June 25, 2023

2023年5月に観た映画

気が付けば今年もあと半分終わり… ああ…

とりあえず先月観た映画の覚書をば

☆『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol.3』

9年の長きに渡ったGotGシリーズひとまずの完結編。一時ジェームズ・ガン監督が離脱か…ということになりかけましたが、無事彼の手で幕が閉められることになりました。

今回ちょっと驚いたのは、知性のかけらもなさそうなロケットが超インテリキャラだったということ。ただそうなったのには非常に悲しい過去があり… いたいけな動物をかわいそうな目に会わせて泣かせようとするのは反則だと思うのですが、まあ良かったので良しとします。

以下ネタバレで良かった点を列挙

・死亡フラグまき散らかしてたやつらが全員無事だった ・原作と全然違うアダム・ウォーロックのトンチキ具合 ・〆のカムゲチャラッカムゲチャラッカムゲチャラッラッ♪

『BLUE GIANT』のようにたまたま偶然で集まった連中が、絆を深めながらもまたそれぞれ自分の道を歩んでいくところも最高に良かったです。さよならだけが人生だけど、生きていれば再会出来る日も来るのでしょう。

 

☆『ザ・スーパーマリオブラザーズ ムービー』

言わずと知れた任天堂の大スター・マリオブラザーズのCG映画版。ゲームってのは必ずしも映画にしやすいわけではない…というか難しい場合の方が多いと思うのですが、これはひとつの理想形と言ってもいいのでは。

自分忘れてたんですけど、マリオって実は同業者なんですよね。だもんで冒頭で修理にいったのに壊して帰ってくるエピソードはとても身につまされました。あとはクッパ渾身の弾き語りくらいしか強烈に覚えてる箇所がないんですけど、GWに姪っ子二人と観たのが滅法楽しかったので良かったです。任天堂ありがとう!

 

☆『TAR』

本年度アカデミー賞6部門にノミネート。ケイト・ブランシェットを主演に迎え、カリスマ的マエストロの華麗なる転落を描いた作品…なのかな? とにかく思わせぶりというかはっきりしない描写が多く、どこまでが現実なのか彼女の錯覚なのかがわかりづらい話。それがかえって作品に深みや観客に考えさせる余地を与えております。

GotGのとこでも似たことを書きましたが、人の縁というのは切れる時にはスパスパあっさり切れていくものだな…ということを痛感させられます。それでもさすがはケイト様と言うべきか、どれだけ逆境に面してもおのが道を歩んでいく姿は大した説得力でありました。これを機に引退、なんて話も出てるようですが…

オーケストラを題材にした映画なのに本番の演奏場面がほとんどないのは狙いなんでしょうか? それもまたよくわからなかったりして。

 

☆『世界の終わりから』

『CASSHERN』で脚光を浴びた?紀里谷和明監督の引退作。監督初の完全オリジナルストーリーであり、これまでと違って現代社会への嘆き・怒りがふんだんに込められた作品となっておりました。自分ももういい年ですけど、世の中をよくするためにこれまでなんか出来たことがあったかと言えば無に等しく、色々生きづらい時代になってしまった令和の若者たちには少々申し訳ない気持ちがあります。たぶん紀里谷監督も同じ気持ちではなかろうかと。

童話調の本筋に社会問題、『デビルマン』的クライマックスは正直違和感なく溶け合ってるとは言い難いのですが、自分はやっぱり監督の作風が好きなので、軽率にまた復帰して『CASSHERN』みたいな映画を撮ってほしいです(それにはお金がかかりますが)。

主演の伊東蒼さんはこないだの大河や『さがす』でもしんどい役ばかり演じられてるので、次はさわやかなイケメンと軽いラブコメでもやってほしいですね。

 

☆『ワイルドスピード ファイヤーブースト』

言わずと知れた(2回目)超人気カーアクションシリーズ最新作…にして完結編二部作(三になるかも)の前編。最後の敵はジェイソン・モモア演じる仇敵の息子。父の復讐のためにドミニク・ファミリーを巧妙な罠に誘い込みます。

前にも書いたけど、ワイスピシリーズって昔の少年ジャンプなんですよね。一度戦うと仲間になるし、死んだはずのキャラはあっさり生き返るし。ですので今回亡くなったように見えるあいつもあいつも次ではさわやかに笑いながら生き返ってくるでしょう。ついでにミニ・ブライアンのお母さんも生き返って「みんな生きてた!! 超ハッピー!!」となればこれ以上ないくらいふさわしいワイスピのラストになるのでは。

観てる間は普通に楽しみましたが、一週間後観たのを思い出すのに5分くらいかかったりして。そんな映画です。ただこれにはわたしの記憶力低下もかなり関わっております。

 

☆『65』

こらまたなんつーシンプルなタイトル… ハリウッドに時々ある、大物俳優を起用したはいいけどなんか地味な仕上がりになってしまってぶっこけた類のSF作品。他に例を挙げると『パッセンジャー』とか『カオスウォーキング』とか『アフターアース』とか。やっぱり人のいない荒廃した世界をやろうとすると地味になりがちなんですよ。今年公開のギャレス・エドワーズの新作『ザ・クリエイター』も確実に同じ轍を踏む予感がします。

でもまあシリーズもの・原作ものばっかりの時代にあえてオリジナルSFに挑もうという気概は素晴らしいし、何よりも恐竜が出てくるのでそれだけで応援しなくてはいけません。もう公開終わっちゃったけど。

 

☆『クリード 過去の逆襲』

『ロッキー』のスピンオフである新世代ボクサー、アドニス・クリードの物語3作目。開始早々に引退を決めたアドニスの前に、ややこしい関係の親友が訪ねてきたところからお話は始まります。この親友デイミアンがなかなか一筋縄ではいかない。アドニスが好きなようでもあるし、恨みを抱いてるようでもあるし、一体彼の狙いがなんなのか前半はハラハラしながら見守ることになります。

結局リングの上で全力でぶつかることにより友情は回復します。『Gガンダム』並みにベタベタな解決法ですが、自分昭和生まれなのでこういうのに弱いんですよ… あと今回「出ない」とアナウンスされてたロッキー、その後どうなったのか全く触れられてませんでしたが遠くで元気にやってるってことでいいんでしょうか。

監督・主演マイケル・B・ジョーダン氏が「日本のアニメをリスペクトした」と嬉しいことを言ってくれたのに、初週から圏外だったのは本当に残念。我が国を代表して土下座してお詫びしたいです。

 

次回は『フリークスアウト』『怪物』『ザ・フラッシュ』『アクロス・ザ・スパイダーバース』『雄獅少年』について書きます。

 

 

 

 

 

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May 28, 2023

2023年4月に観た映画を振り返る

近年まれに見る更新スピードです。がんばれ俺

☆『逆転のトライアングル』

第75回カンヌ映画祭において最高賞のパルムドールに輝いた作品…の割に、わかりやすく所々お下品。一組のカップルのバカンス旅行を通じて格差社会の問題を描いている…わけではないか。突発的なアクシデントにより立場が「逆転」してしまった人たちの、「運命の皮肉」が主なテーマかと。

「三角形」と呼応してるのか、三幕構成となっております。一幕目は知らん美形カップルの痴話げんかに巻き込まれてるようであまり面白くないのですが、二幕目で舞台が豪華客船に移ると「趣味悪いなあ」と思いつつそのアナーキーな展開に楽しませてもらいました。お下劣な『タイタニック』のようでした。三幕目に入っても面白さは持続しますが、こちらは同時に物寂しくなったり、緊張感溢れる人間関係にハラハラしたり。

セレブモデルのヤヤ役の女優さんはこの出演後ほどなくして不慮の病で亡くなったそうで。そんなところにも運命の皮肉を感じます。

 

☆『仕掛人・藤枝梅安 弐』

2月に1作目が公開された『藤枝梅安』二部作の第二弾。前作はずっと江戸が舞台でしたが、こちらは半ば過ぎまで京までの旅物語となっております。またそこはかとない慰めが感じられた1作目と比べると、こちらは無常感が強調されていて観終わった後ひしひしと虚しさが押し寄せてきました。「梅安」はハードボイルドでもヒーローものでもなく、ノワールなんだなあ…ということを改めて感じ入りました。

そんなニヒルなムードの癒しとなるのが、梅安を世話する近所のおばさん役の高畑淳子さん。彼女が出るとものすごくホッとします。高畑さんのベストアクトと言ってもいいかと。あとクライマックスの「卵かけごはん」VS「醤油焼きおにぎり」の息詰まる対決。ある著名料理家は料理対決の時塩むすびで挑んだそうですが、究極のグルメというのは限りなくシンプルになっていくものなのかも。

死への願望を抱きつつもギリギリのところで生を選んでしまう梅安さん。そういうところは「いいことをしながら悪いことをする」池波正太郎の矛盾した人間観をうかがわせます。

 

☆『ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り』

「梅安」と同じ日に観ました。図らずもアウトローつながり。長年親しまれてるテーブルトークのRPGを原作としたファンタジー映画。ぱっと見世界観やガジェットはそんなに目新しくないのですが、陽気で能天気なキャラクターたちと、魔法のアイテムの使い方・見せ方でべら棒に面白い映画となっていました。難点をあげると観てる間の面白さに全力を注いだため、観終わったあとほとんど残るものがないということ。まあたまにはこういう映画も必要です。

出番があまりないキャラがTwitter上で大人気というのも面白い点。最初はセクシーさが駄々洩れしてるパラディンさんがぶっちぎりだったのですが、さらに登場時間が少ない「ジャーナサン」という鳥人間の人気がだんだん肉薄しつつあります。謎です。

 

☆『AIR』

ベン・アフレック久々の監督作。盟友マット・デイモンを主演に据えて、NBAの伝説的プレイヤー、マイケル・ジョーダンとナイキが契約を結ぶまでの苦労を描いた「実話を基にした」作品。サスペンスやアクションばかり撮っていたベンアフですが、こちらは血が一滴もも流れない、平和でほっこりする映画となっております。

OPから矢継ぎ早に繰り出される80年代の音楽・風俗に懐かしさで死にそうになりました。ここで「この頃はよかったな…」とか感じてしまうと老人の仲間入りを果たすことになってしまいます。危ないところでした。あとスポーツ用品の製造会社にとっては、有名プレイヤーと契約を結ぶことが社運を左右するほどの一大事になるのですねえ。

Amazon製作のせいか1か月ほど公開した後間髪入れずにすぐAmazonプライムビデオで配信が始まりました。これからはこういう例も増えていくのですかね。

 

☆『聖闘士星矢 The Beginning』

80年代人気を博した少年漫画『聖闘士星矢』をハリウッドが実写化!…したはいいのですが、興行的には近年まれに見る爆死作品となってしまいました。何がいけなかったのでしょう。

個人的にはそれほど悪くなかったと思うのです。監督の原作愛も伝わって来るし、誠実に作られてます。ただ、アクション大作というのは「悪くない」だけでは良くないのです。巨額の製作費を回収できなくなってしまうので。

副題からわかるように何部作かに分けて、少しずつキャラを増やしていく予定だったのでしょうか。しかし『星矢』の魅力ってカラフルなキャラが勢ぞろいするところにあると思うのです。メンバーを出し惜しみした結果画面が地味になってしまったのが敗因かなあ…

ファムケ・ヤンセンやニック・スタールといった久しぶりに見る俳優さんたちが元気そうにしてたのは良かったんですが。

 

次回は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol.3』『スーパーマリオブラザーズ』『TAR』『世界の終わりから』『ワイルドスピード ファイヤーブースト』『65』『クリード 過去の逆襲』あたりの感想を書きます。

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May 21, 2023

2023年3月に観た映画を振り返る

というわけで続けざまに3月に観た映画のまとめ記事です。アカデミー賞の時期でした。

☆『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

昨今流行りの「マルチバース」を題材にした1本。死体がおならをひりまくる『スイス・アーミーマン』の監督コンビがこの映画で作品・監督部門を含む7部門を受賞するようになるとは… 世の中本当にわからないものです。

正直自分この映画ぶっとびすぎててちゃんと理解できてるか怪しいのですが、そんなにむずかしく考えるようなものでもないのかも。とりあえず劇中で市井の主婦から世界の映画スターまで違和感なく演じてるのはさすがのミシェル・ヨー様でした。

以下好きだったポイントを列挙すると「セクシーコマンドーの映像化」「『レミーの美味しいレストラン』リスペクト(そしてアライグマが無事だった)」「岩の会話」「相手を幸せにして戦意をなくさせる攻撃」などです。

 

☆『フェイブルマンズ』

これまたアカデミー賞関連作品。スピルバーグ監督の自伝的内容で、監督が幼少期に影響を受けた映画が次から次へと登場するのかな…と予想してたのですが、主題となってるのはどちらかというと彼の両親の複雑な事情だったり。

スピルバーグと思しきサミー少年の両親には共通のベニーという気さくな友人がいるのですが、3人が3人ともお互いのことがすごく好きなために、「結婚できるのはうち二人だけ」という現実がのしかかってきてしまうのです。この辺ちょっと『タッチ』を思い出させます。

一度彼らと離れることに同意したベニーおじさん(演セス・ローゲン)が、サミーに押し付けるように高いカメラをプレゼントするシーンが好きです。

 

☆『シン・仮面ライダー』

今年最も待望していた1本。これに関してはひとつの記事で書きたかった気もするけどいかんせん映画の感想をため過ぎた…

現代を舞台にしてるのにまるで70年代のようなムード。一言でいうと、これ(東西冷戦のころを意識した)スパイものですよね。社会の影で人知れず戦い、人知れず散っていくエージェントたち。そんな名もなき彼ら彼女らにも人並みに人の温もりを欲する気持ちがあり。ラストに敵のアジトに乗り込んでいくのは007の名残かも。石ノ森先生には『009ノ1』というスパイ漫画もありますが。

そんな感じで映画全体を覆う寂寥感や荒漠としたムードや、わずかながら差し込まれるホッとするようなシーンが好みでした。『仮面ライダー』は漫画版とTV版でけっこうかけ離れた要素があり、今回はなんとかそれを融合できないだろうか…という意図があったように思います。結果として漫画版6:TV版4くらいの配合だったかと。すべて綺麗に混ぜ合わさったわけではありませんでしたが、そうした歪さもまた「シン・シリーズ」の特色だと思います。

 

☆『シャザム! 神々の怒り』

新体制への移行が決まったDCユニバース。今年はその前に決まった作品を消化すべく実に4本の公開が予定されてます(出来んのか…)が、第一弾がこの作品。姿は大人、心は子供のシャザムを主人公とした映画の続編となります。アメコミ版『ハリー・ポッター』のようなところもあるこのシリーズ、とりあえず子供たちがでかくなりすぎる前にもう一本撮れたのはよかったですよね。あと先の『アントマン』や『エブエブ』もそうですけど、映画にもかっこいいアクションを決めるおばあさんが増えたなあ…と感じました。

昨年末の『ブラックアダム』と深い関わりのあるキャラだけにそちらへの言及とかあるかな…と楽しみにしてたら何もなかったのは残念。逆にラスト付近での予想外のカメオ出演には素直にびっくり。またお茶らけが続く中で、ビリーと家族たちの絆が描かれるくだりにはホロリと来ました。もういい年なのでこういうのがあるのと条件反射的に涙腺に来てしまうんです。やめてください。

 

☆『グリッドマンユニバース』

TVアニメシリーズ『SSSS.グリッドマン』と『SSSS.ダイナゼノン』がとうとうクロスオーバーを果たした劇場オリジナル作品。これに関しては主題歌「ユニバース」が素晴らしすぎて… これだけ観てくれれば自分の野暮な感想などいらないかと思います。https://www.youtube.com/watch?v=m4vjI6InDJM

『ダイナゼノン』ラストで切ないお別れをしたガウマさんが超あっさり復活したのはアレですが良しとします。監督さんによりますと「初日3日間の興行で今後の続行が決まる」とのことでしたが、結局どうだったのだろう… もしあるとすれば次は原点である『電光超人グリッドマン』にもっと踏み込んだ話が観たいです。

 

☆『ベネデッタ』

エログロの巨匠?ポール・パーホーベンの新作。イタリアに実在した「キリストを見た」という修道女の騒動を描いた作品。戒律でがんじがらめのはずの身が、こっそり隠れて背徳的なことをしてる…というストーリーはヴァン・サン・カッセルのマイナーな映画『モンク 破戒僧』を思い出したり。どう考えても破滅にしか向かわなそうな暗いお話なのに、時折なぜかクスっと笑ってしまいそうなところがあるのは「これこれ、パーホーベンだよね」という感じでした。あと予想に反してそこまでバッドエンドでもなかったような…?

 

☆『アラビアンナイト 三千年の願い』

『マッドマックス 怒りのデスロード』から8年。ジョージ・ミラー待望の新作…のはずが話題も規模もこぢんまりしたような? それはそれとして現代のおとぎ話としてはまあそこそこ面白かったです。もうだいぶいい年のはずなのにティルダ・スィントンさんも相変わらずの美しさでしたし。ベネデッタ』と「バイオレンスな作風で人気を得た監督が老いて撮った、メロメロな愛の物語(でもちょっと変)」という点で共通してました。まあ無味乾燥な毎日を送ってますとたまにはいいですよね。メロメロな話

 

なんとか3月分まで書けました。次は一ヶ月以内に4月に観た映画…『逆転のトライアングル』『仕掛人・藤枝梅安 弐』『ダンジョンズ&ドラゴンズ』『AIR』『聖闘士星矢』の感想を書ければと思います。

 

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2023年2月に観た映画を振り返る

いまごろ3ヶ月前に観た映画のことを書くとか、このブログもいよいよ末期だな…と感じるこの頃です。でもあがくだけあがいてみましょう。

 

☆『鬼滅の刃 上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』

ご存じ『鬼滅の刃』の劇場版…というかTV放送の特別上映。『遊郭編』のクライマックスと『刀鍛冶の里編』の第一話を強引に1本の映画にした構成となっています。

ただやはりufotableさんの超作画は大画面でこそ生きてくるものなので、本来この状態で鑑賞するのがふさわしいのかもしれません。あと妓夫太郎&堕妃の最後のくだりは、TV放送の時は泣きませんでしたが映画館で観たらけっこう鼻水が垂れました。ちょろいです。

 

☆『仕掛人・藤枝梅安』(1作目)

池波正太郎生誕100年記念の映画化プロジェクト第1弾。『藤枝梅安』シリーズは何度か映像化されてきましたが、これまでで最もけれんみを排し、リアルにこっそりと暗殺を遂行する描写に力が入れられてます。

もう一点力の入ってるところは、池波作品特有の江戸グルメ。そんなに凝った料理は出てこない(肉禁止の世ですし)んですが、どれもシンプルながらめちゃくちゃおいしそう。そんな描写から梅安さんと一緒に江戸で生活してるような気分を味わえます。

プロットが偶然に頼りすぎるところが玉に瑕ですけど、これは原作がそういう話なんでしょうがないといえばしょうがない(笑)

それにしてもこの日たまたまチョイスした二本が両方とも「貧困ゆえに哀しい運命に見舞われる兄妹の話」だったのはちょっとびっくりでした。

 

☆『バビロン』

デミアン・チャゼルによるハリウッド草創期の青春物語。監督の代表作『ラ・ラ・ランド』とテーマは同じなんですが、こちらの方はかなり趣味が悪いです。これまでチャゼルさんの作品は上品というかお洒落嗜好が強かったのに、一体何があったのでしょう。

ともあれ、序盤の無声映画の撮影シーンなどは何でもありの時代ゆえのでたらめさがべら棒に楽しい。で、その後トーキーが導入されたことで登場人物たちが、どんどん追い詰められていく様子がしんどい。つまり全体の2/3はしんどいパートなのがしんどい映画でした。でもまあこういう失われた青春をしみじみ思い出す話は嫌いになれないんです。あとトビー・マグワイア、なかなかの怪演でした。

 

☆『アントマン&ワスプ クアントマニア』

MCUフェイズ5の第一弾。超ミクロの量子世界に迷い込んだアントマンと仲間たちの活躍が描かれます。自分としては「ぷにぷにした量子世界の風景・生物」「さばけた性格になったダレン」「メタルヒーローみたいな3アントマンそろい踏み」「クライマックスの蟻とジャイアントマン大暴れ」など十分に楽しませてもらったのですが、世間的には評価はイマイチみたいで。前二作みたいな現実世界のこぢんまりした期待されたということでしょうか。

とりあえずラストの「オレ、もしかしてやらかした…? でもいまんとこ大丈夫だし大丈夫だろ♪」的なマインドは大いに見習いたいものです。

 

☆『BLUE GIANT』

「なんかすごい熱くて感動するらしい」という評判だけで鑑賞を決めたアニメ映画。ジャズに情熱を燃やす三人の若者のお話(漫画原作)。ジャズのことなど何もわかりませんが、「一見さんに魅力を伝えたい」という作品のポリシーのせいか、「なんかすげえな」ということはよく伝わって来ました。上原ひろみさんが監修されてるだけのことはあります。あとやはり原作あっての映画なんでしょうけど、「本当に音が聞こえてくる」というのは漫画にはない強みだと思います。

三人のうち主人公の大は最初から最後まで全くブレないのですが、脇の二人が色々葛藤するというのが独特です。特にずぶの素人からドラムを始める玉田君は我々凡人に一番近いキャラなので共感させられることしきり。また、田舎から出てきた若者が貧しいながらも東京に馴染んでいくあたりは先ごろ完結した『イチジョウ』を思わせてほっこりしました。

 

気力が持てばこのあと続けざまに3月観た映画のまとめも書きます。もつかなー

 

 

 

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March 05, 2023

2023年1月に観た映画を振り返る

ようやく今年最初の映画まとめ記事であります。

 

☆『空の大怪獣ラドン』

本当は昨年に「午前十時の映画祭」で観ました。近年リバイバルで『ゴジラ(1954)』『モスラ(1961)』も鑑賞しましたが、その中ではこの作品が一番面白かったように思えます。ミステリーのような導入部、今は失われた炭鉱の風景、メガヌロンのホラー的な描写、そしてラドンの大暴れ…などなど楽しめる要素が色々詰まってまして。まだ先の話ですが今年の年末は『地球防衛軍』をかけるようでこれまた楽しみです。

 

☆『かがみの孤城』

『オトナ帝国』の原恵一監督最新作。前作『ハッピバースデー・ワンダーランド』が氏にしてはかなりファンタジー要素の強い作品で、いまいちその持ち味が感じられなかったのに対し、今回はしんどい現実に立ち向かわざるを得ない子供たちの姿にその本領を見ました。というわけでけっこう見ていて辛い・切ないところもありますけれど、最後には爽やかな後味を残してくれるところも原テイストでした。

ストーリー上のある「仕掛け」に関しては私にしては割と早々に気づきました。ただこれは自分が鋭いというよりは少し前に同じ発想のアニメを見ていたから。

 

☆『仮面ライダーギーツ×リバイス MOVIEバトルロワイヤル』

良かった点…『龍騎』関連はみな良かったです。

悪かった点…ラスト付近、一輝が願いをかなえられる場面で「何もないよ」と微笑んで言うところ。そこはバイスの復活を願ってあげるべきではないのか… 

 

☆『ケイコ 目を澄ませて』

耳の聞こえない女子プロボクサー・ケイコと彼女を支える人々の物語。ただスポ根的ムードはなく、主人公が属するジムの閉鎖がストーリー上最も大きなヤマ場であったりします。現在の都会を舞台にした作品であるのに、出てくる風景がいちいち郷愁を誘うような懐かしさに溢れています。あと彼女が会長と行うミット打ちの「バシュ!」という音がとても心地良いのですが、それも本当は彼女の耳には届いていないわけで。

最後の試合はどうしてこんな風にもってったんだろ…と思いましたが、これ、一応実話を下敷きにした作品だったのですね。現実の結果に倣ったというとこでしょうか。

 

☆『ノースマン 導かれし復讐者』

西暦9世紀の北欧が舞台。叔父に父を殺され、母を奪われた男の復讐譚。『ハムレット』の原型となった「アムレート」という人物の叙事詩を元にしてるそうです。

復讐ものには2通りあります。復讐が遂げられてスカっとする話と、復讐の陰惨さにゲンナリする話です。こちらはどっちかというと後者。ラスボスのおじさんがあまり強くなさそうなところからもそれはうかがえます。ただそんなカタルシスの乏しそうなお話ではありましたが、ストーリー自体は意外にも面白く観ることが出来ました。これまで「脇の人」という印象が強かったアレクサンダー・スカルスガルドさんは、これで堂々たる主演の「代表作」をゲットできたのでは。

 

☆『エンドロールのつづき』

インド版『ニュー・シネマ・パラダイス』。いつものインド映画と雰囲気が少々違うな…と思ったらフランスとの合作でした。

主人公の少年のものすごい行動力にとにかく圧倒されます。映画を自分で上映したい…という目的のために平気で盗みまでしたりして、悪い方向に進んだら犯罪組織のボスにまで上りつめてしまうのでは…と心配になりました。

劇中に登場するお母さんのお弁当が肉とかあまり入ってなくてほぼ香辛料と野菜が主体なのですが、それでもすごくおいしそうで、晩御飯を後回しにしたお腹には少々堪えました。

 

☆『蒼穹のファフナー BEHIND THE LINE』

少し前リバイバルがあった『HEAVEN AND EARTH』の直後の物語。つまり『蒼穹のファフナー』シリーズの中で最も平和だったころのお話。その後のエピソードで散ったキャラ達もまだ元気な姿を見せていて、戦闘シーンはなく、よってロボの出番もほぼないのですが、ファンの満足度はめちゃくちゃ高いという不思議な作品。もうこれが真の完結編ということにして、『EXODUS』以降はなかったことにしませんか… 真壁指令の中の人のつぶやきによると、竜宮島のモデルはやっぱり尾道みたいですね。そんなわけで尾道観光の疑似体験もできる一本

 

☆『イニシェリン島の精霊』

『スリー・ビルボード』監督による今年のアカデミー賞作品部門候補の1本。前日まで仲良くしていた友人から突然絶縁を迫られた男が、狭い島の中で悩みまくるというお話。ほかの映画でアクの強い役を多く演じているコリン・ファレルが「退屈極まりない男」を演じているのが無理があるんですけど、まあそれは置いといて交友関係・対人関係において色々勉強になるお話です。できるだけ他の人を楽しませたい・面白いやつだと思われたい…という願望は誰にでもあると思うのですが、これがなかなか難しいのですよね… あとリアルではあまりないけれど、ネットではいきなりバサッと縁を切られてしまうというのは時々あること。あれはこちらでは唐突に感じられるけど、向こうにしてみれば積もり積もった「こいつうざいな」メーターがとうとう極に達したということなのかもしれません。

最後の方すごい状態になってしまったコリンの友人と、平然と学生さんたちがセッションしてるのは明らかに無理があると思いました。

 

次回は『仕掛け人 藤枝梅安』『鬼滅の刃 ワールドツアー』『バビロン』『アントマン&ワスプ クアントマニア』『BLUE GIANT』についてちょっとずつ書きます。

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February 27, 2023

第19回SGA屋漫画文化賞

例年であれば映画ベストと共に年末に発表する年間漫画ベスト。今年は怠け癖が働いていつもより二か月遅れの発表となりました。ははは…

ま、誰も注目してなくて限りない自己満足で決めてる賞なので何の問題もないのですが。

それではさらに投げやりに発表してまいります。

 

☆少年漫画部門 松井優征 『逃げ上手の若君』 佳境に入りつつある松井版『太平記』。楠木正成も登場しますます盛り上がりを見せています。

☆少女漫画部門 田村由美 『ミステリと言う勿れ』 僕は常々思うんですが、ミステリー漫画久々の新星ヒット作ですよね…

☆青年漫画部門 野田サトル 『ゴールデンカムイ』 ダレルことなく要所要所を盛り上げながら、最大のクライマックスを迎えて堂々の完結。これが出来る例ってごくごくわずかなんですよね。

☆中年漫画部門 萩原天晴・三好智樹・瀬戸義明 『上京生活録イチジョウ』 これまた先日完結。青年が主人公ですが、これ中年が在りし日を懐かしむ漫画なんですよ

☆海外漫画部門 ヴィレッジブックスの翻訳事業に対して 長年名作をたくさん紹介してくださり本当にありがとうございました。翻訳飢饉にあえいでいたころ、『バットマン:ロング・ハロウィーン』を出してくれたことは忘れません。

 

★大賞 井上雄彦 『スラムダンク』

昨年末映画を観て久しぶりに埃をかぶった原作本を読み返してみたら、これがもうべら棒に面白くて。25年経っても色あせないそのエネルギーに脱帽しました。というわけで今頃勝手に大賞を差し上げます。

 

果たしてまた次回があるかどうか… いや、諦めてしまったらそこで試合終了なのです。

 

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February 06, 2023

『鎌倉殿の13人』を雑に振り返る⑫ やっとこ12月編

すでに『どうする家康』が始まって一月以上。いまさら感が半端ないですが、マイBEST大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の感想を〆とうございます。

 

第45回「八幡宮の階段」

雪の中行われた実朝の右大臣拝賀式。階段を下りていく彼を物陰から狙う公暁。目の前で今まさに将軍暗殺が実行されようとしていることを知りながら、しかしそれを止めようとはしない義時。そして運命の時が訪れた。

ある意味『鎌倉殿』の真のクライマックスとも言える回。頼朝の血筋が絶え、名実ともに北条が武家社会の頂点に立つことになります。刀を下げた公暁を前に、あえて逆らわず命を投げ出す実朝。血を血で洗い生き馬の目を抜く鎌倉にあって、彼は勝ち残るにはあまりに優しすぎたのでしょう。実朝登場からこの回が来るまで毎週が本当にしんどかったですが、シリーズ最大の悲劇が終わってなんだかホッとしてしまったのも事実です。

一方で素っ頓狂な散り際を見せてくれた源仲章氏。やけくそに「寒いんだよおお!!」とがなる姿はジーパン刑事の最後を彷彿とさせました。

こんなに大事な回なのにワールドカップの日本ーコスタリカ戦と重なってしまったために視聴率が最低だったというのもまた悲劇でした。

終わりに登場する運慶×義時の会話も印象深かったです。「お前は俗物だ。だからお前の作るものは人の心を打つ」

この回の重要なアイテム:血で読めなくなった公暁の弾劾文とポイ捨てされた実朝の小太刀

 

第46回「将軍になった女」

1219年。鎌倉では次なる暗闘が始まっていた。自分の息子阿野時元を次の将軍に据えようとした実衣だったが、その陰謀はもろくも崩れ去る。絶体絶命の彼女を救うべく立ち上がったのは子供をすべて失い悲嘆に暮れていた政子だった。

『鎌倉殿』最終章の開幕にしていわゆる「尼将軍」誕生の回。政子のことを「稀代の悪女」と評する向きもあるようですが、1人でも十分つらいのに4人もの子供に先立たれた心情を思えばあまりに気の毒でありません。そしてどん底から妹を助けるためもう一度立ち上がるその姿が凛々しくもやはり悲しい。「田舎の行き遅れが」と連呼されてたのもちょっと悲しく、少し笑えました。

実衣の方はなんというか自業自得だし懲りないしであまり同情できないのですが、耳たぶひとつ切られず無事で済んだのはまあよかったですね。

この回の重要アイテム:無事だったミイさんの鼻と耳たぶ

 

第47回「ある朝敵、ある演説」

1221年。鎌倉で最高権力者となった義時に、ついに後鳥羽上皇が刃を向ける。彼一人を引き渡せば兵は出さないと諸将に文を送る上皇。幕府を守るため自ら朝廷に身柄を預けようとする義時だったが、姉はそんな彼を見捨てなかった。

義時と言う人も本当に不思議な人で、ここに至るまでに権力欲にとりつかれたマックロクロスケのような男になり果ててしまいましたが、彼の欲って金とかスケベ心とかにはいかないんですよね。あくまで主導権を握ることだけに邁進し続け、他に熱心に取り組んでることといえば仏像や寺を作ることくらい。ある意味めちゃくちゃストイックな男とも言えます。そんな彼だからこそ鎌倉(そして息子)を救うためには迷いなく命を投げ出します。「あの親子はぶつかり合うほどに絆を強くしていく」というのえさんの評、聞いてる方は微笑ましいんですけど、彼女にとってはねたましくてしかたなかったのでしょうね。

『東京リベンジャーズ』の如く坂東武者に「ひよってるやつはいるかああ!!」とぶちかます政子。非道をつくしてきた自分でさえまだかばってくれる人たちがいる… 涙する義時の姿にちょっぴり白味が戻ったラストでした。

この回の重要なアイテム:「記念にほしい」とトキューサに言わせた上皇様のお手紙

 

第48回「報いの時」

そして始まる承久の乱。尼将軍パワーに奮い立たされた坂東武者に雅な京の侍たちはなすすべもなく、戦いは短期間のうちに幕を閉じた。これで今度こそ歯向かうものは誰もなくなった北条義時であったが、死は意外なところから忍び寄っていた。

「アガサ・クリスティの作品からヒントを得た」と三谷さんが言っていたラストシーン(結局どの作品だったの?)。小栗さんも小池さんも特番で「すげえすげえ」と興奮していたその終幕はどんなものだったのだろう…と固唾を飲んで見守っておりましたが、予想を上回る衝撃に打ちのめされました。ちなみにこの放送時間、自分は某宅で忘年会に呼ばれていて、酒盛りに一人背を向けてTVに見入っておりました。

前回助けてくれた姉にとどめをさされてしまう義時があまりにやるせない。でもあれは復讐や処刑ではなく、永くない弟にこれ以上罪を重ねさせないための処置だったのでは。思わず駆け寄ってしまうところとか、「もっと似てる人がいるわ」という言葉からそれを感じますし、宮沢りえさんも全く同じ意見だったのに慰められました。

もう少し余韻とか残された人たちの反応とか見たかったところですが、あそこでバサッと終わるのがやはり美しいのかも。脳内を「ゴッドファーザー 愛のテーマ」がただただ流れていきました。

この回の重要なアイテム:書き上げられた御成敗式目・毒(キノコ由来?)

 

最後こそ遅れましたが無事全話感想書き上げられてホッと一息です。ただ「13」が強調されたドラマだったので、あともう一回くらいなんか書きたいですねえ(挫折する可能性高し)

 

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December 29, 2022

2022年、この映画がアレだ!!

年々投げやりになっていく年間映画ベスト。腐乱死体のように見苦しいですが、今年もやります。まずはどん尻から。

 

ワースト:『仮面ライダー〇〇〇 10th 復活のコアメダル』

伏字になってるようななってないような。でもあんまりこの映画の悪口言いたくないんです。主演の渡部秀君がこれで満足されてるのだったらそれでいいです。三浦君は怒ってましたが。

 

リバイバル部門:『ロード・オブ・ザ・リング』三部作IMAX上映

公開からはや20年。色々忘れてたので新鮮な気持ちで感動出来ました。

 

ではBEST25を一気に発表いたします。

第25位 『ハウス・オブ・グッチ』 お金って怖いよね。でも欲しいよね

第24位 『バブル』 ネトフリ同時公開とか、やめよう

第23位 『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』 次は「時間よ、止まれ」の映画化よろしく

第22位 『FLEE』 ジャン・クロード・ヴァンダム再評価映画

第21位 『ソー ラブ&サンダー』 2年ぶりに会った友人と一緒に観たのが大変楽しかったので

第20位 『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』 電〇は悪

第19位 『ベイビーブローカー』 かつてないくらい優しいソン・ガンホ

第18位 『SING ネクストステージ』 稲葉さんのU2が良かった

第17位 『鋼の錬金術師 完結編』2部作 今年の「そこまで悪く言われることなかったんじゃないか」賞

第16位 『ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー』 二代目はシュリチャン

第15位 『コーダ あいのうた』 無音演出が斬新でした

第14位 『神々の山嶺』 フランスのお洒落なセンスで描かれる昭和風景

第13位 『ドクターストレンジ マッドネス・オブ・マルチバース』 ラストのアレは『三つ目がとおる』のオマージュでしょうか

第12位 『ノープ/NOPE』 みんな『AKIRA』好きだよね

第11位 『トップガン マーヴェリック』 今までで映画館で一番多く予告編を見た映画。4DXSCREENは壁際に座ると片っぽの横画面がほとんど見えません。

第10位 『マークスマン』 今年ナンバー1のリーアム・ニーソン映画(これしかないけど)

第9位 『キングダムⅡ 遥かなる大地へ』 良かったけど、このペースじゃ最後まで映画化とか無理だよね…

第8位 『DCがんばれ! スーパーペット』 クリプトたちだけじゃなく、DC映画は全体的にがんばろう

第7位 『さがす』 さがし さがしもとめて~ ラストシーンがすごく好き

第6位 『ザ・バットマン』 東京コミコンでアンディ・サーキスに会いに行きたかった…

第5位 『すずめの戸締り』 「人間椅子」も新海誠が手掛けるとこんなにさわやか?

第4位 『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』 観たてのほやほや。今年はどん詰まりに来てツボな作品がラッシュして来ました

第3位 『THE FIRST SLAM DUNK』 今年の「公開されるや否やみんなの手の平がひっくり返った」大賞。ワールドカップ日本代表の姿とダブりました。

ラストは2作品同率で

『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』

『シン・ウルトラマン』

東西を代表するヒーローの総決算的な作品を並んで1位といたします。誰に強いられてでもなく、好きな人たちを守るために笑顔で自分を犠牲にする、彼らの姿に涙と鼻水を搾り取られました。片や10代、片やウン千才?という開きはありますが。それにしてもアンドリュー・ガーフィールド、騙してくれてありがとう。許さないけど許す。

 

振り返りみれば今年もいい映画いっぱいありました。来年も『シン・仮面ライダー』『スパイダーバース』などに期待しております。それでは良いお年を。

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December 27, 2022

2022 年12月に観た映画

今月は後『ラドン』の4Kリバイバルを観る予定なのですが、とりあえずここで締めます。

☆『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』

そのまんまですね。ギレルモさんがストップモーションアニメで表現した「ピノッキオ」。ネットフリックス製作ですが、幸い近くの映画館でもちょっとだけかけてくれました。ピノキオといえば去年の生々しく、原作に忠実な実写版が記憶に新しいところ。デルトロさんが差別化を意識されたのかはわかりませんが、今回はかなり独自のアレンジが効いておりました。戦時下のイタリアが舞台となっているので、戦争の悲しさや恐ろしさが強く伝わってくる内容となっております。キュートでコミカルなところもたくさんありますけどね。

思えばギレルモ氏が純粋に子供向けの映画を手がけたのはこれが初めてかも。観客に「あとはご自分で想像してください」と委ねるような結末は『パンズラ・ビリンス』や『シェイプ・オブ・ウォーター』を思い出しました。

 

☆『ブラック・アダム』

揺れ動き続ける(笑)DC映画ユニバース最新作。ブラック・アダムさんといえば『シャザム!』の名悪役の一人なのですが、今回はビリー君ちとは関係なく映画化。代わりにホークマンやドクターフェイトといったコミックでは古参なのにいまいちメジャーになりきれないヒーローたちがチーム「JSA」を組んで登場してきてたのしゅうございました。特にドクターフェイトのデザインはもろ好みでフィギュアが欲しくなります。

印象に残ったのはJSAが「ヒーローとかいう割に中東の問題は全く解決してくれない」とか皮肉られるところですね。これ、現実の米軍へのかなり痛烈な皮肉になっているのでは。あと『フライト・ゲーム』や『ロスト・バケーション』といった限定空間でのサスペンスを得意とするジャウム・コレット・セラ氏が監督でしたが、彼の持ち味はあまり生きてなかったような。題材が題材だけに仕方ないところでしょうか。

 

☆『THE FIRST SLAM DUNK』

90年代の名作スポーツ漫画を、原作者自らが映画化。この「原作者自ら」ということを知った時はたまげて記事を二度見しました。井上先生ってあんましアニメに興味ない人だと勝手に思ってたので…

正直あまり期待はしてなく、大好きな漫画だったのでまあ一応観とこう…くらいの気持ちでした。でもまあ、何度も読み返したあの場面、あのセリフが出てくると感極まって条件反射的に鼻水がブシューッと噴き出てしまうんですよね。今回のメインは湘北5で最も地味な宮城君で、出番が最も多いのは彼なのですが、自分はやっぱり桜木花道がここぞというところで活躍するところにテンション上がってました。

宮城君の性格が原作とはちょっと違っていて、原作者が作っているのに二次創作みたいなところがあります。多分先生はこのアニメを1本の映画、あるいは「現実(リアル)に近い作品」として仕上げたかったのでしょうね。ギャグ含めてコミックをそのまんま再現するとそこからかけ離れてしまう恐れがある。その辺を考慮に入れての改変だったのだと思います。

懐かしい面々にまた会えてよかった(あまり期待してなかったくせに)。大変でしょうけどぜひともTHE SECONDも作っていただきたい。こんなタイトルにしたんだからその辺責任とってください。

 

☆『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』

この十年間ずっと「やるやる」詐欺を繰り返していた『アバター』待望の続編。今回は惑星パンドラの海が中心となっていて、この水の3D表現が本当にすごい。デビュー作『殺人魚フライングキラー』から、『アビス』そして『タイタニック』と、キャメロンはやっぱり海を扱うのが本領の人…という思いを新たにしました。3D旋風を巻き起こした前作ですが、その後「すげえ立体映像を見せてやるぜ!」というのを第一目標として作られた映画が何かあったかというと、『怪盗グルーの月泥棒』くらいしかなかったんではないかと。「ゲーム画面みたい」という評価も聞きましたが、ゲーム画面はいかに美麗であろうと飛び出してはこないし、なにより大スクリーンでは観られないのです。

映像以外には海で活躍する悪役のメカ群とか、長男ばかりひいきされてないがしろにされる次男、その次男とクジラとの友情などもツボでした。しかしキャメロンは本当に̪シガ二ーと大佐が好きですねえ。この二人への肩入れがあからさまで今回前回の主人公ジェイクの影がちょっと薄かったです。

「3作目は何がなんでもやる」とのことなので、興行がたとえアレな結果になったとしても責任とって続けてください。

 

☆『MEN 同じ顔の男たち』

『エクスマキナ』のアレックス・ガーランド監督と聞いて観ました。あちらが一応条理的なSFだったのに対し、今回はかなり不条理なお話。タイトル通り同じ役者さんが管理人、牧師、警官、ホームレス…と風体を変えてヒロインの前に何度も現れるのですけど、そのことに関しては特につっこまない主人公。神経のまいってしまった人が見た幻覚とも、田舎の変な妖怪を目覚めさせちゃった話とも取れます。リンゴがいっせいに落ちるシーンとか、ヒロインが逃げ惑う中、背景の夜空がめちゃくちゃ綺麗だったりするところが印象に残りました。

 

☆『MAD GOD』

『スターウォーズ』『ロボコップ』『ジュラシックパーク』など名だたる娯楽巨編に関わってきたクリーチャー操演の神様フィル・ティペットが、一からオリジナルで作り上げたストップモーションアニメ。で、これがかなりシュールで難解でえぐい。アニメといえど子供に見せちゃいけない作品です。『JUNK HEAD』とかぶってるところも色々あるんですけど、こちらにはあちらにあった「かわいらしさ」というものが一片もありません。

その映像の力強さや作りこみには圧倒されながらも、共感を拒絶するような作りに「ポカーン」としてしまったのも事実。実はこれクリスマス・イブに一人で見たのですが、なんだか寒さとやるせなさが一層募った気がしました。

 

おお、なんとか超雑ではありますが、年内観た新作映画の一言メモを全部書き切りました。次は誰も注目してないであろう2022年映画ベストについて書きます。

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December 25, 2022

2022年11月に観た映画を振り返る

10月はリバイバルと特集上映しか観てなかったので飛ばします。余裕があったらそのうち書くかも…

☆『RRR』

『バーフバリ』のラージャマウリ監督が描く近代インドアクション。偶然出会った時から互いに強くひかれあったラーマとビーム。だがそれぞれに一族を背負った使命があったことから、その絆は分かたれてしまう。…と書くと男女のラブロマンスのようですが、主人公二人は凄腕の武芸者なので激しいアクションの応酬が繰り広げられます。

3時間の長尺を退屈させずに一気に観させる手腕はさすがのラージャさん。ただちょっとラーマさんもビームさんも大事なお勤めがあるのにサボって遊びすぎだと思いました。あと最後の一人が倒れるまでぶっとおしで続けられる死の舞踏「ナートゥ」ダンスが圧巻です。

 

☆『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』

みんな大好きタイムリープ映画。ただ日本でタイムリープをやるとなぜか青春の甘酸っぱいムードが濃厚になったりするのですが、こちらは辛気臭いサラリーマン社会が舞台となってるのが斬新であります。作品紹介を読むとブラック企業で酷使されて大変そうな話を想像しますけれど、こちらの会社の同僚はみないい人たちで、出来たらこんなメンバーと一緒に働きたいなあと思ったり。その代わりクライアントである広告代理店?はけっこう腹黒い感じ。やっぱり電〇あたりがモデルだったりするのでしょうか。

 

☆『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』

待望のMCU最新作。前作の主演で会ったチャドウィック・ボーズマン氏が不慮の死を遂げられたため、作品世界でもブラックパンサー=ティチャラが突然の病で亡くなったという展開に。主役不在の中脇役たちがそれぞれ懸命に働き、やがて新たなるブラックパンサーが誕生する…という流れ。言ってみれば映画丸丸一本使って一人の俳優さんの追悼式を行ったようなもの。それだけ社会にもスタッフにもチャドウィックさんの存在が大きかったということなのでしょう。自分としては代役立ててでも、映画の中ではティチャラに死んでほしくはなかったですけど… ただCGでボーズマン氏を再現して、安っぽい感動的なセリフを言わせたりしなかったのは評価いたします。

 

☆『すずめの戸締り』

待望の新海誠最新作。こう言ってはなんですが爽やかな孔雀王(もしくは仮面ライダー響鬼)がピュアな女子高生に助けられる話。強引なところはあれど、冒頭から中盤まではスペクタクルの連続で観る者に休みをくれません。それが少し転調するのが、悲壮な決意を固めたヒロイン・すずめの前に孔雀王の友達である芹澤という軽そうなにーちゃんが現れるところ。こっから多少肩の力を抜いてのんびり楽しめるロードムービーへとシフトしていきます。かようにちょっと変な映画ではあるのですが、この芹澤のキャラと縦横無尽にすっとび回る人間椅子があまりにも楽しかったので年間ベストに入れたいと思います。

ちらっと地元熱海も映りました。あそこも実は土石流が流れてったところだったり…

 

☆『ザリガニの鳴くところ』

ザリガニって鳴くんか…?? それはおいといて、アメリカ南部の自然で育ったややワイルドな女の子が、町のプレイボーイを殺したという罪で訴えられ、果たして彼女がやったのか、それとも無実なのか…という謎でもって観客をひっぱっていきます。

某ロッテントマトの点数はあまり高くありませんでしたが、十分に面白かったし原作は全米でベストセラーになったとのこと。だからこの面白さの功績は原作小説に負うところが大きいかも。その原作者さんは自然学者として名を馳せてた方で、だいぶご高齢になってから初めて書いた小説が大ヒットとなったというのだから驚きです。

舞台となったノースカロライナ州の豊かに広がる河は『トム・ソーヤの冒険』とも似た景色だったり。あちらはミズーリ州のお話なのでそれなりに近いと言えば近い…かな。

 

☆『グリーン・ナイト』

日本でも人気の高いアーサー王伝説に出てくる「円卓の騎士」の一人、ガウェインの冒険物語。といっても明るくモンスターを倒していくような内容ではなく、追剥にあって苦労したり説明のつかない怪異に出くわしたり…といったストーリーで、正直なかなかわかりにくいところもあって困惑いたしました。ただラストも含め不快な難解さではなく、わけわからないながらも爽やかな気持ちで劇場を後にすることが出来ました。そんでこれ、大元は監督が考えた話じゃなくて、イギリスで昔から伝わってる民話みたいなものをアレンジした作品なんだそうです。

快活な青年の役が多かったデブ・パテル氏がこちらでは悩める修行者的な役を好演してて感服いたしました。

 

次回「12月に観た映画」の感想は年内にまとめられるかどうか。『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』『ブラック・アダム』『THE FIRST SLAM DUNK』『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』『MEN』『MAD GOD』について書きます。

 

 

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December 04, 2022

『鎌倉殿の13人』を雑に振り返る⑪ だいたい11月編

第41回「義盛、お前は悪くない」

一時は回避されたかに見えた和田勢との衝突。しかし不幸な行き違いから、義盛の郎党たちは幕府に向けて進軍を開始してしまう。ここに幕府内乱で最も激しかったと言われた「和田合戦」が始まった。

和田義盛退場編の後編。和田さんに関してはドラマを見る前から名前だけ知ってましたが、本当に名前だけ。その性格は三谷さんの誇張によるところが大きいとは思いますが、歴史の記号みたいだった人物が、またしてもこれで全国の皆さんの親しみやすい人気者になったのでは。それだけにその壮絶な最期がつろうございました。和田さんを葬った後何とも言えない表情を見せる義時にも…

数少ない笑いどころは、追討に向かう際なぜかべろんべろんに酔っぱらってた泰時。几帳面な彼にしては珍しい乱れっぷりでした。

大抵源平ものでは義仲の死と共に姿を消す巴御前は、この41回までねばりを見せてくれました。秋元才加さん演じる凛とした巴と髭もじゃの熊さんみたいな義盛公は、実に微笑ましいカップルでしたねえ。

この回の重要なアイテム:大江さんが別人のような刀さばきで取り戻してきたドクロと、朝時が思いついたことにされたファランクス戦術

 

第42回「夢のゆくえ」

和田合戦を経て、平和な鎌倉を作ろうと心に誓う実朝は、実権を取り戻すべく義時と対立していく。そんな折都から宋の匠・陳和卿が鎌倉を来訪。船を作り宋との交易を興すことをすすめ、実朝は大いに乗り気になる。

西暦1216年の出来事で、豪快に失敗したプロジェクトXみたいなお話。若いなりに一生懸命がんばってる実朝君の努力が報われないのが、これまた切ない…んだけど、裸の男たちがギャースカわめきながら船を引っ張ってる絵はなかなか笑えました。なぜか脚本に「脱いでる」と書かれてた義村。書いてないのになぜか脱いでた八田さん。見事な胸筋を披露してくださりありがとうございました。

他にはお父さん譲りの超能力なのか、冒頭で実朝の夢枕に現れる後鳥羽上皇がインパクト大でした。あとエピローグで3回ぶりに姿を見せ、そのままナレ死した時政パッパにほっこり。

この回の造船マメ知識:船を陸で重く作り過ぎてはいけない

 

第43回「資格と死角」

1217年。後継者に将軍職を譲ることに決めた実朝は、京より帝の子息をその地位に据えることを提案。そこへ運悪く僧として修業していた二代将軍の忘れ形見公暁が鎌倉に戻ってくる。鎌倉殿を継ぐ気満々だった公暁に義村が要らないことを色々吹き込んだせいで、新たなる悲劇がまた幕を開ける。

これまでも辛いエピソードが山ほどあった「鎌倉殿」ですが、ここからの3回で言わばつらみのピークを迎えます。キーパーソンとなる公暁は役の上では頼家、役者さんとしては佐藤浩市氏のギラツキぶりを見事に継承していてお若いのに凄みを感じさせます。

一方でのんきだったのが政子とトキューサが都を訪れるエピソード。政子×シルビア・グラブの交渉戦とトキューサ×上皇様のリフティング勝負は両方とも見応えありました。

この回の珍妙なアイテム:政子が一杯のツマミに持ってきた干しダコ

 

第44回「審判の日」

1218年。都より皇子を将軍職に迎える準備が着々と進んでいた。だがその陰で義時は朝廷と接近しすぎた実朝を排除することを決意。公暁もまた自分が鎌倉殿となるべくクーデターの計画を練っていた。そして公暁のターゲットには実朝だけではなく、父を葬った義時も含まれていた。

某所で「みなもとの なんかむかつくなかあきら かおはいいのに かおはいいのに」と歌われていた源仲章。本当にむかつくというか、怒りの煽り方がうますぎる。演じる生田斗真君は『いだてん』や『脳男』などが印象に残っていますが、それぞれ全然別の役どころで感心いたします。

運命の日の直前に会話を交わす実朝と公暁。表向きは和解できたように見えましたが、公暁の闇は実朝の光を受け入れることが出来ません。まっすぐで清らかな心がかえって相手の心をかたくなにしてしまうこともあるという。

ここに至って本当にギャグがなくなってしまった『鎌倉殿』。前半のコメディ調が嘘のよう、というか別のドラマのようです。三谷作品としてもここまでドス黒いものは例がないのでは。雪の降る中階段を上っていく実朝。物陰で息をひそめる公暁。ぽっかり口を開けて義時を嘲る仲章。緊張が極に達したところで生殺しのように次回へ。

この回の謎の動物:義時の夢に出てくるソフトバンクのお父さん

 

いよいよ残り一ヶ月。さびしいようなホッとするような…

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November 20, 2022

2022年9月に観た映画

☆『NOPE/ノープ』

『ゲットアウト』『アス』に続くジョーダン・ピール監督最新作。予告では突然上空に舞い上げられる人の映像があり、『ツイスター』みたいな竜巻の映画かと思いきや、これがなかなか意外な方向へ進みます。

ジョーダンさんは『ゲットアウト』のお笑い混じりのムードが好きだったのに、『アス』はただ普通に怖い感じの映画になっていて、今回もそうだったらイヤだな…と思いながら観ておりました。果たして前半こそホラー調でありましたが、後半はなんというかこう、「燃える」展開になっていて手に汗握らせられました。こういう風に共通したタッチも持ちながら、1作ごとに趣向を変えていく作家さんもちょっと珍しい。

合間合間に昔のオランウータンのシットコムに関するエピソードが挿入されます。これ、別になくてもいいような気もしましたが、これが作品にある種の不気味さや個性を添えていてぬぐいがたい印象を残します。

 

☆『この子は邪悪』

さるご縁で、自主映画を作られてるころから追いかけさせていただいてた片岡翔監督の長編第3作。前2作は一応原作付であったので、一からストーリーをこさえた長編となると初…ということになりますか。

事故にあって以来、心身共に傷を抱えたある精神科医の家族。ただ一人無傷だった長女が、同年代の少年と交流を持ち始めたころから、保たれていた見せかけの平安が崩れていきます。

建物等の古めかしい様子や「犬神家」のようなマスクをかぶった少女などから、現代が舞台であるにも関わらず戦前の探偵小説のような空気が漂っております。クライマックス近くにはなかなかびっくりする超展開もあり。ここがこの作品の賛否が特に別れるところかもしれません。自分は夢野久作や楳図かずおのオマージュと捉えて「アリ」といたしました。

病院に放たれているたくさんのウサギが可愛くも不気味。でもやっぱりかわいい(笑) 片岡氏は映画と並行して小説も発表されていて、特に近作の2冊『ひとでちゃんに殺される』(ホラー)と『その殺人、本格ミステリに仕立てます』(本格ミステリ)はなかなか力が入っていて唸らされました。『ひとでちゃん~』には『この子は邪悪』に共通するアイデアもあって合わせて読むと面白いかと。

 

☆『ブレット・トレイン』

伊坂幸太郎のノワール小説を『デッドプール2』の監督が映画化。ハリウッド製作なもので、登場人物がみんな外国人に置き換えられたりしてます。予告から漂うお茶らけたムードからも、かなり原作からかけ離れてそうなことがうかがえますが、自分未読なんでもしかしたらそれなりに忠実なのかも…?

とある任務をピンチヒッターで引き受けた殺し屋が、ミッション遂行のために新幹線に乗り込むもアクシデントの連続で降りるに降りられず、終点の京都まで旅行する羽目になる…というストーリー。珍妙な殺し屋たちが次から次へと登場するのですが、そういったたくさんのキャラの「交通整理」が実に見事でした。

自分が特に興が乗ったのはあまり向こうの映画には出てこない東海道新幹線の駅名が色々出てきたことですね。この辺実際に旅行したことがあるので。地元の静岡は横に長いので中盤けっこう時間を割いてもらって地味に嬉しかったです。そして北陸本線に乗り換える時利用した米原駅も登場。地元の人には申し訳ないのですが、この駅、新幹線の駅なのに本当に周りにほとんど何もないんですよね。その寂しさが上手に再現されてて笑いました。

 

☆『HiGH&LOW THE WORST X 』

「ハイロー」シリーズ最新作にしてコミック『WORST』とのコラボ第二弾。鬼邪高校に現れた新星・花岡楓士雄と仲間たちの新たな戦いが描かれます。前作からちょびっとしか経ってない設定のようですが、現実世界では3年くらい月日が流れてるのでその辺のギャップに少し戸惑いました。

自分はやっぱり主人公のフジオちゃんがお気に入りですかね。バカで能天気なんだけどケンカは鬼のように強いし締めるところはきちっと締める。今回はいつの間にやら鬼邪高のリーダーになってたみたいで、自分一人のことだけ考えていればいい、というわけにはいかず悩んだりもしてました。あとわたし最近「職長・安全衛生責任者」という資格の講習に行ってきたのですが、あらためてハイローの山場のバトルって工事現場でやっちゃいけない事例のオンパレードだな、と感じました。たぶん撮影現場ではちゃんと安全対策が取られているとは思いますが。現場猫たちが泣いちゃうことがありませんように。

ケンカの合間にみんなで放課後にプールサイドで焼きそば作って食べてるシーンとか特に好きです。青春ですよね。

 

今年も残りあと40日ほど… 10月は『ロード・オブ・ザ・リング』などのリバイバルばかり観てたのでたぶん次はそれを書きます。

 

 

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October 30, 2022

『鎌倉殿の13人』を雑に振り返る⑩ 10月編

第38回「時を継ぐ者」

鎌倉で更なる権力を得るため、実朝に退位を迫る時政。だがそれは最初から失敗することを覚悟しての、自滅的な行動だった。

タイトル元ネタはJ・P・ホーガンの『星を継ぐもの』からでしょうか。牧氏の変、というか時政パッパ退場編の後編。なぜそれなりに分別もある時政が妻に煽られるままに暴走したのか…というのは不思議なところですが、Twitterでどなたかが「我々の世代は宮沢りえにお願いされたら絶対に断れない刷り込みのようなものがある」ということを申されていて納得いたしました。

北条時政という人は「風格のある老獪な戦国武将」に近い…それこそ武田信玄みたいな…イメージだったのですが、このドラマを見てからは「やる時はやるけど、作物を愛する気のいい田舎のおっちゃん」という風に変わりました。

なぜ最後まで自分のそばにいてくれないのか、涙ながらに父に詰め寄る義時。もしかしてこれが彼の流す最後の涙だったりして。いよいよ権力の頂点に上り詰め、腹の底から真っ黒黒スケになってしまいました。『ゴッドファーザー』のマイケルそのものでございます。:

この回のまず使わない日本語:「羽林」 やっぱ「武衛」の方がかっこいい

 

☆スペシャルトークショー

残り10回の最終章突入の前に突然放映されたトークショー。飽くことない権謀術数の連打に疲れていた視聴者にちょうどよい癒しとなりました。

まあやはり一番印象に残ったのは大泉洋氏の「日本国民全員の『全部あいつのせい』を僕が受け止める」発言でしょうか。本当に劇中の頼朝そのものでイラっと来ました(笑) スタジオでも概ねそんな反応。ただやっぱり彼の退場と共にお話の陰残さがどんどん増してきたことを考えると、貴重なキャラだったんだなあ…と認めざるを得ません。

あと胸に迫ったのはこれまで退場していった多くの方たちのまとめムービー。中には「死んだ」とも言われずいつの間にか消えてた土肥実平みたいな人も… もっと扱いがひどいのはムービーにすら出てこなかった文覚とかですね。

三谷さんからラストの脚本を頂いて震えあがったという小栗・小池のお二方。ガイドブックには詳しく描かれてなかったですけど、果たしてどんな結末なのか。アガサ・クリスティの某名作からヒントを得たとのことですが…

 

第39回「穏やかな一日」

牧氏の変の後から和田合戦の間の1207~1212年あたりの出来事を、さらっと一日に編集したエピソード…ということを冒頭で説明する実体長澤まさみ。あなたは一体誰なんですか!?

それはともかくこの回は義時よりも将軍実朝のデリケートな心情を細やかに描いた内容となっておりました。勘のいい方は先のおばばとの面談でお気づきになっていたようですが、このドラマでは実朝はやはり同性愛者だった…と捉えているようです。ただその意中の相手が泰時だったとは意外でした。女子からは「朴念仁で面白みがない」と言われる泰時ですが、一体彼のどこに惹かれたのか。やっぱり顔が坂口健太郎だからか。ノンケの気持ちのいいやつに恋してしまって苦しむという話、最近吉田秋生先生の『詩歌川百景』でも読みました。

オリキャラなのか実在の人物なのか不明だった鶴丸は、この回で「平盛綱」だったことが判明。彼と泰時主従は見ていて微笑ましいですね。あと「殺しときゃよかった」と言った直後に「父上にうまいもんでももってってやれ」と言う義時はかなり屈折してます。

この回の重要なアイテム:間違えて渡した…ということだったけど本当は間違いじゃなかった恋の歌

 

第40回「罠と罠」

1213年。鎌倉ではトップに立った義時の専横を苦々しく思う御家人たちが、歴戦の勇士である和田義盛の元に集まるようになっていた。義盛自身は何の野心も抱いていなかったが、その勢力を無視できなくなった義時は和田の一党を滅ぼすことを画策する。

どうですこの粗筋。どう読んでも悪役としか思えない人物が大河ドラマの主人公なんだからすごいとしか言いようがありません。

幕府草創期最大の内紛と言われる「和田合戦」への過程を描いたエピソード。今まで愛すべき多くの人たちを見送ってきましたが、今度はとうとう和田さんまで… 何とか助かってほしい… まあもう検索しちゃってどうなるかわかってるんですけど。

そんな重苦しいムードに和田さんの女装という強烈なギャグをぶっこむ三谷脚本。あわや成功するかと思いきややっぱり悲劇に向かってしまうのがこのドラマのセオリーです。

ただ義時も心の底では和田さんが好き…というところを指摘されて肯定してしまうところは切ない。自分の中に望んでいる正反対のことがある。でも鎌倉を守るために誰かを犠牲にする方を選んでしまうわけですね。修羅の道であります。

この回のそれなりに重要なアイテム:あんまり意味なさそうな女物の上っ張り

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October 16, 2022

2022年8月に観た映画

今年もあと二か月半で終わりとか本当に恐ろしいことでございます。とりあえずまたしても今頃ではありますが、夏の盛りに見た映画について覚え書くとします。

☆『劇場版 Gのレコンギスタ』

放映時見そびれてた富野由悠季監督の最新作が、劇場版5部作が完結するころになって盛り上がってきたので慌てて1~3部をアマゾンプライムで予習、4・5部を映画館で観てきました。

富野監督というとやはりガンダム・イデオン中心の重厚なイメージで語られることが多い方ですが、『ザブングル』『ダイターン3』のような力の抜けた元気いっぱいの作品も作れる人。この『Gレコ』はそこまでくだけちゃいないけど、「重富野」と「軽富野」の中間くらいのムードになっておりました。かつてにくらべると丸くなったな…という印象がある反面、若かった時の「元気」は衰えていないようで頼もしい限りです。

今までのガンダムもそうなんですが、こういう近未来SFというのは異なる二つの勢力の争う単純な構図になりがちなもの。しかし『Gレコ』では主に4つの国家が登場し、それぞれに和平派と好戦派がいたりします。各勢力から和平を望む者たちが寄り集まり、その集団が戦いを収束させていく流れが面白かったです。独特なセンスで描かれた宇宙建造物も見応えがありました。

 

☆『三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち

マイBESTコミックである『風雲児たち』で最も好きなパート「大黒屋光太夫」編を、同作のファンである名脚本家三谷幸喜氏が歌舞伎化。それをさらに「シネマ歌舞伎」として映画館用にアレンジした作品。

まあこれ当たり前のことなのかもしれませんが、原作の大事なところはおさえつつも、漫画の忠実な舞台化というよりは、これはこれでひとつの「三谷幸喜作品」になっておりました。代表的な漂流民のキャラクターも微妙に性格が違ってたりしてて。あと歌舞伎というより新劇に近い印象。

現在放送中の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』といっぱいかぶっていたのが楽しかったです。やはり三谷さんの歴史劇って「みなもと太郎メソッド」をお手本にして作られてるんだな…と改めて思いました。少し前亡くなられたみなもと先生の絵が、冒頭でスクリーンいっぱいに動いていたのにも感動しました。

 

☆『ソニック・ザ・ムービー ソニックVSナックルズ』

コロナ禍でありながら早くも続編を作ってきた『ソニック ザ・ムービー』の2作目。はっきり言うと「今回も面白かった」くらいしか感想が浮かんでこないという… それでもひねり出してみると

・『鎌倉殿の13人』で活躍中だったイケメン・中川大志君の吹替がめっちゃうまい

・なぜ宇宙からやってくるエイリアンがそろいもそろってモフモフの可愛い動物なのか(可愛いからゆるす)

・ロシアでのダンスバトルが楽しかったが今の情勢を思うと悲しい。

あと今夏観たキッズムービー三作品、クライマックスがなぜかみな怪獣映画でした。『ゴジラVSコング』ヒットの影響でしょうか。

 

☆『バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー』

フランス発のアメコミヒーローパロディ映画。さえない俳優が主役に抜擢された作品『バッドマン』撮影中に事故にあい、自分を本物のバッドマンだと思い込んでしまうお話。ポスターはアベンジャーズ風ですが、どっちかというと中心になってるのはバットマン。ただ一応マーベルのネタも色々入ってます。

監督が海外版『シティハンター』の人ゆえか、恐ろしく下ネタが多く、そういうのあまり気にしない私でさえ「これどっかから叩かれないだろうか」と心配になりました。今やアメリカよりも欧州の方が下ネタに寛容なのでしょうか。なんとか料金分くらいは楽しみましたが、これスクリーンよりうちで寝っ転がって観た方が楽しいかも。

 

☆『DC がんばれ!スーパーペット』

DCの数あるキャラクターの中でも、まず映画化されなさそうなスーパーヒーローたちのペット、特にスーパーマンの飼い犬「クリプト」にスポットをあてた物語。一発ネタ的映画かと思いきや、これがなかなか人間関係における重要な教訓が含まれていて深い内容となっておりました。例えば一人の友達にべったり依存しすぎちゃいけない、他にも等しく親しい友人を何人か作っておいた方がいい…とか。実際にすんなりそうできたらなんも苦労はないわけですが。

他にもクリプトのよき理解者となるバット犬エースの悲しい過去とか、モルカーをほうふつとさせる珍妙スーパーモルモット軍団とか、クリプト決死の最終奥義とか、動物たちの見どころがあまりに多く、本来なら一番目立ちそうなジャスティスリーグの面々がちゃんと脇固めになってるところがなかなかすごい。

自分的には年間ベストの一本に入るくらいお気に入りの作品となりましたが、日本では壮絶にぶっこけてしまったのが悲しい。本国ではきちんと売れてるようなのがせめてもの救いです。

 

次回は9月に観た『NOPE』『この子は邪悪』『ブレット・トレイン』『ハイ&ロー ザ・ワーストX』などについて書きます

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October 02, 2022

『鎌倉殿の13人』を雑に振り返る⑨9月編

第34回「理想の結婚」

後味の悪い頼家暗殺の後、鎌倉は実朝を中心とした体制を一層強いものとしていく。さすがに自分の罪の重さに落ち込んでいた義時だったが、影の薄さナンバー1だった13人の一人二階堂行政から孫娘を嫁にとすすめられ、年甲斐もなく(地味に)浮かれ出す。

タイトル元は『最高の離婚』でしょうか。たぶんまだ1204年ごろのお話。陰残な内ゲバがず――――――っと続いていて疲れ切った視聴者たちに、オアシスのように訪れた息抜き回。「義時最後の妻」である「のえ」さん、清純派であまり菊地凛子っぽくないなあと思っていたら終了間際にやらかしてくれたというか笑わせてくれたというか。これをもって義時の「おなごはキノコが好き」説は完全に誤りであったことが証明された感。

この回は実朝を鍛えるべく各御家人たちが各々得意分野を代わる代わる教授するシーンも楽しかったですね。義村の「おなごとのあとくされの無い別れ方」講座はいらない、というか無い方がいいと思います。

この回の重要なアイテム:何度目かの山盛りキノコ ナベになった鹿之助

 

第35回「苦い盃」

実朝がまだ若いため、実質鎌倉のトップに立っているのは執権・北条時政。だが基本は田舎のおっさんなので、その治めっぷりは情に流されやすくいい加減な采配も多い。そこへ来て妻のりくに煽られて、さらなる領地拡大を狙い始める。そのことが発端で、婿であり同胞である畠山重忠との間柄に亀裂が入っていく。

前回に引き続き笑える場面も多いのですけど、それと並行して畠山さん退場の前奏曲が奏でられていくのがつらい回。引き続き、といえばいまひとつ掴みどころのなかった実朝君はアットホームな和田邸で鹿鍋をいただいてから、どんどん彼と奥さんになついていきます。その様子が大変微笑ましいのですけど、不在の間に御所は大騒ぎになってしまい、こいつら絶対あとですげえ怒られるぞ…とハラハラしました。

そして抜き打ち的に出てきた謎の老婆=大竹しのぶ。悩める実朝君に「お前の悩みはお前だけのものではない」と、見かけとは裏腹にとてもいいアドバイスを送ります。それを聞いてさめざめと泣く実朝君。なんていい子なんでしょう。前二代がアレすぎたというのもありますが、この子は一体誰に似たのでしょう。

この回の重要な教訓:よくわからない書類にハンコは押さない 雪の日は出歩かない たまには風呂に入る

 

第36回「武士の鑑」

悪妻に煽られまくった時政パパはとうとう重忠を陥れることに成功。ここに「畠山重忠の乱」が勃発。ただ重忠は軍勢を集めることはせず、恭順もせず、少数の兵で武士の誇りを守ることで歴史に名を残そうとする。

1205年の出来事。この回はもう畠山重忠&中川大志君の独壇場でありました。顔もいい、頭も切れる、武芸も達者となればちょっと嫌味なキャラになりそうですが、おごるところは少しもなく、質実剛健を地で行く畠山殿にただただ感服し、泣かされた回でありました。まだ若いのに貫禄たっぷりにそれを演じきった中川君がまたすごい。

また、悲痛なエピソードに笑いを添えてくれた和田さんとのあれこれも印象深かったです。「あいつとは同じものを感じるのです」とか「なんでわかったんだ!」とか「腕相撲で決めよう」とか。この「美男と野獣」コンビも見納めと思うと寂しい限りでした。クライマックスにおける小四郎との『クローズ ZERO』みたいなヤンキーバトルも迫力ありましたね。

結局なんでいるのかわからないままに足立遠元氏もこの回でフェードアウト。「13人」も残り7人となりました。

この回の重要なアイテム:重忠と和田さんの別れの水杯

 

第37回「オンベレブンンビンバ」

時政の悪政により無実の罪で討たれた重忠。鎌倉でさらなる悲劇が起こらないようにするため、政子と義時は父と戦う決意を固める。両者の激突は必至…かと思われたが、なぜか時政は酒と魚持参で一人政子たちの元を訪れる。そして北条親子の最後の宴が始まる。

突然の謎タイトル。ネットでは「イタリア語で『子供のための影』の意味では」という考察が流れてましたが、単に大姫の呪文「オンタラクソワカ」を適当に覚えていた、ということでした。誰もちゃんと覚えていなくて放送禁止すれすれのワードまで飛び出して来ましたが、そのあまりの和やかさに「毎回こういうのでいいんだよ! もう史実も無視していいから!!(駄目です)」と思わずにはいられませんでした。

時政さんも色々ひどいことやってんですけど、「もうこここまでかな」と悟ったような笑顔を見せられると坂東彌十郎さんの人柄もあってか、速攻で許したくなってしまうのがずるいですね。和田さんが結果的に上総広常の思い出話をしてたのにも和みました。

この回の重要でもないアイテム。トキューサがモチモチモチモチしてた餅

 

先ごろ「全48回」という発表がありましたので、『鎌倉殿』もあと残り11回。早くも寂しくなってきました…

 

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September 04, 2022

『鎌倉殿の13人』を雑に振り返る⑧8月編

第30回「全成の確率」

この題は『寄生獣 セイの格率』からでしょうか… 頼家をプチ呪いしていた証拠が見つかってしまった全成は、死罪こそ免れるが常陸の国に流される。事態は収拾したかに見えたが、比企と頼家の軋轢が原因で彼はさらに追い込まれることに。

1203年のお話。数ある頼朝ブラザーズの中でも最もうさんくさく、そして最後の一人となってしまった全成の退場回。「大した能力はない」と自ら認めていた彼ですが、今わの際の大一番で見事な暴風雨を呼び起こしてくれました。これ、日蓮上人が処刑されそうになった時、異様な光がひらめいたとかいう伝説を意識してたのかな。ともかく貴重なお笑い要員がまた一人減ってしまいました。『七人の侍』の「笑わせてくれるやつがいなくなるといよいよ厳しい」みたいな言葉が思い出されます。実際の全成さんはもっと豪放磊落な人物で、頼家に睨まれたのも呪ったからではなく堂々と逆らったから…ということのようですが。

比企能員を追い詰めるべく謀略を巡らすものの、いるべき場所に頼家はおらず豪快に空振りしてしまう義時。思わずテレビの前で「かっこわり~~~」とつぶやいてしまいました。

この回の重要な教訓:見つかったらまずいものを回収する時はしっかり数を確認するべき

この回の久しぶりに聞いたフレーズ:臨兵闘者開陣列在前

 

第31回「諦めの悪い男」

突如として病に倒れ、重篤となってしまった頼家。息を吹き返す見込みは乏しく、その死後鎌倉を動かしていくのは北条か比企か。二つの一族はとうとう全面対決に突入する。

引き続き1203年のお話。まあこの回は佐藤二朗さんのほぼ独断場でですね。彼は「僕はこの前の回で見せ場は終わったと思ったんだけど、小栗君や坂東さんがさらなる高みにひきあげてくれた」というようなことをおっしゃってました。そう、時政演じる坂東彌十郎氏との「これから殺し合うことがわかってるのに、和みながら語り合う」シーンは『鎌倉殿』屈指の名場面でした。 正直数回前から「はよ〇ね」と思っていた比企殿ですが、亡くなってしまうとそれはそれで寂しくなってしまうのがこのドラマの不思議なところです。あの独特な「こしろう~」という口調をついつい真似して寂しさを紛らわせています。

この回はお盆でこっちに来ていた姪っ子と観ていたのですが、クライマックスの鬼気迫る暗殺シーンで姪ちゃんはひたすら無言で顔をひきつらせてました。NHK&三谷さん、もっと子供の情操のこともかんが…いや、いいです。

この回の使ってみたいフレーズ:「手段を選ばねえのが坂東武者よ! 名前に傷がつくくらい屁でもねえ!」

 

 

第32回「災いの種」

九死に一生を得て息を吹き返してしまった頼家。彼の妻や舅を殺してしまった北条の面々は頭を抱える。なんとかごまかそうと悪あがきを試みるが、結局母の政子が真相を伝えることに。

いや、世の中こういうこともあるのですね… 一時は「ダメだこいつ」と思ってた頼家君ですが、この回は気の毒で気の毒で気の毒でなりませんでした。他にもしみじみと悲しいエピソードがバンバン連発された回。義時のためを思い自ら離れていく比奈、息子に拒絶される政子、将軍職を追われ泣き崩れる頼家、そして意外や意外、一幡を殺せと言われ動揺する善児… 本当に大河の主人公が「後々禍根になるから」と子供を殺そうとするってどんだけ容赦ないんですか。視聴者にわずかな逃げ場所すら用意してくれません。

この回の重要なアイテム:兄の形見のヒスイ玉だったかなんだか。時房くんが「兄上~」と必死に語り掛けてたのに義時は自分の兄のことを考えてたのは貴重なお笑いシーン

 

 

第33回「修善寺」

修善寺追われた頼家に代わり、鎌倉では頼朝の次男・実朝が新たなる将軍となった。しかし当然頼家がそれで納得するわけはなく、流された地で現政権への陰謀を練り続ける。一時は静観していた義時だが、とうとうそのままにはしておけない事態となり…

1204年のお話。悲運の将軍・頼家の末路が粛々と描かれていきます。が、びっくりしたのは超絶アサシン・善児もこの回で最期を迎えたこと。それも弟子であったトウの手によって。三谷さんはトウ役の女優さんに「『火の鳥』って読んだことある?」と尋ねたそうですが、このコンビ「黎明編」のナギと猿田彦を意識してたのかなあ。あちらはラストは親子の絆で結ばれたのですが。

頂点を極めた男と、時代の影に隠れ続けた者の壮絶な死。この回の放送が終わった時はしばし呆然としてしまいました。本当にわたしはなんでこんなしんどいドラマをしんどい思いして夢中で観てるんでしょうね。自分で自分がよくわからなくなってきました。

悲劇の地として記憶に刻まれてしまった修善寺ですが、現在は自転車競技が盛んでサイクルスポーツセンターという遊園地もあります。

この回の重要なアイテム:猿楽のお面とか哀しみの干しアワビとか

 

『鎌倉殿』も残り1/3。なんとか耐えてラストまで見届けたいです。

 

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August 28, 2022

2022年7月後半に観た映画

☆『炎のデス・ポリス』

『THE GREY』『コンティニュー』などのジョー・カーナハン監督作品。彼の映画が好きなのでただそれだけの理由で観ました。砂漠の孤立した刑務所にサイコ犯罪者が集結。モブの警官たちはサクサクやられてしまい、血の気の多い女子ポリスのみがほとんど独力で彼らと戦うことになります。サイコさんたちは比較的信用できそうな詐欺師(フランク・グリロ)、絶対信用できなさそうな殺し屋(ジェラルド・バトラー)、会話が成立しないサイコ中のサイコ(トビー・ハス←知らない人)の3名様。最後の一人は完璧に無理として、便宜上詐欺師と殺し屋のどちらかとは手を組まなきゃならない。だけど基本的にどっちにも勝ってもらっては困る… そんな『エイリアンVSプレデター』のようなジレンマが面白かったです。どっちかというと前作『コンティニュー』の方が好きだけど

 

☆『ミニオンズ・フィーバー』

ご存じ大人気シリーズ『怪盗グルー』スピンオフの第二弾。グルーと出会ったばかりのミニオンたちの活躍が描かれます。正直言うとスピンオフの方はグルーは切り離してミニオンだけのお話にしてほしかったような。前作『ミニオンズ』がそんな感じで滅法面白かったので。でもまあこれはこれで水準の面白さは保っておりました。どう見てもイーストウッドのような老ギャングとグルーの世代を越えた友情は微笑ましかったですし。

あとは70年代的なミュージックシーンとか、カトリックに怒られそうなエクソシスト・シスターとか、唐突に始まる燃えよドラゴンオマージュとか… 私は世代的にちょっと後ですけど、大人たちは当時を懐かしみながら観てもよいかも。最後のはっちゃけぶりも楽しませてもらいましたが、色々後発の『ソニック2』や『スーパーペット』とかぶってしまったのはなぜなんだろう。

 

☆『キングダムⅡ 遥かなる大地へ』

大ヒットコミックの映画版『キングダム』の続編。王宮の陰謀を阻止した奴隷の少年・信は、いよいよ大将軍への夢をかなえるため、初陣となる戦場へ赴くことになります。今回は原作の6~8巻あたりでしょうか。最初から最後まで秦と魏の合戦のみが描かれます。だから話としてはすごくわかりやすい。自分前作は年間2位にしたくらい好きな映画なんですが、それでも邦画にありがちな欠点…とにかくキャラが絶叫する等…が多かったことは否めません。ただ今度は広い平原で殺し合ってる話なので、むしろ絶叫してる方が自然だったり。そんなわけでややくどさが抑えられたような印象があります。あとやっぱり古代の戦車戦って滅多に見られないだけに燃えますね。『マッドマックス 怒りのデスロード』のオマージュ的なものも感じました。

特に好きなのは予告でも使われてた信とキョウカイの別れのシーン。かっこよく拳を突き出し合って決めるのかと思ったら…w そのあとキョウカイの笑顔がまたよかったです。

早くも来年第3作が公開予定。全編映画化するのは確実に無理なので、ドラマ化するか『ちはやふる』のように映画で独自に上手に終わらせるしかないと思います。

 

☆『神々の山嶺』

夢枕獏の小説を谷口ジロー氏が劇画化し、それをさらにフランスのスタッフがアニメ化した…というややこしい経緯のアニメ。小説の方は『エヴェレスト』の題で実写映画化されたこともありますね。伝説のアルピニストを追う雑誌ライターが、彼の足跡をたどるうちに共にエベレストを登ることになる…というストーリー。日本の70~80年代くらいの懐かしい街の景色がフランス風のお洒落なタッチで再現されていたのは、なにやら不思議な感覚でした。懐かしいのにどこが違う…みたいな印象。実際の70年代日本の映像にある、雑然として垢抜けないような空気が抜けちゃってるんですよね。それはそれでひとつの映像美として楽しみました。雄大な山々の風景に関してはただただ圧倒されるばかりでした。

で、この映画時々ホラー的な演出もチラチラ入るんですよね。それくらい登山には怖い一面もあるわけです。なぜそんな怖かったりしんどい思いをしてまである人たちは山に登りたがるのか。その結論を「わかんない」で〆ていたのは大変すがすがしかったです。

友を死なせた悔い」「極限へ挑戦」「次世代へ継承」そして「こういう生き方しかできない」という愚直な主人公像などは今大ヒット公開中の『トップガン マーヴェリック』にかなり近かったです。

 

☆『ジュラシック・ワールド 新たなる支配者

1993年から続く『ジュラシック・パーク』シリーズの完結編(前にも1回終わってたけど)。恐竜が人間社会に出現するようになってしまった世界で、新旧三部作の登場人物たちが新たな陰謀に挑みます。以後、完全ネタバレなのでご了承ください。

このシリーズをきれいに終わりにするとしたら、「人類が恐竜に淘汰される」「恐竜がまた世界から姿を消す」「今度こそ完全に安全なジュラシックパークが建造される…」というあたりかと思うんですが、そのどれでもありませんでした(笑)新三部作の主人公たちが家族として結ばれた…というとこだけなんとなく完結編っぽかったです。

今回の作品に期待したのは我々の身近な都市部でいろんな恐竜が暴れる映像。前半のヴェロキラプトルとのチェイスシーンは見事にその期待に応えてくれましたが、後半に入ったらまたいつもの研究施設内で右往左往する流れになってしまい… ただ恐竜の活躍が見られる映画ってほぼほぼこのシリーズしかないので、それでも貴重といえば貴重なのです。

新三部作の製作も務めたコリン・トレボロウ監督は「これで僕の役割は終わり」と言ってますが、ジュラシックパークでも他の映画でもいいので数年に一度は恐竜をスクリーンで拝みたいところです。

 

次回は『劇場版 Gのレコンギスタ』『三谷かぶき 風雲児たち』『ソニック・ザ・ムービー2』『バッドマン』『がんばれ! スーパーペット』などについて書きます。

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August 21, 2022

2022年7月前半に観た映画

7月はがんばって?10本も観たので2回に分けます

☆『ザ・ロストシティ』

サンドラ姉さんがディスコダンサーが着るようなキラキラした服でジャングルをさまよってて「大変そうだなあ」と思ったのと、突然お腹がアレになってトイレに行ったら不在の間にキャラが一人死んでたのが特に印象に残っております。

どなたかが「こういう毒にも薬にもならないような映画もこの世には必要」と評しておられました。本当にその通りだと思います。観ている間はとても楽しゅうございました。

チャニング・テイタムが沼の中でヒルに食いつかれるシーンは『スタンド・バイ・ミー』のオマージュですかね。

 

☆『エルヴィス』

言わずと知れたエルヴィス・プレスリーの一代記…であると同時に、矢吹丈の手綱を手放すまいと必死になる極悪な丹下段平の話でもありました。

こういうロックスター映画というのはサクセスすると大抵ホテルや邸宅で乱交にふけってたりするシーンがあるのですが、エルヴィスさんはストイックなタイプだったのかこの作品にはそういうのはありませんでした。お薬はガバガバ服用してたようですが、楽しみのためではなく不安を紛らわすためだったようですし。

そんな風に命を削ってステージで熱唱するシーンは圧巻でございました。主演のオースティン・バトラー君に脱帽です。あとB・B・キングとの友情のエピソードにほっこりしました。

☆『バズ・ライトイヤー』

あの『トイ・ストーリー』の名玩具「バズ・ライトイヤー」は、一体どんな映画を元にして作られたのか…という話。ユーモラスなメカ群、ウラシマ効果の悲哀、『トイ・ストーリー』ファンへのサービス、ピクサーお得意のお笑い要素など、全体的にソツなく上手に作られてるんですが、後発の『ミニオンズ・フィーバー』などと比べるとちょっと地味な印象がぬぐえません。基本的に未開の荒れ果てた惑星の周辺だけで収まっちゃってる話なので… まあたまにはこんな渋いSFアニメもいいかな、とは思いますが、日米ともに興行がイマイチ振るわなかったのが気の毒。

 

☆『モガディシュ 脱出までの14日間』

ようやく今年初の韓国映画。1990年、お互いの国際的を地位を高めるべく、北朝鮮と韓国の大使たちはソマリアで競争のようにロビー活動にいそしんでいた。しかしクーデターが勃発。彼らは武装ゲリラの攻撃かいくぐり、命からがら国外へ逃げ出さねばならなくなる。

『タクシー運転手』同様実在の事件に材を取った話…にしてはかなりエンターテインメント色が強く、恐らくそれなりに脚色がなされているものとは思いますが、それにしてもよくこんな面白い話を見つけてきたなあと。あと異国の地で現地の人を大量にエキストラをやとい、派手にドンパチを撮影できる韓国映画のパワーには圧倒されました。

最初角突き合ってた2グループが呉越同舟するうちにうとちけあってく…というのも定番といえば定番ですが、自分やっぱりそういうのに弱いのでアリです。あと最近観てなかったけど、この「南北分断」という問題、韓国ならではのテーマですよね。この3年後の話が『ブラックホーク・ダウン』になるようです。

 

☆『ソー ラブ&サンダー』

映画のMCU最新作。4作目にしてタイトルから「マイティ」の冠が外されました。シリーズの途中でさくっといなくなってたソーの元カノ・ジェーンが、元ハンマーのムジョルニアを携えて「新ソー」として復帰するというストーリー。お茶らけた作風のタイカ・ワイティティ監督だけあって隙あらばお笑いがねじ込まれてくるんですが、同時進行でヴィランやジェーンの悲しい背景も語られて観終わるとなんだかしんみりした気分になっちゃいました。

MCUのヒーローたちは大抵なにかしら大切なものを映画で失っていくのですが、特にそれが顕著なのがソー。シリーズが続くうちに故郷も友人も家族も最初のトンカチもことごとく失っていきます。それでもあんまり悲しみを引きずらず、ニコニコしながら次の冒険に向かうソーさんを観ていると元気をわけてもらったような気分になります。アベンジャーズのBIG3のうち二人が去り、もはやBIG1となってしまいましたが、役者さんもいやがってないようですし、いけるところまで出来る限りスクリーンに姿を見せてほしいものです。

今回特に印象に残ったキャラ?はマサカリのストームブレイカーさん。なかなか嫉妬深いということが判明。モノがモノだけにソーにズズズ…と詰め寄るシーンは迫力がありました。ギリシャその他多神教の適当な神様たちへのイジリにも笑わせてもらいました。

 

次は『ミニオンズ・フィーバー』『炎のデス・ポリス』『キングダムⅡ』『神々の山嶺』『ジュラシックワールド 新たなる支配者』について書きます。

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August 07, 2022

『鎌倉殿の13人』を雑に振り返る⑦7月編

第26回 「悲しむ前に」

突如意識を失い重体となってしまった頼朝。医師の見立てではもう数日の命とのこと。悲嘆にくれる政子をよそに、御家人たちは次の「鎌倉殿」が誰になるのか思慮をめぐらせていた。

お茶らけ回だった前回とは打って変わり、沈痛なムードが続く26話。ネットでは「まだ死んでなかったの?」という反応がたくさん見受けられましたが…

周囲がさっさと見切りをつけてる中で、最後まで諦めようとしない政子様がつろうございました。あんなに浮気したり子を苦しめたりした男でしたが、それでも彼女は純粋に頼朝を愛してたのだなあと。そしてずっと「元グラビアアイドル」というイメージが抜けなかった小池栄子さん、このドラマが始まってからはその演技力に唸らせられっぱなしでしたけど、この回でそれがひとつの頂点に達した感があります。

あともう一人彼の死を悲しんでた義時。頼朝はもしかして彼に暗殺されたのでは…なんて予想もしてたのですが、それが外れてほっとしました。伊豆に引きこもろうとする彼を「ふざけんな」とばかりに引き留める政子様。いよいよこのドラマの「本編」が開幕いたします。

この回の重要なアイテム:政子が最後に頼朝にもっていった料理。結局あれって正体明らかになったんだっけ

 

第27回 「鎌倉殿と十三人」

母にはっぱをかけられて、二代目鎌倉殿となる決意をした頼家。しかしその一方で北条家と比企家は自分たちの勢力をより強くすべく、将軍の相談役の選出を競い合っていた。最終的に出そろったのは十三名。「十三人の合議制」の時代がいま、始まる…のか?

西暦1199年くらいの内容でようやくタイトルが回収?された27話。番組が始まる前はさぞかし頼もしい豪傑たちが一堂に会しババーン!と見栄を切るのかと思いましたが、実際見てみると小ずるそうだったり幸も影も薄そうなおじさんたちが大半であったり… 三谷さんが脚本である時点で予想すべきでした。

ちなみにわたしの13人の印象は次の通り

北条義時…主人公。ゴッドファーザーのマイケル
北条時政…主人公の父。いい加減
三浦義澄…時政の親友。佐藤B作
比企能員…権力大好きおじさん。佐藤二郎
和田義盛…脳筋。可愛いもの好き
梶原景時…義経のサリエリ

安達盛長…頼朝の爺や
八田知家…突然出てきたワイルド大工
足立遠元…得体が知れない人畜無害の人
大江広元…腹黒・讒言大将。一番怖いかも
三善康信…『古畑任三郎』の向島巡査
中原親能・二階堂行政…大江さんにくっついてきた文官。影が薄すぎる

当然こんなおじさんたちを頼家が信用しようはずもなく、事態は「元鎌倉殿の十三人衆」VS「現鎌倉殿の親衛隊5人衆」の対決へとなだれ込んでいきます。

この回の重要なテロップ:十三人がそろうたびに画面に出てきたカウント。数えやすくてよかったです。

 

第28回 「名刀の主」

頼家に取り入ろうとするも失敗した梶原景時。これまでの「告げ口役」という悪評も手伝って、急速に鎌倉での居場所を失っていく。そんな彼に朝廷からの誘いがあり、景時は鎌倉に見切りをつける決意を固める。だがそれが頼家に耳に入り…

梶原景時退場を丸々一話使って描いた29回。「義経を追い落とした」ということで全くいいイメージのなかった彼を、オーベルシュタインのような愛されキャラにまで持っていった脚本力に脱帽です。あと中村獅童氏は『新選組!』『いだてん』のようなひょうきんな役も上手ですが、やはり今回や『ピンポン』みたいな重厚な豪傑役の方がしっくり来ますね。その死が「想像してくれよ」と言わんばかりでオマケコーナーで語られる演出はあっさりというかお洒落というか。

今回初登場だった重要キャラはアバンタイトルで出てきた後鳥羽上皇。演じる尾上松也氏は見てるとどうしても「リブモ」CMの「なんですって、奥さん!」を思い出してしまっていけません。あと退場したのは三幡の死を悲しんで鎌倉を離れてしまった中原親能さん。存在感がないままの脱落となりました。そろったと思ったらもう2名いなくなってしまった「十三人」。『アルスラーン戦記』の十六翼将みたいです。

この回の重要で不穏なあいてむ:「善児」 そんなもんのこしてくんじゃね~~~!

 

第29回 「ままならぬ玉」

御家人の嫁を略奪しようとしたり、サッカーにかまけたり、頼家の悪評が止まらない。そんな彼を失墜させようと北条パパは婿である全成に「ちょっとだけ」呪うよう説き伏せる。ただ傍若無人に見える頼家ではあったが、彼は彼で内に不安と孤独を抱えていた。

先回で「こいつ駄目だわ」と見放した頼家公を、「やっぱりこの子かわいそう!」と思わせてしまう脚本に翻弄される回。演じる金子大地君は松田翔太氏にも似た危うさを感じさせます。でも同情しちゃうとこの先の展開が辛くなるわけで… こういうの本当にやめていただきたい。

一方でほっこりする二世がこの回で改名した北条泰時君。庶民の立場に立って政治を行ったり、女子に空気の読めてないプレゼントをつっかえされたりと好感度が爆上がりでした。ちなみに私がTwitterで行ったアンケートによるとそれなりの女子が「キノコ好き」と答えていて、義時説ももまんざら間違いではなさそう。問題は量と渡し方でしょうか。

コントのような井戸落ち(史実だそうです)から、心和む夫婦エピソード。しかしラスト直前で入る火曜サスペンス効果音。このヒキは『太陽がいっぱい』のオマージュだと思います。そしてこの回でまた二人合議制のメンバーが脱落(三浦義澄・安達盛長)。自然死だったのがせめてもの救いです。

この回の重要なアイテム:マリ(「しゅうぎく」って言うのね)・キノコ・縄・藁人形

 

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July 31, 2022

2022年6月に観た映画

☆『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』

企画の情報を聞いた時は多くのファンが「正気か…」と感じた『機動戦士ガンダム』第1作の番外編。ほぼ外れのない「ファーストガンダム」テレビシリーズにおいて、ただひとつ「微妙」とされているエピソード、「ククルス・ドアンの島」の島を安彦良和御大自らがリメイクした作品。なんだかんだで上半期とりわけ楽しみにしていた1本です。

オリジナルはまだ兵士となることになじめずよくごねていたアムロ君が、突然「いい子」になってしまった印象があるのですが、こちらでは彼特有の繊細さ・多感さも残しつつ少年らしい純真さもあり、わたしたちが良く知ってる「アムロ」になっていたと思います。

全体的な印象としては安彦版『未来少年コナン』みたいなところがあり。ロボットの見せ場もちゃんとありますけど、「人間やっぱり額に汗して働いて飯を作らにゃいかんのだ」というメッセージが伝わってきます。この辺ミスターガンダムの富野由悠季氏と比べると安彦監督はもっとシンプルで健康的な作家だなあ…と改めて感じました。

特にテンションが上がったのは雷鳴・お馴染みのBGMと共にクライマックスでガンダムがヌオッと姿を現すシーン。あとさすがにTV版から40年以上経ってるので、オリジナルの声優さんたちのほとんどが鬼籍に入られてしまったことを実感してしんみりしちゃいました。いまなお現役の古屋徹・池田秀一・古川登志夫3氏はいつまでもお元気でいてください。

 

☆『トップガン マーヴェリック』

これまた80年代の超懐かしい洋画の、だいぶ年を経た「その後」を描いた映画。公開予定が遅れに遅れまくったため実に2年近く予告編を映画館で観させ続けられた作品です。

かつて海軍きっての暴れん坊パイロットだったマーヴェリック。しかし時代は無人操縦の戦闘機が主流となりつつあり、彼のような個人技にモノを言わす飛行機乗りは必要とされなくなりつつあった。そんな中無人機では達成が難しいミッションが発生。マーヴェリックは若き「トップガン」たちを作戦から生還させるため古巣に教官として舞い戻る。

既にいろんな方が言ってると思いますが、空戦も生身の危険な撮影もハイテクのおかげで人間がやる必要がなくなりつつあります。でもそれは「今日じゃない」と言わんばかりに飛行機にとびついたり戦闘機を操縦したりするトム・クルーズ。「体を大事に…」と思いながらもその超絶アクションには感嘆せずにはいられませんし、ネームバリューと共に他の追随を許しません。昔の『トップガン』では役柄はともかく素のキャラはそんな無茶ばかりやるような方ではなかったのですが… 40年近く年が流れたうちに中の人までマーベリックになってしまった感があります。

あともう一点驚いたのはそんなにド派手な題材でもない、かつて1本だけ作られた映画の続編が、日米ともに爆発的なヒットを飛ばしているということ。先に懐かし映画の続編と言えばマトリックスやゴーストバスターズもありましたが、これらはそんなに話題にならなかったような。もちろん「出来がいいから」というのはあるでしょうけど、それだけでは映画はここまで売れないもので。二年間予告編が流れ続けた効果もあったのか… 謎であります。

わたしといえば昔の『トップガン』にいい印象がなかったのとやけに売れてるのでやや斜に構えながら鑑賞してたのですが、アイスマンとの友情や親友の息子ルースターとのわだかまりが解けるところなどはブシュッと鼻水が噴き出たりしました。あと前作『オンリー・ザ・ブレイブ』が大コケした(いい映画なのに…)ジョセフ・コシンスキー監督が大大ブレイクしたことも喜ばないといけません。

 

☆『FLEE』

アニメ映画でありながら今年のアカデミー賞で国際長編部門・ドキュメンタリー部門にもノミネートされた骨太の作品。アフガンで生まれた青年が苦労して欧州に逃れた後で、思い出したくなかった過去の経験を少しずつ振り返っていく内容。難民というだけでも大変なのに、彼はゲイゆえに同胞からも疎まれるという辛い背景があります。

そんなわけで胸と胃がキリキリするようなエピソードが多く語られるのですが、彼の持ち前の明るさか、監督の語り口ゆえかほっこりしたり笑わせてくれるところもチラチラあるのが救いだったり。亡命する時居合わせた美青年に恋しちゃったりとか、初めてゲイクラブに行った時のいきさつだったりとか。主人公が憧れてるのがジャン・クロード・ヴァン・ダムだったりとか。今年はなぜかヴァン・ダムオマージュを各所で見かけたり本人もがんばってたりヴァンダム再評価の年でありますね。

あと平和な国に住んでる我々とは程遠い話のようで、「周囲の期待と自分の望みが反するゆえに苦しむ」というあたりはどこにでもある経験だな、と思いました。

 

☆『鋼の錬金術師 完結編 反逆者スカ―/最後の錬成』

荒川弘先生の名作コミックを、連載20周年ということで実写版も完結させた二部作。先に製作されていた第1作が評判も興行も芳しくなかったのによく踏み切ったな…と変に感心してしまいました。でもまあ見てみると映画紹介漫画『邦キチ 映子さん』で言うところの「ヅラ感」が気になりつつも演者さんがみながんばってたり、原作の重要エピソードをちゃんと取捨選択して編集してたりして、尻上がりに印象がよくなっていきます。特に第3作は山田涼介君・渡邉圭佑君・内野聖陽氏三者がそれぞれに「顔は同じなんだけど人格が違う」2役をそれぞれ上手に演じ分けしていて感心しました。また、スカ―役の新田真剣佑は『ジョジョ』の時を彷彿とさせるような役への憑依ぶりが見事でした。あと原作読んでだいぶ経ってるので久しぶりに思い出したキャラ・話が多数あって色々懐かしい気分にさせてもらいましたよ。

 

☆『ベイビー・ブローカー』

世界でも評価の高い是枝裕和監督が舞台・キャストともに韓国で撮影した作品。いわゆる「赤ちゃんポスト」を利用して乳児の売買を企む二人組と、赤ん坊の母親のロードムービー。主演はやはり世界的名声を誇るソン・ガンホ氏なのですが、監督の性向ゆえか小悪党なのに仏のようにやさしい。いつものガンホさんだったら「シバ〇マ!」と叫んで切れ散らかしそうな場面でも、穏やかに「仕方ねえなあ」と微笑みを絶やしません。自分はそんな誰にでも優しい視点がすごく心地よかったのですが、実際によくある社会問題を題材にしてるゆえに「そんな綺麗ごとで納まるわけねえだろ」と感じられた方もおられるようで。まあでも、是枝さん、この映画のガンホさんとその弟分のような優しさは忘れずにいたいと思います。

 

7月は頑張って10本くらい観ました。次回はその前半の『ロストシティ』『エルヴィス』『バズ・ライトイヤー』『モガディシュ』『ソー ラブ&サンダー』などについて書ければ

 

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