August 13, 2019

コリアン歴史ヒストリア キム・ヨンファ 『神と共に 第2章 因と縁』

「韓国で『新感染』を越える歴代2位の大ヒット!」と評判の大作映画、一か月前になりますが無事後編を見て来たのでもう遅い気もしますが紹介します。『神と共に 第2章 因と縁』。第1章の感想はこちら

殉職した消防士ジャホンを冥界で弁護した際、いろいろ逸脱があったため咎められることとなったカンニムら3人の使者。その違反を帳消しにするため、カンニムたちはやはり地上で違反を犯している精霊ソンジュ神を成敗するよう命じられる。だがソンジュ神と関わったことがきっかけで、使者のヘウォンメクとドクチュンは消されていた自分たちの過去と対峙することに…

韓国映画で感心するのはどんなにヒットしても安易に続編を作らないこと。もしかしたらあるのかもしれないですけど自分は知りません(『グエムル2』はいまも待ってますが…)。この『神と共に 因と縁』は2作目ではございますが、後付ではなく最初から1作目と対になるよう作られています。前後編というより、表と裏、演繹と帰納の関係。そんな構成が面白うございました。

『罪と罰』では一応脇役だった3人の使者ですが、今回は彼ら自身が主人公となり、千年前の文字通りの「因縁」が語られます。そんだけ前の時系列なのでお話の半分は高麗時代の歴史劇となります。韓国の歴史ものというとテレビドラマではわんさかありますが、映画だとそんなに紹介されてなかったような(これまたわたしが知らんだけか?)。そんな珍しい題材がこれまた興をかきたてられました。

一方でそれなりに仲良くやってる感じだった3人の絆が、秘密が明かされるごとにどんどん危機を迎えていくという流れだったのでその辺は見ていて辛うございました。本当に「こういう風にならなきゃいいな」という方向に予想通りに話が進んでいきます。妖怪や裁判でハラハラさせられた1作目とはかなりスリルの質が違いました…

以後、ほぼラストまでネタバレで。

 

まあ第1章のムードからして、悲劇では終わらんだろうという安心感もありましたけどね(笑)。千年前の死ぬ前のこととはいえ、何も言わずにあんなひどいことをしたカンニムを笑ってゆるすヘウォンメクとドクチュンにさめざめと泣かされました。『罪と罰』ではお母さんがらみの人情話で「はい泣いて! さあ泣いて!」という感じで逆に醒めましたが、ひねくれ者としてはこちらの方が涙腺のツボに来ました。

調べたら監督さんの作品では韓国版『クールランニング』とも言うべき『国家代表!?』(2009)を以前に観ておりました。こちらは『神と共に』よりお笑いに振り切れたドタバタスポーツ喜劇となっています。やっぱりお母さんネタで泣かせるようなところはありましたが。あとこの人、ゴリラが野球をやる『ミスターGO!』なんてのも撮ってますね… 題材の選びようがいちいち奇抜でございます。

『神と共に』二部作はさすがに大体公開が終了しましたが、日本でも根強いファンを獲得したようでポツポツとリバイバル上映が行われております。『バーフバリ』もそうですが配給のTWINさんはこういう映画を見つけてくるのが上手ですね。これからもアジアの傑作の発掘・紹介を期待してます。

 

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August 08, 2019

玩具の神様 ジョシュ・クーリー 『トイストーリー4』

Ts 本年度最速と言われるほどに収益を稼いでおきながら、ネットでは賛否両論大激突となっているシリーズ最新作。本日はそんな『トイストーリー4』について語らせていただきます。9年前に書いた前作『3』の感想はこちら。

長年の友アンディと別れ、新たな所有者ボニーのオモチャとなったウッデイたち。だがボニーはほどなくしてウッデイに飽き、自分がゴミでこしらえたフォーキーに夢中になってしまう。それでもボニーのためと健気にフォーキーの世話に励むウッディ。そんなある時ボニー一家がバカンスに訪れたあるレジャー施設で、ウッディは離れ離れになった恋人のランプ、ポーと再会する。

すいません… 今回もまたのっけからネタバレ全開で。以下は「絶対に観ない」「すでに観た」という方だけごらんください。

 

 

思えば何から何まで完璧だった『トイストーリー3』。まださらに続けると聞いた時、「それはいるのか?」とわたしも思いました。ただ前作でたったひとつ不安になったことをあげるならば、それは「ボニーが大きくなった時、ウッディたちはまた同じ悲しみを経験するんだろうな…」ということ。でもまあ、それはまだ先のことだろうと予想していたら、本作の冒頭で早くもウッディに飽きているボニー。(現実世界では9年の歳月が流れていますが)まあ、なんと残酷なお話を思いつくのでしょう。ですが、子供というのは本来ああいう飽きっぽい生き物です。アンディのように何年も同じオモチャに愛情を注いでる方が少数派でしょう。わたしたちも胸に手をあてて思い出せば、買ってもらった当初はお気に入りだったのに数日で飽きてしまったオモチャを色々思い出せるのではないでしょうか。そしてこの『トイストーリー』は1作目から一貫して、様々な形で「子供の残酷性」をやんわり描いておりました。

それでもボニーのために、隙あらばゴミ箱に戻ろうとするフォーキーを諭すウッディ。1作目でお気にいりの地位を奪ったバズを陥れようとしてたころから比べると、驚くほどの成長ぶりです。そんな風に同じことを繰り返しているようで、決してマンネリには陥らないのが『トイストーリー』の真骨頂であります。ウッディは今回「いずれ手放されると知りつつ所有者の元に戻るべきか?」という「2」と同じ選択を迫られるわけですが、以前とは違う決定をくだします。

「おもちゃであるのならば、やはり自分から持ち主の元を離れるべきではない」「それはウッディらしくない。『トイストーリー』らしくない」という意見もよく聞きます。しかしこの度は『2』の時とは状況が違います。あの時はウッディはまだアンディに愛されてたからあえて「戻る」決断をしたのでしょうが、今回は別にボニーに必要とされてるわけではありません。見向きもされなくなっても、おもちゃであるならばそれに耐えていかねばならないのか? すでに同じ悲しみを味わっている彼に、わたしはとてもそんなことは言えません。そりゃウッディは確かにおもちゃかもしれませんが、1作目からずっと映画館で観続けているわたしからすればもう彼は映画のキャラクターというより24年来の親友であります(これまた一方的な友情ではありますが)。

とりあえずこれでウッディは「いつかは手放される」というオモチャの宿命から解き放たれたわけで。新たな門出に立った友達をわたしとしては心より祝福したい。残されたバズたちがちょっと心配ではありますが、ウッディの姿を見た仲間たちもしかるべき時にそれぞれ決断をくだすことでしょう。バズといえばこのシリーズはもともと「究極に面白いバディものを」という発想で作られた作品でしたが、バズとの出会いを始まりとし、別れで幕を閉じるとするならば1・2・3・4で見事に起・承・転・結に符号しておりました。

あととりわけ興味深かったのは、「おもちゃが誕生した瞬間」が見られたこと。新キャラクターのフォーキーはもともとは廃棄物でありましたが、ボニーがおもちゃとして作り上げた瞬間に自我が芽生え別の存在へと生まれ変わります。ここからこの世界ではメーカー製でなくとも、子供が遊ぶ対象として作られた時点でそれが「おもちゃ」となることがわかります。ただフォーキーは由来がゴミであるせいか、一生懸命ゴミ箱の中に戻ろうとするあたりに腹がよじれました。そんなフォーキーにウッディはオモチャとしての心得をこんこんと説きます。おもちゃというのはいつも子供たちに寄り添い、励まし、元気をくれる存在なんだと。こうなるとこの世界におけるオモチャは単なる物体の枠を越えてもはや守護天使といっていい存在にまで高められております。ただその愛情が必ずしも報われるわけではないあたり、あまりにも哀れな守護天使ではあります。

このフォーキーもそうですが、新キャラがいちいち魅力的すぎたり小ネタが充実しまくってるあたりも、「4」はまごうかたなき『トイストーリー』でした。特に忘れられないのはCMの演出が派手すぎたゆえに辛酸をなめることになったスタントレーサー、デューク・カブーン。変身ベルトを巻けば仮面ライダーになれると信じていたのに、現実はそう甘くなかったことを思い知らされた幼い日の記憶がよみがえります。射的ゲームの景品としてぶら下げられてた趣味の悪い色のウサギとヒヨコもシュールな漫才でにぎやかしてくれました。

大人たちはついあーでもない、こーでもないと議論してしまいがちですが、わたしが観た回でははじめてスクリーンでウッディやバズを観るお子様たちがおおはしゃぎで作品を楽しんでました。『トイストーリー』はおそらくこれからまだまだ子供たちに愛され続けるアニメとなるでしょう。おじさんも引き続き愛していきます。

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July 31, 2019

国際的なる宇宙 F・ゲイリー・グレイ 『メン・イン・ブラック/インターナショナル』

あ、これもう公開終わってますね… 大人気シリーズ、久々の新作だったのになんでかあまり盛り上がらなかった『メン・イン・ブラック/インターナショナル』をご紹介します。

宇宙人の来訪や襲撃からひそかに地球を守り続けている秘密組織メン・イン・ブラック。幼いころエイリアンと遭遇したことがあるMは、なんとかその一員になろうと励み、ついに組織の本部に潜り込むことに成功する。その行動力を認められた彼女はMIBの研修生としてヨーロッパ支部に派遣される。そこでMはイケメンの英雄的エージェントHと組むことになるが、Hの話やそぶりには怪しいところが目立ち…

今回はおなじみのJ(ウィル・スミス)とK(トミー・リー・ジョ-ンズ)のコンビからキャストを一新。『マイティ・ソー/バトルロイヤル』での掛け合いが記憶に新しいクリス・ヘムズワースとテッサ・トンプソンが主役をつとめることになりました。男女コンビということで途中から恋愛モードに突入していくのかな?と思いきや、お互い憎からずは感じているようですが、基本的には同僚・バディとして活動していきます。その辺が今風だな~と感じました。

ただそれ以外はこれといって印象的だったり斬新だったりするところがなく、シリーズのお約束を一通りなぞっただけで終わってしまった『2』と同じ過ち?をたどることとなってしまいました。たしかにファンは「これこれ、いつものこの味」というのを期待しているかもしれませんが、世界興収がいまひとつ、日本興収がいまふたつだったことを考えるともう少し思い切ったアイデアが必要だったかな…とは思いました。こう書いてる間にもどんどん記憶が薄れていきます。年のせいか物覚えが悪くなる一方なので… あとこれは個人的な不満ですが、 例のパグ犬の彼の出番がもっとほしかったです。

でもまあいいところもそれなりにありました。まずMになつく松ぼっくりみたいなブサカワなエイリアン。ミニサイズながら要所要所で入れてくるツッコミが痛快でした。あとやっぱりなんといってもクリス・ヘムズワース。『アベンジャーズ/エンドゲーム』で突き出たおなかを急速にひっこめて従来通りの二枚目マッチョとして活躍してます。ただなんなのでしょう。これまでのキャリアのせいか、普通にイケメンなのに、そこに立っているだけで名状しがたいおかしみを漂わせております。こんな変わった俳優、そうそういるものではありません。「しばらく休みたい」宣言もしてましたが、『マイティ・ソー』4作目も早々と決まってしまったので再来年にはまたそのコメディアンぶりが拝めることでしょう。

こちらを蹴って?ウィル・スミスが出演した『アラジン』は期待通りにヒット街道を驀進中。宇宙人より魔神がうけるご時世なんでしょうか。近々こちらの感想も書きます。わたしが書くまでもないでしょうが…

Mibi

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July 29, 2019

恋はミステリオ ジョン・ワッツ 『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』

Misuterio 『アベンジャーズ/エンドゲーム』の感動も冷めやらぬ中、行きつく間もなく新作を送り出して来るマーベル・シネマティック・ユニバース。フェイズ3の幕を締めくくるのは次世代のヒーローの中心となるであろうあの少年。『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』、ご紹介します。

サノスによる大攻勢を生き残ったスパイダーマンことピーター・パーカー。師を失った悲しみが癒えない彼は、それをまぎらわすかのようにクラスメイトと共にヨーロッパ旅行に出かける。あわよくばその機会に思いを寄せるミシェルに告白しようと意気込んでいたピーターだったが、シールド長官フューリーの勧誘や異次元からの脅威「エレメンタルズ」の来襲でバカンスは大混乱に…

スパイダーマンのテーマといえば「大いなる力には大いなる責任が伴う」。ですが今回のピーターはどうにも目の前のミッションに消極的。それもそのはず。彼の「力」というのは本来クモ能力くらいなものなのに、MCUでは「アイアンマンの後継者」「次世代アベンジャーズのリーダー」「地球規模の衛星兵器の管理者」と高校生にドデカすぎる責任を負わせ過ぎなんですよ。もっと他にキャパシティの広い大人のヒーローはいないのか…とも思いますが、キャップもアイアンマンもいない中、MCUで最も人気のあるヒーローは彼しかいないので、興行的にそういう流れになってしまうのは仕方のないことやも。

原作では普通にアイアンマンもキャプテンアメリカもバリバリ活躍中なので、約60年の歴史を誇っていてもスパイダーマンは未だにヒーロー仲間では傍流的存在だったりします。また某メディア(笑)のバッシングのせいで世間からは「ちょっと胡散臭い奴」と思われてもおります。そんなコミックとの差異が面白くもあるのですが、もしかするとこれからは映画のスパイダーマンもそういう風になっていくかも…と予想するのは気が早いでしょうか。

今回のキーマンとなるのは「敵か味方か」というフレーズがよく似合う新キャラクター「ミステリオ」。コミックファンならばそんなん敵に決まってんだろ―ツ!と言いたいところですが、先の『キャプテン・マーベル』におけるスクラルの例もあるので「もしかしたらいいやつかも?」という可能性も捨てきれない。では実際どうだったかというと… あ、以降は9割方ネタバレで

 

 

 

 

順当に悪役でございました。演じてるジェイク・ギレンホールの魅力もあり自分もうっかりだまされるところでありました。そういえばジェイクさんの映画で『ナイトクロウラー』という作品がありましたが、あれも扇情的・作為的な映像で野望を実現しようとする男の話でした。今回のジェイク氏となんか重なります。あと最近ジェイクさんが小動物をかわいがってたり、小児科を慰問にいってたりと「このひと、いいひとだなあ」という画像がよく出回ってるんですが、「映画と本人は別」とわかってはいても、どうしても「もしかしたらだまされてるのか? それは君の見せかけの姿なのでは?」という思いがぬぐえないのでした。いやだわ… いつのまにぼくはこんな疑い深い大人になってしまったのかしら…

さて、偉そうに語っておりましたが、実はわたくしこの「ミステリオ」というキャラクター、邦訳本では見かけたことがございません。これまた歴史の長いヴィランではあるのですが、そんなにトップ人気な悪役でもないのですね。映画7作目にしてようやく登場したというのもそれを裏付けております。わたしがミステリオで特に思い出深いのは池上遼一氏が手掛けられた「ぼくらマガジン版」にて描かれた「にせスパイダーマン」というエピソード。「暗い・しんどい」と評判の?池上版の転換点となる痛切なストーリー。気になる方はぜひ手に取って…と言いたいところですが、現在中古版しかないのがこれまたつらいところです。

話を元に戻しまして。先日待望のMCUフェイズ4(2020-2021)のラインナップが発表されましたが、そこにスパイダーマンのタイトルはなく。今年3本もスクリーンに登場した反動か、少なくとも二年は姿が見られないわけで。『ファー・フロム・ホーム』が非常に気になる幕切れだったので、はやいとこ次の情報がほしいところです。

また、本作品で「嘘だった」とされた平行世界=マルチバースについては『ドクター・ストレンジ』続編で扱われることが確定いたしました。あるのかないのか、どっちなんじゃーい!!とツッコミたくもなりますが、今度こそ本当でありますように。そしてマーベル・シネマティック・ユニバースがさらなる拡大を続けていきますように。

『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』は世界で10億$、日本で『ホーム・カミング』にならぶ28億円の売上を達成したと本日のニュースで知りました。アメイジング二部作と並ぶ31億には届くでしょうか。がんばれ!

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July 16, 2019

殺し屋さんは休業中 南勝久・江口カン 『ザ・ファブル』

ヤングマガジン連載の一風変わったノワール(なのか?)漫画を、岡田准一主演で映画化。本日は現在好評公開中の『ザ・ファブル』、紹介いたします。

裏社会であまりにも凄腕のため「ファブル(寓話)」と恐れられていた一人の殺し屋がいた。ある時大仕事を片づけたそのファブル…佐藤に、彼のボスはサポート役の陽子と共にしばらくほとぼりをさますよう命じる。指定された大阪の街で佐藤はごくごく普通の生活を送ろうと決心するが、その噂を聞きつけたヤクザたちの抗争に巻き込まれ、否が応でもその腕を振るわざるを得なくなる。

米国映画で人気のジャンルのひとつに「なめてた相手が凄腕の殺し屋だった」というものがあります。『96時間』『ジョン・ウィック』『ザ・コンサルタント』『イコライザー』etc。この映画の予告を見て「いよいよその日本版が登場か!?」と意気込んだのですが、微妙に違いました。「凄腕だと思ってた殺し屋がその通りだった」的な作品でした。でもまあそんなことは小さいことで、期待通りのアクションを見せてくれればそれでよいのです。そこはジャニーズで最も格闘術が高い岡田准一(推定)、さすがの身のこなし・体裁きでございました。中でもとりわけ驚いたのは銃撃戦・肉弾戦よりも、ひょいひょいと壁をつたって3階分くらいロック(ウォール?)クライミングしていくシーン。いやあ、まるで忍者そのものでございました。

お話の方はどうかと申しますと、ちょっと『水戸黄門』とか『暴れん坊将軍』とか昔懐かしの時代劇に近いものがありました。身分を隠して市井に暮らす剣の達人が、貧しい親孝行の娘と知り合うが、その娘は悪徳商人に借金の方に売られそうになってしまう。その後の展開は言うまでもありませんね(笑) この映画はその悪徳商人もまた、別の悪人に娘共々さらわれてしまうところがややこしいのですが。

もうすでに大概ネタバレですけど、わたしが「いいなあ」と思ったのはファブル佐藤が最後までヒロインに自分の正体を明かさないところ。アメコミヒーローなんかはすごく軽率に自分が「○○マンだ」と告白してしまいますよね。そうしたい気持ちも大変よくわかるのですけど、やっぱりここは素知らぬ顔を通し続けるのがストイックで男らしいと思うのですがどうでしょう。

やや難点なのはユーモアセンスがちょっと独特というか、いわゆるクドカン的というか、福田雄一的なところ。波長の合わないギャグをえんえんと繰り出されるのってけっこうきついですからね。幸いわたしはまあまあ楽しめたのでよかったです。あと岡田君演じる佐藤の、特殊な環境にいたゆえ常人といちいち感覚が異なるキャラクターが見ていて興味深かったです。

『ザ・ファブル』は公開から4週目に入りましたが、いまだに売上6位に入るという健闘ぶり。なんか最近は邦画も恋愛ものとか感動ものより、アクションや渋い社会派作品の方が好調ですね。わたしゃほとんど見ませんけど、いろいろあった方がいいと思うので胸キュンキュンの恋愛映画クリエイターたちもがんばってください。

 

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July 10, 2019

オレゴンから哀 アンドリュー・ヘイ 『荒野にて』

ここんとこ殺伐としたブロックバスター的な映画ばかり紹介してましたが、今回は久しぶりにしっとりした叙情性溢れる作品を紹介します。現代アメリカを舞台に馬と少年の旅を描いた『荒野にて』、紹介します。

父と二人でオレゴンに住む少年チャーリーは、競馬の施設をうろついていたことがきっかけで、競走馬の世話をするバイトを始める。そのうちの一頭、リーン・オン・ピートと仲良くなったチャーリーは甲斐甲斐しく面倒を見るが、ある時雇い主がピートを屠殺場へ売ろうとしていることを知ってしまう。チャーリーはピートを救うためにトレーラーを盗み、果てしない荒野を旅することになるのだが…

この映画を観ようと思ったきっかけのひとつは、単に自分が「荒野系」の話が好きだからです。ジャック・ロンドンの諸作とか、映画『イントゥ・ザ・ワイルド』『私に出会うまでの6000キロ(原題 Wild)』とか。こちらは意外と荒野の場面少なかったですけど… あるいは誰も頼れないチャーリー少年の境遇を表しての邦題だったのか。ちなみに原題は単に劇中に登場するお馬さんの名前(Lean on Pete )であります。

もうひとつの鑑賞動機は普通にかわいそうな少年とお馬さんがどうなるか気になったから。一人と一匹で貧しいながらも生き抜いていこうとする姿は、まるで『フランダースの犬』そのもの。チャーリーとピートがネロとパトラッシュのようになりはしないかとハラハラしながら見守っておりました。

役名と同じ主演のチャーリー・プラマー君は本作の演技で高い評価を得ております。最初はぽややや~んとした年相応の顔をしているのですが、状況が苛酷になるにつれ引き締まった「男」の風貌へと変わっていきます。それがなんとも切のうございました。ただ可哀想ながらも作り手の優しさがちょこちょこ見え隠れするところもあり、後味は決して悪くはなかったです。

それにしても馬というのは一部の人たちを本当にひきつけるようで。『戦火の馬』の主人公も自分の命が危ないのに「うまーうまー」言うてたし。わたしが「馬好き」で思い出すのは『動物のお医者さん』の菅原教授。個人的にはあんまり魅力がわからない方でありましたが、『レッドデッドリデンプション2』というゲームでこまめに馬の面倒を見てるうちにちょっとかわいく思えてきたところです。ゲームと実際では労苦が全然違うでしょうけど… 

 

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July 08, 2019

火の鳥アメコミ編 サイモン・キンバーグ 『X-MEN ダークフェニックス』

Xmendp1 アメコミムービー隆盛のきっかけとなった映画X-MENシリーズ。約20年に渡ったその歴史が、昨年のディズニーによる20世紀FOXの買収でひとつの区切りを迎えることになりました。その最終作となる『X-MEN ダークフェニックス』紹介します。

80年代にアポカリプスを倒して以降、X-MENは正義のヒーローチームとして認められ、ミュータントの地位も向上していた。だがスペースシャトルが謎のエネルギー体に襲われる事件が起き、その救出に際しメンバーのジーン・グレイはエネルギー体に翻弄され危うく死にかける。なんとか生還したジーンだったがそれ以来ただでさえ不安定だったパワーの制御がますます困難に。そして信頼していたリーダー、プロフェッサーXの欺瞞に気付き始める。

2006年の『ファイナル・ディシジョン』までは現実の時間軸と並行して作られていた(ように思える)X-MENシリーズ。しかしそこで一旦行き詰ってしまったため、60年代、70年代、80年代それぞれの前日談が作られました。ここで1作目に追い付くのかな?と思ったら今度は律儀に90年代のエピソードを用意してきました。それはいいんですけど結局このシリーズは13年前からほとんど前に進まなかったという… まあスターウォーズもそういう時期があったし、こないだの猿の惑星・エイリアンもそうだったし、20世紀FOXのお家芸なのかもしれません。

ただ前日談に終始しても完成度が高ければ…というか、前後と整合性が取れていればよいのです。過去作をちゃんと復習して、忘れられたような要素とか心憎い形で拾ってくれたり、感動的に再アレンジしてくれたらオタクはもう大喜びなのです。先の『アベンジャーズ/エンドゲーム』がそのもっとも成功した例ですし、『ワイルドスピード/スカイミッション』『ミッション・インポッシブル/フォールアウト』なども同様です。しかるにこの『ダークフェニックス』はどうだったかというと…これがつながるはずの『フューチャー&パスト』の結末とどう考えてもつながらそうな結末と相成りました。もう1作作ってそれで軌道修正するはずだったのか? それとも色々上から指示が入って迷走してしまったのか… その辺は憶測を巡らすしかありません。考えてみれば最近のX-MEN映画って『ローガン』といい『デッドプール』といい本家とつながってるのか微妙そうなものばかりでしたしね。頭を柔らかくして「それぞれ時間軸が別なんだろな」と考えてあげるべきなのかも。

なんだか愚痴っぽくなってしまいましたが、コミックファンとして興味深かったのはプロフェッサーXことチャールズ・エグゼビアの裏面ぽいものが描かれていたということ。エグゼビア教授は原作では90年代中ごろまで一片の汚れもない清廉潔白な指導者だったのですが、新世紀に入る前後あたりからダークサイドが暴発したり過去の悪行がばらされたりして株が急暴落し始めます。『ダークフェニックス』はそこまでひどくはありませんでしたが、名誉を追い求めたり、人の記憶を勝手に操作してしまう教授をどこまで信じてよいのか?と観てるものをハラハラさせてくれます。ダークサイドといえば今回メインであるジーン・グレイもそうです。『ファイナル・ディシジョン』の例もありますし、コピーも「最強の敵」だし、闇落ちはもう確定的。マーベルのヒーローには後ろ暗い面も持ってる者も多いですけど、ことX-MENは世間から迫害されているという背景ゆえか善悪の境界をぶらぶらしている者ばかり。そういうハードなところが魅力でもあったがゆえにマーベルコミックでトップの人気作となったわけですが、映画では「暗い」「地味」という印象が先に立ってしまったのか、アベンジャーズにどうにも差を着けられてしまったのが辛いところです。

とにもかくにも、離れ離れだったX-MENやファンタスティック・フォーも、以降はマーベル・シネマティック・ユニバースに統合されることになります。今度こそキャラ多すぎで収拾つくのかと不安になる一方、剛腕ケビン・ファイギならきっと上手にまとめあげてくれるだろうという期待もあります。というか期待の方が全然大きい。彼らが真に合流するのはまだまだ4、5年先、というのが大方の予想ですが、夏に発表されるMCUフェイズ4のラインナップでそれは明らかにされるでしょう。本当にマーベル・ディズニーはじらすのがお得意ですよね。いい加減教えてくださいよおおおおおお(身もだえ)

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July 02, 2019

コリアン大霊界 キム・ヨンファ 『神と共に 第1章 罪と罰』

予告を見た時は「マトリックスのバッタモンみたいやな…」と思った(失礼)のですが、SNSでの熱意溢れる賛辞と「『新感染』を越える歴代2位の大ヒット!」という文句に惹かれて観てきてしまいました。『神と共に 第一章:罪と罰』、ご紹介します。

消防士ジャホンはビル火災で少女を救おうとして殉職。彼は三人の「使者」に誘われ冥界へと連れて行かれる。使者たちはジャホンに亡者が生前の罪に関して七つの法廷で裁かれ、潔白と証明されたものだけが生まれ変われると告げる。生前多くの命を救ったジャホンだけに、その無実はたやすく証明されると思われたが…

あの世めぐりの話というのも色々あります。古くはダンテの『神曲』。映画だと『地獄』『大霊界』『ビルとテッドの地獄旅行』『奇跡の輝き』、最近でも『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ!』などもありました。しかし韓国のあの世事情というのは全然知りませんでした。そんなお隣の風俗慣習について楽しく学ぶのに非常に役立つ映画でした。

で、観てみてわかりましたが、韓国のあの世というのはけっこう日本の言い伝えに近かったです。三途の川があったり、閻魔大王がいらしゃったり。違うのは殺人・怠惰・嘘・裏切り・不義・暴力・親不孝それぞれの罪を診断する七つの法廷があるということですね。なんでかキリスト教の「七つの大罪」と似通ってるところが面白いです。これらの罪というのは人間ならば誰でもひとつやふたつはやらかしてる些細なものもあるので、七つぜんぶをクリアするのは相当至難の業と言えましょう。とりあえず韓国映画の名作の主人公たちは一人残らず無間地獄行きかと思われます。

主人公のジャホンはいいやつなのですが、最初から最後までずーっとしょんぼりしてるため、いまひとつ華がないというか頼りない。日本の役者さんがやるとしたら濱田岳氏あたりが非常に似合いそうです。一方でジャホンの護衛となる3人の使者はめっぽうキャラ立ちせいております。リーダーでミステリアスなカンニム(演じるハ・ジョンウ氏は『チェイサー』の殺人鬼役が強烈でした)。血気盛んな青年ヘウォンメク。GJポーズがかわいらしい少女ドクチュン。この1+3のチーム構成は『西遊記』『三銃士』『桃太郎』『オズの魔法使い』といった古今東西の冒険ものの定番でありますね(『バビル二世』もか)。

清廉潔白かと思えたジャホンにも叩くと色々埃が出たり、思わぬ邪魔が入ったりで彼らの旅は困難を極めます。これ、絶対いいところで第二章に「つづく」となるパターンだよなーとおもっていたらけっこうキリのいいところで終わってくれてよかったです。

そんなわけで現在早くも第二章の『因と縁』が公開中。韓国が誇る筋肉スター、マン・ドンソク氏もキャストに加わるということで期待が膨らみます!

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June 28, 2019

必殺仕事ニーソン除雪編 ハンス・ぺテル・モランド 『スノーロワイヤル』

わたしはあんまり役者さん目的で映画を観に行ったりしないんですが、例外的なのがリーアム・ニーソン主演のアクション映画。なんか他の筋肉俳優にない味があって面白いんですよね。というわけでそのリーアム・アクションの最新作『スノーロワイヤル』ご紹介します。

コックスマンはロッキー山脈のふもとにある雪深い都市デンバーで、長年地道に除雪にいそしんできた男。ある日そのコックスマンの元に息子がドラッグの過剰摂取で死んだという悲報が届く。息子が麻薬カルテルの取引に巻き込まれて殺されたことを突き止めたコックスマンは、組織のメンバーを一人一人血祭りにあげていく。だがその犯人がわからないカルテルは、対抗組織が宣戦布告してきたと勘違いして…

主演作ではだいたいいつもかわいそうなリーアムさん。今回もいきなり息子に死なれるわ奥さんに責められるわ観ていて胸がしくしくと痛みます。さぞかし壮絶で鬼気迫る復讐劇が展開されるのでは…と思いきや、確かにそうなんですが全体的に人を食ったようなシュールなユーモアが全体に満ちています。どう考えても端役にすぎないようなマフィアの一員にも、亡くなる度に珍妙なあだ名と共に追悼?の画面が用意されてたり。二つの組織が一人の怪人物に翻弄されていく流れは黒澤明の名作『用心棒』とも似ております。

監督はノルウェーの新鋭ハンス・ぺテル・モランド。この映画はもともと彼が本国で撮った『ファイティング・ダディ 怒りの除雪車』という作品のセルフリメイクなんだそうです。こちらでは白人とネイティブ・アメリカンの争いでしたが、元ネタではノルウェー人とセルビア系の抗争になっています。舞台は変わってもこのポカーンとしちゃうユーモアセンスはやっぱり北米ではなく北欧のそれでした。

北欧と言えば雄大な雪山を背景に古風な街並みが広がっているデンバーの景色は、なじみのないものからすると「アルプスの街」と言われたら普通にそう見えてしまいそう。ヨーロッパの雪景色と違うのは行きかう人々の中にちらほらネイティブ・アメリカンの方がおられることですね。雪山にネイティブの方たちと言えば昨年の『ウィンド・リバー』を思い出します。実際デンバーのコロラド州とワイオミングは隣同士でわりと近所のようです。ただどん詰まりで生活が苦しそうだった『ウィンド・リバー』に比べると、デンバーは観光が盛んなせいか雪深いながらも都市部はかなり華やかそうでした。

話をリーアムさんに戻しますと、悪人どもには全く容赦しない反面、大ボスの幼い子供にはとても優しいあたりほのぼのとさせられました。児童にベッドで除雪車のカタログを読み聞かせてあげるシーンがあるんですけど、めちゃくちゃ似合いすぎでした。この点、やはり息子を殺されたネイティブのボスが「子供には子供を」と対等のものを求めるところとまことに対照的でした。あほらしいながらもそんな三組の親子の対比がなかなか興味深かったです。

時期的にまったく正反対なんですが、むしむし暑い今日この頃、冷房の効いた映画館で観るとむしろ納涼にちょうどよくて気持ちいいかもしれません。あともう1週くらいは上映してるんじゃないでしょうか。

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June 26, 2019

沈黙の艦内 ドノバン・マーシュ 『ハンターキラー 潜航せよ』

こちらは二ヶ月ほど前に公開されてたのですが、ほかに注目作が多かったのでついスルーしてしまったのでした。ところがツイッターでじわじわと評判になっていくのを眺めているうちに「観とけばよかったな~」と後悔。そこへちょうどよく遅れて別の劇場でやってくれたので、これ幸いと鑑賞してきたのでした。『ハンターキラー 潜航せよ』、紹介いたします。

ロシア近海を演習で潜航していた米軍の潜水艦が、突如として消息を絶つ。米国海軍は事態を調査すべく、一平卒からのたたき上げであるジョー・グラスと原潜アーカンソーのクルーを現地に向かわせる。やがてグラスたちは事件の背後に米露を揺るがす大きな陰謀が関わっていることをつきとめる。核戦争への発展を防ぐべく、アーカンソーは想像を絶する危険な海域へ針路を向ける。

というわけで最新版の潜水艦映画です。このジャンルで名作と言われるのはウォルフガング・ペーターゼン監督の『Uボート』ですが、残念ながら観てません。数少ない鑑賞した作品は『クリムゾン・タイド』『U-571』『ローレライ』といったあたりです。それだけしか観てないのに語るのは気が引けますが、潜水艦映画というのは他の戦争映画とは少々違った醍醐味があります。そのひとつは「先に相手に気付かれたらダメ」ということ。深海の静寂の中で息をひそめ、相手がボロを出すのを必死に待つ戦い。本当に息が詰まるような緊張感があります。

醍醐味のもうひとつは魚雷。魚雷というやつは戦闘機のミサイルよりゆっくりですが、その独特なスピードがかえって恐怖感をあおります。直撃すればもちろん一発でオシャカですし、そばで爆発しても船体のあちこちから水が噴き出して「押しつぶされる!」というパニック感がみなぎります。醍醐味というか「いかにおっかないか」という説明になってきました。この『ハンターキラー』はそういった深海戦闘の面白さと恐怖がよく表れておりました。

そんな風におしっこちびりそうなスリルに満ち溢れているのに、同時にとてもすーがすがしい映画なんですよね。主演が『300』や『エンド・オブ・ホワイトハウス(キングダム)』のジェラルド・バトラーだし「キラー」とタイトルについてるし「手当たり次第にぶっ殺す!」というノリなのかと思いきや、これがなるたけ「殺さないように殺さないように」という方向に進んでいきます(まあアクション映画なんでそれなりに死人は出ますが)。宇宙船から帆船までフィクションの中で様々な艦長を観てきましたが、グラス艦長が際立っているのはその最大の武器が軍略でも気迫でもなく「信頼」だということ。キーパーソンとしてもうひとりロシア軍の潜水艦艦長が出てくるのですが、敵とも味方ともしれぬこの男を、グラスは「同じ潜水艦勤めだから」という理由で不動の精神で信じぬくのですね。その信頼が八方ふさがりで突破不可能のように思えた状況を打開させていく糸口となっていきます。また地上でも共同作戦にあたっている別クルーがいるのですが、彼らもまた顔も知らず言葉も交わさないグラスたちを信じて決死の任務を遂行していきます。

ロシア側の艦長を演じるのはスェーデン版『ミレニアム』で有名なミカエル・ニクヴィスト氏。残念ながらこれが遺作となってしまいました。奇妙なことにもうひとつの遺作の『クルスク』という映画も潜水艦を題材にした作品だそうで。コリン・ファース、レア・セドゥといったそうそうたるキャストなのですが、いまのところ日本公開の予定なしだったり…

そのうちDVDにもなるでしょうけど、やはり深海の戦いは真っ暗で音がよく響く映画館で観た方が臨場感たっぷりですね。滑り込みで観られて本当によかったです!

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June 21, 2019

地球兄弟 五十嵐大介・渡辺歩 『海獣の子供』

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怪獣の次は海獣の話。文化庁メディア芸術祭漫画部門を受賞した五十嵐大介氏のコミックを、『鉄コン筋クリート』などのSTUDIO4℃がアニメ化。『海獣の子供』、紹介します。

海辺の町に住む少女琉花は夏休みに父の勤める水族館を訪れたことがきっかけで、海と空という不思議な兄弟と出会う。彼らは3歳まで主に海中でジュゴンに育てられたのだという。常識にとらわれない二人に翻弄されながらも、兄弟のことがどんどん気になっていく琉花。やがて彼女は海と空が「祭り」と呼ばれる地球規模の現象の中心であり、彼らに残された時が少なくなっていることを知る。

原作は未読なのですが、ぱっと見た限りとても動画にはしにくそうな絵柄。しかしSTUDIO4℃の超絶技巧によって、その繊細な線画が忠実に再現され、かつびゅんびゅんと動いておりました。また、その絵柄と調和して色合いも淡い水彩画のような趣があります。そんなタッチで描かれた海や星空、夕焼けの背景はためいきが出るほど美しい。元はといえば原作の絵なんでしょうけど、アニメを腐るほど観てる自分にもちょっと似たものが思いつきません。後半においてはさらに自然を超えたカタストロフィ的なヴィジュアルが暴走気味に展開されます。

恐らく評価が分かれるだろうな…と思うのはこのクライマックスの展開。中盤までの夏休みの雰囲気や、海辺で戯れる琉花たち、夏祭りや台風の風景などは現実感や郷愁が伝わって作品世界にじんわりひたれたのですが、そっからのぶっ飛ばし具合が半端ないもので頭の固いおじさんはちょっと振り落とされました(笑)。ま、こういうの日本アニメではありがちな流れですけどね。十代の少年少女の葛藤を描きながら、それが世界や宇宙にまでスケールアップしていき、抽象的で不可解な心象風景がぐるぐると描かれていくような。名作『エヴァ』や先の『プロメア』にもそういうところはあるのですが、これらは最初から非現実的な話とわかってたせいか普通についていけました。が、『海獣の子供』は現実の描写も極め細かすぎたゆえに、そのギャップがちょっと気になってしまいました。

でもまあ、本当に美術力という点ではものごっつい作品です。ジブリや新海監督ともまた違ったこのアート的なスタイルをSTUDIO4℃にはこれからも継続していってほしいものです。昨年の『ムタフカズ』 もアホらしくてクールでかわいくてとても好きなんですが、あまり話題にならなかったのが残念です。

ちなみにこの映画、先ごろ結婚で話題になった蒼井優さんも声優で出ておられます。だんなさんとうまくいってない奥さんの役でしたが、現実世界では円満な夫婦生活を送られてください!

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June 18, 2019

4大怪獣 地球最大の混戦 マイケル・ドハティ 『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』

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2014年のレジェンダリー1作目 から5年。ちょいと間が空きましたが、ようやく洋画のゴジラさんが帰って参りました。しかも東宝怪獣のあんなやつこんなやつを引き連れて…! 『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』紹介いたします。

ゴジラとムートーの激闘から数年。ゴジラはそれ以来姿を消していたが、秘密機関モナークは世界各地で休眠中の怪獣を発見。極秘に観察を続けていた。だがある時そのモナークの施設が連続して襲撃を受ける。犯人は「地球を太古の自然に戻すべき」と考える環境テロリストの一団だった。やがてその手は魔王に等しき怪獣「ギドラ」が眠る南極にも及ぶ。ギドラの復活に呼応するように再び現れるゴジラ。同じように目覚めた怪獣ラドンやモスラも交え、地球は巨大怪獣たちの戦場と化していく。

今回の特色は番外編的な『キングコング 髑髏島の巨神』 ラストでも明かされてましたが、ラドン、モスラ、キングギドラといった名怪獣の登場。彼ら?が最新のCG技術でどんな風に表現されるのか胸ワクワクで待ち望んでおりました。反面不安を感じたのがこの面子が『三大怪獣 地球最大の決戦』とまったく一緒だということ。そうです。一部界隈で有名な、通訳を介してとはいえゴジラやラドンが「勝手にしやがれ!」「そうだそうだ!」とくっちゃべるあの作品です。子供の目で見ると大変楽しいんですが、前作の重厚な雰囲気とマッチするのかどうか… しかしその点は杞憂でした。まず怪獣が喋りませんでしたw そして次から次へと襲い来る怪獣たちのパニック描写が怖すぎて、『三大怪獣』にあったのんびりしたムードは全く見当たりませんでした。火山から現れて街を根こそぎ爆風で引きはがしていくラドン。無数の稲妻と三つ首の咆哮で劇場を震わすギドラ。ちょっと小さなお子さんたちはトラウマになるのでは…という迫力でした。

ただこの度メガホンを撮ったマイケル・ドハティ氏は前作ギャレス・エドワーズとはまたちょっと資質が違う気がします。ギャレスさんもギレルモ・デル・トロさんもそりゃあ怪獣が大好きだとは思うのですけど、ドハティさんの怪獣愛…それも東宝怪獣への愛はちょっと度が外れているというか、狂気にも近いものを感じます。まあでもその並はずれた狂気と愛情があるからこそ、こんだけ突き抜けた映像が作れるのかも。

そして各怪獣の個性の描き分けがまた上手なんですよね。不動の精神を持つ、戦国の英雄のようなゴジラ。禍々しい妖気を放つ悪魔の化身(キング)ギドラ。華やかな色彩で見る者を魅了する妖精モスラ。で…、この並びだとラドンがちょっと弱い印象があったんですが、意外な行動でもって思い切りキャラ立ちしておりましたw すでにネットでは「ゴマすりクソバード」なる不名誉なあだ名を頂戴しちゃっております。このお追従が得意な描写も、ドハティなりの「そうだそうだ」のオマージュだったのかもしれません。それは置いといて、この度の4大怪獣が過去作と比べて際立っているのはどなたもピカピカキラキラ輝いていること。そのひかりっぷりはモンスターで4あると同時にスターでもありました。モブっぽい怪獣も何匹か出てきますが、文字通り光ってないあたりランク的に下なんだろうな…ということがうかがえます。

他に強く感じたのはますます東宝怪獣がクトゥルーっぽい設定になってきたなあということ。オリジナルのゴジラはあくまで元は自然生物で、人間の悪行のゆえに怪獣となってしまったという立ち位置ですが、『KOM』においてはあからさまに生物を越えた神に近い存在であり、元々地球は彼らが支配していたということになっております。一方で前作からのレギュラー芹沢教授はゴジラに向かって「友よ…」と呼びかけます。この辺からもドハティ監督にとって怪獣は神であると共に大好きなお友達だったんだなあ…とほのぼのさせられました。

あと公開前に「人間ドラマが少ない」との評が流れてましたが、それなりにありましたね。人間ドラマ。しかしこの人間ドラマが「怪獣怪獣!」とのめり込んでるいかれた人たちばっかり出てくるもんで、怪獣大好きな人たちでないと共感できないんでないかと思います。わたしはめっちゃシンパシー感じましたけどね! そんな普通でないドラマの中にも無理やり親子の絆とかねじ込んでくるあたり、前作の名残が漂っておりました。

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は現在『アラジン』に押されつつ大ヒット公開中。来年にはアメリカが誇る大怪獣「キングコング」との対戦が予定されています。果たして「モンスターバース」はそこで打ち止めとなるのか。できれば『怪獣総進撃』までリメイクしてほしいところですが…

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June 14, 2019

燃やしていいのは体脂肪だけ 今石洋之・中島かずき 『プロメア』

Pma2一ヶ月後の健康診断を控えひそかにジョギングを続けているわたくしですが、それとはまったく関係なく、本日は『天元突破グレンラガン』『キルラキル』のコンビが贈る劇場アニメ『プロメア』を紹介いたします。

精神により発火できる能力を持つ新人類「バーニッシュ」が誕生した近未来。世界ではバーニッシュによる被害を食い止めるため各地で特殊消防隊「バーニングレスキュー」が活躍していた。その一員である血気盛んな青年・ガロは、テロ集団マッドバーニッシュとの戦いの中で、彼らのリーダーである若者リオと出会う。激しくぶつかり合う二人だったが、やがてガロはバーニッシュたちの哀しい運命や自分が所属する都市プロメポリスの裏面を知り、葛藤するようになる。

まあやっぱり最初に思うのは「これ、『グレンラガン』の二時間版別バージョンじゃん」ということですね。そもそも主人公のガロが『グレンラガン』の主要キャラであるカミナによく似ている。他にも『グレン~』を思わせる要素があちこちに散りばめられておりファンとしては「たまんねえぜグへへ」という感じでした(品のない表現だなあ)。

ただこれまでの中島・今石作品と違うのはこれが1本に映画であるということと、恐らく実在の役者さんを想定して、それからキャラを膨らませていということ。三谷幸喜さんが好んで用いている「あて書き」というやつですね。メインの3人である松山ケンイチ氏、早乙女太一氏、堺雅人氏はそれぞれ中島かずき先生の舞台に出ておられたとのことなので、恐らくその時彼らの演技を見ながら先生は「こういうキャラが活躍するアニメを作ったら面白かろうな」と思われたのかもしれません。とりわけそれが爆発していたのが主役二人の前に立ちふさがる執政官クレイを演じていた堺さん。普段はニコニコ穏やかな表情を浮かべているのに、尻尾をつかまれた途端別人のようにブチ切れる様子が最高でした。普通悪者が居直るところってイライラしそうなものなのに、なんでかすごい爽快だったんですよね… そういえばドラマ『新選組!』の時に聞いた堺さんのエピソードで「最初は山南さんのようにソフトな笑みを浮かべながら飲んでいたのに、酔いが回ってきたらボロボロ毒を吐き出してきた」というのがありました。まさにこのクレイは堺さんにうってつけのキャラだったと言えるでしょう。

あと同じことを繰り返してるようで、少しずつ色を変えてるのが中島・今石コンビ。彼らの作品には少なからずダイナミックプロの影響があると思うのですが、その線で行くと『グレンラガン』は『ゲッターロボ』の、『キルラキル』は『キューティーハニー』のオマージュっぽいところがありました。そして『プロメア』は原作の『デビルマン』が根底にあったんじゃないか…という気がします。まあ途中あからさまに絵柄を意識してるシーンがありましたし。「怪物」と異分子を排除している政府が、実は怪物以上の怪物だったというあたりはまさに『デビルマン』でありました。威勢がよくワイルドなガロは不動明を、中性的でクールなリオは飛鳥涼をイメージしているようにも思えます。でもまあ『プロメア』はとにかく元気で世界の破滅も気合で吹っ飛ばすようなノリなので、その辺は『デビルマン』とは全然違いますね。

絵柄の特色はと申しますと、とにかく三角と四角が目立ちます。無数の角ばった図形が画面いっぱいを縦横無尽に駆け巡る映像暴力と申しましょうか。ここんとこのアニメ映画は美術的にも恐ろしく力の入ったものが続いていますが、『プロメア』はそんな痛快なキュビズムでもって炎と氷の戦いをこれでもかという感じで描き切って、観る者を翻弄します。

そしてロボです。予告を見た時、「今回はロボはどの程度出るのだろう。おまけ程度かな」と感じていたのですが、ドカーンとやってくれやがりました。今の日本で出来る最高峰のロボアニメでございました。先日の映画秘宝のインタビューで中島先生は「レオパルドンを出していたら『スパイダーバース』はアカデミー賞を取れなかっただろう」とおっしゃっていましたが、『プロメア』からは「賞なんかどうだっていいわ! わしゃ巨大ロボが好きなんじゃあああ!」という魂の叫びが聞こえてきました。信じてたぜ… かずき…(敬称略)。わたくしそろそろ中島先生には本腰入れてゲッターロボのリメイクをやってほしいと思ってるのですが、この願いどこかのお金持ってる会社に届きませんでしょうか。

『プロメア』は残念ながら日本全体ではそんなにヒットしてないのですが、都内近郊の良い設備の劇場では満席続出という局所的なフィーバーを巻き起こしております。この映画はたぶん伝説になる… ので観られるところにいる人は今のうちに観ておいたほうがいいぜ?

2019のアニメ映画フィーバーは現在公開中の『海獣の子供』、近日封切り予定の『きみと、波に乗れたら』『天気の子』と続きます。『プロメア』と違ってオミズ系の話が多いようで。

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June 12, 2019

ロンドンVS万里の長城 フィリップ・リーブ クリスチャン・リヴァース 『移動都市/モータル・エンジン』

本日は「あのピーター・ジャクソンが(製作で)贈る!」という触れ込みで鳴り物入りで公開されたものの、あまり盛り上がらなかった(泣)『移動都市/モータル・エンジン』、ご紹介します。

人類の文明が一度崩壊した未来。世界は「移動する都市」で生活する人々と、巨大な壁の内側で定住する人々の二派に分かれていた。移動都市の中でもとりわけ強大な「ロンドン」に潜入した顔に傷のある少女へスターは、そこの技師であるヴァレンタインを復讐のためにつけねらう。ロンドンの一市民の青年トムはそれを止めようとしたことから世界を巡る大きな陰謀に巻き込まれることになる。

原作は2001年にフィリップ・リーブが発表したSF小説。この度はその1作目が映像化されていますが、全部で4作からなるシリーズだそうです。

まず感心するのは都市に巨大な車輪がついていて動き回るという発想。バンパイアハンターDの1作にもそんな話があったような。ただこちらがもっとぶっ飛んでるのは、大きな都市がまるで捕食するように小さな都市を取り込んで資源を吸収していく描写。そんな生き物のっぽい機能や西洋ファンタジーとスチームパンクが合わさったような都市のデザインは、「タイムボカンシリーズ」のユーモラスなメカたちを思い出させます。

前半はそういった芸達者なヘンテコメカの活躍が面白かったのですが、後半に入ってからはお話がシリアスになっていくせいか、だんだん奇天烈さが薄くなってしまうのがちと残念でした。本当にちっとばかりの物足りなさではありますけど。

夢を追う若者と謎のあるヒロインが冒険を繰り広げるあたりは『未来少年コナン』や『天空の城ラピュタ』とも似ています。違うのは宮崎アニメよりも少し年齢が上なことと、少女が主で少年が従ということなどでしょうか。

監督はクリスチャン・リヴァース氏。長年ピーター・ジャクソンにぴったりと寄り添い、その映画作りを手伝ってきた方ですが、今回晴れて初メガホンとなりました。師匠譲りの才能ゆえかしっかり楽しめる安定したエンターテインメントをこしらえてくれたのですけど、残念ながらこの『モータル・エンジン』は2018年で最も赤字(184億円)を出した映画となってしまいました。実際に観てみると何がそんなにいけなかったのかよくわからないのですんよね… やっぱり「都市が動く」というアイデアにひきつけられた人がそんなにいなかった…ということなのでしょうか。あと大本のネタがイカれてるわりには、キャラクターたちが総じて真面目な人たちばかりというのもよくなかったのかも。一人くらい子供に人気の、笑いを取れる著名な俳優を混ぜたらもう少しいい結果になったのか???

ともかく、ピーター・ジャクソン&弟子の捲土重来を期待しております。ちなみにピージャク氏の次回作はビートルズの『LET IT BE』を題材にした作品とのこと。ビートルズ版『ボヘミアン・ラプソディ』のような映画になるのでしょうか。はてさて。

 

 

 

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June 05, 2019

ポケットモンスター/ハード&ボイルド ロブ・レターマン 『名探偵ピカチュウ』

これまた1ヶ月前に公開されてる映画ですが、いまだに上位10作に並んでいるツワモノ的作品。ポケットモンスターの世界に新たな風を送り込んだ映画版『名探偵ピカチュウ』、ご紹介します。

人とポケモンが仲良く暮らす街、ライムシティで一人の探偵が事件に巻き込まれ姿を消す。その探偵の息子・ティムは、父の消息を確かめにライムシティの事務所を訪れる。そこにいたのは父のパートナーであった1匹のピカチュウであった。驚くべきごとにそのピカチュウは人語を話し、ティムに一緒に事件を解決しようと持ちかける。

原作は3年前にダウンロード用として発売されたTVゲーム。ポケモンに関しては「ポケットモンスターGO」をちょっとかじったくらいなんですけど(それでも今回そのおかげでけっこう助かりました)、コンセプトを聞いた時「なぜピカチュウが探偵なんだ!? あれに推理とかできんのか???」と困惑を隠せませんでした。正直今に至ってもその必然性とか理解しきれてないんですが、まあ面白かったしかわいかったんでよしとします。ピカチュウといえば今や国民的キャラクターでさんざん見慣れた感がありましたが(実際最近までジバニャンに押されてたし)、今回多くの人がやられてしまったのが予告編で見せた皺の寄った表情。普通しわがよったらどっちかというと醜悪なデザインになりそうなものなんですけど、これがなんとも言えないかわいらしさがありまして。ココアに少量入れる塩のような効果がありました。某『ゴールデンカムイ』のヒロイン、アシリパさんの変顔にも似ておりました。

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ピカチュウの声をあてているのは『デッドプール』での怪演で有名なライアン・レイノルズ(吹替え版では西島秀俊氏)。これもどうせ受け狙いでキャスティングしたんだろうな~~~と冷ややかな印象を抱いておりましたが、最後まで観てみたらそれなりにちゃんと理由があったことがわかりました。あとネットの感想を見ると「真相が簡単にわかった」みたいな声がけっこうあがっておりましたが、自分は普通にだまされました(笑)。ですから「探偵」とついてるだけあって一応ミステリー映画としても鑑賞できます。ちなみに映画はきちんと事件が解決されますけど、ゲームの方はこれから完結編が発売され、映画とはまた違った結末を迎えるとのこと。

探偵ものといえば監督はこの映画を作るに当たり『ブレードランナー』を参考にしたとのこと。これまた予想斜め上のタイトルでございます。たぶんブレランの闇の深い街の背景とか、大きな陰謀に一人立ち向かうヒーローの姿とかを意識したんだと思います。そういえば作品に出てくるポケモンは普通にアンドロイドに置き換えても普通にお話が成立しそう。まあポケモンの方がかわいいしカラフルだし観ていて楽しいですけどね。

監督のロブ・レターマン氏は他にも『モンスターVSエイリアン』など撮っていて、怪獣にも並々ならぬ思い入れがあるようです。本作品におけるドダイトスやミュウツー、リザードンの描写には怪獣映画顔負けの迫力がありました。その辺はさすがモンスターバースやジュラシックワールドのレジェンダリーピクチャーズでございます。

ちょうどいまレジェンダリーの新作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』が上映中ですけど、両方ともモンスターを愛するおじさんとして渡辺謙氏が出演していたり、モンスターと人間の共存がテーマのひとつだったり、共通するところも幾つかあって観くらべてみると一層面白いかと思われます。また夏には恒例のポケモン映画に第1作のCGリメイク『ミュウツーの逆襲』が公開予定。かわいいのから怖いのまでモンスター花盛りでよろこばしいことでございます。

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May 29, 2019

その男、エドゥアール ピエール・ルメートル/アルベール・デュポンテル 『天国でまた会おう』

フランスのアカデミー賞と言われるセザール賞を5部門で受賞。大都市では3月くらいに公開されたものが連休中にこちらでもかかり、これまたいまさらではございますが感想を書いておきます。『天国でまた会おう』、まずはあらすじから。

第一次大戦末期のヨーロッパ西部戦線。上官の無茶な命令で敵陣に突撃した若き兵士エドゥアールは、年の離れた戦友のアルベールを救おうとして爆撃で顔の下半分を吹き飛ばされてしまう。アルベールは彼を献身的に世話するが、このことがきっかけでエドゥアールは心を閉ざしてしまう。終戦を迎え街が復興に向かう中、エドゥアールは愛国心や戦争を美化するムードに対し風変わりな復讐を思いつく。

公式サイトでも触れられてますが、3年ほど前翻訳ミステリー界隈で話題を席巻した『その女、アレックス』という小説がありました。これがたしかに巧みな構成と意外な真相、息もつかせぬ展開で読ませる一級品のエンターテインメントだったのですが、とにかくまあ、えぐい話でして。小説だったからまだよかったけど映像だったらとても見続けていられなうだろうな…と思いました。

で、今年初めくらいにその原作者ピエール・ルメートルの別の作品が映画化され、日本でも公開されるという情報を聞きました。それがこの『天国でまた会おう』だったというわけ。「ギリアムやティム・バートンを彷彿させる魔術のような映像」という惹句や、奇天烈な仮面をかぶった男とかわいらしい少女のポスターにひかれ、「『アレックス』よりはやさしい話かも」と気になっていたのでした。ところがどすこい、序盤の戦場でのくだりなんかはなかなかにゴアでございました… まあやっぱりね。下あご大体吹っ飛んだ状態で生きてるわけですからね。そこさえ耐えきればあとはあんまりきついところはないんですが。

珍しいのはこれが十以上は年齢差のありそうな友情の話という点。ただアルベールが一生懸命エドゥアールのためにいろいろやってやってるのに、エドゥアールの方ではそれが当然のようにおもってる節があり、もうちょっと友人をねぎらってやれや、と思わないでもありませんでした。人前に出られない姿になったうえ麻薬中毒も進行していく身の上では自分のことだけでいっぱいいっぱいなのかもしれませんが。

ちょうど先日DVDでチャップリンの『担え銃』をたまたま見てたのですが、第一次大戦を舞台にして戦争をおちょくってやろうとする精神はこの映画とも通じるところがありました。もっともチャップリンの方は最初から最後まで爆笑モードですが、『天国でまた会おう』は軽妙な空気もたもちつつ全体的に物悲しいお話であります。とくに最後にエドゥアールがとる行動は大変ショッキングで、茫然としてしまいました。なぜそこでそうしてしまうのか大変納得がいかないのですが、そこがかえってこの作品の深いところでもある…のかな。

ちなみにエドゥアールの姉を主人公とした続編的小説『炎の色』がすでに早川文庫から翻訳されて出ております。ちょっと読んでみたいけどやっぱり物悲しいお話なのかな… 『その女、アレックス』も映画化されると聞いたけどその後どうなっているのでしょう。まあ公開されても自分観ませんけどー

 

 

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May 28, 2019

猫の意趣返し 柏葉幸子・原恵一 『バースデー・ワンダーランド』

更新をさぼってるうちに公開が終わってしまった映画がまた1本… いまさらという気もしますがわたしが日本アニメ界で最も信頼を置いてる作家のおひとり、原恵一氏の最新作『バースデー・ワンダーランド』ご紹介します。

友達を上手にかばうことができずに落ち込んでいた小学六年生の女の子・アカネは、自分の誕生日にまだ若いおばさんのところへお使いにやらされる。アカネがおばさんが営む風変わりな雑貨屋でくつろいでいると、突然床下からヒポクラテスという紳士然とした男が現れる。ヒポクラテスは自分の世界が危機に瀕していて、それを救う力を持つアカネに共に来てほしいと懇願する。わけもわからぬままアカネとおばさんは不思議な世界に連れて行かれ、冒険の旅に出ることになるのだが…

いま非常にはやってますよね、「なろう系」っていうファンタジーのジャンル。平凡な主人公が異世界に転生したらチートな力を授けられて無双の活躍をするという話。ただこういうのってジュブナイルや童話などでもむかーしから原型があったりするので、別段目新しいものでもなかったりします。ちなみにこのアニメの原作は1981年に柏葉幸子先生が著した『地下室からのふしぎな旅』という児童文学。さっとあらすじを見たところ大筋は一緒のようですが、「世界を救う」とかそういう話ではないみたい。もうひとつちなみに柏葉先生は『霧の向こうのふしぎな町』という作品を書いておられるのですが、これがあの『千と千尋の神隠し』の原型になってるんだとか。

さて、本編のほうですが、さすがは原監督というか作品内の落ち着いた色彩の豊かさには目を見張らせられます。特に『カラフル』でも発揮させられた食い物描写には恐ろしいほどの吸引力を感じました。あともうひとつツボだったのが原監督にしては珍しい猫描写。異世界の猫は喋ったり立ったりするんですが、それでもいかにも猫らしいしぐさにいちいちなごませてもらいました。悪役の1人(1匹?)に「だもんね~」が口癖の黒猫がいるんですが、こいつがまた小憎らしいながらもかわいらしゅうございました。

ただ残念ながらとういうべきか、最も印象に残ってしまったのがメインの柱ではなく装飾にあたるその2点だったというのがちょっと物足りなかったような。原監督のこれまでの傑作というのはごくごくありふれた日常の世界の中に、異常な存在が介入してくるものが多いのですが、今回はそれが逆転していてまるっきり非現実的な世界に日常的な存在が迷い込むというコンセプト。それでなにか大きなインパクトとか、他の多くの異世界冒険ファンタジーと比べて傑出したところがあるかといえばあまり感じられなかったというのが正直なところです。強いて言うなら冒険のパートナーとなるのが気ままなおばさんというのが少し珍しいかな? 

と、ちょっとくさしてしまいましたが、お話のテーマは本当にまっすぐで、他の人を思いやる心の大切さとか、それにはちょっと勇気を出して前に踏み出すことが必要なんだ…ということはよく伝わって来ました。アカネと同じくらいの子供たちがこの映画を観て、そういうことを感じ取ってくれたらそれでいいんだと思います。問題はそういう子供たちが大体『名探偵コナン』や『名探偵ピカチュウ』にもっていかれてしまったことですね。主人公が探偵だったらよかったのだろうか…

ここ2,3年、ジブリの後を継げとばかりに作家性の強いアニメ映画が色々作られてますが、大体こけていて安定してるのは細田守監督くらいでしょうか。それでもなおも作られ続けているのがありがたいことでございます。2019年はひきつづき『海獣の子供』『君と、波に乗れたら』といった意欲作が待機中。『君の名は。』でメガヒットを飛ばした新海監督の『天気の子』も控えています。わたしの一押しは現在公開中の『プロメア』。これまた興行が苦しそうですが、現在の日本アニメの最高峰とも言える出来なので気の向いた方はぜひご覧くだされ~

 

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May 21, 2019

ストライク・バック・トゥ・ザ・フューチャー ルッソ兄弟 『アベンジャーズ/エンドゲーム』

Dsc_0377 始まりがあれば終わりがある… 2008年より始まったマーベル・シネマティック・ユニバースもいまだ続行中ではありますが、ここにひとまずの決着を迎えました。11年間21作品の総決算とも言える『アベンジャーズ/エンドゲーム』、紹介いたします。

6つのインフィニティストーンをすべてそろえたサノスはかねてよりの悲願を達成し、全宇宙の生命の数を半分に減らしてしまう。アベンジャーズはストーンを奪うことで仲間たちの命を取り戻そうとサノスの元へ急襲を試みるが、ストーンはすでに彼の手によってこの世から抹消されてしまっていた。もはや打つ手なしと意気消沈するヒーローたち。だがある時、思いかけもないところから「奪還」の希望がもたらされる…

今回は(も)完全に見た人向けのネタバレ全開です。観てない人は今日明日にでも映画館に行ってそれからまた来てください。

 

 

というわけでアベンジャーズがサノスのプロジェクトを打ち破るために見出した方法はなんとびっくり「タイムトラベル」でございました。一発逆転のために過去に遡る…という手段、後ろ向きというか『ターミネーター』のスカイネットがやらかしていたことだけに、抵抗のある方もおられようかと思います。ただアメコミクリエイターたちはそうでもないようで、特に90年代あたりで『エイジ・オブ・アポカリプス』『ヒーローズ・リボーン』『X-MEN/ワイルドキャッツ』といったコミックでやたら繰り返し用いられてたこともありました。映画でも『X-MEN/フューチャー&パスト』『デッドプール2』などで題材にされてましたし。特に『デッドプール2』に関しては『エンドゲーム』製作中にスタッフの間で「あれ… これちょっとかぶってない?」という会話が交わされたのではw ここでやたら引合いに出されるのが名作SF映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。「あの理論はでたらめだ」とかぷちっとdisられてましたが、少し前の『レゴムービー2』でも引用されていたのでもはや映画製作者の間では基本というかバイブルに値するような存在なのでしょうね。

タイムトラベルの是非はともかく、これまでのMCUのあの場面やこの場面が再現されるあたりはファンとしては大興奮の鳥肌ものでございました。ずっとこのシリーズを追いかけてきた人への大きなプレゼントと言えるのではないでしょうか。サプライズなプレゼントといえばクライマックスのサノス軍との対決は「待ってました!」の連発でした。いちいち書くのも野暮なんでやめますが、オタクが「そこでそうなったらいいのに…」と想像することがほぼ実現します。あらためて「ルッソ兄弟はそういうとこわかってるな~」とよだれをたらしながら興奮していたら、最後で思いもよらないショックが待ち受けておりました。

それは言うまでもありませんが、長いことMCUをひっぱってきたあの人の死。このシリーズってけっこうフラグとかなくいきなりさくっと人気キャラが亡くなられたりするんですよね… そういうのにも多少耐性ができていたつもりですが、それでもトニー・スタークとの突然のお別れにはしばし呆然としてしまいました。トニーという人物は天才でありながら見栄っ張りで素直じゃないところがあって、どこか子供っぽい男…というイメージがありました。だからか子供の気持ちがよくわかるのか、これまで子供がらみで非常にいいシーンがたくさんありました。そんなトニーも『エンドゲーム』で自らの子供を持ち、チームメイトを心の底から信頼することでようやく真に大人になったのだなあ…と。そうなった途端この世を去ってしまうのがあまりにも哀しい。たぶんここまでやらないとトニーはずっと現場活動をやめられないし、ロバート・ダウニ―Jr.氏もアイアンマンから卒業できない。そこから逆算してこういう結末になったのでは。ファンからわがままを言わせてもらえるならできれば生涯現役でいてほしかったところですが、いまはひとまずRDJ氏に「長年お疲れ様でした」と言うべきなのでしょう。ただアメコミにおいて人気キャラの死→復活は定番のイベントであります。どんな形であれいつかまたトニー・スタークが再登場することを夢想してやみません。

衝撃だったことのもうひとつはキャプテン・アメリカの引退。これまたクリス・エヴァンスの卒業を決定づけるためにあの結末が選ばれたのでは…と考えます。「前に進む」と繰り返しとなえていたキャップがあのような行動を取ったことに違和感を多少覚えないでもなかったですが、過去の大きな思い残しをやりとげることこそが彼にとっての「前に進む」ことだったのかな、と。あと彼は「キャプテン」となった時世界でたった一人の超人だったわけです。アベンジャーズが結成された時もその数はまだ一桁でありました。しかし今回自分の後ろに連なる大軍勢を見て、「もう他のヒーローたちに後を託しても大丈夫だな」と思えたのでしょう。観終わった後は複雑な感情もありましたが、今では心から「よかったね」という気持ちでいっぱいです。

他のキャラ達について一人一人語っていたらきりがないので、あと二人取り上げます。一人はアントマンことスコット・ラング。彼は並み居るアベンジャーズのヒーローの中では一番小市民的で身近な存在であります。1作目ではム所帰りでアイス屋さんをクビになってしまうほど社会的には底辺の人でしたし、能力も「世界最小になれる」という変化球的なもの(ビッグにもなれますが)。そんなおじさんが宇宙最強の存在であるサノスの計画を覆す糸口になるわけですから、これほど痛快なことはありません。いやー、本当アントマン最高!

もう一人はネビュラさん。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』登場時は嫌味と怒りに満ち溢れてた彼女でしたが、『エンドゲーム』では残り少ない食糧(水?)を相手に分け与えるほどの成長ぶりを見せています。ここかなり序盤のシーンでしたが、いきなり泣きそうになりました。そんな他者への優しさを身に着けた彼女が、かつての自分のことしか考えてない自分とご対面した時、果たしてどんな気持ちになったのかな…と思うとなんとも切なくなります。本当に人はいくらでも良い方に変われるのかもしれないけれど、それもふとしたきっかけとか出会いがあったればこそで、いつまでも変われないことの方がずっと多いのかもしれませんね…

まとまりのない一人語りが続いてしまいました… 後半は皆様の記憶の助けになればと過去21作から『エンドゲーム』にどんな引用があったのか列挙してみます。『エンドゲーム』にどの程度関わってくるのか、ということを基準に重要度A~Cで分けてみました。公開年月日は日本のものです。

 

<フェイズ1>

『アイアンマン』(2008/9/27) …重要度A。MCUの原点。ラストの「アイ・アム・アイアンマン」やエンドロールで響く槌音は知ってると知らないとで感動が大きく違うのでは(と言いつつ最初槌音が何の音なのかよくわからなかった)。

『インクレディブル・ハルク』 (2008/8/1)…重要度C。とりあえずハルクさんのオリジン話ということで。

『アイアンマン2』(2010/6/11) …重要度B。若きお父さんハワードのトニーへのメッセージなど思い出すとほっこりいたしますね。ブラック・ウィドウとウォーマシンとしてのローディとキャプテンの盾初登場

『マイティ・ソー』 (2011/7/2)…重要度B。ソーのオリジン話にしてスペース・ストーン(4次元キューブ)とホークアイ初登場。

『キャプテン・アメリカ/ファースト・アベンジャー』(2011/10/14) …重要度A。いかにしてアベンジャーズの高潔なる戦士は誕生したのか。ラストの悲恋は半世紀以上の時を経てようやく報われます。

『アベンジャーズ』(2012/8/14) …重要度A。『エンドゲーム』で最も映像的に引用されてた作品では。あのニューヨーク決戦の裏側であんなことやこんなことも進行してたかと思うとまったくたまりませんなあ!! マインド・ストーン初登場。エンドロール後ではサノスさんもようやくお目見え。

<フェイズ2>

『アイアンマン3』 (2013/4/26)…重要度C。ただこれに登場してた少年がトニーの葬式に参列してましたね。わたしとしては彼にアイアンマンを継いでほしい…

『マイティ・ソー/ダークワールド』(2014/2/1) …重要度A。わりとMCUの中では印象の薄いこの映画が、『エンドゲーム』での引用によりぐんと地位が向上したような。レネ・ルッソ、おいくつになってもお綺麗ですね。リアリティ・ストーン(エーテル)初登場。

『キャプテン・アメリカ/ウィンターソルジャー』 (2014/4/19)…重要度B。ファルコンとウィンターソルジャーとしてのバッキー初登場。「左から失礼」の言葉がクライマックスのすごくいいところで使われてました。あとエレベーターのバトルのセルフ・パロディや「ハイル・ヒドラ」には笑わされました。ロバート・レッドフォード演じるアレクサンダー・ピアースが再登場したのにはびっくり。

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』 (2014/9/13)…重要度A。スターロードが踊りながら出てくる場面の再現は、わたしの『エンドゲーム』のベストシーンのひとつ。というわけでガーディアンズの面々とパワー・ストーン(オーブ)初登場。「宇宙には6つのインフィニティ・ストーンがある」ということが明かされたのはこの作品が初めてだったような

『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』 (2015/7/14)…重要度B。ソーのハンマーをキャップが持ち上げようとするシーンや、ホークアイの家族など今回に通じる小ネタがチラホラ。「トニーが自分の人生を生きてみればと言ってくれた」というのはやっぱりこの作品のラストの会話のことでしょうか。エンドロール直前で切られた「アッセンブル!」は4年後にようやく言わせてもらえました… スカーレット・ウィッチ初登場。

『アントマン』(2015/9/19) …重要度C。一応アントマンのオリジン話。量子世界の存在が初めて明らかにされます。きむずかしい感じの若き日のピム博士も登場。

<フェイズ3>

『シビルウォー/キャプテン・アメリカ』 (2016/4/29)…重要度B。この映画を観終わった直後から、トニーが「やはりこれは君のものだ」とキャップに盾を返す場面を予想して泣いてましたが、ほぼ想像通りに実現しました。一方で序盤の「君は一緒に戦うといってたのにそばにいなかった」のセリフがつらい。ブラックパンサーとMCU版スパイダーマン初登場。

『ドクター・ストレンジ』 (2017/1/27)…重要度A。この作品でお亡くなりになったティルダ様演じるエイシェント・ワン様をまたスクリーンで拝めようとは… これまたサプライズでございました。お得意の幽体離脱の業も見せていただきましたし。タイムストーン(アガモットの眼)初登場。

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス(というかVol.2)』 (2017/5/12)…重要度C。限りなくインフィニティサーガから独立した1作。ただここでガモーラとネビュラが打ち解けてなかったらアベンジャーズがサノスに勝つことはできなかったかも。

『スパイダーマン/ホームカミング』 (2017/8/11) …重要度B。Cに近いBではあります。ただここでのトニーの「ハグじゃないぞ。ドアを開けてやるだけだ」を覚えておくと『エンドゲーム』での感動が倍増しになります。

『マイティ・ソー/バトルロイヤル』 (2017/11/3)…重要度B。この作品からソーがギャグキャラになりました。バルキリー(とコーグとミークも)初登場。

『ブラックパンサー』 (2018/3/1)…重要度C。一応ワカンダの勇ましい皆さんの顔見世ということで関係あるかも。そういえば『エンドゲーム』にルピタ・ニョンゴって出てましたっけ。

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』 (2018/4/27)…重要度AA。 『エンドゲーム』の前編的なタイトルなので最重要作品であります。インフィニティ・ストーン最後のひとつであるソウル・ストーンが登場し、六つの石があっというまに集められてしまいます。ドクターストレンジの「たったひとつの勝利のルート」がはったりじゃなくて本当によかったな~~~

『アントマン&ワスプ』 (2018/8/31)…重要度A。この作品で「量子世界に行けば時間の流れを操作できるかも」みたいなことがやんわりと匂わされます。

『キャプテン・マーベル』 (2019/3/15)…重要度B。これ観てないと「いきなり出てきたこのバカ強な姉ちゃんは誰なんだ…」となりますよね。彼女がいなかったらトニーも冒頭で死んでただろうし。愛猫のグースちゃんはどうなったのか気をもんでましたが、キャロルと一緒にアウディのCM に出てました。

 

ふ~~~と落ち着いてる暇もなくもう来月にはMCU最新作である『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』が公開されます。はやいよ!! もうちょっと余韻にひたらせてよ!!! さらに来年からはいよいよ「フェイズ4」に入り『ブラックウィドウ』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーVol.3』『シャン・チー』『エターナルズ』『ブラックパンサー2』『ドクターストレンジ2』などが予定されている…といううわさ。詳細は夏に正式に発表されるとのこと。終わりはまた新たな始まりへと続くわけですね…

おしまいにこれまでのオマケ映像がどの作品につながっていくのか表にしてみましたので気の向いた方はごらんください。。字がぼやけてますけどクリックするとくっきりします。

Mcued

 

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May 15, 2019

中華で一番! 原泰久・佐藤信介 『キングダム』

Sga2 9年前から当ブログで推していた一大歴史コミックが、とうとう映画化となりました。ちょっとおっかなびっくりでしたが、こりゃ観に行かないわけにはいかんでしょう!! というわけで『キングダム』ご紹介します。

時は紀元前の中国春秋戦国時代。秦国の奴隷の少年・信と漂は貧しい身分から抜け出して剣で出世するため、日々二人で武術の稽古に励んでいた。ある日都の貴族の目に止まった漂はその才能を見込まれ、王宮に使えることになる。一人残された信はくじけず下働きと修行を続けていたが、そんな彼の元に都にいるはずの漂が血まみれで転がり込んで来る。それをきっかけに信は秦国を揺るがす騒乱へと巻き込まれることになるのだが…

というわけでこれは「秦の始皇帝」を題材にした物語でございます。始皇帝・嬴政といえば世界史的には超メジャーな人物でありますが、その苛烈な政策などからどちらかといえば悪役として扱われることがほとんどのような。またお話の主人公としてはその死後台頭してきた項羽と劉邦の方がよっぽど務める数が多い気がします。始皇帝がどのようにして青春時代を過ごし、やがて中華統一を成し遂げたか…ということはあまり知られていないのでは。『キングダム』はその辺にスポットをあてた作品となっています。

ただ主人公を務めるのは始皇帝ではなく、彼に仕える信という少年。後の「李信将軍」であることはまちがいないのですが。これまた紀元前ゆえに謎が多い人物です。『キングダム』はそんな未知の部分が多いのをいいことに、存分に空想の翼を広げた一大活劇となっております。まあぶっちゃけやがて嬴政が列強を打ち破って中華を統一するのはわかりきっているわけですけど、それでも読んでいてハラハラさせられますし、毎週続きが気になって仕方ありません。ここから原泰久先生のストーリーテーリング力がなみなみならぬものであることがうかがえます。

ちなみに原作は現在54巻を数えていて、ぼちぼち全体の6割くらいはいったかな…というところw 映画版はその本当の序章となる5巻までを扱っております。映画版でまず感じたのはその予告編 の出来のよさ。原作ファンとしてはその映像の美しさと叙情性に心打たれて公開前から何べんも何べんも繰り返し見ておりました。こりゃ今までの日本映画の殻を破るような大傑作になるかも…と期待していたのですが、ふたをあけてみたらよくも悪くも日本映画らしい仕上がりとなっておりましたw そんなわけで非常に泥くさい部分も多いんですが、やっぱり若い子たちがボロボロの姿で一生懸命やってる姿を見てるとおじさんとしては胸が熱くなってしまうわけです。特に原作より際立っていたのは信と漂の絆の部分。お話の大切なところで必ず信は漂を思い浮かべるんですが、そういうのずるいぞ!と思いながら鼻水をずるずるとすすっておりました。

信と政の間柄が徐々に変わっていくあたりも感慨深いものがありました。最初は「殺してやる」「利用するだけだ」と言い合っていた二人ですが、苦楽を共にするうちにいつしか双方にとって大切な存在となり、クライマックスで「まちわびたぞ」「おれがついていく」と言葉をかける場面はなんとも言えんものがありました。このあたりがあまりに気持ちよかったので先日二回目を観に行ってしまったほどです。さらに大沢たかお、橋本環奈、長澤まさみといった面々もキャスティングを知った時は「?」と思いましたが、それぞれ原作のキャラを生かしつつ独自の存在感を出していて大変良うございました。また、アクション面では『アイアムア・ヒーロー』『いぬやしき』ほかの佐藤信介監督が本領を発揮し、特に主演の山崎健人君とラスボス坂口拓氏の対決では息をのむほどのチャンバラを展開しております。

最近少年・青年漫画原作の映画が次々と映画化されていますが、正直『銀魂』以外はどれもぱっとした成績をおさめていなくて、今回の『キングダム』も心配しておりました。ところが『コナン』や『アベンジャーズ』といった強豪の下で現在35億という興行収入を達成しております。佐藤監督も山崎君もこれまでで最大のヒット作となったのではないでしょうか。好調の要因は「中国の時代劇」という題材が中高年にもとっつきやすかったことと、やっぱり原作のヒットが示すように元のお話が普遍的に面白いものだったから…と考えております。

はやくも続編の声を望む声が上がっている『キングダム』ですけど、大長編ゆえに次はどこまでやるかが難しそう。とりあえず連載も負けずに引き続きもりあがってくれることを望みます。あと30巻くらいかな…??

 

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May 13, 2019

北欧テレホンショッキング グスタフ・モーラー 『THE GUILTY/ギルティ』

アンデルセンとデニッシュの国、デンマークよりえらくとがったサスペンス映画がやってまいりました。本日はロッテントマトにおいて99%をたたき出したその『THE GUILTY/ギルティ』をご紹介します。

深夜の警察の緊急コールセンター。とある事情でそこにいやいやながら勤めているアスガーは、任期も終わりに近づいた時一人の女性から助けを求める電話を受ける。何者かに誘拐されているらしい彼女を助けるため、アスガーは知恵を絞って各方面に連絡するのだが…

この映画の特色はなんといっても主人公が「建物のその階から1歩も外に出ない」というところにあります。他の登場人物はコールセンターの同僚らと、電話で声しか聞こえない人たちだけです。そんなわけでストーリーはもっぱら電話のやり取りだけですすんでいきます。

こういうスタイル、ほぼパソコンの画面だけで進行していた昨年の『search/サーチ』 を思い出させます。しかし時間が飛ばされたり主人公がしょっちゅう外に出ていたそちらと比べると、 『ギルティ』の方はさらに限定的です。普通なら我慢できず現場に急行するんじゃないか?というところでもアスガーは持ち場を離れません。理由のひとつはやはり感情的になって外に飛び出すよりも、そこで電話を受けたりかけたりしたほうが対象を助けられる可能性が高いから…ということがあげられます。そしてもうひとつは監督の「おれは意地でもこのスタイルを貫くから!」というこだわりゆえでしょう(推測ですが)。

そうしたコンセプトから連想したのはミステリーの「叙述トリック」という型式。文章だけなのを逆手に取って読者をひっかけるタイプの小説です。目で色々背景がわかってしまう映画では不可能な方式だろう…と思っていましたが、「声しか聞こえない」という状況を用意することで限りなく「叙述トリックの映像化」に近いものを作り上げていたと思います。

あと舞台がほぼ固定されていて二三の部屋を出入りするだけ…という設定は非常に演劇にもむいてそうです。演劇と違うのは頻繁に主役の顔が大写しになってその焦燥や苦悩が伝わりやすいことですね。で、この主演の方、まあまあ整った顔立ちをしてるんですが「美しすぎる」というほどでもない、長時間の大画面アップにちょうどいい顔面力でございました。くどすぎず、ずっと落ち着いて見られるルックスというか。日本で言うなら誰にあたるか… うーん、おもいつかない。

そんな風に映画の作りは大変面白いのですが、ストーリーの内容はけっこう重苦しかったりして。「国民の幸福度」が世界ランキングでかなり上の方のデンマークですが、抱える悩みの量や重さ、種類は日本の我々とさほど変わらないのでは?と思ったり。出身監督で有名な人と言えばほかにラース・フォン・トリアーやニコラス・ウィンディング・レフンといったダークな方たちでありますし… お隣のスウェーデンでも『ミレニアム』とか『ぼくのエリ』とかありましたしね…

もうおおむね公開終了してしまった『ギルティ』ですが、世界での好評を受けて早くもハリウッドでのリメイクが決まっているとのこと。主演はジェイク・ギレンホールだそうで。ちょっとオリジナルと比べると顔が濃いように感じられますが、評判がよかったらそっちも観てみるつもりです。

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