこ悪い姿を以前の新海作品の主人公が見せることはなかったように思います。

もうひとつは「ムー」です。まさか二作続けて新海さんがこの雑誌をキーアイテムとして用いて来ようとは夢にも思いませんでした。胡散臭さの点では東スポに匹敵する「ムー」(すいません)が恋愛ものの小道具として用いられた例は、わたしは他には『ぼくの地球を守って』しか知りません。ちなみに監督は地方の建設会社の御曹司で「ムー」の愛読者だったそうなので、キャラ的には『君の名は。』のテッシーに近いようです。

さらにもう一点ありますが、それは後に回します。

『天気の子』ではこの作品独自の要素も幾つかあります。新海作品といえばキラキラピカピカしたビジュアルが特徴ですが、本作品ではそれよりむしろ薄暗くドバドバ降り続く雨のシーンが多い。それでもかびくさい感じはせず、清潔感・透明感にあふれているのが彼らしいですけど。

あと貧乏描写もこれまでには観られなかった点です。前作でがっぽがっぽ稼いだはずなのに、なぜこれほどまでにジャンクなご飯描写が真にせまっているのでしょう。「貧乏」といえば、実は自分がこの映画にとりわけ感心をひかれたのは、懐かしの名テレビドラマ『傷だらけの天使』のオマージュなのでは?と思うところが幾つかあったからでした。まず『傷だらけ~』の舞台であった代々木会館がこちらでも重要な建物として登場します。また、主人公たちは無垢な人たちのために奮闘し、貧乏でありながら安い食べ物をおいしそうに食べ、明るい未来が全く見えない中でも懸命あがきつづける、そういう姿も通じるものがあります。さらに『傷だらけ~』のオサムと同じく『天気の子』の須賀には離れて暮らす幼い子供がいたり。明確なソースはございませんが、監督はけっこう意識してたのでは、と思い込んでおります。

『天気の子』は不思議な偶然というか、まさに今の時期にぴたりと合わせて公開されたような作品でもあります。ずっと長雨が続いてて、ようやく晴れたその日が公開日だったり、先の代々木会館が封切りからまもなくしてとうとう取り壊されたり。またこの映画の本当に直前に京都アニメーションの悲しい事件がありました。図らずもこの映画はその悲劇に対する鎮魂歌であり、亡くなった方たちの遺志を継ぐ決意表明となってしまった気がしてなりません。それなりに映画を観続けておりますが、こんなにも「時」に呼ばれてきたような例はちょっと記憶にありません。

以下は結末に触れてるのでご了承ください。

 

 

 

 

『君の名は。』以降で変わったな、と思った三つ目の点は、「ハッピーエンドに対するこだわり」です。前作も今作も物悲しい結末にしようと思えばいくらでもできたはずなのに、強引にベタなハッピーエンドに落とし込んでいます。でもそんな優しい新海監督の方が自分は好きです。ヒロインが『秒速5センチメートル』とおなじ「きっと大丈夫」というセリフをいうところに一抹の不安を感じないでもないですが…(あちらは全然大丈夫じゃなかったので…)

というわけで『天気の子』は予報通り現在大ヒット公開中です。前作には及ばないでしょうけど、おそらく本年度最高の売上を記録するのでは。今の時期は『トイストーリー4』『ライオンキング』『ワンピース』などもあり、ここ3年くらいで最も映画館に人があつまっている気がします。そんな盛況が嬉しいわたくしでございました。

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August 13, 2019

コリアン歴史ヒストリア キム・ヨンファ 『神と共に 第2章 因と縁』

「韓国で『新感染』を越える歴代2位の大ヒット!」と評判の大作映画、一か月前になりますが無事後編を見て来たのでもう遅い気もしますが紹介します。『神と共に 第2章 因と縁』。第1章の感想はこちら

殉職した消防士ジャホンを冥界で弁護した際、いろいろ逸脱があったため咎められることとなったカンニムら3人の使者。その違反を帳消しにするため、カンニムたちはやはり地上で違反を犯している精霊ソンジュ神を成敗するよう命じられる。だがソンジュ神と関わったことがきっかけで、使者のヘウォンメクとドクチュンは消されていた自分たちの過去と対峙することに…

韓国映画で感心するのはどんなにヒットしても安易に続編を作らないこと。もしかしたらあるのかもしれないですけど自分は知りません(『グエムル2』はいまも待ってますが…)。この『神と共に 因と縁』は2作目ではございますが、後付ではなく最初から1作目と対になるよう作られています。前後編というより、表と裏、演繹と帰納の関係。そんな構成が面白うございました。

『罪と罰』では一応脇役だった3人の使者ですが、今回は彼ら自身が主人公となり、千年前の文字通りの「因縁」が語られます。そんだけ前の時系列なのでお話の半分は高麗時代の歴史劇となります。韓国の歴史ものというとテレビドラマではわんさかありますが、映画だとそんなに紹介されてなかったような(これまたわたしが知らんだけか?)。そんな珍しい題材がこれまた興をかきたてられました。

一方でそれなりに仲良くやってる感じだった3人の絆が、秘密が明かされるごとにどんどん危機を迎えていくという流れだったのでその辺は見ていて辛うございました。本当に「こういう風にならなきゃいいな」という方向に予想通りに話が進んでいきます。妖怪や裁判でハラハラさせられた1作目とはかなりスリルの質が違いました…

以後、ほぼラストまでネタバレで。

 

まあ第1章のムードからして、悲劇では終わらんだろうという安心感もありましたけどね(笑)。千年前の死ぬ前のこととはいえ、何も言わずにあんなひどいことをしたカンニムを笑ってゆるすヘウォンメクとドクチュンにさめざめと泣かされました。『罪と罰』ではお母さんがらみの人情話で「はい泣いて! さあ泣いて!」という感じで逆に醒めましたが、ひねくれ者としてはこちらの方が涙腺のツボに来ました。

調べたら監督さんの作品では韓国版『クールランニング』とも言うべき『国家代表!?』(2009)を以前に観ておりました。こちらは『神と共に』よりお笑いに振り切れたドタバタスポーツ喜劇となっています。やっぱりお母さんネタで泣かせるようなところはありましたが。あとこの人、ゴリラが野球をやる『ミスターGO!』なんてのも撮ってますね… 題材の選びようがいちいち奇抜でございます。

『神と共に』二部作はさすがに大体公開が終了しましたが、日本でも根強いファンを獲得したようでポツポツとリバイバル上映が行われております。『バーフバリ』もそうですが配給のTWINさんはこういう映画を見つけてくるのが上手ですね。これからもアジアの傑作の発掘・紹介を期待してます。

 

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August 08, 2019

玩具の神様 ジョシュ・クーリー 『トイストーリー4』

Ts 本年度最速と言われるほどに収益を稼いでおきながら、ネットでは賛否両論大激突となっているシリーズ最新作。本日はそんな『トイストーリー4』について語らせていただきます。9年前に書いた前作『3』の感想はこちら。

長年の友アンディと別れ、新たな所有者ボニーのオモチャとなったウッデイたち。だがボニーはほどなくしてウッデイに飽き、自分がゴミでこしらえたフォーキーに夢中になってしまう。それでもボニーのためと健気にフォーキーの世話に励むウッディ。そんなある時ボニー一家がバカンスに訪れたあるレジャー施設で、ウッディは離れ離れになった恋人のランプ、ポーと再会する。

すいません… 今回もまたのっけからネタバレ全開で。以下は「絶対に観ない」「すでに観た」という方だけごらんください。

 

 

思えば何から何まで完璧だった『トイストーリー3』。まださらに続けると聞いた時、「それはいるのか?」とわたしも思いました。ただ前作でたったひとつ不安になったことをあげるならば、それは「ボニーが大きくなった時、ウッディたちはまた同じ悲しみを経験するんだろうな…」ということ。でもまあ、それはまだ先のことだろうと予想していたら、本作の冒頭で早くもウッディに飽きているボニー。(現実世界では9年の歳月が流れていますが)まあ、なんと残酷なお話を思いつくのでしょう。ですが、子供というのは本来ああいう飽きっぽい生き物です。アンディのように何年も同じオモチャに愛情を注いでる方が少数派でしょう。わたしたちも胸に手をあてて思い出せば、買ってもらった当初はお気に入りだったのに数日で飽きてしまったオモチャを色々思い出せるのではないでしょうか。そしてこの『トイストーリー』は1作目から一貫して、様々な形で「子供の残酷性」をやんわり描いておりました。

それでもボニーのために、隙あらばゴミ箱に戻ろうとするフォーキーを諭すウッディ。1作目でお気にいりの地位を奪ったバズを陥れようとしてたころから比べると、驚くほどの成長ぶりです。そんな風に同じことを繰り返しているようで、決してマンネリには陥らないのが『トイストーリー』の真骨頂であります。ウッディは今回「いずれ手放されると知りつつ所有者の元に戻るべきか?」という「2」と同じ選択を迫られるわけですが、以前とは違う決定をくだします。

「おもちゃであるのならば、やはり自分から持ち主の元を離れるべきではない」「それはウッディらしくない。『トイストーリー』らしくない」という意見もよく聞きます。しかしこの度は『2』の時とは状況が違います。あの時はウッディはまだアンディに愛されてたからあえて「戻る」決断をしたのでしょうが、今回は別にボニーに必要とされてるわけではありません。見向きもされなくなっても、おもちゃであるならばそれに耐えていかねばならないのか? すでに同じ悲しみを味わっている彼に、わたしはとてもそんなことは言えません。そりゃウッディは確かにおもちゃかもしれませんが、1作目からずっと映画館で観続けているわたしからすればもう彼は映画のキャラクターというより24年来の親友であります(これまた一方的な友情ではありますが)。

とりあえずこれでウッディは「いつかは手放される」というオモチャの宿命から解き放たれたわけで。新たな門出に立った友達をわたしとしては心より祝福したい。残されたバズたちがちょっと心配ではありますが、ウッディの姿を見た仲間たちもしかるべき時にそれぞれ決断をくだすことでしょう。バズといえばこのシリーズはもともと「究極に面白いバディものを」という発想で作られた作品でしたが、バズとの出会いを始まりとし、別れで幕を閉じるとするならば1・2・3・4で見事に起・承・転・結に符号しておりました。

あととりわけ興味深かったのは、「おもちゃが誕生した瞬間」が見られたこと。新キャラクターのフォーキーはもともとは廃棄物でありましたが、ボニーがおもちゃとして作り上げた瞬間に自我が芽生え別の存在へと生まれ変わります。ここからこの世界ではメーカー製でなくとも、子供が遊ぶ対象として作られた時点でそれが「おもちゃ」となることがわかります。ただフォーキーは由来がゴミであるせいか、一生懸命ゴミ箱の中に戻ろうとするあたりに腹がよじれました。そんなフォーキーにウッディはオモチャとしての心得をこんこんと説きます。おもちゃというのはいつも子供たちに寄り添い、励まし、元気をくれる存在なんだと。こうなるとこの世界におけるオモチャは単なる物体の枠を越えてもはや守護天使といっていい存在にまで高められております。ただその愛情が必ずしも報われるわけではないあたり、あまりにも哀れな守護天使ではあります。

このフォーキーもそうですが、新キャラがいちいち魅力的すぎたり小ネタが充実しまくってるあたりも、「4」はまごうかたなき『トイストーリー』でした。特に忘れられないのはCMの演出が派手すぎたゆえに辛酸をなめることになったスタントレーサー、デューク・カブーン。変身ベルトを巻けば仮面ライダーになれると信じていたのに、現実はそう甘くなかったことを思い知らされた幼い日の記憶がよみがえります。射的ゲームの景品としてぶら下げられてた趣味の悪い色のウサギとヒヨコもシュールな漫才でにぎやかしてくれました。

大人たちはついあーでもない、こーでもないと議論してしまいがちですが、わたしが観た回でははじめてスクリーンでウッディやバズを観るお子様たちがおおはしゃぎで作品を楽しんでました。『トイストーリー』はおそらくこれからまだまだ子供たちに愛され続けるアニメとなるでしょう。おじさんも引き続き愛していきます。

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July 31, 2019

国際的なる宇宙 F・ゲイリー・グレイ 『メン・イン・ブラック/インターナショナル』

あ、これもう公開終わってますね… 大人気シリーズ、久々の新作だったのになんでかあまり盛り上がらなかった『メン・イン・ブラック/インターナショナル』をご紹介します。

宇宙人の来訪や襲撃からひそかに地球を守り続けている秘密組織メン・イン・ブラック。幼いころエイリアンと遭遇したことがあるMは、なんとかその一員になろうと励み、ついに組織の本部に潜り込むことに成功する。その行動力を認められた彼女はMIBの研修生としてヨーロッパ支部に派遣される。そこでMはイケメンの英雄的エージェントHと組むことになるが、Hの話やそぶりには怪しいところが目立ち…

今回はおなじみのJ(ウィル・スミス)とK(トミー・リー・ジョ-ンズ)のコンビからキャストを一新。『マイティ・ソー/バトルロイヤル』での掛け合いが記憶に新しいクリス・ヘムズワースとテッサ・トンプソンが主役をつとめることになりました。男女コンビということで途中から恋愛モードに突入していくのかな?と思いきや、お互い憎からずは感じているようですが、基本的には同僚・バディとして活動していきます。その辺が今風だな~と感じました。

ただそれ以外はこれといって印象的だったり斬新だったりするところがなく、シリーズのお約束を一通りなぞっただけで終わってしまった『2』と同じ過ち?をたどることとなってしまいました。たしかにファンは「これこれ、いつものこの味」というのを期待しているかもしれませんが、世界興収がいまひとつ、日本興収がいまふたつだったことを考えるともう少し思い切ったアイデアが必要だったかな…とは思いました。こう書いてる間にもどんどん記憶が薄れていきます。年のせいか物覚えが悪くなる一方なので… あとこれは個人的な不満ですが、 例のパグ犬の彼の出番がもっとほしかったです。

でもまあいいところもそれなりにありました。まずMになつく松ぼっくりみたいなブサカワなエイリアン。ミニサイズながら要所要所で入れてくるツッコミが痛快でした。あとやっぱりなんといってもクリス・ヘムズワース。『アベンジャーズ/エンドゲーム』で突き出たおなかを急速にひっこめて従来通りの二枚目マッチョとして活躍してます。ただなんなのでしょう。これまでのキャリアのせいか、普通にイケメンなのに、そこに立っているだけで名状しがたいおかしみを漂わせております。こんな変わった俳優、そうそういるものではありません。「しばらく休みたい」宣言もしてましたが、『マイティ・ソー』4作目も早々と決まってしまったので再来年にはまたそのコメディアンぶりが拝めることでしょう。

こちらを蹴って?ウィル・スミスが出演した『アラジン』は期待通りにヒット街道を驀進中。宇宙人より魔神がうけるご時世なんでしょうか。近々こちらの感想も書きます。わたしが書くまでもないでしょうが…

Mibi

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July 29, 2019

恋はミステリオ ジョン・ワッツ 『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』

Misuterio 『アベンジャーズ/エンドゲーム』の感動も冷めやらぬ中、行きつく間もなく新作を送り出して来るマーベル・シネマティック・ユニバース。フェイズ3の幕を締めくくるのは次世代のヒーローの中心となるであろうあの少年。『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』、ご紹介します。

サノスによる大攻勢を生き残ったスパイダーマンことピーター・パーカー。師を失った悲しみが癒えない彼は、それをまぎらわすかのようにクラスメイトと共にヨーロッパ旅行に出かける。あわよくばその機会に思いを寄せるミシェルに告白しようと意気込んでいたピーターだったが、シールド長官フューリーの勧誘や異次元からの脅威「エレメンタルズ」の来襲でバカンスは大混乱に…

スパイダーマンのテーマといえば「大いなる力には大いなる責任が伴う」。ですが今回のピーターはどうにも目の前のミッションに消極的。それもそのはず。彼の「力」というのは本来クモ能力くらいなものなのに、MCUでは「アイアンマンの後継者」「次世代アベンジャーズのリーダー」「地球規模の衛星兵器の管理者」と高校生にドデカすぎる責任を負わせ過ぎなんですよ。もっと他にキャパシティの広い大人のヒーローはいないのか…とも思いますが、キャップもアイアンマンもいない中、MCUで最も人気のあるヒーローは彼しかいないので、興行的にそういう流れになってしまうのは仕方のないことやも。

原作では普通にアイアンマンもキャプテンアメリカもバリバリ活躍中なので、約60年の歴史を誇っていてもスパイダーマンは未だにヒーロー仲間では傍流的存在だったりします。また某メディア(笑)のバッシングのせいで世間からは「ちょっと胡散臭い奴」と思われてもおります。そんなコミックとの差異が面白くもあるのですが、もしかするとこれからは映画のスパイダーマンもそういう風になっていくかも…と予想するのは気が早いでしょうか。

今回のキーマンとなるのは「敵か味方か」というフレーズがよく似合う新キャラクター「ミステリオ」。コミックファンならばそんなん敵に決まってんだろ―ツ!と言いたいところですが、先の『キャプテン・マーベル』におけるスクラルの例もあるので「もしかしたらいいやつかも?」という可能性も捨てきれない。では実際どうだったかというと… あ、以降は9割方ネタバレで

 

 

 

 

順当に悪役でございました。演じてるジェイク・ギレンホールの魅力もあり自分もうっかりだまされるところでありました。そういえばジェイクさんの映画で『ナイトクロウラー』という作品がありましたが、あれも扇情的・作為的な映像で野望を実現しようとする男の話でした。今回のジェイク氏となんか重なります。あと最近ジェイクさんが小動物をかわいがってたり、小児科を慰問にいってたりと「このひと、いいひとだなあ」という画像がよく出回ってるんですが、「映画と本人は別」とわかってはいても、どうしても「もしかしたらだまされてるのか? それは君の見せかけの姿なのでは?」という思いがぬぐえないのでした。いやだわ… いつのまにぼくはこんな疑い深い大人になってしまったのかしら…

さて、偉そうに語っておりましたが、実はわたくしこの「ミステリオ」というキャラクター、邦訳本では見かけたことがございません。これまた歴史の長いヴィランではあるのですが、そんなにトップ人気な悪役でもないのですね。映画7作目にしてようやく登場したというのもそれを裏付けております。わたしがミステリオで特に思い出深いのは池上遼一氏が手掛けられた「ぼくらマガジン版」にて描かれた「にせスパイダーマン」というエピソード。「暗い・しんどい」と評判の?池上版の転換点となる痛切なストーリー。気になる方はぜひ手に取って…と言いたいところですが、現在中古版しかないのがこれまたつらいところです。

話を元に戻しまして。先日待望のMCUフェイズ4(2020-2021)のラインナップが発表されましたが、そこにスパイダーマンのタイトルはなく。今年3本もスクリーンに登場した反動か、少なくとも二年は姿が見られないわけで。『ファー・フロム・ホーム』が非常に気になる幕切れだったので、はやいとこ次の情報がほしいところです。

また、本作品で「嘘だった」とされた平行世界=マルチバースについては『ドクター・ストレンジ』続編で扱われることが確定いたしました。あるのかないのか、どっちなんじゃーい!!とツッコミたくもなりますが、今度こそ本当でありますように。そしてマーベル・シネマティック・ユニバースがさらなる拡大を続けていきますように。

『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』は世界で10億$、日本で『ホーム・カミング』にならぶ28億円の売上を達成したと本日のニュースで知りました。アメイジング二部作と並ぶ31億には届くでしょうか。がんばれ!

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July 16, 2019

殺し屋さんは休業中 南勝久・江口カン 『ザ・ファブル』

ヤングマガジン連載の一風変わったノワール(なのか?)漫画を、岡田准一主演で映画化。本日は現在好評公開中の『ザ・ファブル』、紹介いたします。

裏社会であまりにも凄腕のため「ファブル(寓話)」と恐れられていた一人の殺し屋がいた。ある時大仕事を片づけたそのファブル…佐藤に、彼のボスはサポート役の陽子と共にしばらくほとぼりをさますよう命じる。指定された大阪の街で佐藤はごくごく普通の生活を送ろうと決心するが、その噂を聞きつけたヤクザたちの抗争に巻き込まれ、否が応でもその腕を振るわざるを得なくなる。

米国映画で人気のジャンルのひとつに「なめてた相手が凄腕の殺し屋だった」というものがあります。『96時間』『ジョン・ウィック』『ザ・コンサルタント』『イコライザー』etc。この映画の予告を見て「いよいよその日本版が登場か!?」と意気込んだのですが、微妙に違いました。「凄腕だと思ってた殺し屋がその通りだった」的な作品でした。でもまあそんなことは小さいことで、期待通りのアクションを見せてくれればそれでよいのです。そこはジャニーズで最も格闘術が高い岡田准一(推定)、さすがの身のこなし・体裁きでございました。中でもとりわけ驚いたのは銃撃戦・肉弾戦よりも、ひょいひょいと壁をつたって3階分くらいロック(ウォール?)クライミングしていくシーン。いやあ、まるで忍者そのものでございました。

お話の方はどうかと申しますと、ちょっと『水戸黄門』とか『暴れん坊将軍』とか昔懐かしの時代劇に近いものがありました。身分を隠して市井に暮らす剣の達人が、貧しい親孝行の娘と知り合うが、その娘は悪徳商人に借金の方に売られそうになってしまう。その後の展開は言うまでもありませんね(笑) この映画はその悪徳商人もまた、別の悪人に娘共々さらわれてしまうところがややこしいのですが。

もうすでに大概ネタバレですけど、わたしが「いいなあ」と思ったのはファブル佐藤が最後までヒロインに自分の正体を明かさないところ。アメコミヒーローなんかはすごく軽率に自分が「○○マンだ」と告白してしまいますよね。そうしたい気持ちも大変よくわかるのですけど、やっぱりここは素知らぬ顔を通し続けるのがストイックで男らしいと思うのですがどうでしょう。

やや難点なのはユーモアセンスがちょっと独特というか、いわゆるクドカン的というか、福田雄一的なところ。波長の合わないギャグをえんえんと繰り出されるのってけっこうきついですからね。幸いわたしはまあまあ楽しめたのでよかったです。あと岡田君演じる佐藤の、特殊な環境にいたゆえ常人といちいち感覚が異なるキャラクターが見ていて興味深かったです。

『ザ・ファブル』は公開から4週目に入りましたが、いまだに売上6位に入るという健闘ぶり。なんか最近は邦画も恋愛ものとか感動ものより、アクションや渋い社会派作品の方が好調ですね。わたしゃほとんど見ませんけど、いろいろあった方がいいと思うので胸キュンキュンの恋愛映画クリエイターたちもがんばってください。

 

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July 10, 2019

オレゴンから哀 アンドリュー・ヘイ 『荒野にて』

ここんとこ殺伐としたブロックバスター的な映画ばかり紹介してましたが、今回は久しぶりにしっとりした叙情性溢れる作品を紹介します。現代アメリカを舞台に馬と少年の旅を描いた『荒野にて』、紹介します。

父と二人でオレゴンに住む少年チャーリーは、競馬の施設をうろついていたことがきっかけで、競走馬の世話をするバイトを始める。そのうちの一頭、リーン・オン・ピートと仲良くなったチャーリーは甲斐甲斐しく面倒を見るが、ある時雇い主がピートを屠殺場へ売ろうとしていることを知ってしまう。チャーリーはピートを救うためにトレーラーを盗み、果てしない荒野を旅することになるのだが…

この映画を観ようと思ったきっかけのひとつは、単に自分が「荒野系」の話が好きだからです。ジャック・ロンドンの諸作とか、映画『イントゥ・ザ・ワイルド』『私に出会うまでの6000キロ(原題 Wild)』とか。こちらは意外と荒野の場面少なかったですけど… あるいは誰も頼れないチャーリー少年の境遇を表しての邦題だったのか。ちなみに原題は単に劇中に登場するお馬さんの名前(Lean on Pete )であります。

もうひとつの鑑賞動機は普通にかわいそうな少年とお馬さんがどうなるか気になったから。一人と一匹で貧しいながらも生き抜いていこうとする姿は、まるで『フランダースの犬』そのもの。チャーリーとピートがネロとパトラッシュのようになりはしないかとハラハラしながら見守っておりました。

役名と同じ主演のチャーリー・プラマー君は本作の演技で高い評価を得ております。最初はぽややや~んとした年相応の顔をしているのですが、状況が苛酷になるにつれ引き締まった「男」の風貌へと変わっていきます。それがなんとも切のうございました。ただ可哀想ながらも作り手の優しさがちょこちょこ見え隠れするところもあり、後味は決して悪くはなかったです。

それにしても馬というのは一部の人たちを本当にひきつけるようで。『戦火の馬』の主人公も自分の命が危ないのに「うまーうまー」言うてたし。わたしが「馬好き」で思い出すのは『動物のお医者さん』の菅原教授。個人的にはあんまり魅力がわからない方でありましたが、『レッドデッドリデンプション2』というゲームでこまめに馬の面倒を見てるうちにちょっとかわいく思えてきたところです。ゲームと実際では労苦が全然違うでしょうけど… 

 

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July 08, 2019

火の鳥アメコミ編 サイモン・キンバーグ 『X-MEN ダークフェニックス』

Xmendp1 アメコミムービー隆盛のきっかけとなった映画X-MENシリーズ。約20年に渡ったその歴史が、昨年のディズニーによる20世紀FOXの買収でひとつの区切りを迎えることになりました。その最終作となる『X-MEN ダークフェニックス』紹介します。

80年代にアポカリプスを倒して以降、X-MENは正義のヒーローチームとして認められ、ミュータントの地位も向上していた。だがスペースシャトルが謎のエネルギー体に襲われる事件が起き、その救出に際しメンバーのジーン・グレイはエネルギー体に翻弄され危うく死にかける。なんとか生還したジーンだったがそれ以来ただでさえ不安定だったパワーの制御がますます困難に。そして信頼していたリーダー、プロフェッサーXの欺瞞に気付き始める。

2006年の『ファイナル・ディシジョン』までは現実の時間軸と並行して作られていた(ように思える)X-MENシリーズ。しかしそこで一旦行き詰ってしまったため、60年代、70年代、80年代それぞれの前日談が作られました。ここで1作目に追い付くのかな?と思ったら今度は律儀に90年代のエピソードを用意してきました。それはいいんですけど結局このシリーズは13年前からほとんど前に進まなかったという… まあスターウォーズもそういう時期があったし、こないだの猿の惑星・エイリアンもそうだったし、20世紀FOXのお家芸なのかもしれません。

ただ前日談に終始しても完成度が高ければ…というか、前後と整合性が取れていればよいのです。過去作をちゃんと復習して、忘れられたような要素とか心憎い形で拾ってくれたり、感動的に再アレンジしてくれたらオタクはもう大喜びなのです。先の『アベンジャーズ/エンドゲーム』がそのもっとも成功した例ですし、『ワイルドスピード/スカイミッション』『ミッション・インポッシブル/フォールアウト』なども同様です。しかるにこの『ダークフェニックス』はどうだったかというと…これがつながるはずの『フューチャー&パスト』の結末とどう考えてもつながらそうな結末と相成りました。もう1作作ってそれで軌道修正するはずだったのか? それとも色々上から指示が入って迷走してしまったのか… その辺は憶測を巡らすしかありません。考えてみれば最近のX-MEN映画って『ローガン』といい『デッドプール』といい本家とつながってるのか微妙そうなものばかりでしたしね。頭を柔らかくして「それぞれ時間軸が別なんだろな」と考えてあげるべきなのかも。

なんだか愚痴っぽくなってしまいましたが、コミックファンとして興味深かったのはプロフェッサーXことチャールズ・エグゼビアの裏面ぽいものが描かれていたということ。エグゼビア教授は原作では90年代中ごろまで一片の汚れもない清廉潔白な指導者だったのですが、新世紀に入る前後あたりからダークサイドが暴発したり過去の悪行がばらされたりして株が急暴落し始めます。『ダークフェニックス』はそこまでひどくはありませんでしたが、名誉を追い求めたり、人の記憶を勝手に操作してしまう教授をどこまで信じてよいのか?と観てるものをハラハラさせてくれます。ダークサイドといえば今回メインであるジーン・グレイもそうです。『ファイナル・ディシジョン』の例もありますし、コピーも「最強の敵」だし、闇落ちはもう確定的。マーベルのヒーローには後ろ暗い面も持ってる者も多いですけど、ことX-MENは世間から迫害されているという背景ゆえか善悪の境界をぶらぶらしている者ばかり。そういうハードなところが魅力でもあったがゆえにマーベルコミックでトップの人気作となったわけですが、映画では「暗い」「地味」という印象が先に立ってしまったのか、アベンジャーズにどうにも差を着けられてしまったのが辛いところです。

とにもかくにも、離れ離れだったX-MENやファンタスティック・フォーも、以降はマーベル・シネマティック・ユニバースに統合されることになります。今度こそキャラ多すぎで収拾つくのかと不安になる一方、剛腕ケビン・ファイギならきっと上手にまとめあげてくれるだろうという期待もあります。というか期待の方が全然大きい。彼らが真に合流するのはまだまだ4、5年先、というのが大方の予想ですが、夏に発表されるMCUフェイズ4のラインナップでそれは明らかにされるでしょう。本当にマーベル・ディズニーはじらすのがお得意ですよね。いい加減教えてくださいよおおおおおお(身もだえ)

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July 02, 2019

コリアン大霊界 キム・ヨンファ 『神と共に 第1章 罪と罰』

予告を見た時は「マトリックスのバッタモンみたいやな…」と思った(失礼)のですが、SNSでの熱意溢れる賛辞と「『新感染』を越える歴代2位の大ヒット!」という文句に惹かれて観てきてしまいました。『神と共に 第一章:罪と罰』、ご紹介します。

消防士ジャホンはビル火災で少女を救おうとして殉職。彼は三人の「使者」に誘われ冥界へと連れて行かれる。使者たちはジャホンに亡者が生前の罪に関して七つの法廷で裁かれ、潔白と証明されたものだけが生まれ変われると告げる。生前多くの命を救ったジャホンだけに、その無実はたやすく証明されると思われたが…

あの世めぐりの話というのも色々あります。古くはダンテの『神曲』。映画だと『地獄』『大霊界』『ビルとテッドの地獄旅行』『奇跡の輝き』、最近でも『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ!』などもありました。しかし韓国のあの世事情というのは全然知りませんでした。そんなお隣の風俗慣習について楽しく学ぶのに非常に役立つ映画でした。

で、観てみてわかりましたが、韓国のあの世というのはけっこう日本の言い伝えに近かったです。三途の川があったり、閻魔大王がいらしゃったり。違うのは殺人・怠惰・嘘・裏切り・不義・暴力・親不孝それぞれの罪を診断する七つの法廷があるということですね。なんでかキリスト教の「七つの大罪」と似通ってるところが面白いです。これらの罪というのは人間ならば誰でもひとつやふたつはやらかしてる些細なものもあるので、七つぜんぶをクリアするのは相当至難の業と言えましょう。とりあえず韓国映画の名作の主人公たちは一人残らず無間地獄行きかと思われます。

主人公のジャホンはいいやつなのですが、最初から最後までずーっとしょんぼりしてるため、いまひとつ華がないというか頼りない。日本の役者さんがやるとしたら濱田岳氏あたりが非常に似合いそうです。一方でジャホンの護衛となる3人の使者はめっぽうキャラ立ちせいております。リーダーでミステリアスなカンニム(演じるハ・ジョンウ氏は『チェイサー』の殺人鬼役が強烈でした)。血気盛んな青年ヘウォンメク。GJポーズがかわいらしい少女ドクチュン。この1+3のチーム構成は『西遊記』『三銃士』『桃太郎』『オズの魔法使い』といった古今東西の冒険ものの定番でありますね(『バビル二世』もか)。

清廉潔白かと思えたジャホンにも叩くと色々埃が出たり、思わぬ邪魔が入ったりで彼らの旅は困難を極めます。これ、絶対いいところで第二章に「つづく」となるパターンだよなーとおもっていたらけっこうキリのいいところで終わってくれてよかったです。

そんなわけで現在早くも第二章の『因と縁』が公開中。韓国が誇る筋肉スター、マン・ドンソク氏もキャストに加わるということで期待が膨らみます!

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June 28, 2019

必殺仕事ニーソン除雪編 ハンス・ぺテル・モランド 『スノーロワイヤル』

わたしはあんまり役者さん目的で映画を観に行ったりしないんですが、例外的なのがリーアム・ニーソン主演のアクション映画。なんか他の筋肉俳優にない味があって面白いんですよね。というわけでそのリーアム・アクションの最新作『スノーロワイヤル』ご紹介します。

コックスマンはロッキー山脈のふもとにある雪深い都市デンバーで、長年地道に除雪にいそしんできた男。ある日そのコックスマンの元に息子がドラッグの過剰摂取で死んだという悲報が届く。息子が麻薬カルテルの取引に巻き込まれて殺されたことを突き止めたコックスマンは、組織のメンバーを一人一人血祭りにあげていく。だがその犯人がわからないカルテルは、対抗組織が宣戦布告してきたと勘違いして…

主演作ではだいたいいつもかわいそうなリーアムさん。今回もいきなり息子に死なれるわ奥さんに責められるわ観ていて胸がしくしくと痛みます。さぞかし壮絶で鬼気迫る復讐劇が展開されるのでは…と思いきや、確かにそうなんですが全体的に人を食ったようなシュールなユーモアが全体に満ちています。どう考えても端役にすぎないようなマフィアの一員にも、亡くなる度に珍妙なあだ名と共に追悼?の画面が用意されてたり。二つの組織が一人の怪人物に翻弄されていく流れは黒澤明の名作『用心棒』とも似ております。

監督はノルウェーの新鋭ハンス・ぺテル・モランド。この映画はもともと彼が本国で撮った『ファイティング・ダディ 怒りの除雪車』という作品のセルフリメイクなんだそうです。こちらでは白人とネイティブ・アメリカンの争いでしたが、元ネタではノルウェー人とセルビア系の抗争になっています。舞台は変わってもこのポカーンとしちゃうユーモアセンスはやっぱり北米ではなく北欧のそれでした。

北欧と言えば雄大な雪山を背景に古風な街並みが広がっているデンバーの景色は、なじみのないものからすると「アルプスの街」と言われたら普通にそう見えてしまいそう。ヨーロッパの雪景色と違うのは行きかう人々の中にちらほらネイティブ・アメリカンの方がおられることですね。雪山にネイティブの方たちと言えば昨年の『ウィンド・リバー』を思い出します。実際デンバーのコロラド州とワイオミングは隣同士でわりと近所のようです。ただどん詰まりで生活が苦しそうだった『ウィンド・リバー』に比べると、デンバーは観光が盛んなせいか雪深いながらも都市部はかなり華やかそうでした。

話をリーアムさんに戻しますと、悪人どもには全く容赦しない反面、大ボスの幼い子供にはとても優しいあたりほのぼのとさせられました。児童にベッドで除雪車のカタログを読み聞かせてあげるシーンがあるんですけど、めちゃくちゃ似合いすぎでした。この点、やはり息子を殺されたネイティブのボスが「子供には子供を」と対等のものを求めるところとまことに対照的でした。あほらしいながらもそんな三組の親子の対比がなかなか興味深かったです。

時期的にまったく正反対なんですが、むしむし暑い今日この頃、冷房の効いた映画館で観るとむしろ納涼にちょうどよくて気持ちいいかもしれません。あともう1週くらいは上映してるんじゃないでしょうか。

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June 26, 2019

沈黙の艦内 ドノバン・マーシュ 『ハンターキラー 潜航せよ』

こちらは二ヶ月ほど前に公開されてたのですが、ほかに注目作が多かったのでついスルーしてしまったのでした。ところがツイッターでじわじわと評判になっていくのを眺めているうちに「観とけばよかったな~」と後悔。そこへちょうどよく遅れて別の劇場でやってくれたので、これ幸いと鑑賞してきたのでした。『ハンターキラー 潜航せよ』、紹介いたします。

ロシア近海を演習で潜航していた米軍の潜水艦が、突如として消息を絶つ。米国海軍は事態を調査すべく、一平卒からのたたき上げであるジョー・グラスと原潜アーカンソーのクルーを現地に向かわせる。やがてグラスたちは事件の背後に米露を揺るがす大きな陰謀が関わっていることをつきとめる。核戦争への発展を防ぐべく、アーカンソーは想像を絶する危険な海域へ針路を向ける。

というわけで最新版の潜水艦映画です。このジャンルで名作と言われるのはウォルフガング・ペーターゼン監督の『Uボート』ですが、残念ながら観てません。数少ない鑑賞した作品は『クリムゾン・タイド』『U-571』『ローレライ』といったあたりです。それだけしか観てないのに語るのは気が引けますが、潜水艦映画というのは他の戦争映画とは少々違った醍醐味があります。そのひとつは「先に相手に気付かれたらダメ」ということ。深海の静寂の中で息をひそめ、相手がボロを出すのを必死に待つ戦い。本当に息が詰まるような緊張感があります。

醍醐味のもうひとつは魚雷。魚雷というやつは戦闘機のミサイルよりゆっくりですが、その独特なスピードがかえって恐怖感をあおります。直撃すればもちろん一発でオシャカですし、そばで爆発しても船体のあちこちから水が噴き出して「押しつぶされる!」というパニック感がみなぎります。醍醐味というか「いかにおっかないか」という説明になってきました。この『ハンターキラー』はそういった深海戦闘の面白さと恐怖がよく表れておりました。

そんな風におしっこちびりそうなスリルに満ち溢れているのに、同時にとてもすーがすがしい映画なんですよね。主演が『300』や『エンド・オブ・ホワイトハウス(キングダム)』のジェラルド・バトラーだし「キラー」とタイトルについてるし「手当たり次第にぶっ殺す!」というノリなのかと思いきや、これがなるたけ「殺さないように殺さないように」という方向に進んでいきます(まあアクション映画なんでそれなりに死人は出ますが)。宇宙船から帆船までフィクションの中で様々な艦長を観てきましたが、グラス艦長が際立っているのはその最大の武器が軍略でも気迫でもなく「信頼」だということ。キーパーソンとしてもうひとりロシア軍の潜水艦艦長が出てくるのですが、敵とも味方ともしれぬこの男を、グラスは「同じ潜水艦勤めだから」という理由で不動の精神で信じぬくのですね。その信頼が八方ふさがりで突破不可能のように思えた状況を打開させていく糸口となっていきます。また地上でも共同作戦にあたっている別クルーがいるのですが、彼らもまた顔も知らず言葉も交わさないグラスたちを信じて決死の任務を遂行していきます。

ロシア側の艦長を演じるのはスェーデン版『ミレニアム』で有名なミカエル・ニクヴィスト氏。残念ながらこれが遺作となってしまいました。奇妙なことにもうひとつの遺作の『クルスク』という映画も潜水艦を題材にした作品だそうで。コリン・ファース、レア・セドゥといったそうそうたるキャストなのですが、いまのところ日本公開の予定なしだったり…

そのうちDVDにもなるでしょうけど、やはり深海の戦いは真っ暗で音がよく響く映画館で観た方が臨場感たっぷりですね。滑り込みで観られて本当によかったです!

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June 21, 2019

地球兄弟 五十嵐大介・渡辺歩 『海獣の子供』

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怪獣の次は海獣の話。文化庁メディア芸術祭漫画部門を受賞した五十嵐大介氏のコミックを、『鉄コン筋クリート』などのSTUDIO4℃がアニメ化。『海獣の子供』、紹介します。

海辺の町に住む少女琉花は夏休みに父の勤める水族館を訪れたことがきっかけで、海と空という不思議な兄弟と出会う。彼らは3歳まで主に海中でジュゴンに育てられたのだという。常識にとらわれない二人に翻弄されながらも、兄弟のことがどんどん気になっていく琉花。やがて彼女は海と空が「祭り」と呼ばれる地球規模の現象の中心であり、彼らに残された時が少なくなっていることを知る。

原作は未読なのですが、ぱっと見た限りとても動画にはしにくそうな絵柄。しかしSTUDIO4℃の超絶技巧によって、その繊細な線画が忠実に再現され、かつびゅんびゅんと動いておりました。また、その絵柄と調和して色合いも淡い水彩画のような趣があります。そんなタッチで描かれた海や星空、夕焼けの背景はためいきが出るほど美しい。元はといえば原作の絵なんでしょうけど、アニメを腐るほど観てる自分にもちょっと似たものが思いつきません。後半においてはさらに自然を超えたカタストロフィ的なヴィジュアルが暴走気味に展開されます。

恐らく評価が分かれるだろうな…と思うのはこのクライマックスの展開。中盤までの夏休みの雰囲気や、海辺で戯れる琉花たち、夏祭りや台風の風景などは現実感や郷愁が伝わって作品世界にじんわりひたれたのですが、そっからのぶっ飛ばし具合が半端ないもので頭の固いおじさんはちょっと振り落とされました(笑)。ま、こういうの日本アニメではありがちな流れですけどね。十代の少年少女の葛藤を描きながら、それが世界や宇宙にまでスケールアップしていき、抽象的で不可解な心象風景がぐるぐると描かれていくような。名作『エヴァ』や先の『プロメア』にもそういうところはあるのですが、これらは最初から非現実的な話とわかってたせいか普通についていけました。が、『海獣の子供』は現実の描写も極め細かすぎたゆえに、そのギャップがちょっと気になってしまいました。

でもまあ、本当に美術力という点ではものごっつい作品です。ジブリや新海監督ともまた違ったこのアート的なスタイルをSTUDIO4℃にはこれからも継続していってほしいものです。昨年の『ムタフカズ』 もアホらしくてクールでかわいくてとても好きなんですが、あまり話題にならなかったのが残念です。

ちなみにこの映画、先ごろ結婚で話題になった蒼井優さんも声優で出ておられます。だんなさんとうまくいってない奥さんの役でしたが、現実世界では円満な夫婦生活を送られてください!

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June 18, 2019

4大怪獣 地球最大の混戦 マイケル・ドハティ 『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』

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2014年のレジェンダリー1作目 から5年。ちょいと間が空きましたが、ようやく洋画のゴジラさんが帰って参りました。しかも東宝怪獣のあんなやつこんなやつを引き連れて…! 『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』紹介いたします。

ゴジラとムートーの激闘から数年。ゴジラはそれ以来姿を消していたが、秘密機関モナークは世界各地で休眠中の怪獣を発見。極秘に観察を続けていた。だがある時そのモナークの施設が連続して襲撃を受ける。犯人は「地球を太古の自然に戻すべき」と考える環境テロリストの一団だった。やがてその手は魔王に等しき怪獣「ギドラ」が眠る南極にも及ぶ。ギドラの復活に呼応するように再び現れるゴジラ。同じように目覚めた怪獣ラドンやモスラも交え、地球は巨大怪獣たちの戦場と化していく。

今回の特色は番外編的な『キングコング 髑髏島の巨神』 ラストでも明かされてましたが、ラドン、モスラ、キングギドラといった名怪獣の登場。彼ら?が最新のCG技術でどんな風に表現されるのか胸ワクワクで待ち望んでおりました。反面不安を感じたのがこの面子が『三大怪獣 地球最大の決戦』とまったく一緒だということ。そうです。一部界隈で有名な、通訳を介してとはいえゴジラやラドンが「勝手にしやがれ!」「そうだそうだ!」とくっちゃべるあの作品です。子供の目で見ると大変楽しいんですが、前作の重厚な雰囲気とマッチするのかどうか… しかしその点は杞憂でした。まず怪獣が喋りませんでしたw そして次から次へと襲い来る怪獣たちのパニック描写が怖すぎて、『三大怪獣』にあったのんびりしたムードは全く見当たりませんでした。火山から現れて街を根こそぎ爆風で引きはがしていくラドン。無数の稲妻と三つ首の咆哮で劇場を震わすギドラ。ちょっと小さなお子さんたちはトラウマになるのでは…という迫力でした。

ただこの度メガホンを撮ったマイケル・ドハティ氏は前作ギャレス・エドワーズとはまたちょっと資質が違う気がします。ギャレスさんもギレルモ・デル・トロさんもそりゃあ怪獣が大好きだとは思うのですけど、ドハティさんの怪獣愛…それも東宝怪獣への愛はちょっと度が外れているというか、狂気にも近いものを感じます。まあでもその並はずれた狂気と愛情があるからこそ、こんだけ突き抜けた映像が作れるのかも。

そして各怪獣の個性の描き分けがまた上手なんですよね。不動の精神を持つ、戦国の英雄のようなゴジラ。禍々しい妖気を放つ悪魔の化身(キング)ギドラ。華やかな色彩で見る者を魅了する妖精モスラ。で…、この並びだとラドンがちょっと弱い印象があったんですが、意外な行動でもって思い切りキャラ立ちしておりましたw すでにネットでは「ゴマすりクソバード」なる不名誉なあだ名を頂戴しちゃっております。このお追従が得意な描写も、ドハティなりの「そうだそうだ」のオマージュだったのかもしれません。それは置いといて、この度の4大怪獣が過去作と比べて際立っているのはどなたもピカピカキラキラ輝いていること。そのひかりっぷりはモンスターで4あると同時にスターでもありました。モブっぽい怪獣も何匹か出てきますが、文字通り光ってないあたりランク的に下なんだろうな…ということがうかがえます。

他に強く感じたのはますます東宝怪獣がクトゥルーっぽい設定になってきたなあということ。オリジナルのゴジラはあくまで元は自然生物で、人間の悪行のゆえに怪獣となってしまったという立ち位置ですが、『KOM』においてはあからさまに生物を越えた神に近い存在であり、元々地球は彼らが支配していたということになっております。一方で前作からのレギュラー芹沢教授はゴジラに向かって「友よ…」と呼びかけます。この辺からもドハティ監督にとって怪獣は神であると共に大好きなお友達だったんだなあ…とほのぼのさせられました。

あと公開前に「人間ドラマが少ない」との評が流れてましたが、それなりにありましたね。人間ドラマ。しかしこの人間ドラマが「怪獣怪獣!」とのめり込んでるいかれた人たちばっかり出てくるもんで、怪獣大好きな人たちでないと共感できないんでないかと思います。わたしはめっちゃシンパシー感じましたけどね! そんな普通でないドラマの中にも無理やり親子の絆とかねじ込んでくるあたり、前作の名残が漂っておりました。

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は現在『アラジン』に押されつつ大ヒット公開中。来年にはアメリカが誇る大怪獣「キングコング」との対戦が予定されています。果たして「モンスターバース」はそこで打ち止めとなるのか。できれば『怪獣総進撃』までリメイクしてほしいところですが…

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