February 03, 2020

年末アニメ祭り②白と黒の衝撃 『ひつじのショーン UFOパニック!』『羅小黒戦記』

Farmageddon_20200203204601 まだ年末の話が終わりません… 2019年はどん詰まりに来て年間ベスト級のアニメ映画が立て続けに公開されて大変困りました(いや、別に困ることはないか)。1本目は『ひつじのショーン UFOパニック!』。英国ののどかな農村を舞台にしたTVシリーズの劇場版第二作。今回はETよろしく地球にやってきた迷子のエイリアンをめぐって町全体…どころか宇宙規模の大騒動が巻き起こります。恐らく『ひつじのショーン』最大のスケールかと思われます。が、中心となるのはあくまでいつもの農場。このギャップがなんともいえません。

そして特筆すべきは前作 と同じように「フゴフゴ」「フガフガ」という意味不明語のみで1時間半押し通すこと。それでいてちゃんと話は通じるししかも面白い。これね、相当な離れ業ですよ… まあ正直言うと前半は「標準くらいの面白さだな」と思いながら観てました。ですが中盤くらいでさすがにこれは我らがショーンでもどうにも出来まい…という大惨事が生じてしまいます。しかしそれでも普通に解決しちゃうんですよね、ショーンは。一介のひつじであるのにおおよそ不可能なことはないという恐ろしいキャラクターです。でも本人?の頭にあるのは日々を楽しく過ごし、愉快な遊びを探すことだけという。こんな兄貴分いたらいいなあ…と思わずにはいられません。ひつじだけど。

もう1本の『羅小黒戦記』もかわいらしい姿なのに、実は無敵な小動物が主人公のアニメ。住処の森を追われた黒猫の妖精「小黒(シャオヘイ)」」が、人間界と妖精たちの争いに巻きこまれていくというストーリー。『平成狸合戦ぽんぽこ』に異能力バトルを混ぜ合わせたようなスタイルなのですが、この作品の魅力はなんといっても小黒のキュートなデザイン。特に猫好きにはハートを錐で突き刺すくらいの威力があります。だからもう小黒が悲しい声を出せば泣きたくなるし、嬉しそうにしてると鼻水が垂れ流れてきます。ただ先にも書いたようにこの小黒、かわいいだけでなく実はとんでもないパワーを秘めた言わば「神」に近い存在。だのに本人?はいたって無自覚というところもショーンに通じるものがあります。

この2本そんな風に似てるところもありますが、作品のベクトルは好対照です。『ひつじのショーン』はそれはもうすがすがしいくらいに、人を笑わせ、楽しませることを目的とした作品。観終わったあとそんなに心に残るものはないかもしれませんが、それはもう清々しく幸せな気分に包まれます。一方で『羅小黒戦記』はやはりエンターテインメントでありながら、現代中国の抱える問題をやんわりと風刺しております。お堅いかの国でもこういう映画が作られ、しかもそれがヒットしたというのは喜ばしきことですね。そしてこちらはこちらで鑑賞後ほっこりとした暖かい気持ちにさせられます。

個性と完成度の優れたこの2作品ですが、日本ではあまり注目を浴びなかったり上映館が少なかったりするのは残念なことです。配信・発売が開始されたら一人でも多くの人に見ていただきとうございます。また『羅小黒戦記』の方は阿佐ヶ谷の小さな映画館「ユジク阿佐ヶ谷」にて未だに満席のロングランを続行中。お近くにお住まいで興味をもたれた方はぜひスクリーンで小黒に会いに行ってみてください。

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January 28, 2020

年末アニメまつり①さよならは別れの言葉じゃなくて 『アナと雪の女王2』『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』

Olaf_getty まだ年末の話をします。昨年の暮れはそっち方面の注目作がいっぱいあったのでアニメ映画ばかり観ておりました。本日はその中の3本をほぼネタバレ大全開で語ってみます。

ひとつは今もなお大ヒット公開中の『アナと雪の女王2』。世界的、とりわけ日本で記録的興行を打ち立てた新時代のディズニープリンセス映画の続編。絆の力で試練を乗り越えた姉妹の前に、新たな危機が訪れます。

Sakuhin017589_1 ふたつめは『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』。たれぱんだ、リラッくまなどで知られるサンエックスがまたしてもど派手にあてたかわいらしいキャラクターたちの劇場版。わたくし全然知らなかったのですが、ツイッターで「なんか映画版はすごいらしい」「まどか☆マギカを彷彿とさせる」という評判を読みつられて観にいっちゃいました。

5549_item01 みっつめは『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』。2010年に日本公開され、大人の事情で2作目が劇場スルーされたシリーズが奇跡的にスクリーンに帰ってきました。わたしの知る限りこんな例は他には『トリプルX』くらいしかありません。多くの冒険を繰り広げてきた少年と竜のコンビが、竜のハンターたちや移住問題と戦います。

この3本どれも楽しく鑑賞させてもらいました。で、気づいたのはどれも最後に「お別れ」が待ってるということでした。夏にやってた『トイ・ストーリー4』、昨年の『シュガーラッシュ・オンライン』もそうでした。そういえばわたしが子供のころなじんでた名作アニメにはそういう切ない話が多かったなあ。『銀河鉄道999』『ルパン三世 カリオストロの城』『ドラえもん のび太の恐竜』『ドラえもん のび太の宇宙開拓史』などなど。ただ昔の作品の場合は「もう二度と会えない」的な胸にツーンとくるものが多かったのですが、最近のものは「会おうと思えばたまには会える」的なものが多いですね。

あとそれぞれのお別れも似てるところもあれば違うところもあり。『アナ雪2』の場合は「え!? そんなにあっさりでいいの!?」というくらい淡白でしたが、この作品と『ヒックとドラゴン』は「お互いの種族のために最善の道を選ぼう。離れていてもこころはひとつ」という感じでした。クリエイターとしては「いつまでも一緒にべったりだと共依存になってしまう。絆を保ちつつそれぞれ自立しなければいけない」ということを訴えたいのかなあ。ただ『ヒクドラ』1作目の結末が好きだった者としては「ずっとずっと隣にいたっていいじゃねえかよ!」と思ってしまうのでした。いいとしこいて独りもんだからでしょうか。

対して『すみっコぐらし』は「一緒にいたいのに生まれもった性質ゆえにそうできない」というハートがキリキリするようなものでした。小さなお子様も観るだろうになんと容赦ない… それはともかくメインキャラである「すみっコ」たちがほとんどしゃべらず、ナレーター二人の語りだけで進行していくスタイルはなかなか独特でした。

やっぱりなにもかもがハッピーエンドの作品よりは、切ないお別れ的な結末の方が心に残るものです。 だからといってそちらの方が優れているというわけでもなく… 結局おれは何が言いたいんだ! ふんがーー!!(飲酒中)

次は年末アニメ祭り後編として『ひつじのショーン UFOフィーバー!』『羅小黒戦記』について書きます。

 

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January 21, 2020

元祖モンスター・ホテルへの帰還 『ドクタースリープ』

映画秘宝がとうとう休刊してしまいましたね。さびしいなあ… それとはまったく関係ありませんが本日は『ドクター・スリープ』についていまさら書きます。スティーブン・キング原作でスタンリー・キューブリック監督が映画化したあの伝説的名作『シャイニング』の続編。というわけで『シャイニング』の説明をまずしなきゃいけないですね。

『シャイニング』は1977年に書かれて1980年に映画化。冬の間だけホテルの番をすることになった作家が、次第にそこに巣食う悪霊に乗っ取られていき、息子のダニーや妻のウェンディを襲うようになるというストーリー。この辺は映画も小説を踏襲してるのですが、キングはその劇場版にめっちゃ怒ったというのは有名な話です。なんでも割りとほめまくるキングさんにしてはこれは珍しい話。原作『シャイニング』はお父さんが子供への愛と自分の弱さについてかなり葛藤するのですが、映画版ではその辺はほぼ省略されてお父さんの狂気に全く迷いが見られません。主演がジャック・ニコルソンだから余計にそう見えます。

ですがキングにとってはそのカットされたところが大事だったんですよね。彼の父親はキングが幼いころ「煙草を買いにいってくる」と言ってふらっと出てったきり、消息不明なのだとか。ですからキングにとってパパンとは憎らしく不可解な存在であり、同時に「本当は自分のことを愛をしていた」と信じたい人間なわけです。だからかキング作品には「毒親」が非常に多く登場します(まともな親もおりますが)。

余談ですがわたしは一昨年くらいにようやく映画版を観ました。びくびくしながらの鑑賞でしたが、これまで色んなところでパロディにされまくったせいで意外と楽しく観られたことをご報告いたします。

さて、ようやく映画『ドクター・スリープ』について。『シャイニング』から30年後。ダニーはすっかり酒びたりのダメ中年になっていましたが、一念発起してなんとか立ち直り、とある医療施設で働くようになります。そんな折、ダニーは遠く離れた町で暮らす強大なパワーを秘めた少女、アブラからSOSのメッセージを受け取り、悪の超能力者軍団と戦うことに。

さっき書き忘れてましたが、『シャイニング』原作は実は超能力ものでもあるのですよね。そもそもタイトルの「輝き」というのはダニーが持つ超能力のことをさしております。この度の映画『ドクター・スリープ』ではその「輝き」が前面に押し出されております。全米(全世界?)にその「輝き」を持つものが点在していて、ある者は良いことにそれを使い、ある者は私利私欲のために用います。また善良な「輝き」人は能力をもてあまして悩んでいる後輩を、時には霊体になってまで助けようとします。主演がユアン・マクレガーというせいもあってまるでフォースとジェダイの騎士のようでありました。ユアン・マクレガーといえばかつてはやんちゃな青年なイメージでしたが、近頃は『プーと大人になった僕』『T2 トレイン・スポッティング』などすっかり中年の危機に直面して奮闘する役が多くなって来ました。彼ほどかっこよくはないですが小生もおっさんゆえ大いに共感しております。

ともあれ、あらすじを読んで「『エイリアン』に対する『エイリアン2』のような内容なのかな?」と予想していたのですが、どっちかというと『エイリアンVSプレデター』のような続編でした。変なたとえでわけがわからないと思いますが、観て頂けたらわかると思います。実は原作では木っ端ミジンコに吹っ飛んだシャイニングホテルが、映画では予告編からバーンと映ります。一体超能力バトルからどうやって前作の舞台につながっていくのか興味津々で鑑賞しておりましたが、なるほど~ そういう持って来方だったのか~ と感心したりテンションぶちあがることしきりでございました。

ここのところ読書量が落ち込み、『ドクター・スリープ』は原作未読で臨みました。で、この記事を書くにあたり小説版のネタバレを読んでみたのですが、映画とはけっこう違いますね… 結末も異なるし、大体ホテルは正編で消失してしおります。ラストシーンがどんなだったかまで読んじゃいましたが、急速に原作の方も手を伸ばしてみたくなってきました。

昨年からキングラッシュが続く映画界。今度は一度映画化されてる『ペット・セメタリー』が公開されております。これまた親子愛にからめたイヤ~な話でして。こちらはスルーさせていただきますw

 

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January 16, 2020

冗談のないジョーダン・ピール 『アス』

本日は『ゲットアウト』 にて一躍脚光を浴びたジョーダン・ピール監督の最新作『アス』について書きます。「新作」といっても公開 とっくに終わっちゃってますけどね… 裕福で幸せそうな黒人一家がバカンス先で、自分たちとそっくり同じ顔を持つもう一組の家族に襲われるという話。いわゆるひとつの「ドッペルゲンガーもの」ってやつですかね。説明するまでもありませんが、ドッペルゲンガーというのは自分と全く変わらぬ姿をした悪魔的な存在(と思いました)。民話等によるとそれを見てしまうと数日後に頓死してしまうということになっております。この得体の知れない不気味さに惹かれてか、ポーやドストエフスキー、芥川龍之介などが作品のモチーフとして使っております。

ただ『アス』の分身さんたちは魔力で殺すとかそういうまだるっこしいことはしません。直接刃物でブッ刺しに来ます。怖いですね。しかもなぜか刺しにくそうなハサミでもって… ナイフでもアイスピックでもなくなぜハサミなのかについては、最後まで明らかになりませんでした。何らかのメタファーだったのでしょうか。

そんな風に不条理の連発でもってお話は進んで行き、分身の正体とか、彼らが襲いに来る理由とかも不明なまま終わるんだろうな…と予測していたら一応無理矢理説明をつけてました。ただその「真相」というのがかなり苦しいものだったので、「これだったら下手に理屈づけとかしなくて、一切不可解なまま終わった方がよかったのでは?」と思ってしまいました。あと監督の前作『ゲットアウト』は不気味ながらも爆笑してしまうシーンもあり、その辺にけっこう期待していたのですが、今回は本当にただ怖いだけっだったのも逆に肩透かしでございました。

…とわたしはついくさしてしまいましたけど、これが評論家たちの間ではけっこう高得点(批評家支持率は94%、平均点は10点満点で7.94点)なのですね。独特なムードと絵作り、そして単なるホラーにとどまらず、アメリカの社会問題が反映されている点がうるさ方たちのハートをとらえたのでしょうか。

わたくしそこそこのビビりなので、なるべく怖そうな映画は観たくないのですが、昨年末は恐怖に興味が打ち勝ってしまうような映画が多くて、何本かホラーに属する作品をプルプル震えながら鑑賞いたしました。『IT』完結編に『ブライトバーン』に『ドクタースリープ』に、一昨日書いた『ゾンビランド/ダブルタップ』…はあんまり怖くないか。ともかくそうした一連の映画では『アス』が一番怖かったです。『IT』のペニーワイズさんには親しみすら感じましたし、『ブライトバーン』の坊ちゃんも見てくれはその辺の子供でしたし。『ドクタースリープ』(近日レビュー予定)は怖いというかなんかテンション上がる映画でした。しかし『アス』の偽一家の皆さんは迫力の顔芸と、モンスターじみたハスキーボイスと、何をしだすかわからない恐ろしさでほか作品の怪物たちより頭ひとつ抜けていたと思います。危うくちびるところだったじゃないですか! どうしてくれるんですか!!

次に観ようかどうか迷ってるホラーはやはり新鋭のアリ・アスター監督による『ミッドサマー』。あれ、でもこれ予告見ると美しい田園風景でカップルたちがとても楽しそうにしているな。もしかしてホラーじゃないのかな? なら安心して観られそう。ふふふ… ふふふ… うふふふふふふふふふふふ

 

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January 14, 2020

死者の国VS遊戯の世界 『ゾンビランド/ダブルタップ』『ジュマンジ/ネクスト・レベル』

前回も書きましたが、色々たまってるので今年はさくさく飛ばして行きます。

今回は『ゾンビランド/ダブルタップ』と『ジュマンジ/ネクスト・レベル』について紹介します。2作品とも昨年末のクソ忙しい時上映されてたSF?コメディの続編ものですね。

前者はゾンビが跋扈する世界で、自分なりのルールを支えに生きる青年と仲間たちのお話。正編の感想はこちら 。特にとりえもなさそうななよなよしたボンクラが、非現実的な状況の中で三角関係に悩んでいる様子はちょっと前の少年サンデーによくあるパターンでした。

後者は名作エンターテインメントを新生させた『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』のさらなる続編。前作の感想はこちら 。魔法にかけられたTVゲームの世界に迷い込んだ若者たちが、喧嘩しながらも団結力でピンチを脱して行くストーリー。こちらは色恋よりも友情がメインだったり、世界設定がゲームだけにやけに法則的だったりするあたりは少年ジャンプっぽかったです。

で、この2本新要素もちょこちょこ加えてはあるんですが、全体的には「前とやってること大体一緒だよな…」という印象を残します。『ゾンビランド~』の方は9年くらい経ってるのでそれがすごく懐かしく、心地よい感情に包まれるのですが、『ジュマンジ~』は1年しか経ってないので「こないだ観たばっかだなあ」とやや冷めた思いをぬぐえませんでした。1年だって決して短いスパンではないはずなのですが、映画的にはなんか「ついこの前」と感じられるのはなぜなんでしょう。最近よく言われる「スターウォーズ疲れ」もその辺から来てる気がします。

両者とも前作と全くキャストをほぼそろえてきてるのは偉いところ。ただそれもやっぱり9年経ってみんな演技派として大成してる『ゾンビ~』の方が、「そろいもそろってよくこんなくだらない映画にまた出たなあ」という感動があります。

うーん… 『ゾンビ~』ばかり持ち上げてしまったのでなんか不公平な気がしてきたな… 『ジュマンジ~』の方にもなんかいいところがなかったかな… そうそう、動物好きとしてはダチョウとマンドリルがいっぱい出てきたのがよかったです! あと馬もよかった! そんなもんか… あと久しぶりにダニー・デビートとダニー・グローバーにスクリーンで会えたのもプラスポイント。デビートさんはしばらく見ぬうちにすっかり老けましたね…

2020年の注目続編としてはやはり昔懐かしの『トップガン』でしょうか。共演者がすっかりじいちゃんばあちゃんになったのに一人だけ変わらず主演も続投するトム・クルーズ。恐るべし、です。

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January 09, 2020

もしもビートルズが弾けたなら 『イエスタデイ』

新年も9日になってようやく再開です。だいぶ未レビューの映画をためこんでしまったので、今年はさくさくコンパクトに参ります。

で、今日紹介するのは『イエスタデイ』。『トレインスポッティング』や『スラムドッグ$ミリオネア』のダニー・ボイルの最新作であります。突然ビートルズ(その他にも少々)が存在しなくなった平行世界に迷い込んだ低迷ミュージシャンが、彼らのナンバーで世界的スターになるというお話。

少し前の日本だと男子が憧れる・なりたがるのは坂本龍馬だと思うんですけど、世界標準だとザ・ビートルズになるんですかね。そういえばチャゲアスのある曲にも「生まれ変わるときはビートルズだな」なんて曲がありました。

これがこずるい主人公だと「何の苦労もしなくてセレブになれてラッキー!!」とはしゃぎまくるわけですが、こちらの場合は生真面目な青年なので「パクリでこんなに大成功していいのだろうか…」と悩んじゃったりします。そこにどう決着をつけるかがお話のヤマ場の一つだったり。

ダニー・ ボイルの映画というのはお笑い交じりでもけっこう胸をキリキリ突き刺してくるところがあるのですが、恐らく彼のキャリアの中で最も優しい作品。普通なら悪役に回りそうなキャラでもどなたもこなたも目茶いい人ばっかり(悪徳プロデューサーのケイト・マッキノン除く)。最近疲れることの多い身としてはこの優しさが骨身に沁みました。

まあビートルズのシンプルなナンバーが果たして21世紀の現在に突然発表されて大うけするのかな?という疑問もあるわけですが、大画面で久しぶりにリヴァプール・サウンドの数々を浴びせられるとそんなことはどうでもよくなりますね。あと改めて和訳を見るとビートルズの歌詞ってけっこうわけわからんやつも多いな、と苦笑させられました。

わたしが好きな曲はもちろん超定番のレット・イット・ビー、ロング・アンド・ワインディング・ロード、ヘイ,ジュードなどなど。少し渋いあたりではハロー・グッバイ、涙の乗車券、プリーズ・ミスター・ポストマン、ひとりぼっちのあいつ、ストロベリー・フィールズ・フォーエバー、サムシング、ヒア・カムズ・ザ・サンなどもよいですね。

英国が舞台でインド系の青年が主人公というのも意欲的でありました。

最後に一番お気に入りの曲の動画リンクを張っておきますので、気が向いた人は聞いてみてください。Here There and Everywhere

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December 31, 2019

2019年、この映画がアレだ!!

予定より1日ずれましたが、それでは年間ベスト映画についてまとめます。

 

まずワーストはあることはあるのですが、なんかつるし上げるのがつらい作品なので公表は差し控えます…

 

ついで「リバイバル賞」は4DX版の『ルパン3世 カリオストロの城』。TVで何度も観た作品ですがやっぱり映画館で観ると城がでかくて興奮しました。

 

さらについではっきり良かったものの個人的好みの差で上位26作品に並ばなかった16本。ここいら辺は大体同じくらいの評価です。

『クリード 炎の宿敵』   ☆『キャプテン・マーベル』   ☆『運び屋』   ☆『バンブルビー』   ☆『海獣の子供』  ☆『ハンターキラー 潜行せよ!』   ☆『神と共に』第1章第2賞  ☆『ザ・ファブル』  ☆『アラジン』   ☆『HiGH&LOW THE WORST』  ☆『ロボット2.0』  ☆『スペシャルアクターズ』  ☆『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。 』  ☆『イエスタデイ』(近日レビュー予定)  ☆『ヒックとドラゴン聖地への冒険』(近日レビュー予定)

 

ではここからは順位を付けてキリ悪く26位から発表していきます。

☆26位 『ゴールデン・リバー』  お金は地道に稼ぎましょう!

☆25位 『ホテル・ムンバイ』  ホテルでは他のお客の迷惑も考えましょう!

☆24位 『翔んで埼玉』  所沢市は我が青春の地!

☆23位 『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』  MCU離脱が覆って本当に良かった!!

☆22位 『コードギアス 復活のルルーシュ』   復活したと思ったらもう終わりかい!

☆21位 『グリーンブック』  ケンタッキーが食べたくなる映画!

☆20位 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』  一家に一台火炎放射器!

☆19位 『シャザム!』  時には母のない子のように!

☆18位 『スパイダーマン/スパイダーバース』  一回目IMAXなのに30分遅刻した悲劇!!

☆17位 『ロングウェイ・ノース 地球のてっぺん』  漂流船はジジイの形見!

☆16位 『ミスター・ガラス』  シャマランユニバース完結編!(早いよ!)

☆15位 『ジョーカー』  同じアホなら踊らにゃ損損!

☆14位 『名探偵ピカチュウ』  ミュウツーの復讐!

☆13位 『パピヨン』  実話と初めて知りました…

☆12位 『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』  ラドンはつらいよ!

☆11位 『アクアマン』  母よあなたは強すぎだ!

 

ではいよいよベスト10に移りまする…

Sw9_teaser2_1sht_v5_lg1024x1516 ☆10位 『スターウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(近日レビュー予定)

一大叙事詩ここに完結! …のはずがネット上では非難轟々。でも俺は好きだぜ… 同情も手伝って(おい)なんとか10位にランクイン

Red1024x1448 ☆9位 『ドクタースリープ』(近日レビュー予定)

最近良くある後付的続編の中では、かなり出来のいい方かと。『T2 トレインスポッティング』『プーと大人になった僕』に続くユアン・マクレガーの「中年の危機」シリーズ最新作

Farmageddon ☆8位 『ひつじのショーン UFOパニック!』(近日レビュー予定)

またしても「フガフガ」「フゴフゴ」だけで約1時間半押し通した大傑作。一介のひつじなのにおおよそ不可能は無いショーン君。今回は宇宙規模ということでさすがに荷が重いかと思われましたが、普通に解決してました。

30000000006095 ☆7位 『トイストーリー4』

これまた公開されるやネット上で賛否両論大激突を巻き起こした問題作。まあわたしゃ映画館で子供たちがケラケラ笑ってただけで十分成功作だと思います。さよならは言わないぜ、ウッディ!

177922_02 ☆6位 『天気の子』

この映画に触発された竜神様のせいで、その後実際に異常気象が頻発したとかなんとか。…そんな「ムー」的なことをつい書きたくなります。ある酒席で新海誠作品について熱く語ったら同席してた女子に「でもやっぱり気持ち悪いですよね」と言われたのにはグハッ!!と来ました。

Kvteaser3_20191231155501 ☆5位 『プロメア』

先日の漫画ベストでも語りましたが、十ウン年ぶりに帰ってきた『グレンラガン』の別ヴァージョンと考えてもよいのではなかろうかと。別に巨大ロボとか出さなくてもいいのにゴリゴリ出しちゃう中島先生大好きですが、今度はまずロボが前提にある作品を作っていただきたく。

Yjimagecbuhzoid ☆4位『羅小黒戦記』(近日レビュー予定)

年末になって現れたダークホース、いやブラックキャット。わかっているようでよく知らない中国の現状を黒猫の妖精の目を通してわたしたちに教えてくれます。気になった人はまずこの予告編を見てほしい 。弱い人は冒頭3秒でノックアウトされます。

176224_01  ☆3位 『レゴRムービー2』

♪この歌頭にこびりつくよこの歌頭にこびりつくよこの歌頭にこびりつくよこの歌頭にこびりつくよこの歌頭にこびりつくよこの歌頭にこびりつくよ…
まだこびりついてんだよ! どうしてくれんだよ!! 全て傑作ぞろいなのに日本ではイマイチな成績なレゴ映画シリーズ。本国でもこれをもって一区切りつきそうな気配ですがさらなる発展を望む次第です。
Kingdom_poster_0222 ☆2位 『キングダム』
これは予告を観た時「これまでの日本映画を越える伝説的作品になるかも…」と期待したのですが、観てみたら普通に日本映画の悪いところがバンバン入ってました。でも大好きです!! いいところもいっぱいありますし… 予想を覆して実写邦画では今年最大級のヒットとなったのはうれしゅうございました。

では第1位の発表です。

Ob_4f4bdb_avengersendgame2 『アベンジャーズ/エンドゲーム』

でした。まあ少し前に書いたテン年代映画ベストテン の1位がこれなわけですから、当然今年の1位もこれになります。自分にとっては1本の映画というより、2008年から追いかけて来たマーベル・シネマティック・ユニバース二十数作品の総決算なのでちょっと他とは比較できない、別格的な作品でもあります。このシリーズをずっとわくわくしながら映画館で観て来られたのは本当に幸運なことでした。引き続き可能な限りこの宇宙の行く末を見守って行こうと思います。

本年もお世話になりました。このブログもいつの間にやら丸15年。先のことはどうなるかさっぱりわかりませんが来年もよろしくお願いします。

 

 

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December 29, 2019

第16回SGA屋漫画文化賞

今年も残すところあと2日。誰も存在を知らないこの漫画賞の発表でございます。例によって賞品も賞金もありません。むしろ欲しい。では参ります。

Photo_20191229222601 ☆少年漫画部門:板垣巴留 『BEASTERS』

お友達の激押しに動かされて読んでみた作品。少年誌において動物が主人公の学園ドラマという恐ろしく挑戦的な内容。にも関わらず人気を博しアニメ化までされました。わたしゃまだ3巻までしか読んでませんが、高校生ながら優しくハードボイルド道を突き進むルゴシ君のキャラクターに惹かれます。

51rs9e4rd2l__sx345_bo1204203200_ ☆少女漫画部門:帳六郎 『千年狐』

中国の志怪小説集『捜神記』をベースに、妖怪と人間の交流をキュートに描いた作品。作者のモフモフ描写にはなみなみならぬものがあり、見ているだけでその柔らかさが手に伝わってくるようなタッチ。ギャグ調でありながら泣かせるところはしんみり泣かせてくれます。

91nsc3ncyul ☆青年漫画部門:原泰久  『キングダム』

もうこれはいまさら紹介するまでもありませんが、『プレイボール2』『ハンチョウ』と並んで今年も最も多く元気をもらった作品なので。年末ギリギリのところで大一番的な激闘が繰りひろげられ、大変ヤキモキハラハラさせられました。映画版も大ヒットしめでたいことであります。

9784065177259_w ☆中年漫画部門:萩原天晴・上原求・新井和也 『1日外出録ハンチョウ』

そういうわけでオヤジ部門は当然この作品です。というかこの漫画が終わるまでこの部門は自動的にこれが受賞する感じです。最新第7巻では「上野科学博回」と「筋肉自慢回」が特にツボでした。福本ワールド関連では『新・黒沢』も盛り上がりました。

Photo_20191229225801 ☆ギャグ漫画部門:野中英次・井野壱番 『クロマティ高校職員室』

なんとあの脱力ギャグの金字塔『クロマティ高校』が約13年の時を経て復活。作画こそ別の方ですがムードも面白さも全然変わって無くて嬉しくなっちゃいました。「続編だかスピンオフだか決めてないのでスピンオフ続編ということにしてください」とそんな投げやりなところもクロ高らしい。

Kvteaser3 ☆アニメ部門:今石洋之『プロメア』

2019年は国内だけでも意欲的なアニメ映画がいっぱい公開されましたが、わたし的ナンバー1はこれ。今石広之&中島かずきの『グレンラガン』コンビ最新作と来たらこれが燃えずにいられましょうか。堺雅人氏演じるクレイのぶち切れたシャウトは各界で絶賛を浴びました。

そして栄えある大賞は

565712w300☆『バットマン ディテクティブ・コミックス』

邦訳部門と合わせてダブル受賞です。今年はバットマンが「発明」されてからちょうど80年という大変記念すべき年でした。画像の「ディテクティブ・コミックスはそれにあわせた通算1000号。2019年は映画的にはさびしいバットマンでしたが、代わりに宿敵の作品『ジョーカー』が予想を覆して大ヒットしましたのでそれで良しとしておきましょう

明日は姪っ子たちが来る中隙を縫って映画ベストの記事を書きます。それをもって2019年のブログ締めといたします。

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December 23, 2019

死めきりは一週間後 トム・エドモンズ 『やっぱり契約破棄していいですか!?』

あと10日もしないうちに2019年が終わるのに、まだ11月に観た映画の感想を書いています。本日は英国発の一風変わったコメディ『やっぱり契約破棄してもいいですか!?』をご紹介します。

小説家志望の青年ウィリアムは死への願望に取り付かれ何度も自殺を決行しようとするが、不幸な?偶然が積み重なりどうしてもうまくいかない。ある日橋から身投げしようとしていたウィリアムに、一人の男が声をかける。彼は殺し屋なのだがノルマの達成が厳しいので、ウィリアムの自殺を手伝わせてほしいと申し出るのだが…

バスター・キートンの短編にもこんな話しあったような。死にたいのに何度死のうとしても死ねないという(不死身の超人というわけでもないのに)。主演は『ダンケルク』での好演が印象深いアナイリン・バーナード。いかにもキラキラした美青年で、そんだけルックスに恵まれていながら「死にたい」と連呼するなんてなんて贅沢な、と思います。でもまあ、一昔前の作家先生というのはよく自殺したものでした。芥川龍之介に三島由起夫に川端康成に有島武郎に太宰治… そこいくと最近の小説家の皆さんはわりと健全ですよね。いいことではないでしょうか。ともかくそういう繊細で思いつめやすい人だからこそ、精神の機微を克明に捉えた名作を著せるのかもしれません。

ただ映画の方はあらすじからもわかるようにそんなに深刻な話ではなく、むしろ笑えます。ようやく確実に死ねそうなのが決まった途端、いいことが連発して死にたくなくなっちゃったりとかw あと殺し屋であるレスリーさんも、その仕事の内容をのぞけばごくごく普通のおじいさん。職場の壁にノルマの達成表とか貼ってあってまるでどこかの保険事務所のようです。またレスリーさんの奥さんもちょっと変わってて、旦那の職業を知りながら暖かくご主人のお仕事を励ましているという。二人が仲むつまじくお互いを支えあう様子はとても微笑ましく、本当にレスリーさんが殺し屋でなければもっと素直に応援できるのですが… 

さらにレスリーが寄る年波のせいでミスを連発したりして、ストーリーはますます混乱の度合いを深めて行きます。果たして彼は無事仕事を完遂できるのか。そして契約破棄したくなっちゃったウィリアムの運命は。

星新一氏の著書でアメリカのひとコマ漫画を紹介した『進化した猿たち』という本がありましたが、その中には死刑や自殺を茶化したものが多数ありました。死は誰しも避けられないものですが、人はその不安をごまかすためにあえてお笑い仕立てで語りたがるのかもしれません。自分も逝くときは後々まで笑われて伝えられるような、そんなうっかりちゃっかりした死に様を迎えたいものです。

『やっぱり契約破棄していいですか!?』はさすがにもう上映館もほとんど残ってなく、興味をもたれた方はDVD化か配信をお待ちしてください。今年が終わる前にあと3本くらいレビューしたいものですがちょっと無理ぽですね…

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December 17, 2019

もしもスーパーマンがバルタン星人だったなら デヴィッド・ヤロヴェスキー 『ブライトバーン 恐怖の拡散者』

アメコミ映画が史上最も多く公開された2019年。その最後を飾るのは原作はないけれど紛れも無くアメコミ関連のこの作品(もう公開終わっちゃったけど…)。『ブライトバーン 恐怖の拡散者』ご紹介します。

アメリカの片田舎の町ブライトバーン。ある晩ブレイヤー夫妻は轟音と共に墜落してきた宇宙船の中から人間と寸分たがわぬ赤子を発見する。子供のいない二人はその子を引き取りブランドンと名づけ大事に育てる。だがブランドンが思春期を迎えたころ、彼は奇妙なそぶりを見せ始め、次第に残酷さと人間離れした能力を現し始める。

あらすじから見てもわかるように、アメコミヒーローの原点であるスーパーマンを強く意識したお話。幸運にもスーパーマンは地球と地球人を愛する善良な男でしたが、もしその万能な宇宙人が邪悪な本性を持っていたら…という着想。そういえば日本最大のヒット漫画のひとつ、『ドラゴンボール』の悟空の出自もスーパーマンのオリジンをちょっとひねったようなものでした。スーパーマンがもしアメリカじゃなくて最盛期のソ連に落ちたら…というアイデアのもと描かれた『スーパーマン:レッド・サン』なんてコミックも思い出しました。

ただ『ブライトバーン』は正直これまでのスーパーマンパロの中ではかなり胸糞悪いお話でした。人のいいご夫婦がその人のよさゆえに大変な不幸に見舞われるというあらすじなので… こんな話作ってて楽しいのかなあと思いますが、製作のジェームズ・ガンって『スーパー!』のことなど考えるともともと非の打ち所のない公明正大なヒーローには興味ない人なのかもしれませんね。それよりもグロ描写や血しぶきの方がお好きなのかもしれません。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のスターロードだってヒーローの王道からはかなり外れたキャラですしね。

もうひとつ思い出したのは永井豪大先生の『ススムちゃん大ショック』。ある日突然大人たちが無邪気に自分の子供たちを殺し始めるというこれまた胸糞悪い話です。ただ最近の幼児虐待のニュース等見るにつけ、GO先生の真実を見通す目というのは本当に鋭いものだったんだな…と感服せざるを得ません。一般的に何よりも強く絶対的なものとされている親子の情愛も、ちょっとしたことであっさり消え去ってしまう例もあるわけで。『ブライトバーン』は『ススムちゃん』とは親子の側が逆ですが、そんな残酷な世界の一面を教えてくれます。

わたしもいま夏にひきとったばかりの子猫の面倒を見ているところで、それはもうめちゃくちゃ可愛いんですが、時折人の手をガブガブ噛み出してすでに凶暴性の片鱗が現れ始めています。この子ももしかしたらいつかブランドンのような凶暴な怪物となる日が来るのかも… でもこの子に殺されるのならあたしは本望です!  …話が横道にそれました。

『ブライトバーン』は評価を見ますと「思ったより儲からなかった」と書かれていますが、思いっきり低予算のためw制作費の5倍くらいの収益を得ています。またしてもこれを起点とするユニバースの構想などもあるようですが果たして実現するのかなー

わたしは基本ビビりなのですが、今年下半期は我慢してホラー風味の映画を観たりしてました。近々その残る2本である『アス』と『ドクター・スリープ』についても書く予定です。あとついでに今年見たアメコミ関連の映画のランキングも貼っておきます。

1.アベンジャーズEG

2.レゴムービー2

3.アクアマン

4.ミスターガラス

5.スパイダーバース

6.ジョーカー

7.シャザム!

8.スパイダーマンFFH

9.キャプテンマーベル

10.ヘルボーイ

11.X-MENダークフェニックス

12.ブライトバーン

あっと今書いたやつが最下位だった…

 

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December 11, 2019

生まれ変わった地獄くん マイク・ミニョーラ/ニール・マーシャル 『ヘルボーイ』(2019)

考えてみたら、もう『ヘルボーイ:ゴールデン・アーミー』から十年も経つんですよね。月日の流れはまことにはやいものです。ふううう… などとたそがれていてもしょーがない!! 本日は原作者もガッチリ絡んでスクリーンに帰ってきた『ヘルボーイ』(2019年版)を紹介いたします。

第二次大戦中、ナチスのオカルト実験により現世に生を受けた異形の怪物「ヘルボーイ」。しかし彼は養父であるトレバー・ブルッテンホルム教授の元まあまあ健全に育ち、超常現象調査防衛局(BRPD)のエージェントとして21世紀の現代も活躍していた。だが魔界の生まれであるその血筋は、人間界からは脅威として、暗黒の世を望む者からは救世主として目され、好むと好まざるとに関わらず戦いに巻きこまれることになる。

というわけで2回続けてこけた続編の話です…  ま、自分はけっこう楽しみましたけどね! 映画ファンからも好評をもって迎えられたギレルモ・デル・トロの前二部作。ただ原作ファンとしてちょっとひっかかったのは、もう十分おっさんとして達観したようなキャラだったヘルボーイが、恋に恋する純情野郎になっちゃってたこと。まあ面白かったからいいんですけどね! で、今回は原作者がその辺を主張したのか恋愛とか全くからまない本来の?ヘルボーイとなっておりました。代わりに強調されていたのは育ての父であるトレバー教授との絆。この辺も原作では2,3ページで済まされていましたが… ともかく血もつながっていないし生物としても違う種であるのに、お互いを思いやる二人の関係はけっこう泣けました。教授を演じるのは先日『ジョン・ウィック/パラベラム』にも出ていたイアン・マクシェーン。二作続けてバーバ・ヤーガの出てくる映画に関わることになりました。

あとトロ氏はグロいシーンでもどこか上品な趣があります。気持ち悪い粘液もつやつやトロトロしていたり。ですが今回は中二的というかお化けも人体破壊もかなりヤンチャでした。粘液も本格的にドロドロしてて匂いたつよう。前半の巨人とのバトルや、クライマックスのあの世の蓋が開くあたりは中二を通り越してもう小二のようなはしゃぎっぷりでした。恥ずかしながら自分も童心に返って楽しませていただきました。これR15指定ですけどね。

原作原作とうるさくてすいませんけど、原作ファンとしては特に好きなエピソードである妖精が赤子をかどわかす話や、ミニョーラ版キャプテン・アメリカである「ロブスター・ジョンソン」を映像化してくれたのがうれしゅうございました。新たにヘルボーイの仲間となるダイミョウの正体がアレだったり、ミラ・ジョボビッチの魔女っぷりがはまりすぎだったのもツボでした。そして最後はおなじみのあのキャラの登場を匂わせて終わるのですが、制作費も回収できてないところを見ると悲しいことですが続きが作られることはないでしょう…

これを言っちゃうと元も子もないのですが、やっぱりヘルボーイの魅力が一番映えるのはマイク・ミニョーラのあの線であり、あの影であり、スパッと終わる短編形式なんですよね。映画は映画で面白いけど、世界中のコミックファンをとりこにしたアートに実写(CG?)版は及ばない気がします。

アメコミ映画がかつてなく量産された2019年もそろそろ終わり。次は今年最後のアメコミ関連映画となった『ブライトバーン』について書く予定です。

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December 09, 2019

シュワちゃんのシュワ着駅 ティム・ミラー 『ターミネーター/ニュー・フェイト』

デデンデンデデン! デデンデンデン! 忘れたころにあのミュージックと共に帰ってくる、あのロボット… 本日はすっかり長寿シリーズとなってしまったシリーズ通産第6作『ターミネーター/ニュー・フェイト』について書きます。今回はもうのっけからバンバンネタバレしていきますのでご了承ください…

お話は第2作『ターミネーター2』の直後から始まります。スカイネットとの戦いを制し、のんびりバカンスを楽しんでいたコナー母子。しかしその平穏はもう一体残っていたシュワ型ターミネーターの急襲によりもろくも崩れ去ります。それからウン十年後。工場で働いている少女ダニーは新型のターミネーターにより弟ともども命を狙われる。彼女のピンチを救ったのは謎の女サイボーグ・グレースと、老いてなお凄腕の戦士として戦い続けていたサラ・コナーだった。

まずこの「ターミネーター表」をご覧ください。

Ejdt1hu0aatfju 普通シリーズというのはナンバリング順に進んで行くものですが、前作「新起動」から変に行きつ戻りつしてるのが「ターミネーター」の特色。それでも「歴史が変わって時間軸が分岐しちゃいました」とすれば一応説明がつくのがタイムトラベルものの恐ろしいところです。前にも申しましたが、わたしは「ジョン・コナーが未来でスカイネットを打ち倒し、カイル・リースを過去に送り込む」シーンをきちんとやることで、『ターミネーター』は円環的にきれいに完結する」と主張してきました。でも制作会社は基本的に継続させることばかり考えていて、きれいに終わらせることなんて頭にないんでしょうね… というかこれはそれこそ「完結」を望んでないスカイネットの陰謀なんじゃないかという気までしてきました。

まあそれでも新規まき直しで新しいファンがつけばよいのですが、実際は「新起動」より盛り上がらなかったのがつらいところです。全米でも日本でも初登場1位ではあったんですよね。しかしこれまたよくあることですが、制作費が莫大だとトップを取るだけではなく、遥か高みの売り上げ目標を達成しないと黒字にならないという。映画会社の皆さんもそろそろ気づいてほしい。「リブート」や「直近のことは忘れて途中からやりなおさせて♪」というシリーズは「こけて当たり前」ということにです。エイリアン、プレデター、ロボコップ、ゴーストバスターズ… つい先日は海の向こうからチャーリーズ・エンジェルの悲報も聞えて来ました。最近例外的に成功した例といえば猿の惑星とジュマンジくらいでしょうか。そう言いながら作られたら作られたでホイホイ観にいっちゃうのがボンクラ映画ファンの悲しいサガです。

で、肝心の『ニュー・フェイト』ですが、わたしは冒頭のあの人物のポコ死に思いっきりひきました。製作陣に特に聞いてほしいのですが、これ続編ものが一番やっちゃいけないことです。近々国会で正式に法案を出すべきだと思います。新型の二人羽折りターミネーターの「獲物を倒すまでねちっこくねちっこく追跡する」いかにもな描写や、グレースとダニーのまどかタン&ほむらタンのような関係はなかなかよかったですけど、最初のマイナスを挽回するまでにはいたりませんでした。『デッドプール』監督でもあるティム・ミラー氏は『デッドプール2』を観て、何を本当に観客が望んでいるのか、勉強してきたらいいんでないかなー

めずらしくそこそこdisってしまいました。まあでもまた新作ができたらたぶん行ってしまうでしょう。「今度こそ終わった」とか言われてますが、やっつけてもやっつけても復活してくるのがターミネーター。また忘れたころに帰ってくるでしょう。「忘れたころに…」といえば生みの親であるキャメロンの新作『アバター2』はいまのところ再来年末公開予定。本当に忘れてしまう前にたのむで…

 

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December 05, 2019

永遠のペニーワイズ アンディ・ムスキエティ 『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。 』

やっぱタイトルなが… はやいもので二年前日米で旋風を巻き起こしたあの作品の第二章というか完結編がもうお目見え。『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。 』、ご紹介いたします。前作の感想はこちら

27年前団結して怪物「IT」を退けたルーザーズ・クラブ。彼らもみな大人になり、それぞれの人生を送っていた。だが一人デリーに残ったマイクから、街で再びあの怪物が動き始めたという報せが届く。おぼろげな記憶をたどりながら、約束を果たすべく、そして今度こそITの息の根を止めるべく故郷に戻るビルたち。しかしそのとき既に恐るべき敵の罠は彼らの周りに張り巡らされていた。

前作を「子供編」とするならば、今回は「大人編」。子供の時に倒せてるんだから大人になったら楽勝だろ~~~と普通は思います。でもまあ大人になるとかえって弱くなるというか、守りに入るようなところもありますよね。あと自分ではとっくにカタをつけたと思ったトラウマが、何かの拍子にふいに蘇ってくることも。現実離れした話ではありますが、そういう点では現実によくある話しだと思いました。

あと今回特に目に付いたのがゲイ的というかBL的要素。まず冒頭は無くても支障なさそうなある同性カップルの悲劇から始まります。またリッチーは原作では普通にストレートだったはずですが、映画ではエディに友人以上の思いを抱いていたり。またスタンがある決断を下す前に微笑んでビルの顔を思い浮かべるシーンなどにもそんな空気を感じました。監督はこの辺を強調した理由を「ゲイ=マイノリティが迫害されてる現状を訴えたかったから」と述べております。彼も似たような経験をしたことがあったのでしょうか。「アンディ・ムスキエティ ゲイ」で検索してみましたがわかりませんでした。

原作との相違点をさらにあげるなら、やはり色々はしょられたエピソードがあるということ。ビルの妻やぺヴァリーのDV夫、ルーザーズ・クラブの仇敵バワーズももっと出番があったのですが、2時間15分の尺をもってしても収めるのは無理だったようで。まあちょうどいま原作の重版がいっぱい本屋さんに並んでおりますので気になる方は手にとってみてください。

以下は結末までネタバレしてるんでご了承ください。

ストーリー中盤でついに明かされる「IT」の正体。それはなんと宇宙より飛来した、「恐怖」を糧とする超生命体でありました。この辺でドン引きした人もそれなりにいるかと思われます。ホラーから突然SFにシフトしてしまうわけですから。人は理解できない、説明のしようのないものを恐れます。その点前編は見事にホラーでしたし、終わっても尚不安を残していきました。しかし今回は無茶理論ではありますが、恐怖の正体にSF的説明付けがなされてしまいました。ですから結末もめっちゃ爽快感にあふれてます。ホラーファンには物足りないかもしれませんが、ビビりとしてはとてもホッとしました。ちなみに原作もラストはキング作品でも(推定)1,2を争うほどさわやかです。

おまけにこれまで観たキング映画のマイベスト10を貼っておきます。

1.デッドゾーン
2.スタンド・バイ・ミー
3.ミスト
4.IT1部
5.グリーンマイル
6.ショーシャンクの空に
7.IT2部
8.シャイニング
9.ダークタワー
10.クリスティーン

先週からは『シャイニング』の続編『ドクター・スリープ』が公開され、来年には『ペット・セメタリー』も待機していてちょっとしたキング祭り状態ですね。とりあえず『ドクター~』は今週末観てきます。

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December 03, 2019

戦車は進むよどこまでも アレクセイ・シドロフ 『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』

最近『ガールズ&パンツァー』が人気を博しているわが国ですが、ロシアより本格的な戦車映画が上陸して参りました。本国ではロシア映画史上最高のオープニング成績を記録したという『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』、ご紹介します。

第二次大戦中、負傷しナチスに囚われた士官イブシュキンは、収容所でドイツ軍相手に戦車の模擬戦をやるよう命じられる。彼の戦車には弾頭を積むことは許されず、その模擬戦は事実上の死刑であった。だがイブシュキンはナチスを出し抜く一計を思いつき、厳重に警護された収容所から名戦車T-34で脱走することを試みる。

近年見た戦車の実写映画と言うとブラピ主演の『フューリー』やベルリン金獅子商を受賞した『レバノン』などがありましたが、この2本は「戦車の中って狭苦しそうで大変そうだな…」ということがよくわかるアンニュイなムードの作品でした。おまけにその密閉空間に人肉の破片が飛び散ったりしてね… 戦争というのは本来そういうものです。

しかしこの『T-34』はそういった暗い面はひとまず忘れて「戦車かっこええ! 戦車戦燃えるわ!!」という半ズボンの少年が鼻水たらして喜びそうな快活さにあふれております。古い時代の旧式の戦車を題材にしながら、CGをふんだんにつかったスピーディーなカメラワークでもってこちらの燃えテンションを高めてくれます。

旧式といえば当事の戦車は砲塔を動かすのにけっこう労力と時間がかかるようで。一秒でも早く相手に砲塔をむけるために砲手はがんばってハンドルをキコキコ回すのですが、それでもゆっくりゆっくりしかキャノンが旋回しない。そんなじりじりとあせらすような演出に手に汗握りました。絶対不可能な状況を入念に計画を練ることによって覆したり、脱出後も連続して襲い来るピンチをひとつひとつ乗り越えていくストーリー運びにも唸らされました。

イブシュキンのライバルとなるのが、彼が囚われる前から因縁のあるナチス将校イェーガー大佐。普通この手の映画の悪役というのは血も涙も無いにくったらしい~キャラに描かれそうなものです。ですがこのイェーガー氏、妙に懐が広かったり、人がいいというか抜けてるようなところがあってなんか憎めないんですよね。どうもそれは監督さんも同じ気持ちだったようで、最後の方で彼のためにすごくいいシーンを用意したりしててホロリと来ました。

『T-34』は決して上映館は多くないのですが、一部でカルト的な支持を得て今も細々とイベント上映が続いております。春の『ハンターキラー』や『バトルシップ』など、前向きなミリタリー系作品がお好きな方たちに強く推奨いたします。

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December 02, 2019

映画テン年代ベストテン

年に二回映画のベスト10企画を主催してくれるワッシュさんの「男の魂に火をつけろ!」 というブログがあるのですが、今回は久々にそれに便乗します。はやいもので2010年代もそろそろ終了。 そうなるとやりたくなりますよね。映画テン年代ベストテン! この十年のひとつの総決算として、過疎著しいこのブログでも挑んでみることにします。ついでに書いておくと「ゼロ年代」のベストはこちら 。では10位から参りましょう~

30000000006002 10位 『アベンジャーズ』(2012)

この映画はぶっちゃけ内容はあんましたいしたことないのですが(あっ)、その製作と公開が大大大成功したことはテン年代のみならず映画史における重大事件として末永く語り継がれていくことでしょう。いまやたらと映画人から叩かれている「ユニバース形式」ですが、誰でも彼でもできるものではないことは各社の苦労ぶりを見るとよくわかります。

Poster2 9位 『パシフィック・リム』(2013)

その後『シェイプ・オブ・ウォーター』でオスカーとベルリン金獅子をW受賞するギレルモ・デル・トロが、自身の文芸性をかなぐりすててオタクスピリットを1000%解放しきった大怪作。やっぱりなんで映画館で映画を観るかといえば、それはでっかいものがバカでっかく見えるからなんですよ。そんなスクリーンの醍醐味を味わわせてくれるロボットVS怪獣の一大バトル叙事詩。ホームグラウンドのコロナO田原が、絶叫上映でかつてないほどにぎわったのもいい思い出。

51bafrqvnzl__sy445_ 8位 『トイ・ストーリー3』(2010)

前作までの平穏を木っ端みじんこに打ち砕き、主人公たちにさんざん地獄の辛酸をなめさせたのち、映画史上最も完成されたクライマックスへと突き進んでいくピクサーの頂点的作品。今年の「4」も大いに肯定している派ですが、やはりシリーズにおけるベストワンはこの「3」であります。みんなオモチャを大事にしましょう。売ったり捨てたりしたらいかんとです。

168582_03 7位 『この世界の片隅に』(2016)

宮崎駿なきあと(まだ生きてる)、確実に盛り下がるかと思われた日本アニメ映画界ですが、細田守、新海誠、原恵一といった豊かな才能たちに支えられ、百花繚乱の戦国時代へと突入しております。その中であえて1本選ぶとしたらこの作品。原作の魅力を無限に引き出してさらに大成させた「アニメ化」の理想的作品。3年前からロングランが続いてるうえにいよいよ今月には長尺版が公開されるのもぶったまげです。

71ilkaerbil__sx342_ 6位 『メアリー&マックス』(2011)

たぶんこの10本の中では最もマイナーな作品。クレイアニメでモノクロ形式という形で、人生の孤独と皮肉、友情の難しさを高らかに歌い上げた名編。ビターな味わいでありながら(だからか?)、画面に出てくる全てのキャラ、動物、小道具、景色がいとおしい。公開が東日本大震災の直後だったのも思い出深くいです。

Flc_2019022120250100117 5位 『マッドマックス 怒りのデスロード』(2015)

実は映画館で最も多く観てる映画(5回)。自分実は子供のころ『2』を観にいってあまりの怖さに途中退場したことがあるのですが、そんなマッマとウン十年ぶりの和解を果たさせてくれた作品。ラストシーンの美しさはテン年代中随一かも。各所にバスター・キートンへのオマージュが見られるのも嬉しい。

30000000006005  4位 『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)

遠い時代に一人取り残された戦士は、記憶を失った友と道を誤ろうとしている祖国のために、盾ひとつを掲げて突き進む。「タフでなければ生きていけない タフなだけでは生きている意味が無い」 まさにその言葉の通りに。恥ずかしながら「ならお前の任務を果たせ。とことん付き合うぜ」のセリフを思い出しただけで涙ぐんでしまう1本。MCUの重要なピースであると同時に、これと前作『ファースト・アベンジャー』だけで十分独立した二部作ともなっております。

160031_01 3位 『劇場版魔法少女まどか☆マギカ 前編 始まりの物語』(2012)

投票システム上仕方なく「前編」としましたが、これは「後編」とあわせて一本の作品として考えてください。「魔法少女とかよ~ こっぱずかし~んだよな~ でもはやってるみたいだしとりあえず観といてやるか~」みたいな気持ちで臨んだわたしを、鑑賞後「ごめんよ~~~ おじさんが、おじさんがまちがっとった~~~」と涙の海で溺れさせた大変憎憎しいアニメ。「犠牲なくして平穏な社会は築けないのか?」という虚淵先生の問い掛けは『仮面ライダー鎧武』『翠星のガルガンテュア』などでも語られていきます。

91oeftbs1nl__sy445_ 2位 『レゴ(R)ムービー』(2014)

すべては最高! みんないい感じ! 単なるワンアイデアアニメかと思わせておいて、過剰すぎるパロディ&サービス精神、シュバンクマイエルもびっくりな超展開、そして最後はほろりとさせるメッセージで「R」とついていながら何から何まで規格外の作品。『レゴバットマン・ザ・ムービー』『レゴニンジャゴー・ザ・ムービー』、そして『レゴ(R)ムービー2』と続編・派生作品も全て大傑作なのが恐ろしい。

Ave1 1位 『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)

言わせてもらうとテン年代の10年と言うのはアメコミ映画の10年であり、MCUの十年であったと思います。『アベンジャーズ』1作目で頂点を極めたと思われたそのムーブメントはさらにとどまることを知らず、発展と膨張を繰り返しとうとうこの作品においてひとつのビッグバンを迎えました。ひきつづき散らばって行く星々の行方を見守っていこうと思います。ディズニー+だかデラックスにも入らなきゃいかんのか…

 

というわけでアニメ5本、アメコミ3本というゼロ年代にもまして中二臭あふれるベスト10となりました。人は老いていくとだんだん子供のように純真になると言います。その純真さを失わず、トゥエンティー年代も映画鑑賞に励んで行く所存であります(変わらんやっちゃなあ…)

 

 

 

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November 27, 2019

世界からスマホが消えたなら シャンカール 『ロボット2.0』

地方なのでチャンスが限られてるのですが、1年に1本くらいは映画館でマサラムービーを観たいと思っております。で、今年の1本がこれ。9年前インドで爆発的ヒットを飛ばした、スーパースター・ラジニカーントのSF映画の続編『ロボット2.0』ご紹介します。

超高性能AIのチッティが暴走し、凍結されてから8年。チェンナイ市中のスマートフォンが突如として空中に鳥のように飛び去り、いずこかへ消え去ってしまうという事件が起きる。さらに続いて携帯電話の販売業者や、電波塔の建設業者などが次々と怪死を遂げる。政府は事件の解決と真相の究明を図るべく、チッティの封印を解除。生みの親であるバシーガラン博士と共に捜査に当たらせる。手がかりをつかんだコンビの前に、無数のスマホで出来た巨大な怪鳥が出現。チッティと壮絶なバトルを繰り広げる。果たして怪鳥の正体と目的は何なのか…

前作の感想はこちら 。久しぶりに読んでみたらわたくしけっこうdisっておりましたw  というのも「心」を持ってしまったゆえに苦しみ、追い詰められていくチッティがあまりにも気の毒で。今回は何とかして幸せになってほしい…と思いながら鑑賞に臨みました。

さて、今回の主なテーマとなっているのがスマホ。ここ10年の間に急速に社会に普及し、片時も手元にないと落ち着かない、という人もかなり増えました。わたしもあんまし人のことは言えないんですけど。経済成長著しいインドでもその浸透はすさまじく、いまや世界第3位の市場になっているとか。ただその電波の混雑振りが社会問題も招いている模様。実はチッティと戦う怪鳥の正体も、そうした社会情勢により生み出された被害者であったりします。この悪役というか敵怪獣の背景が語られるくだりが、とても丁寧というかちょっと長い。聞いてる私たちも同情したくなってしまいます。そんな風に国の発展のために犠牲になった人が、怨念を抱えて社会に復讐する…という流れは、むかし懐かしの『怪奇大作戦』を彷彿とさせました。また前作に比べるとわけのわからん歌や踊りも少なめだったことも、シリアス度を高めておりました。

ただその重ためのテーマも、クライマックスにおけるラジニ様のはじけっぷりの前ではややかすんでしまった感があります。正直観ながら「1作目のインパクトには及ばないかな」とか考えておりました。しかしさすがはスーパースター、こちらの予想を軽々と超えて来ました。『踊るマハラジャ』からもうだいぶ経ってるけど、この人いまいったい幾つなんだろう…と調べてみたら、なんと御年もう68才。もう紛れも無い高齢者なのにキンキラ衣装を身にまとい、珍妙なグラサンをかけ、たおやかな美女に愛をささやいちゃったりする。まあそれでも見事に様になっちゃってるのが、スターのスターたる所以なのでしょう。

ところで『2.0』では悪役の方が悲劇性をしょってるため、チッティはそんなにかわいそうではありませんでした。それどころかパートナーに美女ロボットまでこさえてもらってけっこう幸せそう。よかったね!と祝福してあげたいはずなのにムラムラと嫉妬心が沸き起こってくるのはなぜなのでしょう。「人の幸せをうらやむのはみっともないことだぞ!」という『釣りキチ三平』の魚紳さんの言葉が思い出されます。

その辺がよくなかったのか、それともヘンテコな踊りが減ったせいか、『ロボット2.0』は1作目のときよりわが国ではあんまり話題になってないような… これからかかる劇場もあるので、もう少しがんばってほしいところですそういえば今ツイッターで「映画館でスマホを光らせる」ことが問題になっています。そういう意味でもタイムリーな映画なので?興味を持った方はぜひご覧ください。

 

 

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November 20, 2019

役者をやめるな! 上田慎一郎 『スペシャルアクターズ』

昨年『カメラを止めるな!』がブームとなった上田慎一郎監督の単独第二作。これまた公開だいたい終わっちゃってますけど、『スペシャルアクターズ』ご紹介します。

和人は「緊張すると失神してしまう」という厄介な体質を抱えながら、役者を目指している青年。彼はある晩警備員のバイトをしている時、長い間連絡を取っていなかった弟の宏樹と再会する。そのことがきっかけで和人は新興宗教がらみのスキャンダルに巻き込まれることになる…

演技の最中テンパるとぶっ倒れてしまう役者さん…というアイデアが(本人には気の毒ながら)まず面白い。あとタイトルでもある「スペシャルアクターズ」というのがメディアに出るわけではなく、「レンタル家族」や「レンタル恋人」のように一般人からお金をもらって一定の期間別人を演じるという設定もなにやらワクワクするものを感じます。上田監督は「演じる」「お芝居」というテーマがお好きなようですね。

今回もまた意外性を重視したネタバレ絶対防止設計ゆえ、感想を書くのが難しいのですが、観ている最中は「色々強引だなあ」と感じるところがありました。ただ最後まで見終わると「それも計算のうちかジョジョ…!」と一本取られた気持ちになります。ここで残念なのが、やはりあまりにも完璧だった『カメ止め』と比較してしまうところ。あれの前だったらもっと手放しで絶賛しただろうに… こんな風に前とついつい比べててしまうのが自分の嫌なところだな~と思います。ちなみに体操の着地に例えるなら『カメ止め』は100点満点、『スペアク』は80点、『イソップの思うツボ』はギリギリ50点というところでしょうか。

鑑賞しながらデビッド・フィンチャーの『〇ーム』にも似てるなあ、と感じたのですが、やっぱり上田監督のスタイルで思い出すのは初期のナイト・M・シャマラン。『カメ止め』を『シックス・センス』とするならば今回は『アンブレイカブル』的な作品になる…かな? アメコミヒーロー的なやつも出てきますしw そうすると20年後くらいにまた続編的な完結編が出来てしまうかもしれませんね…

あと冒頭に下手な演技にパワハラかってくらいガンガン怒鳴り散らす監督が出てきて、映画の現場ってだいたいこんな感じなのかなあ・気分悪いなあ…と思ったのですが、上田監督は撮影中動揺した役者さんを抱きしめて「一緒になんとかしましょう!」とフォローしてあげるくらいあったかい人だそうです。ぜひとも成功して日本映画界の現場の野蛮なところを変えてほしいところです。

…もっとも『スペシャルアクターズ』はそれほど話題になることもなく既にほとんどの映画館で公開終了。もう少し『カメ止め』の遺産が効いてくるかな?と思ったのですが… 何の力にもなれず申し訳ない思いでいっぱいです。ただ熱心なファンに支えられ一部の劇場ではまだ細々と続いているようなので、興味わいた方は調べてみてください~

 

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November 18, 2019

ラスト・オブ・シャイアン スコット・クーパー 荒野の誓い

非常にどうでもいい話ですが、今から一ヶ月ほど前、当地域は台風の影響で5日ほど断水になりまして。これはそんなヘロヘロな状況の中、銭湯ついでに観にいった思い出深い作品。クリスチャン・ベール主演の地味残酷西部劇『荒野の誓い』、ご紹介します。

1892年、未だ無法の地域の多いアメリカ。かつてシャイア族と激しく戦ったブロッカー大尉は、その長イエロー・ホークを故郷まで護送する任務を与えられる。友を多く彼らに殺されたブロッカーは、当然苛立ちを抑えきれずにいた。そんな旅の途中、一向は野蛮なコマンチ族に家族を殺されたロザリーという女性を行きがかり上同行させることになる。多くの危険が潜む行程の果てに、ブロッカー、ホーク、ロザリーを待ち受けるものとは…

原題は『Hostiles(敵意たち)』。ただこれだと抽象的なので、とりあえず「荒野の」とつけときゃ西部劇っぽくてわかりやすかろ~という配給さんの気持ちもわかります。

わたしの子供のころ、ネイティブ・アメリカンの方たちはもっぱら「インディアン」と呼ばれておりました。ですがそれが差別的呼び方だということになり、いつのころからか「ネイティブ~」という呼称の方が一般的に。ただそれもベストではないらしく、本当は部族ごとの名前で呼ぶのが一番いいらしいです。その流れをくむかのように、かつては西部劇で野蛮な悪役だった彼らも、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』あたりからはむしろ被害者的な描かれ方に。現代劇ですが少し前の『ウィンド・リバー』でも窮状が切なく語られておりました。

で、『荒野の誓い』でも基本的には「白人に土地を奪われ仕方なく戦った」という立ち位置なのですが、同時に女子供でも容赦なく殺す悪鬼のような原住民も出てきます。確かにどの人種でも全ていい人、もしくはすべて悪い人…ということはなく、いい人もいれば悪い人もいるのが現実。そういう点では大変公平な視点でした。

凶暴なコマンチ族との激闘がずっと続くかと思いきや、この問題はわりとあっさり解決します。その代わりブロッカーやロザリーたちにはまた別の難儀が次から次へと押し寄せませす。その度に旅のメンバーも一人、また一人と減って行く。公平であると同時に意地の悪い話だなあ、とも思いました。でもがんばって最後まで見たら、とてもさわやかな気持ちにさせられました。もう大概ネタバレですけどこのラストシーンがとても素晴らしい。もうちょっと語りたくなるところをがんばってよくそこで止めました!と監督を激励したくなりました。

ちなみにこの映画2017年に本国でかかってるんですけど、興行的にあれだったのか日本では2年くらい遅れての公開となりました。不遇かもしれませんけどやはり西部劇の『ビリー・ザ・キッド』が劇場スルーされたことを考えるとまだいい方かもしれません。なんちゃって西部劇ファンとしてはもう少しわが国でも新しいファンが増えてくれればなあ…と願うしだいです。

主演でますます脂がのってるクリスチャン・ベール氏は来年早々に『フォードVSフェラーリ』にも出演。またしてものアカデミー賞ノミネートも噂されていて、こちらも期待しています。

 

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November 15, 2019

ストーリー・オブ・騒動/高校与太郎卒業編 久保茂昭 『HiGH&LOW THE WORST』

日本映画界におけるガラパゴス的アクションシリーズ『HiGH&LOW』(通称ハイロー)。一昨年の「3」完結するかと思いきやスピンオフ的な展開でもって継続中。本日はそのハイローとコミック『WORST』がコラボした最新作『HiGH&LOW THE WORST』、ご紹介します。1&2作目の感想はこちら 。3作目の感想はこちら。

SWORD地区の一角を担う不良の巣窟鬼邪高校(おやこうこう)。全日制ではリーダーの轟が定時制のボス・村山とタイマンの末敗北したため、誰がトップに成り代わるか群雄割拠的な様相を呈していた。そんな鬼邪高にふらりと戻ってきた転校生・花岡楓士雄はケンカの強さと爽やかな人柄で人望を集めていく。一方町では牙斗螺(きどら)と呼ばれる犯罪組織がドラッグを売りさばき、鬼邪高や近隣の武闘派高校・鳳仙学園にも被害者が出始める。ドラッグを良しとしない村山と鳳仙のボス上田はそれぞれ組織を叩くべく動き始めるが、牙斗螺もまた彼らを罠にかけるべく計略をめぐらす。

走り屋・ホスト・ヤクザと様々なアウトローがごった煮のように登場した前3部作に対し、今回出てくるのは基本的に高校生がほとんど。昭和末期世代としては『ビー・バップ・ハイスクール』や『ろくでなしブルース』などを思い出すところですが、さすが今の不良たちはファッションもおしゃれというか、かつてのコテコテなリーゼントのヤンキーはほとんどおりません。またライバルとなる鳳仙学園の面々は「幹部以外髪をはやしてはいけない」という掟があるためほぼ全員がスキンヘッドという異様な一団であります。

「人多すぎ」が特色のハイローシリーズ、今回も情け容赦なく新キャラがどかどかと登場し中年の記憶力が試されます。が、基本的に見分けがつきやすいのと、サブキャラ全員覚えなくても話にはついていけるのでなんとか乗り切れました。

わたしがなんとなく注目してしまうのは、普通のかっこしてるのにヤンキーたちの中にいるせいでとりわけ目立ってしまう眼鏡君の轟君。『魁‼黒マティ高校』の神山君をなんとなく思い出させるキャラクター(神山君はケンカとかしない子でしたけどね)。かつて不良からいじめられたゆえに体を鍛えて復讐のために「不良狩り」を行っていたという経歴で、周囲からは「ケンカは滅茶苦茶強いがあいつの下には付きたくない」と言われるような、他者を寄せ付けないクールな男であります。ところが天真爛漫な楓士雄から「力を貸して欲しい」と言われると満更でもない感じで助けてやるあたり、本当は友達が欲しかったのか、それとも純真な弟分タイプにほだされてしまう性分だったのか… ともあれそんな轟と楓士雄の関係にほっこりさせられました。

続いて「いいなあ…」と思ったのが富田望未さん演じるヒロインの「ドカ」ことまどかさん。普通こういう話の女子キャラってもっとこうアイドル的な女優さんを起用するものだと思うんですけど、富田さんのコメディエンヌ的キャラが凸凹した楓士雄たち幼馴染グループの紅一点として非常にしっくりはまるんですね。あと年相応に恥じらったかと思えば、不良もびびるほどにすごんだり、はたまた友達や後輩をやさしくなぐさめたり…と色んな顔を見せてくれるところが楽しゅうございました。

主人公の一人でありシリーズの「顔」の一人である村山君も相変わらず面白いですね。ぼーっとしてるようで「鬼邪高はクスリ禁止だから! (やるヤツは)殺すよ」と肝心なところはビシッと決めてくれます。あと楓士雄や轟がピンチになるとすごくいいタイミングで助けに来てくれれます。そういうところはヒーローの面目躍如でありました。

あともう一点書いておきたいのは、鳳仙の情報担当の「サバカン」が役者さんも立ち位置も『ちはやふる』のヒョロくんそのまんまだったこと。監督もあの映画観てたんでしょうか… 入場特典に高橋ヒロシ先生による特別コミックがついてくるのですが、これに収録されてる番外編の主役がなぜかこのサバカン(笑) 高橋先生も(略) ここまで優遇されてるということは次のスピンオフの主役は彼と見て間違いないでしょう。

あ、アクションについてなんも書いてないな… えーと、すごいです。これはもう見てもらうしかない。スローとクイックでリズムをつけながら、誰がどういう動きをしてるのかはっきりわかる映像。人数が多ければ多いほどこういうの難しいと思うのですが、カメラワークの超絶技巧によってそれを可能としております。これはもうハイローのお家芸と言っていいのでは。

残念ながら『HiGH&LOW THE WORST』は昨日をもって大体の劇場で公開が終わってしまったのですが(おーい)、特別上映、応援上映等の企画はまだある模様。気になってきた方は探してみてください。

 

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November 14, 2019

お笑いモンスター誕生 トッド・フィリップス 『ジョーカー』

これはも~語るべき人が語りつくし、わたしが語ることもないと思いますが、一応備忘録として書き留めておきます。今年度下半期最大の問題作といっても過言ではない『ジョーカー』、ご紹介します。

1980年代アメリカ。貧富の差により不穏な空気が漂うゴッサムシティに、老いた母と二人で住むアーサーという青年がいた。彼は精神障害をわずらいながらも、コメディアンとして人々を楽しませようと仕事に励んでいた。だが同僚から護身用の銃を渡されたことと、不遇が度重なったことが、彼の心の中で危険な衝動を育てていく。

キャラクターとしての「ジョーカー」が誕生したのは1940年。恐らく登場してからしばらくはその名の通り道化師的な、バットマンのやられ役、引き立て役にすぎなかったヴィランであります。それが段々と凄みを増していったのはそのオリジンが描かれた1988年のコミック『キリング・ジョーク』から。アメコミを変えたと言われるアラン・ムーアの描くその狂気は、ジョーカーの内に潜む闇をまざまざと読者の胸に刻みつけたのでした。そして2008年ヒース・レジャーが演じた映画『ダークナイト』では、ジョーカーはバットマンと対等と言っていいほどの、計り知れないパワーを持った存在にまで高められます。一方で『レゴバットマン』のようにバッツに執着するかわいらしい駄々っ子のように描かれることもあり… 本当に多種多様のバリエーションが生まれることになります。詳しくは記事下の「ジョーカー表」をご覧ください。

ただここまで書いておいてなんですが、監督のトッド・フィリップスはそれほどジョーカーに対して強い思い入れがあったわけではないようで。じゃあなぜこの映画を手掛けたのかというと、最近個性的なドラマ映画の企画がなかなか通りにくいと。ならとりあえず今人気のアメコミ映画のガワをかぶせておけば自分のやりたい話を撮れるんじゃないかと。そしたらあっさり通ってしまったそうです。ちなみに監督は「何らかの注文とか要請とか来るんじゃないと覚悟してたら全く来なかった」とのこと。さすがはあの「鷹の爪団」ともコラボしたDCコミックス&ワーナーブラザーズ。なかなかの懐の広さです。

というわけで自分はこの映画を「ジョーカー」の映画というよりは、「ジョーカーの名前だけ借りたトッド・フィリップスのマーティン・スコセッシ・オマージュ作品」だと考えてます。すでに色々言われてますが、社会的立場の低い主人公が孤独ゆえか次第に常軌を逸した行動を取っていく流れはスコセッシの名作『タクシードライバー』を彷彿とさせます。また未見ですが、冴えないコメディアンが妄想に取りつかれていくストーリーは『キング・オブ・コメディ』との類似をよく指摘されています。そして両作品の主人公であるロバート・デ・ニーロが重要な役で出演していたり。実際フィリップス監督はこの映画のプロデュースをスコセッシに依頼したそうですが、彼は多忙だったため、代わりの制作者を紹介してくれた…なんて縁もあります。

もっとも主人公にどっぷり自分を重ね合わせていることが多いスコセッシに対し、フィリップス監督はジョーカー=アーサーに対し距離を取っているというか、あくまで客観的に見つめているように感じられます。その辺は彼がずっと『ハングオーバー』などのコメディ作品を手掛けてきたからではなかろうかと。お笑いって「人がなぜそれを面白がるのか」冷静になって考えていく作業でもありますからね。

それはともかくこの映画のヒットと同時進行で、スコセッシ監督が「マーベル映画はテーマパークのようなもので本当の映画じゃない」という発言をしたためにけっこう業界全体に波紋が広がったりもしました。「アメコミ映画」といわずに「マーベル映画」と言ってるあたり自身もちょっと関わった『ジョーカー』に気を使ったのでしょうか。その後ちょこちょこフォロー的な発言もされてましたが、つまるところ彼は渋いドラマ映画や文芸的な作品が劇場でかけづらくなってきたことを憂いているようです。いまそういうのがやりたいとなると映画館よりも配信サービスの方でどうぞ、ということが多いようなので…

で、この『ジョーカー』は体裁だけでもアメコミ映画にしてしまえば、CG少な目の挑戦的な内容でも客は集められるということを証明してしまいました。正直観る前は「バットマンが出てこなそうなジョーカーの映画なんて売れるのか???」とかなり心配しておりました。ところがどすこい、公開前から批評家は絶賛、ベルリン映画祭の金獅子賞は取る、そして最終的には10億$までいっちゃうんじゃないかというヒットぶりです。派手なアクションがあるわけでもなし、美男美女もそんなに出てないし、しんどく切なく苦しいストーリーとおおよそ一般には人気のなさそうな内容にも関わらずこれだけ売れてるのは謎としかいいようがありません。さらにライバルが少ない状況だからとはいえ、日本で4週連続トップを取るほどに客が入ってるのも深い謎です。トッドさんのやり方もあざといとは思いますが、結果的にこんだけドラマ性、テーマ性の深い作品がたくさんの人に観られてるのは良いことなんじゃないでしょうか。

アメコミファンとしてはやっぱり「ガワだけ利用してやりたいことをやった」というのがひっかからないでもないです。けれど聖書やギリシャ神話、シェイクスピアといった古典作品もそういう風に利用されることはよくあります。バットマンとジョーカーも誕生して80年。もう「古典」の部類に属する作品とみなしていいのかもしれません。

わたくしこの映画を観たのはもう一ヶ月以上前なんですけど、未だに映画館で普通に上映中。さらにS・キングの『IT』後編もヒットしていて、空前のピエロブームというちょっとおかしな状況になっております。とりあえず『ジョーカー』はアカデミー賞作品賞候補となることはほぼ間違いないので、アメコミに興味ない人も騙されたと思ってちょっと観ていただきたいです。

 

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«殺し屋さんたちと動物たち チャド・スタエルスキ 『ジョン・ウィック/パラベラム』